「アストラル生命体! なのはから離れなさい!」
『何だ? お前等オレが今体として使ってる女の仲間か!? アッハッハッハッハッ!!
だとしたらますますコイツからは離れられねぇなぁ! ま、元々コイツにはすげぇ力があるから
どっちにせよしばらくは離れるつもりは無いけどなぁ!』
「く…外道め…。」
『ハッハッハッ! 残念だったなぁ! そいつはオレにとっちゃぁ褒め言葉だぜ!
なんてたってオレァデビルだからなぁ! グヒャヒャヒャヒャヒャ!!』
「こらぁ! なのはの姿でそんな下品な笑い方するな!」
デビルの所業にユーノとフェイトは共に怒った。そしてユーノがディレイドバインドを行い、
魔法陣から現れた鎖がデビルなのはを雁字搦めにする。
『ん!?』
「なのはごめん…ちょっと痛いと思うけど…。」
ディレイドバインドによって身動きの取れなくなったデビルなのはに対し、
今度はフェイトがバルディッシュザンバーを振り上げて飛び上がった。
「おお! ビームサーベルだビームサーベルだ!」
「鈴木の奴が見たら喜びそうだな!」
フェイトのバルディッシュザンバーから伸びる魔剣に対し、クロとミーくんは
それぞれその様な感想を述べていたが、そんなちょっとギャグっぽい所があるのもつかの間、
デビルなのははディレイドバインドを強引に突破し、それどころか
バルディッシュザンバーの刀身さえも片手で受け止めていたでは無いか。
「何!?」
『お前…そんなにまでして取り戻したいのか? オレが体として使ってるこの女を
返して欲しいのか? 絶対返さねぇよ!! バーカ!! バーカ!!』
デビルなのははフェイトをあざ笑い、愕然とするフェイトに対し、
至近距離からデビルディバインバスターを発射した。
「キャァァ!!」
とっさに防御魔法を行ったとは言え、そのダメージは凄まじい。
フェイトは忽ち剛同様に遠くに吹っ飛んで行ってしまった。
「あー! フェイトがー!! くそっ! なのは…君は本当に悪魔に
身も心も乗っ取られてしまったと言うのか!?」
『そんな事言ったって無駄だぜボーヤ! コイツの体は完全にオレの支配下にある!
コイツには何も出来ねぇよバーカ!! グヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!』
「だからなのはの姿でそんな下品な笑い方するなって!」
しかし、ユーノには何も出来なかった。ただでさえ強いなのはがデビルに身体を乗っ取られて
しまったのだ。完全にデビルの支配下に置かれた今のなのはは躊躇無く人を撃つ事が出来るだろう。
現にデビルなのはは笑いながらもデビルレイジングハートの先端をユーノに向けていた。
『さぁて…そんじゃぁ地獄を見てもらうぜぇ!』
「くっ!」
ユーノは防御魔法を展開しようとした。だが、それより先にクロとミーくんの
ガトリングガンの弾丸がデビルなのはの防御魔法に着弾していた。
「何か良くわかんねぇが…デビル!! お前の相手はオイラ達だろうが!!」
『ああそうだったねぇクロちゃん? だから一緒にまとめて相手してあげるよ!!
デビルアクセルシューター!!』
デビルなのはのデビルレイジングハートから弾丸状の魔砲が多数発射された。
ホーミング性を持ったそれは逃げるクロとミーくんを確実に追尾していた。
「くそっ! 奴が乗り移ってる女の技のレパートリーは底なしか!?」
「まったく恐ろしい奴だな!」
『さあさあ逃げろ逃げろ! グヒャヒャヒャヒャヒャ!!』
「やめろ! なのはぁぁ!!」
ユーノの叫びも空しく、クロとミーくんもまた魔弾の餌食となってしまった。
「ああ! 猫がー!! くそ! 何故こんな事をするんだ!?」
『あいつ等にはオレ個人的な恨みがあってねぇ…ま…そんな事はお前にゃ関係無い!
