本に封印された世界、ルクレチアに突入した一行はバラバラの場所に転移され、
長距離念話が妨害されていたために集合までに随分な時間と魔力とカートリッジを消費した。
それぞれの飛ばされた先は、なのははどこかの村の草むら。シグナムは立て札の前。
ザフィーラは城の牢屋、鍵が無いので出られない。シャマルは城のテラス、戦闘力が皆無なので
隠密魔法を駆使しつつ震えながら膝を丸めていた。ヴィータは薬草の群生地。フェイトは
冬山にある小屋の前、クロノは寒い冬山にある墓の前。ユーノはなのはの尻の下で潰れていた。
省略
なのは達一行は魔王山の山頂で、ピュアオディオを激戦の末に打ち倒した。
セントアリシアの直撃を防いだザフィーラの両足が石化したまま戻らなかったり、
カートリッジの9割を使い果たしていたり、魔力がほぼ空っぽだったりと、一行はボロボロであった。
ピュアオディオと死体の山で築かれた決戦場が消え去ると、其処には神聖そうなアーマーに
身を包んだ金髪の騎士が項垂れていた。
「さ……とどめを……させよ」
と言われたものの、一同「めっそうもない」と全員一致で辞退し、そのまま放置して山を降りた。
また、騎士の温情だったのか、シグナムが勇者の山で見つけた聖剣を、
「貴公の剣だろう。返すぞ」
ついでに放置してきた。
長い階段を下りて、禍々しい石造が立ち並ぶ部屋まで戻ってきた一行。
「てっきりクロノ君は逮捕する! って言うと思ってた」
「そうしたいところだけど、新しく発見された管理外世界で、ミッドチルダの法律を適用するのは
色々面倒なんだ。そういうのは脱出法を探したあとにしよう」
話さないが、他の理由としては護送できる余裕がないとの判断があったりもする。
「脱出法か……やはりオディオと名乗っていた存在が鍵になるだろう。
あの騎士に憑りついていたオディオの様子は、闇の書に近い性質をもっていると感じたが」
ガツンゴツンと歩くたびに石化した両足が音を奏でるザフィーラ、もしも帰り道に魔物に
でくわしても禄に戦えないだろう。
「そうね、きっと魔王プログラムみたいなのが、このルクレチアにはあったんじゃないかしら」
戦闘中、ずっとハイスピードオペ状態だったシャマルもお疲れだった。
「ちぇ、魔物を掻き分けながら魔王探しか。気が滅入るな」眠たいヴィータ。
ともあれ、やばそうな相手には勝ったので、皆さん安堵の表情で気楽に歩いていた。
シグナムは不意に感じた冷気に首筋が総毛だつ。
温度に拠る物ではない、それはふきつける人の殺意。
「上だ、散れ!」
見上げれば人影が一陣、一瞬遅れて他の6名と一匹もその場から散る。
───跳躍剣技ジャンプショット───
全重量と加速を乗せた急降下からの一撃は床を砕き、砂塵を濛々と巻き上げる。
その煙が晴れた時、右手に聖剣を、左手にルクレチアの紋章が描かれた勇者の盾を、
両眼に鬼火を、背に憎しみを携えた騎士が一人。
「オディオを探す? ………フ、フ、フハハハハ、愚かだ。お前達は実に愚かだ。
そんなに知りたければ教えてやろう、オディオがどこにいるかを」
魔王の剣がゆったりと、惑わせるような軌跡を描く。
その流麗な煌きを思わず目で追った時、一同に猛烈な眠気が襲い掛かる。
───催眠剣技ムーンダウン───
「催眠術だ、剣から目を離せ!」
クロノの鋭い声で全員が正気を取り戻す。いや若干一名、ヴィータが見事に寝ていた。
シャマルが回復しても全く効果が無い。なので、
「ゲボッ!」シグナムが殴打を食らわせて叩き起こした。
「それは太古の昔。遥かな未来。あらゆる次元。あらゆる場所。あらゆる時代で、
戦いの火種となるものッ!」
魔王が大きく振りかぶり、瞬きよりも迅く振り下ろしていた。
魔力の一切こもらぬ剣であったため、離れた位置にいたなのはには素振りとしかみえなかった。
「Master!」レイジングハートの警告。
意識の外で自動防御が働き、魔力の盾が攻撃を防ぐ。
音よりも早く飛来したかまいたちは急造のバリアを貫き、なのはの髪を一房散らした。
───真空刃ソードビュー───
「それは人間が存在する限り永遠に消えぬ『感情』なのだ……
その感情の名を……『憎しみ』あるいは」
魔王は剣を正眼に構え、吠えた。
「オディオとよぶ!」
今回の惨劇は人間の感情から生まれたもの、人が生き続ける限り決して終わらない憎しみの調べ。
「それでは、魔王などいないと。黒幕なんていないというのか。
全ては人間の生み出した醜い幻想だと」
「そうだ! 勇者も英雄も魔王も悪も善も、何もかもが人間の創りだした下らぬまやかしだ!
