「あの子のことか  ああ知っている 」
「話せば長い そう 古い話だ 」
「知ってるか?魔法術式は3つに分けられる。
近代ベルカ、 古代ベルカ、 ミッドチルダ この3つだ。  あの子は――」


彼は『片羽の妖精』と呼ばれた傭兵 『白い悪魔』の相棒だった男

よう相棒 いい眺めだ ここから見れば どの世界も大して変わらん
私は『魔神』を追っている 

あれは雪の降る寒い日だった

NANOHA COMBAT ZERO the velkan war


『エリアB7R』で大規模な戦闘!
援軍か? どこの隊だ!
ガルム隊へ 撤退は許可できない
だろうね おこづかい上乗せよ
こちらマジシャン隊 可能な限り援護すんで
結界なら 俺に届かないところで頼む

ベルカ戦争には謎が多い
誰もが正義となり 誰もが悪となる
そして誰が被害者で 誰が加害者か
一体『平和』とは何か

ベルカ戦闘機接近 全機撃墜し、制空権を確保しろ 玄関でお出迎えだ
デバイス狩りだ
結界の鳥だ! 油断すんな
結界がなんだ 俺がやってやる!

空戦にルールは無い ただ敵を落とすだけ
この戦いは どちらかが落ちるまで終わらない
受け入れろ 小娘 これが戦争だ
管理局の犬が! 撃てよ 臆病者!

生き残るよ!なのは!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
彼は 『片羽の妖精』と呼ばれた傭兵
私が追う 『ある人物』の元同僚

10年前世界を巻き込んだ戦争があった
―『ベルカ戦争』
その空に軌跡を描き歴史から消えた戦闘機乗りがいた
畏怖と敬意の狭間で生きた一人の傭兵
私は『彼女』を追っている

そして『片羽』の言葉で物語の幕は上がる

あれは 雪の降る寒い日だった

<1>凍空の猟犬 ―Crossbow―

《こちら基地司令部 全機あがったようだな ガルム隊、現在の方位を維持せよ》
《報酬は きっちり用意しとけ》
《互いが無事であればだ》
《お財布握りしめて待ってろよ》
新しい相棒とロクに挨拶する暇も無く空に上がるとは、俺もつくづくツイていない。
ピクシーは軽く溜息をつくと、隣を飛んでいる新しい同僚とその機体を眺めた。

白い大柄な機体に機首からテールまで青いストライプが入る。
古い世代のベストセラー機だが、それだけにアップデートも頻繁に行われており、
まだまだ現役で活躍だろう。ただし操縦する者の力量次第だが・・・

ピクシーの思考はAWACSの無線で中断された。
《こちら空中管制機イーグルアイ 各機、針路315 ベルカ爆撃機を撃退せよ》
《ガルム隊へ ガルム2 お前はガルム1の指示に従え。作戦中の勝手な行動は禁じる》
《了解  指示は頼んだぜサイファー あんたがガルム1だ》
《え? 私が指示だして良いんですか?》
ゆっくりとした調子で女性にしてはやや低めの声が無線から流れる。
《司令部からのお達しだからな。あんたの戦いを見せてくれよ》
言葉の内容とは裏腹に声の調子は不満そうなものだった。


無線越しとはいえ、一緒に飛ぶことになった同僚の不満気な様子を察し、さすがに苦笑いする。
初めての戦い。
それがどういうわけか、一回り年上の傭兵ラリー=ピクシー=フォルクを率いて編隊長となった。
ということは集団戦に問題ありなのかな?と考え、
戦技教官としての視点から相棒となった2番機に視線を送る。

それにしても、実績の無い私に指揮を預けるなんて、大胆というか開き直ってるのか、
それとも単にヤケクソの思いつきなのか? 何とも判断に迷う。だが、
この戦争でそれなりの地歩を固めておかなければ、ロストロギア捜査は難しい。
その為にもこの空戦、勝たせてもらうね!
《マジシャン隊、ガルム隊、交戦!》
イーグルアイの無線をきっかけに胸のポケットに手を当てて、そっと問いかける。
「ほんとうにだいじょうぶかな?」
「No probrem」
「信じてるよ レイジングハート」

