~おまけ~

 此処はあらゆる時間・次元・事象を超越した世界セラフィックゲート。

 そして此処に一つの犬小屋が存在する、これはあらゆる次元の中で起こりえる一つの可能性が詰まった小屋である。

 だが決して…興味本位で覗くこと無かれ……




 ヴィータの一撃によって辺りは炎に包まれ、その状況を睨みつけるヴィータ。
 すると炎の中から一つの人影が姿を現し、ヴィータは苦虫を噛む表情を表し吐き捨てるように言葉を口にする。

 「………悪魔め…」





 其処から姿を現した人物、それは犬なのはであった。
 そして犬なのははゆっくりと歩き出し佇むと、静かに言葉を口にする。

 「あ……悪魔…で……良い―――」

 そう台詞吐くや否や倒れ込む犬なのは、それを見た犬フェイトと犬アルフが犬なのはに駆け寄ると
 犬なのはの体から白い煙が立ち上っており、その姿に犬フェイトの怒号が辺りに響く。

 「犬なのは!だからあれほど演出には拘らないでって言ったのに!!」
 「……死を………感じる………」

 犬なのはの体からは香ばしく肉が焼けた香りが漂っており、その匂いに思わず涎を垂らす犬フェイトであったが、
 すぐに気を取り直し頭を横に振っていると、犬アルフが犬なのはの様子を伺う為、体に手を伸ばすと焦りに近い表現で言葉を発する。

 「こっこれは本当に不味い!こんがりウェルダンじゃない!!」

 犬アルフの判断にまたもや涎を垂らす犬フェイトであったが、直ぐに拭き取ると犬なのはに抱きつき
 縋るような目つきをして犬アルフに目を向け問いかける。

 「どうしよ!私の嫁が!!」
 「落ち着いて!ノーブルよ、ノーブルエリクサーが必要よ!」

 しかも一つや二つではない、沢山の数が必要だと犬アルフは答える。
 ノーブルエリクサーとは貴重な薬草を元に調合する事で出来る回復薬で
 半死人の状態でも、この薬を飲めば全快するという代物である。

 話は代わり三匹の掛け合いを遠くで見ていたはやて達、するといきなり犬フェイトがシグナムに目を合わせ問いかけてきた。

 「アナタ!アナタなら持っているのでは?」
 「いや……私は持ち合わせ―――」
 「無いんですか!この戦闘狂ニート侍!!」

 犬フェイトの言葉に苛つきを感じたシグナムはレヴァンティンに手を伸ばすが、
 それを知ってか知らずか今度は犬アルフがシャマルに話しかける。

 「じゃあアンタ!アンタなら持っているんじゃないの!風の癒し手って呼ばれているんでしょ!!」
 「わっ私はそう言う薬品類は―――」
 「持ってないの?!気が利かないわね!だから何百年も行き遅れるのよ!!」

 犬アルフの言葉にカチンッと来たシャマルはゆっくりと糸を垂らし始める。
 しかし二匹は無視した形で今度は犬フェイトがヴィータに目を向け声を掛け始める。

 「ではそこにいる少女、アナタならどうです?」
 「アタシがそんなの持っている訳―――」
 「やっぱり持って無いんですか?この万年ロリババァが!!」

 犬フェイトの無慈悲な言葉に怒りを表しグラーフアイゼンを握る手が堅く絞られていく。
 そして今度は犬アルフがザフィーラに問いかける。

 「それじゃアンタはどうなのさ!同じ犬同士アンタなら持ってるんじゃないの?」
 「持っていない、それに俺は犬ではない!守護―――」
 「持って無いの?!役に立たないわね!だからアナタはリストラされたのよ、この負け犬が!!」

 犬アルフの痛烈な非難に怒りを覚えるだけでは無く、殺意すら覚え拳を握るザフィーラ。
 すると二匹は、はやてを見つめるなり話しかけてくる。

 「アナタはアナタなら持っているんじゃないでしょうか?」
 「そうだよ!なんたって部隊長なんだからな!」
 「んなもん、持ってる訳ないやろ」

 さらりとはやては答えると更に話を続ける、元々自分達はノーブルエリクサーを知らない
 知らない物を持ち歩いているハズがない、と告げると
 二匹は溜息を吐き、頭を抱えて苦しみ悶えるように暴れていた。 

 「なんて事!こんな無能な人間が部隊長だなんて!!」
 「こんな無能な人間が部隊長だなんて世も末だ!!」

 そう言って叩き込むように悪態を付くと二匹は、はやてを指差し声を合わせてこう述べた。

 『この!エセ関西無能部隊長が!!』
 「なっ……なんやとぉ~………」

 その言葉に堪忍袋がブチッとキレた音が辺りに鳴り響き、はやてはリインとユニゾンする。
 一方犬フェイトと犬アルフは犬なのはを依然として心配しており、駆け寄り声を掛けていた。

 「どっどうしよ~!私の嫁が!嫁がぁ~!!」
 「落ち着いて!きっと何か方法があるはずだよ!!」
  錯乱する犬フェイトに対し落ち着かせようとする犬アルフ、そして深呼吸を促すと二匹はその場で大きく息を吸う。
 すると犬なのはから漂う香ばしい匂いが鼻孔を貫き一気に涎を垂らす二匹。
 そして犬なのはをジッと見つめていると肩を叩かれるのを感じ、手で追い払うがそれが何度も繰り返され、嫌気を指した二匹は力強く払うと睨みつける。

 すると其処には冷めた目線を送るはやてとヴォルケンリッターの姿があり、流石の二匹も肝を冷やし懐で暖めていたあんパンを差し出し、土下座の形で許しを乞う。
 するとそれを見たはやてはゆっくりと二匹に近づき、膝を付き同じ目線で座ると二匹の頭を撫でる。
 二匹は自分達の行為を許してくれたのかと笑顔で顔を上げると、笑顔で迎えるはやての姿があり安心した途端、

 はやては素早い動きで二匹の顎を掴み取り、ミシミシと骨が軋む音が聞こえる程に締め上げる。
 その時、はやての瞳は最早怒りを超え殺意を超えた冷酷な…まるで深海のような深い色を表しており、
 その瞳に震え上がり漏らし始める二匹に、こう告げる。

 「そないおっかないんか?…せやけどもう遅いん…どれだけ命乞おうとも、もう遅いんや………もう…終いや」

 そう言って掴んだ顎を思いっきり突き飛ばすと二匹は地面を転がり、はやては立ち上がると直ぐに背を向け場を後にする。
 そしてはやてを護るかのようにヴォルケンリッターの面々が立ち並ぶと、
 徐々に二匹の間を詰めていき、二匹はお互いを抱き抱えるように震え上がっているのであった。



 …暫くしてヴォルケンリッターもまたその場を後にすると、其処にはこんがりと焼けた三匹がうつ伏せの状態で倒れていた。
 そして遠くでは犬ヴィータが三角座りのまま今までの光景をず~っと見つめており、思わずぼそりと言葉を口にする。



 「アタシだけ…仲間外れかよ……」



  そう言って三角座りのまま塞ぎ込む犬ヴィータであった。







 目次へ 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年08月08日 21:54