自分では何もせず、不満ばかりを並べ、自身と無関係の事象には冷淡極まりなく、自らの無力を
不運だと嘆くばかりの屑ども、無慈悲と無関心の集合体、獣にも劣る愚物、それが人間の真実だ!」
人間を根本から憎みきるその姿は、まさしく魔王の寄りしろにふさわしい。
その姿は、どうしてだろう、フェイトには不思議と怒りに駆られた、母プレシアを思い起こさせた。
「貴公の意志は理解した。退く気がないのならば、降りかかる火の粉は払わせてもらう。
レヴァンティン、カートリッジロード」彼女の剣が猛々しい炎に包まれる。
「シグナムさん!?」
「無駄だ、いま必要なのは言葉ではなく、力だ。討たぬ限り奴は止まらん」
クロノが念話で指示を飛ばす。
「シグナム、フェイト、ヴィータは前衛だ、敵をひきつけてくれ。なのはは援護を。
僕がその間にエターナルコフィンを準備する、これなら落盤の危険は無い。
ザフィーラが中衛で広範囲防御、ユーノとシャマルが最後尾でバックアップだ。
さっきの戦いでみんな魔力、カートリッジ共に残り少ない。速攻で片をつける!」
「「「「「了解」」」」」
「……わかった」「しゃーねえな」
全員が遅滞なく行動に移るが、シグナムとヴィータの返答のキレが悪い。
ベルカの騎士である彼女達は、たった一人の騎士に集団戦を仕掛けることに乗り気にならないのだ。
対する魔王はこちらの様子を伺っているようだ。剣と盾を構えたその姿はまさしく御伽噺の
戦士さながらであり、暗黒騎士や魔王といった称号からは程遠かった。
ヴィータのシュワルベフリーゲン、飛び交う四つの鉄球が開戦の狼煙となった。
その隙を縫い、シグナムとフェイトが高機動で接近する、続いてヴィータも続いた。
「リリカルマジカル、福音たる輝き、この手に来たれ。導きのもと、鳴り響け。
アクセルシューター、シュート!」
レイジングハートから発した八つの魔力光のうち、四つが超低空を這うように突き進み、残り四つが
天上すれすれを飛翔する。シグナム達の攻撃を縫って援護するべく、なのは目を瞑り集中した。
「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ」
クロノが詠唱に入る、本来人間一人に使うような魔法ではない。範囲対象を失敗しようものなら
部屋にいる仲間もろとも永久凍土に封印しかねない危険な魔法だが、陸戦騎士を確実に捕らえるには
有効な手段だった。威力と範囲を収束するべく、通常よりも長いプログラミングを行うクロノ。
ザフィーラ、シャマル、シャマルの肩に乗ったユーノが、いくつかの援護魔法、防御魔法を事前に
準備し、トリガーを待つ。
魔王は向かってくる二人の騎士と魔導師、そして四方から飛来する鉄球を確認して、僅かに眉を
ひそめたのち、落ち着き払った動作で剣を振るった。
ほぼ一瞬のうちに四つの剣閃が奔り、鉄球はそれぞれ真っ二つに切断されて地に落ちる。
