ヴィータが家でくつろいでいるとはやてがやって来た。
「ヴィータ、ちょっと頼みたい事あるんやけど良いかな?」
「何だいはやて?」
人から命令されるのはあまり好きではない(多分)ヴィータであるが、
主である八神はやては別。むしろはやての為なら例え火の中水の中な程だ。
だからこそヴィータは快くはやての頼みを聞いた。
「実は和菓子を買って来て欲しいんよ。けど、それは何処にでも売ってる様な
和菓子やあらへん。「まねきねこ商店街」って所にある「庵衣堂」って
和菓子屋に置いてある「ぷちこ焼き」って和菓子や。それが何でも
それが凄い美味しいらしくてな、是非食べたいんよ。」
「わかったよ! はやての為なら何処にだって行くよ!」
とまあ、こうしてヴィータはまねきねこ商店街に行く事になった。

「ここがまねきねこ商店街か~。」
電車を幾つか乗り継いで、ヴィータはついにまねきねこ商店街までやって来た。
それにしても…このまねきねこ商店街は海鳴市とは雰囲気が全く違っていた。
入り口には猫の看板が立っているし、道路には猫の足跡の様な模様があり、
街灯も猫の脚の形をしている。挙句の果てには空に浮かぶ雲さえ猫の形をしている。
商店街全体が猫だらけと言っても過言では無い。
だが、それ以上に問題なのは商店街の住人そのものだった。
まともな「ヒト」が殆どいない。これは決して変な人間ばかりとかそういう問題では無い。
大半がヒトでは無いのである。二足歩行するクジラやらヤギの郵便屋やら、
ゴリラのバナナ売りやらの獣人(?)の様な住人などが目に付くし、
他にも何とも説明のし難い不思議な生命体があちこちを徘徊している。
「な…なんだここは…本当に海鳴市と同じ地球なのかここは…。」
ヴィータは驚愕し、早くも挫けそうになってしまっていた。
確かにヴィータだって時空管理局の仕事で色んな世界を飛びまわって
それぞれの世界特有の多種多様な生命体を目の当たりにしている。
しかし、ここは地球だ。はやてに仕える様になってからヴィータだって
地球に関しての事をTVや本からの事とは言えある程度は学んでいる。
だからこそ、まねきねこ商店街は本当に同じ地球…と言うか日本の街なのか?
と考えてしまう。それだけ海鳴市と余りにも異質過ぎる空間だったのである。
まねきねこ商店街そのものは至極平和で、むしろ安堵さえ感じる程だが、
その街に住んでいる不思議な生命体が余りにも不可解で、ヴィータは
むしろこの街からカオスさを感じてしまっていた。
「は…早い所お使いを済ませて帰った方が良さそうだ…。でも…庵衣堂って…何処だ?」
まねきねこ商店街までやって来たは良いが、目的地である庵衣堂の場所が
ヴィータには分からない。これは困った。が、そんな時…
「ほにょ~…お前、見ない顔だにょ~。」
「ん?」
ヴィータの目の前に一人の女の子が立っていた。
鈴の付いた白い猫の帽子、猫の手袋と靴、白と紺のメイド服を着用した
黄緑色の髪の毛の10歳くらいの女の子。その子がヴィータの顔をじ~っと見つめていた。
「じ~…。」
「な…何だよ…。」
ヴィータの目を興味深く見つめているその女の子に対しヴィータも睨み返す。
が、その女の子は全く動じていなかった。
「お前…商店街の外から来たのかにょ~?」
「そうだよ…悪いかよ…。」
「もしかして迷ってるのかにょ?」
「…。」
ヴィータは一瞬黙り込んでしまった。それに気を良くした女の子はニヤリと笑みを浮かべた。
「図星かにょ? 図星ですかにょ~?」
「ち…違う! 迷ってなんか無い!」
「恥かしがる事無いですにょ~。まねきねこ商店街は狭いようで広いですからにょ~。」
「だから迷ってないって言ってるだろ!?」
まるで人を小馬鹿にしたような女の子の含み笑いに、ワリと短気な方のヴィータも
ついついムキになってしまう。それが女の子をますます面白がらせた。
「しょうがないですにょ~。それじゃあちょっくらでじこ様が案内してやりますかにょ~。」
「良いよ別に! そんなもんいらねぇよ!!」
ヴィータはそう言って女の子を突き放すが、その時の女の子は自分の全てを否定された様な
そんな悲しげな顔をしていた。
「酷いにょ…酷すぎるにょ~…、せっかくでじこ様のご厚意を断るなんて酷すぎるにょ~…。
もう怒ったにょ!! 目からビーム!!」
「え!? ギャァァァァァァ!!」
何と言う事か、女の子の目から黄色い怪光線が放たれたでは無いか。
このヴィータにとって余りにも意外すぎる展開はヴィータの勘を一瞬鈍らせ、
防御魔法を展開する事も出来ずに直接怪光線を食らってしまった。
そして大爆発の末に数十メートル先の地面に叩き付けられてピクピク痙攣してる
ヴィータの所に女の子がトコトコとやって来た。
「これがでじこの必殺目からビームにょ。」
「な…な…何だ…お前は…。」
「デジキャラットにょ! でじこと呼ぶにょ! 遠い遠いデ・ジ・キャラット星から
地球にプリンセス修行に来た王女様にょ! これからでじこが特別にお前を案内してやるにょ!
光栄に思うが良いにょ!」
「お…お前…このせか…この星の人間じゃないのか…?」
いきなり聞いた事の無い星の王女様とか言われてしまってもヴィータには
チンプンカンプンだったが、とりあえずヴィータも騎士として自己紹介する事にした。
「私はヴィ…ヴィータだよ…。」
「ヴィー太? 何か男みたいな名前にょ~。」
「ヴィー太じゃなくてヴィータだ!!」
「ヴィータ? やっぱり変な名前にょ~。外人さんかにょ~?」
「お前に言われたかねーよ…。」
まあ何はともあれ、とにかくヴィータはでじこにまねきねこ商店街を案内してもらう事になった。

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最終更新:2007年08月14日 17:23