~おまけ~
此処はあらゆる時間・次元・事象を超越した世界セラフィックゲート。
故に様々な異形な生物が犇めいており、強者を今か今かと待ち望んでいる。
…これはひょんな事から強敵に出会った矢神はやての災難な物語である。
なのは達フェイト達が神の協力を得る為、転送された後では
白いチェアーに座り白いテーブルに置いてあるTカップを片手に寛いでいる姿がある、
機動六課部隊長矢神はやて二佐とリインフォースII曹長、そしてセラフィックゲートの案内人ディルナ・ハミルトンである。
なのは達が激戦を繰り広げている中ではやては紅茶を静かに飲み、リインはクッキーをかじっており、
クッキーをかじるリインの姿はまるでリスかネズミのような様を見せていた。
…後にはやては語る、今思えばこれはあの激戦への序章だったのかもしれないと……
はやては手にしているティーカップを静かに置くと小さくため息をはく、
今回の戦いに自分は参加する事は出来なかった、その事も辛いが、此処でただ祈って待っているだけと言うのも辛いものである。
そんなはやての心境を後目にリインとディルナは和気藹々とティータイムを楽しんでいると
リインはあるモノに気が付き指を差しながらはやてに問い掛ける。
「はやてちゃん!アレ何でしょう?」
「んあ~?…ありゃあハムスターやないか」
何故こんな所にハムスターが?はやては疑問を持ちながらも毛繕いをしている行動に癒しを感じ
ほんわかとしていると、この感情を共有しようとディルナに呼び掛けると……
……其処には真っ青な顔をしたディルナの姿があった……
それだけではない、頬には冷や汗を垂らし少し震えてもおり、はやてはディルナの様子を心配すると
まるで有り得ない事が有ったかのような険しい形相で立ち上がりハムスターを指差す。
「何故!何でいるの!!“封印石”の効果があるハズなのに!!!」
ディルナの口から“封印石”と言う聞き慣れないフレーズを耳にしたはやてはディルナに問い掛けるとまずセラフィックゲートの仕組みから説明するディルナ。
このセラフィックゲートに訪れる者には二通りある、一つははやて達のように力を借りる為、もう一つは腕試しである。
腕試しの方は本来の形であればいいのだが、力を借りる者には厳しい環境な為
“封印石”と呼ばれる水晶玉の力を使い、訪れる者に合わせて世界を変化させているという。
今回使用した封印石はeasy.modeと呼ばれる物で、これによって強者を封印、建物内も簡易化し試練のみのセラフィックゲートとなっていると説明を終える。
此処からが本題である、今目の前にいるハムスターは“本来の姿”のセラフィックゲートに存在する生物で、
封印石の効果によって封印されているハズなのである。
だがハムスターの体は小さい、もしかしたら建物内の隙間に入り込み、難を逃れた可能性があると震えながら語る。
しかしはやては未だに腑に落ちない点があった、それは今目の前にいるハムスターの事である。
ハムスターにはディルナが恐れるような印象が感じられず、むしろ可愛らしい印象の方が強いのである。
警戒しすぎなのではないのか?そう思ったはやては警戒心無く近づき手を差し伸べるとディルナが止めに入る。
「危ないです!!」
「そない言われてもなぁ…大丈夫そうに見えんけどな」
そういって指しのばした手で触れようとした瞬間、強烈な衝撃がはやての頭に響き吹き飛ばされテーブルに激突、
そしてはやての身を案じてリインが近付くと、はやての頬に小さな足跡がくっきり付いていた。
するとディルナの震えが更に酷くなり顎をガタガタ鳴らしながら言葉を口にする。
「まっままままさか!こっ公太郎!!」