「紫電一閃!」
裂帛の気合と共にシグナムの炎の剣が振り下ろされる、迎え撃つブライオンの柄から炎が
螺旋状に巻き上がり、レヴァンティンに劣らぬ火炎の剣が生み出される。
ぶつかりあう炎と炎。剣と剣。両手持ちのレヴァンティンと片手打ちのブライオンが鬩ぎ合う。
シグナムと鍔迫り合いを行っている魔王の背後に回りこむフェイト。
横なぎにザンバーを打ち込むものの、魔王は予測済みであったらしく、シグナムにシールドチャージ
を行い、一歩前に踏み込むとバルディッシュの一撃を躱わしきった。
「いくぞ、グラーフアイゼン!」
前衛の三番手、ヴィータがドリル形態のグラーフアイゼンを振りかぶり突貫してくる。
フェイト、シグナムは巻き込まれてはかなわないと、一時はなれる。
魔王はかわしようがないタイミングと悟り、力を溜め込む。
「ラケーーーーーテーーーーン───「ハンマー!」パワー」
掛け声が重なりあう。ドリルの切っ先と、渾身の力を込めたみねうちが火花を散らす。
────鈍器技ハンマーパワー───
衝撃で双方が吹き飛ばされた。ダメージは両者なし。三人と魔王は一度距離を置く形となる。
そこへなのはの操るアクセルシューターが追いつき、三人はそれと併走しつつ同時に攻めかかった。
魔王は絶体絶命の危機を眼前にしながらも、いささかも揺るがない。
迫り来る魔力弾、剣、斧、槌をまとめて相手取るため、敵を目前にして円舞のごとき剣技をみせる。
───円殺剣技プラスリンク───
四方八方、上下左右、次々と迫る攻撃を盾と剣で捌き切る魔王。
一対多の戦闘に極めて慣れていなくては不可能な芸当だ。
攻めるシグナムたちは驚きを隠せない、管理局でもトップクラスの戦力が決め手に欠くこの状況。
先ほど頂上で戦った化け物や、かつての闇の書のような膨大な魔力を抱えている訳ではない。
剣士として積み重ねた修練、潜り抜けた修羅場の数、不動の精神、戦闘経験から得た先読みの力、
それらの、人間としての力だけで互角にやり合う敵の姿は、嫌悪よりも感嘆せしめるものがある。
如何に非道極まりない相手であったとしても、努力の足跡は認めざるをえない。
「何故だ、貴公の剣は正道だ、魔王の剣とは思えん!」
闇に紛れる者の剣ではなく、正々堂々と基本に忠実なまっすぐな太刀筋だとシグナムは感じた。
「そうだ。………私は、いかなる時も隠れず……堂々と……戦ってきた。
野で、村で、街で、大会で、王城で、魔王山で!」
昂ぶる感情をのせた剛剣がシグナムの右肩から股下に向けて振り下ろされ、
返す刀が今度は股下から逆の左肩へ。描き出した剣閃はちょうどVの字に酷似していた。
───剣技Vシャイン───
紙一重でかわしたシグナム、バリアジャケットの股下部分が切れ飛ぶ。
「魔物を、ごろつき共を、犯罪者を、武術者を、自称魔王を、国王を、追っ手の兵士を、親友を!