なのははウスティオ共和国空軍の契約パイロットとして
空を飛んでいた。ただ、いつもとはちがう空の景色に違和感がある。
速度も高度もはるかに高い。戦う為の道具が持つ暴力的な力には驚かされた。だが、
それでも自らが空を飛ぶときのように魔法で機体を完璧に制御していた。
全身を完全に支配下においた白い機体は高度3000ftまでパワーダイブすると
左に捻りこみを入れて降下角度と針路を調整する。
斜め後ろには地味な淡いグレーの制空塗装に大胆にも片翼を赤く染めたガルム2
ピクシーのF-15Cイーグルが隙の無い飛び方でぴったりと続く。
ベルカ軍爆撃機編隊に斜め上から突き刺すように迫る2機、
最初に攻撃を開始したのは僚機のピクシーだ。
《ガルム2、FOX2》
続けざまにミサイルを2発。白煙が爆撃機へ伸びてゆく。
《爆撃機1機撃墜を確認》
《誰だ?最初にやったのは》 
《ガルム2、ピクシーだ》
《美味しいところもって行かれるなよ》
ミサイルは爆撃機の主翼を切り裂き、揚力を失った機体は黒い爆煙にまみれてぶざまに落ちていった。
なのははその光景をみて愕然とした。

戦いを幾つも経験しているといっても、最初から殺傷を前提とした戦いはそうはない。
命がけの戦いはこれまでにもあった。だが管理局は警察であり軍隊ではない。
どれほど巨大な組織に属し、破壊力のある武力であっても、最初から殺しを前提としていない。
だが、今目の前でおきた出来事は本物の戦争だ。
--それならば--

「レイジングハート、魔法効力の設定もう一度 お願い」
「All magic condition is mechanical destraction only」
「うん ありがと」
満足そうに頷いたなのはは、HUDの正面にベルカ爆撃機を捉えた。
生体に影響の出ない無機物に対してのみ破壊効果を与える魔法制限。
今までの経験から、なのははレイジングハートの回答を疑う習慣を持っていなかった
「サイファー FOX2」
《オット4、ミサイル警報! 回避急げ!》
《駄目です。振り切れません 畜生!》
サイドワインダーは赤外線追尾のミサイルだが、なのはが放ったそれは、魔法による誘導追尾だった。
爆発につづき、スローモーな動きで爆撃機の主翼が捻じ切れる。
《うわぁぁ、操作不能 脱出だ!》
《糞っ、ウスティオが瀕死だって話は嘘かよ?》
凍てついた空に白いパラシュートの花が4輪咲いた。
《どいつもこいつも落されるなよ。遭難者を探すのはたいへんだ》
《爆撃機2機目撃墜》
《今度は誰だ?》
《ガルムの1番機、サイファーだ。ガルム隊だけに稼がせるな!》

ピクシーは自分に性差別の意識はないと思っていたが、
女性の傭兵パイロットに対しては好ましいイメージを抱いてなかった。
斜め前を飛ぶガルム1についても同様だった。
だが、すぐに僚機・・・・ナノハ=サイファー=タカマチとか言ったか?・・・が並みのパイロットではないことに気がついた。
機動に関しては機体に馴染んでいないと思わせる部分があるが、戦場の流れと周囲の状況を巧みに判断している。
経験の浅いパイロットが陥りがちな行動をとっていない。久々に良い僚機に恵まれたかもしれない。
少しでも生き残る可能性を高めるため、共に戦う仲間はいくら優秀でも構わない。