公太郎…それは目の前にいるハムスターの名で、ハムスターの中のハムスター、ハム☆スターと言っても過言ではない存在なのである。
その余りにも違う次元の存在に慌てふためいている中ではやてがゆっくりと起き出す。
公太郎…この存在が此処に居座られては、帰ってきたなのは達にも被害が及ぶかもしれない…
しかし公太郎と自分にはかなりの実力差があるだろう、
それでも追い返すぐらいは出来るはずだ!…そう自分を鼓舞するとリインとユニゾン、
公太郎と対峙すると今まで震えていたディルナが、はやての覚悟に呼応するように立ち直り手を貸すと弓を構えた。
そしてまずディルナが牽制とばかりに矢を放つが、すり抜けるように回避され、はやての懐に入ると右前足を振り抜く。
しかしはやてはプロテクションとパンツァーシルトの多重障壁で受け止めるが、
簡単に砕かれはやての頭上から公太郎の尻尾が振り下ろされる中を、はやてはフェアーテにて後方へ回避、
すると公太郎の尾撃が床に接触すると激しい音と衝撃が発生しクレーターが生まれていた。
そのクレーターを見てはやては青ざめた、あんな一撃を頭に貰えば熟したトマトのように一瞬にして潰されてしまう。
最初の一撃はまさに挨拶程度であったのか…頬に冷たい物がつたる中で
公太郎がはやてに迫る瞬間を狙って矢を放つが、体を右にひねりながら矢を回避、
そのまま右前足振り下ろすとはやてシュベルトクロイツを剣に変え受け止める。
すると刀身が燃え始め紫電一閃を振り抜くが、公太郎はギリギリで回避しバク宙しながら床に着地する。
すると公太郎は一つ舌打ちをするとだだをこね始め、それを見たはやて達はほんわかとした表情を見せていると
一瞬にして公太郎は目をギラつかせ落ちていた石を投げつける。
石は風を切る音を奏でながらはやての耳を掠め、
それによって我を取り戻したはやて達は大量のブラッディダガーを発射、ディルナもまた大量な矢を放ち
二人の攻撃はまるで雨のように公太郎の頭上に降り注ぐが、縫うように回避しながら後方へと移動、互いに距離をとるのであった。
このままでは埒があかない、しかし相手は小さくすばしっこい為に攻撃が当たらず、どうしたものか考えていると
公太郎は何かを呼び寄せるように手をこまねいている、すると大量のハムスターがまるで覆うように押し寄せてきた。
その光景に危機感を感じた二人は逃げまどうとディルナが慌てるように叫ぶ。
「これはカモンレミング!!」
「なんやそれ?!」
はやては逃げまどいながらディルナに問い掛けるとディルナもまた逃げまどいながら説明を始める。
カモンレミングとは仲間のハムスターを呼び出しフルボッコする極悪技で、この技の餌食になった強者は数知れないと簡単に語り終える。
その間にも二人の後方ではハムスターが更に増え追いつきそうな勢いで迫ってきており、
このままだと危険だと感じたはやてはディルナの手を握り上空へと避難する。
「あっ危なかったわぁ~」
はやては上空で肝を冷やした様子で言葉を口にすると床一面はハムスター一色に染まり
その中央では公太郎が激しい怒りの表情で見上げ一つ舌打ちをする。
公太郎の様子にはやては挑発を促し反撃とばかりに杖を向けると
公太郎は何かひらめいたように手のひらをポンッと叩き尻尾で何かの合図を出す。
すると埋め尽くされたハムスターの群れが徐々にうねり出し、波のようになると
潮が引くようにハムスターが集まり、はやて達がいる上空より更に高い巨大な津波となって押し寄せてきた。
「なっ?!卑怯やで!!」
はやての吐き捨てるような抗議も空しく、巨大なハムスターの津波ははやて達を飲み込み
それを見上げていた公太郎は勝利の笑みを浮かべていた。
しかしそれはすぐにも消え去る、なぜならはやて達を飲み込んだハムスターの津波は凍り付き始めていたのだ。