相手取ってきた! 一度も逃げず、怯まず、負けず、戦ってきた!」
連撃を加え、怯んだところへ踏み込み、更に横薙ぎの一撃。
───基本剣技カットワンウェイ───
しかしシグナムもまた一流の騎士、魔王のなぎ払いをパンツァーガイストを纏った鞘で受け止める。
そこへフェイトの背面からの奇襲、盾はヴィータに対応し、剣は今しがたシグナムに受けられ、
上体が泳いだ無防備な背中を晒している。
「テスタロッサよせ!」
それは誘いだった。
意図的に作られた決定的な隙、背面の敵を切り裂くために編まれた秘剣が真価をみせた。
最も遠い位置にあるはずのブライオンから銀の残像が生まれ、背後のフェイト目掛けて、
死の閃光となる。
────風葬銀閃ヘキサフランジ───
「フェイトちゃん!」
銀の残像剣はフェイトの太ももの動脈を貫き、夥しい出血を強いる。
苦痛をもらす余裕もなく、苦悶の表情で床に落ちるフェイト、そこへバックステップで移動した
魔王が首を刎ねとばさんと聖剣ブライオンを振り下ろす。
それを阻止すべく、残っていたアクセルシューター全弾が剣と右腕に集中する。
間一髪、シャマルとユーノの連携招喚転送が間に合い、なのはによって遅らされた剣は空を切る。
フェイトはシャマルの前に転送され治療を受ける。
戦線復帰はすぐには無理だろう。
「てめー! よくも!」
ハンマーフォルムを振りかぶり、力任せに叩きつける。対する魔王も再びハンマーパワーを放つ。
2度目の全霊のぶつかり合いは魔王に軍配が上がった、ハンマー部分ではなく柄の部分を狙い打つ
ことによって勝利したのだ。ヴィータは弾かれた衝撃を打ち消しきれない。
されど彼女もまたベルカの騎士。
衝撃を相殺するのではなく、それを利用して逆回転のエネルギーに変換する。
コンマ2秒でカートリッジロード、ラケーテンフォームに換装しながら再び襲い掛かった。
流石の魔王も意表をつかれ、しかもハンマーパワー後の硬直から抜けて切れていなかった。
剣では受けきれないと判断。剣と盾を手放すと床を転がりながら、ナニかをヴィータに投げつけた。
剣による攻撃に気を取れられていたヴィータは顔面に直撃をもらった。
「こ、こんなモンで!」
説明しようの無い、こんなモンとしか言いようのない投擲物でヴィータは攻撃を空ぶる。
ラケーテンハンマーの空振りの隙は大きく、魔王は懐に潜り込むと左のボディーブローをめりこませ、
追撃で捻りの効いた右ストレートを鼻っ柱にぶちこんだ。
「ゲボッ!」
体が軽く、しかも空を飛んでいたため、ヴィータは無重力で押されたかのように凄まじい勢いで
壁まですっ飛んでいった。
その時、丸腰の、剣と盾を失った魔王になのはは違和感を感じた。
何故だろう、彼の姿を何処かでみたような気がする。
一方魔王は、またもこんなモンをとしか言いようのない物体をシグナム、そして剣と盾を
吹き飛ばそうと再び生み出されたアクセルシューターにぶつけ、稼いだ時間で装備を取り戻す。
前衛で残るはシグナムのみ。
「訴える弱き人々のために……騎士の名誉のために……王の命のために……
ヒト
私を信じると言った女性のために……歓呼をもって送り出した民衆のために!」
奇しくも剣士と剣士。同じ得物を持つ武人が正対する。
「私は剣を振るったのだッ!」
疾風となって魔王は接近し、聖剣ブライオンがシグナムの首と胴を離そうと唸りをあげて迫る。
彼女は左手で剣に劣らぬ鞘捌きで斬刑を防ぎ、お返しのレヴァンティンを迅雷の速度で脳天に落とす。
すると魔王は盾で防ぐのではなく、一見して大道芸にすら見えるような剣技で迎え撃つ。
ブライオンは手を中心に真円の軌道を描く、ミキサーの刃と見紛うような危険な返し技。
手や足が巻き込まれれば、みじん切りは必至の超高速剣。
────反撃剣ミラードライブ───
キキキキキキンと澄んだ音と共にレヴァンティンが弾かれる。
体勢を立て直すために天井まで飛びずさるが、魔王は逃がすものかと、近場の巨大蛙の石像を
利用して三角飛び。得物を狙う鷹の如く、飛翔魔法に劣らぬ速度でシグナムに追いつく。
