目が覚めると、そこは見知らぬ世界だった。


 魔法少女リリカル☆なのは~NEXUS~

 第一話 『悪魔』


 闇の書事件。ロストロギア、『闇の書(夜天の魔導書)』を巡る事件から一年が経とうとしていた。事件の中心人物だった
少女、八神はやては今では自力で歩けるまでに回復し(もっとも、まだ激しい運動はタブーだが)、家族である魔導
書の騎士達も、管理局の保護観察を受けながらも彼女と平和な日々を送っていた。
 そんなある日の夜。
「今日はすき焼きやぁ。ヴィーダもお腹すかしてるやろなぁ」
「そうですね。あ、そうだ。帰りに皆のアイスを買っていきましょう」
「ええなぁそれ」
はやてと彼女の守護騎士の一人であるシャマルはゆっくりと鳴海市内を歩いていた。シャマルもまだあまり速く歩け
ないはやてに合わせて気持ちゆったり歩いている。荷物は二人で半分ずつ。全部持つと言うシャマルをはやてが説得
して、半分ずつにするのは何時ものことだった。
 ふと、はやては空を見上げた。頬に当たった冷たい感触。雪だ。またふわふわと降りてくる。
「……雪やなぁ」
「……そうですね」
二人はしんしんと降る柔らかな雪をしばらく見つめ続けた。彼女達にとって、雪とは特別な意味を持つものだから。
「(リィンフォース……今どこにおるんやろなぁ)」
 一年前に旅立っていった一人の家族のことを思い、はやては少しだけ微笑んだ。
 刹那、夜空を白い光が掠めた。
「あれ?流れ星?」
はやてが言った。シャマルもつられてそれを追う。だがその光が輝いたのは一瞬。もう見えるはずも無かった。
「願いこと、しましたか?」
「そんな余裕、あらへんよ」
「ほないこか」はやてとシャマルは手を繋いでその場を後にした。

「(今の光、本当に流れ星やったやろか……)」
 心中、はやては首を捻っていた。今の光は魔導師が飛行する時に残す魔力の残光にも見えたからだ。

 闇の書事件から一年が過ぎようとしていた十二月一日。一人の青年が漂着しているのが発見されて市の病院に運ばれ、
その明朝に行方を眩ましてから一週間後のことだった。

砂漠に覆われた世界。かつて、フェイト・テスタロッサ(現フェイト・T・ハラウオン)とはやての守護騎士、シグナムが
激突したこの地で今、管理局の精鋭達は己らの知る存在を遥かに超えたモノと交戦していた。それは静かに、しかし
確実に彼らに死を運ぼうとしている。
「く、くそぉっ!」
彼らとて管理局の精鋭。その強い自負があった。故に彼らはここで判断を誤る。
 逃げておけばよかったのだ。形振り構わずに。この中の誰一人として、それに敵うはずがなかった。
「消えろぉっ!」
一人の魔導師が破れかぶれに魔道杖を振るった。他の魔導師もそれを見て、何とか自分を奮い立たせて『ソレ』に
立ち向かった。同時に繰り出される砲撃魔法。青の光の爆発が『ソレ』を吹き飛ばした。
「なっ!?」
 かに見えた。あれだけの砲撃を受けたというのに、『ソレ』は確かに自分の足で立っていたのだ。
「こんな……馬鹿なことが……」
 恐怖を一気に通り越させられて、絶望の底辺。その巨体が、彼ら管理局魔導師の自信と意地、全てを砕いて捨てた。

 それは確かに人の形をしていた。しかし人ではない。
 まず大きさが違う。それはまるで大型の傀儡兵のよう。
 そしてそれは仮面を被っているようだった。人でいう口の部分の輪郭が、まるで笑っているようで。しかしその
微笑みは優しげでない。この世全てを哂うような皮肉げな微笑。頭頂部からは角のように突起が生え出ていた。
 胸には黒い水晶体。
 全身を覆う黒と赤の斑なツートン。それはかつて、ある世界でこう呼ばれていた。

 悪魔―『ダーク・メフィスト』と。

『下らん、これがお前達、魔導師とやらの力か』
地の底から響いてくるような低い声。戦う意志をすっかり失っていた局員達をさらに追い詰める。彼らに許されることは
ただ震えることだけである。
『まあ良い。最初からお前達には期待などしていない。人間の身で、私に対抗し得るはずがないのだから』
ダーク・メフィストは腕を胸の前で交差させた。その両腕に集う紫紺の妖光。炸裂音を発しながら増してゆくその光を前に
しても、優秀なはずの管理局員達は身動き一つ取れなかった。あまりにも大きな力の壁を前にして、心と身体が麻痺してし
まっていた。やはり彼らに残された道はただ死を待つことのみ……―


『諦めるな』
 世界に、希望の光が射した。


 ここが何処なのか、分からない。自分に残されたこの力が何を意味するのか分からない。あの時、確かに感じた
はずだ。自分からあの溢れる力が抜けていくのを。だというのに今、身体を満たしているのは失ったはずの光の力。
 一体何故?何の為に?この力はあるというのだろう。それはまだ分からない。それでも……。

「この力が有る限り、俺は退かない」
 姫矢准は、再びエボルトラスターを天に振り上げた。贖罪の戦いはもう終わったのかもしれない。それでもまだ
宿命が告げていた。戦い続けろと。砂塵舞う地に降り立ち、立ち上がる銀(しろがね)の巨人。眼前に立ち塞がるの
はかつての強敵。それに向かって彼の戦士は立ち向かう。

 ウルトラマンネクサス・アンファンス、降臨。


ED『英雄』


次回予告

 傷付き、倒れるウルトラマン。
『所詮は光の残り滓。お前にはやはり、輝く力は残されていなかったということだ』
 再び闇を彷徨う姫矢。
「堕ちて来いよ姫矢。闇は、悪くないぜ」
「俺はお前とは違う!」
 そして管理局も強大な敵の対応に追われることとなる。
『黒い巨人、鳴海市上空に出現!』
「なのはさん!フェイトさん!急いで!」

 三人の魔法少女VS闇の巨人。
『人の身で、私と戦おうというのか』

 次回、魔法少女リリカル☆なのは~NEXUS~ 
 第二話『暗黒』

「スターライトぉ!」
「プラズマザンバーぁ!」
「ラグナロクっ!」

『ブレイカー!!!』

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最終更新:2007年08月16日 09:13