そして完全に凍り付くと粉々に砕け、まるで粉雪のように辺りを降らしその中央でははやてが杖を突き上げていた。
はやてはハムスターの津波に飲まれる瞬間、アーテム・デス・アイセスと呼ばれる氷結系の広域攻撃魔法を撃ち込んだのである。
「小動物がぁ!!粋がんなや!!」
はやては吐き捨てるかのように悪態を付くとシュベルトクロイツをハンマーに変えディルナを連れたまま公太郎の下へ向かい振り下ろすが
公太郎は跳ねるように後方へと回避、そしてカモンレミングによってまたもや大量のハムスターを呼び寄せる。
「舐めんな!人間マップ兵器と呼ばれた私に数で勝てるんと思っとんのか!!」
そう叫ぶとシュベルトクロイツを杖に戻し床を叩き鋼の軛を打ち出し流れを止めようとするが
その上を乗り越えてハムスターは迫り今度はソード型に変え炎に包まれると振り抜き火龍一閃を放ち焼き払う。
しかしこんがり焼けたハムスターの屍を更に乗り越え迫り、今度は杖に戻してアーテム・デス・アイセスを撃ち抜き凍り付かせる、
それでもなおハムスターは凍った屍を乗り越えて迫り、今度はフレースヴェルグを三発撃ち抜き、
ハムスターを屍の山にすると事でカモンレミングを積止める事に成功した。
するとハムスターの屍の山から公太郎が飛び出しはやてに迫ろうとしたところを、
ディルナが弓で牽制、公太郎の出鼻を挫くと
ハンマーに変えたシュベルトクロイツを抱えスレイプニールとフェアーテを併用して加速、公太郎にラテーケンハンマーを撃ち抜き
ハムスターの屍の山を吹き飛ばす程の衝撃が辺りに木霊した。
「ハァハァ……やったか?……」
流石のはやても多数の広域魔法を使った為、肩で息を切らしながら呟くとハンマーの下では両手で支える公太郎の姿があった。
そして公太郎はハンマーを押し返し吹き飛ばすとはやての腹部に一撃、はやては血反吐を吐いて気絶するとトドメを刺そうと再度飛びかかる。
その時である、公太郎に潜む野生の感が背後に敵がいると呼びかけられ、振り向くと其処には誰もいなかった。
…まさか気のせいか?イヤしかし、先程から強烈な殺気が辺りに満ちている…
すると耳元で畏怖の念が込められた言葉が入ってくる……
「…あまり…調子に乗らないでください……」
すると公太郎は頭の先から尻尾まで全身が硬直していくのを感じ、額には脂汗をかいていると、
はやてが気が付き腹部を押さえながら起きあがる、そして目の前には隙だらけの公太郎がおり、ディルナは声を荒らげる。
「今です!はやてちゃん!!」
はやては自分が気絶している間に何が起きていたのか分からないでいるのだが、
目の前にいる公太郎はピクリとも動かずいる為、確かにディルナの言う通りチャンスと考え攻撃に移る。
そしてはやてはラグナロクの準備に入り、三角形の魔法陣の三点に魔力が集まると一斉に発射
ラグナロクは公太郎に見事に直撃し、流石のはやても膝を付き限界と言った表情を表していた。
すると着弾地点から一つの影が姿を現す、それは公太郎である。
はやては一つ舌打ちをするも、もはや杖にしがみつく位しか体力が残されていない為
覚悟を決めた様子で睨みつけると、公太郎は左前足を差し出す。
公太郎のいきなりの謎の行動に首を傾げるも、はやてもまた手を伸ばすと
公太郎からひまわりの種を貰い受ける、ディルナ曰わくどうやらはやての力を認め更に信頼の証として渡したいらしい。
はやては公太郎からひまわりの種を受け取ると、公太郎は何処かへと消えるようにこの場から去ると、
どっと疲れが出たのかその場で倒れ眠りにつくはやて。
…そして暫くして神との契約に成功したなのは達が現れるのであった……
最終更新:2009年09月06日 08:17