どっちにせよお前も一緒にあの世に行ってもらうからなぁ!』
デビルレイジングハートがユーノへ向けられた。
『地獄の責め苦が待ってるぜ!! デビルエクセリオンバスター!!』
デビルなのはが躊躇無く発射したデビルエクセリオンバスターは忽ちユーノを飲み込んだ。
『これで終わったな!! グヒャヒャヒャヒャヒャ!!』
炎の海と貸した粗大ゴミ投棄場を目にし、デビルなのはの笑いが響き渡る。
しかし…
『グヒャ!?』
炎の中にかすかに人影が見える。そして炎の中から何事も無かったかのように
ユーノが一歩一歩近寄って来た。
『何!? アレに耐えたのか!?』
確かに防御に定評のあるユーノ=スクライアであるが、いくらなんでも
デビルなのはの攻撃に耐えられるとは思えない…はずなのだが…なんと耐えていたのである。
そしてユーノは一歩一歩デビルなのはに歩み寄って来た。
『な…何をする気だ!?』
この意外な行動にデビルなのはは一瞬戸惑った。何か構えているワケでも無く、
攻撃の為に急接近するワケでもない。ユーノはただただ一歩一歩デビルなのはに
歩み寄るのみ。冷静に考えれば隙だらけなはずなのだが…この意外な行動が
逆にデビルなのはを戸惑わせていた。
『な…何だ!? 何が狙いだ!?』
デビルなのはは不可解な行動を取るユーノを脅かそうとデビルレイジングハートを
振り上げるがユーノは臆せず、あっという間にすぐ正面にまで近付いていた。そして…
次の瞬間、甲高い音が周囲に響き渡った。
『な…。』
デビルなのはは一体何が起こったのか分からなかった。
ユーノの平手打ち。それがデビルなのはの頬を叩いていた。
「なのは…君はその程度だったのかい? ワケの分からない物に身体を乗っ取られて
なすがままにされるなんて…なのは…君はそれで良いのかい?」
ユーノの目からは涙が滝の様に流れていた。
『ワケの分からない物じゃねぇ! 俺はデビルだ! ってうっ!!』
次の瞬間またもユーノの平手打ちがデビルなのはの頬を叩いた。それも反対側の頬を…
『な…何を!?』
「まだ目が覚めないのかい? なのは…。」
またユーノの平手打ちがなのはの頬を叩いた。
『だから貴様何をする!! って!!』
またまたユーノの平手打ちがなのはの頬に叩き付けられる。
「なのは…まだ目を覚まさないのかい? なら僕は何度でも僕は叩くよ。
なのはが目を覚ますまで何度でも叩くよ…僕は…。」
そう言ってユーノは再び手を振り上げるが…
『いい加減にしやがれこのガキ!! 手ぇ食いちぎっぞ!!』
デビルなのはの口が大きく開き、鋭い牙がユーノの平手に襲い掛からんとしたその時であった。
「おいおいデビル! お前の相手はオイラ達だろ!?」
『!?』
そこにはミーくんの頭部が胴体部分になっているクロの姿があった。
ミーくんの体内には「悪魔のチップ」と呼ばれる特殊なコンピューターチップが搭載されている。
このチップの力によってミーくんはありとあらゆる機械を取り込む力を持っている。
これによってミーくんは既に破壊された機械の残骸や、その辺を走ってる車から
強引に部品を奪ったり等して新たなメカを作り出す事が出来た。
そして今、悪魔のチップの機能の応用によってクロ自身と合体していたのである。
「そこをどきやがれ妖怪イタチ男!!」
「誰が妖怪だよ!!」
フェレットもどきとは言われても流石に妖怪呼ばわりはユーノも初めてでカチンと来ていたが、
悪魔のチップの力によってそこら辺のスクラップから作り出した
重火器を両腕に備えた合体クロミーはデビルなのはに対し撃ちまくった。
「わー!!」
悲しいかな、あれだけデビルなのはに平手打ち何発も入れときながら
ユーノは爆風に巻き込まれてどっか飛んで行ってしまった。
しかしそれでも合体クロミーは砲撃を続ける。どうせ並大抵の攻撃は防御魔法によって
防がれてしまうのだ。ならばその防御力以上の攻撃を叩き込むしかない。
「オラオラオラオラオラオラオラ!!」
なおも合体クロミーの砲撃は続く。周囲に爆発音が連続で響き渡り、大量の爆煙が上がる。
そして爆煙をかきわけながら全周囲防御魔法で身を守ったデビルなのはが現れる。
どうやら連続重火砲撃は全て防がれてしまった様子である。だが、合体クロミーの攻撃は終わらない。
「まだまだぁ!!」
長剣を振り上げてデビルなのはに飛びかかる。しかしその斬撃もデビルレイジングハートに
よって受け止められてしまった。
『接近戦なら勝てると思ったか!? グヒャ!!』
今度はデビルなのはがデビルレイジングハートを振り上げて襲い掛かり、
合体クロミーが長剣で受け止める。だがデビルなのはの猛攻は終わらない。
「くそ! 合体したオイラ達が押し負けるなんて!」
『どうしたどうしたクロちゃ~ん!?』
デビルなのはは恐ろしいパワーで合体クロミーを押し退けて行く。が、その時一瞬デビルなのはの動きが鈍った。
「やめろなのは! もうこれ以上は…。」
『ん!? さっきの小僧か!?』
何かいつの間にか戻って来ていたユーノが背後からディレイドバインドで
デビルなのはを雁字搦めにしていた。しかしパワーの差が絶対的なのか、動きを完全に止めるに至らない。
『そうれ! そんな物でオレを止められるかよ!』
「うわぁ!」
デビルなのははディレイドバインドによって雁字搦めにされたまま、逆にユーノを振り回し、
その挙句に合体クロミーと鉢合わせにしてしまった。
「アイタタタタ…。このイタチ野郎め! 脚を引っ張りやがって…。」
「ごめん…。」
合体クロミーはサイボーグ故に頑丈であるし、ユーノもとっさに防御魔法で
自身の身を守って致命傷にはならなかったが、双方が一塊になったこの状況は
デビルなのはにとって一網打尽に出来るチャンスだった。
『さぁて…そろそろ終わりにしようか?』
「うわぁ! やっべぇ!」
デビルレイジングハートがどす黒く発光し、その先端が合体クロミーと
ユーノに向けられていた。
『地獄永遠の旅ご招待!! デビルエクセリオンバスター!!』
「ヒイイイイ!!」
合体クロミーもユーノも自身の最期を覚悟した。なのはの魔砲はその破壊力とは裏腹に
人体に対しての殺傷能力は無いと言う不思議な特性があるが、デビル化した今の
なのはの魔砲にもその効果があるとは思えない。もはやこれで終わりか…
そう思われたその時、突然デビルレイジングハートの先端がデビルなのは本人に向けられた。
『え!? グギャァァ!!』
デビルエクセリオンバスターがデビルなのはの顔面に着弾し、忽ち吹っ飛ぶ。
それには合体クロミーもユーノも呆然としていた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年08月14日 17:15