凶鳥は迸る殺意を乗せて、ジャンプショットを打ち込んだ。
滅多に見られない、陸戦騎士と空戦騎士の空中での交錯。
シグナムはかろうじて剣で防ぎ、頭頂から真っ二つにされることはなかったが、
重い一撃を防ぎきることは叶わず、ヴィータのところまでぶっ飛んでいった。
「ゲボッ!」
どうやら着地点にヴィータがいたようだ。
右ストレートとヒップアタックを喰らって伸びていたヴィータが身を起こす。
「今日はとんでもねー日だな。クロノの親父に追い掛け回されたとき以来だ」
「なんだ、覚えていたのかヴィータ?」
「はやてと暮らす前の記憶はあんま覚えてねーけど……前のマスターの時のことは、少し」
「もう私たちにリセットは無い。死んだらそれまでだ。
主を泣かせたくなければ生き延びるしかない」
ジト目でシグナムを見るヴィータ、なにやら不満があるらしい。
「じゃあさ、そんなすげーピンチだってのに、なんで笑ってんだよ?」
嬉しくてたまらないといった表情だったシグナムは、指摘されてようやく高揚感の正体に気づいた。
「そうか、私は喜んでいるのか」
「頭うったのか? 魔力もカートリッジも少ない、敵はつえー。ギガヤバじゃねーか」
「なに、自分より遥かに強い騎士とまみえた事が嬉しいのだ」
「ジャンキーだな………度を越えてる」呆れるしかないヴィータ。
二人が戦局に目を移すと、アクセルシューターとソードビューの壮絶な弾幕合戦と化していた。
前進したい魔王だが、あわよくば倒そうと考えていた先ほどとは違い、アクセルシューター徹底的に
時間稼ぎに終始することによって効果的な足止めを行っていた。
ソードビューは魔力を付与されていない自然現象。音速で飛来するかまいたちは人間の動体視力で
追える代物でもなく、シャマル達はザフィーラの障壁魔法、クロノはなのはのラウンドシールドで
ひたすら防戦に徹している。
一度、ザフィーラが鋼の軛。地面からの魔力の槍衾で攻撃も試みたが、軌道がモロばれの攻撃なので
さっぱり通じなかった。ただし、分かりやすい攻撃というのはフェイントに使いやすいので、
逆に相手の選択肢を阻害する形で、連携の一環で使えばいいのだ。とザフィーラはめげはしない。
魔王としては、クロノがとっておきを溜め込んでいることは容易に想像できたが、魔力弾が余りにも
煩わしかった、牽制と分かっていても死角から狙われる誘導弾は憂いが大きい。
また、一定時間ごとになのはがカートリッジを消費する様をみて、弾切れを狙っても良いかという
見込みも生まれていた。
そして焦らない最も大きい理由は、自負。
あの黒衣の少年がどんな魔法を持ち出しても切り抜けるという、強固な自信が魔王にはあった。
彼は負ける訳にはいかない。
もとより剣士としては一度たりとも負けたことはなかったが、魔導師相手ならばなおさらだ。
彼は最高の魔導師ストレイボウに勝ったのだ。ならば他の魔導師に負けてやる訳にはいかない、
絶対に。
論理的でない、自身でもよく解らない意地だった。
「ヴィータ、相手は足を留めている。ギガント級は行けるか? カートリッジがなければ渡すが」
「石像が邪魔くさくて振る場所がねー。
都合のいい場所があっても、よほどうまく当てねーと地盤が壊れっぞ」
「……カートリッジをくれ、隙をみてファルケンとシュランゲバイセンを試してみる」
「そうだな、奴には躱わしようのない攻撃か、面の攻撃の方が効くだろ」
むき出しの弾薬をシグナムに手渡すヴィータ、これでヴィータの残りは一発切りだ。
実のところ面の攻撃というならヴィータの火炎系の打撃があるのだが、かつてなのはにものの見事に
防がれて「悪魔め……」となったトラウマから、あの技に対する自信がなくなっていた。
今回も直撃させたとしても、炎の中から悠然と現れて「魔王め……」となる気がして仕方ないのだ。
「テスタロッサが復帰するな……」
フェイトの容態を遠目に確認してから、シグナムは念話に切り替える。
「ハラオウンがカウントダウンに入り次第、前衛組みで再攻撃をかける。
こちらの切り札を潰されるな!」
最終更新:2007年08月14日 18:18