なのははピクシー=ガルム2を引きつれ、高度を維持したまま高速ループをとった。
全身にかかるGで体中の血液が足元に引っ張られる。視界がかすみそうになったところで爆撃機に向けてロール。
ウスティオの猟犬がベルカ爆撃機編隊に食らいつく。
《サイファー FOX2 FOX2》
爆撃機には2発ともAAMが直撃したが、被弾した所が良かったのだろう、辛うじて飛行を維持していた。
「Bandit's in gun range」
レイジングハートが機関砲の射程内に収まったことを知らせてくる。
HUDに照準が浮かぶが、なのはは照準にたよらず、想いを込めてトリガーを押し込む。
"バルカンシュート"
ピンク色の光の雨が爆撃機に降り注ぐ。魔法に包まれた20ミリ機銃弾は極僅かながら誘導機能を備えていた。
ミサイルのような高度な誘導追尾はできないが、射線を多少制御する事ぐらいはできる。
爆撃機が銃撃に耐え切れず爆発した。
《サイファーが爆撃機2機目を撃墜》
イールグアイの撃墜確認にピクシーから更に戦果の追加報告が重なる。
《こちらも爆撃機2機目を撃墜》
何時の間に? なのはは驚いた。
殆ど魔法が効かない世界ではあるが、空戦の原則はこの世界でもミッドチルダでもかわらないようだ。
ピクシーは凄腕のパイロットだ。それは間違いない
インメルマンターンで高度を回復し、後続の爆撃機に狙いを定めようとしたが、爆撃機の前を飛ぶ護衛編隊がなのは達に
襲い掛かろうとしてきた。予想針路が斜めに交わる。ベルカ機も針路を微調整し、正面から突っ込んでくる。
《ガルム隊、敵戦闘機2機、 ヘッドオン》
棘の生えた針のような細い機体、確か、Mig21フィッシュベッドっていうんだっけ?
魚の寝床とは変わった名前だと思って微かに笑いがこぼれる。
戦闘機の名前はまだ良く覚えていないが、魚の寝床とやらは素人の目から見ても格闘戦向きの機体ではなさそうだ。
《左を頼みます。私は右を》
《ガルム2 了解》
ベルカの戦闘機も大胆さ、勇敢さではなのは達に決して劣っていない。腕も確かそうだ。
ギリギリのタイミングでベルカ軍機とすれ違う。直前にバルカンシュートを放つが、
互いの速度が速すぎて銃弾を誘導しきれなかった。
瞬間的にエアブレーキを最大にかけ、コンパクトに旋回し直ちに再加速。アフターバーナーに加えて魔法の推力が加わったなのはの機体がベルカのMig21に迫る。
ピクシーの側をみると 任せていた左側のベルカ機が煙を吹いて落下していた。
軽い電子音。ロックオン
《サイファー FOX2 FOX2》
"フォックスアクセル"
思念を込めながらミサイルを2発放つ。Mig21はミサイルを回避しようと懸命に機動しているが、
アクセルシューターを応用したなのはの誘導魔法がかかったミサイルからは逃れられなかった。
《やるじゃないかサイファー。 お見事》
《いえ、今のはそれほどでもなかったです。ところで護衛機は?》
なのはの元へAWACSから無線が入った。
《マジシャン隊が最後の一機を排除。爆撃機は残り4機、方位225 ガルム隊がTOPスコアだ。 各隊、負けるなよ》
イーグルアイの声にも勢いが感じられる。
《俺達ガルム隊が全部頂くぞ》
《悪いけど、私達が先に頂よ》
古くからの親友の声を聞いて、なのはは安堵の息を漏らした。
速度を殺さない程度にタイトなインメルマンターンで向きをかえる
白い途装を纏う亡霊の後ろに赤い片羽の荒鷲がぴたりと後ろに続く。
乱れの無い。完璧に息のあった見事な編隊飛行。
前方の空では白い糸が複雑な模様を紡ぎだしていた。

味方のウスティオ空軍が残りのベルカ爆撃機に襲い掛かっているようだ。
《サイファー、お前さんの友達に先を越されたようだな》
《じゃ、ここら辺から見ていましょうか?》
《馬鹿ヌかせ。俺達は航空傭兵なんだぞ?サイファー》
なのはははたして傭兵の世界というものを理解することができるだろうかと考えた。
だが、ピクシーにベルカ爆撃機を墜とさせるよりも、
自身の機体、F-4Eファントム2で撃墜したほうが死者は出ないという事に気がつくと、
かなり演技っぽい声でピクシーの問いに応える。
《では、いただきましょう》
凍空の猟犬が獲物に襲い掛かる。
爆撃機はその巨体を必死に振り回して回避機動を取っているが、
護衛機のない大型機など、訓練標的よりも易しい。


ヴァレー空軍基地  4月2日 13時30分
《ガルム隊 着陸を許可する》
先に着陸体制をとるF-4Eファントム2はヴァレー基地特有の気流に軽く機体を揺らしながら
迷うことなく滑走路に進入し、無造作で無難な着陸を決めた。
着陸はあまり上手くない。筋は良いんだが・・・・ピクシーが相棒の着陸を評価していると
自身のイーグルのコクピットに軽い衝撃が伝わった。
《良い腕だガルム2》
《ありがとよ、コントロール》
さて、さっさとデブリーフィングを済ませたらサイファーの初陣祝いといこうか・・・

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最終更新:2007年09月02日 14:14