「だから違うって言ってるでしょぉ!? 私はしっとの戦士! しっとレディであって!
フェイト=T=ハラオウンでは断じて無いんだってばぁ!! お願いだから分かって頂戴!!」
しっとレディはエリオとキャロの視線の痛さをごまかす様にまだ倒れてる桜花の上で
地団駄を踏みながら必死に自分がしっとレディである事を主張するが、二人の視線は変わらなかった。
「分かりました…。今の貴女はしっとレディですよ。フェイトさん…。」
「しっとレディとして頑張ってください…フェイトさん…。」
「だからフェイトって呼ぶなぁぁぁ!!」
しっとレディはやけくそになって駄々をこねるようにバルディッシュを振り回していたが、
そこでやっと蘇生した桜花が立ち上がった。
「何時まで私の上でジタバタやっているか!? 相手に立つなら徹底的にやってやるぞ!!」
今度は桜花の拳がしっとレディに放たれ、防御魔法で防御したが衝撃は緩和させる事が
出来ずに吹っ飛んでいくしっとレディに追い討ちをかけるべく桜花は高速で駆け出して行った。
「ああ! 桜花さん!」
桜花が遠くへ行ってしまい、そこにはしっとマスクとエリオ&キャロが残された。
「フッフッフッフ…桜花はしっとレディが相手してくれるとして…お前等何時まで
ベタベタベタベタベタベタ!! くっついとるんじゃぁぁぁぁぁぁ!!」
未だくっついたままのエリオとキャロにしっとマスクは血の涙を流し、しっとの炎を燃やした。
もう全身から炎の様に見える強烈なオーラが発せられていた程である。
「うあっちゃッちゃっちゃっちゃぁぁぁぁ!!」
と思ったら本当に燃えていた。慌ててしっと団員の一人が水を満載したバケツを持って
消火活動に勤しんでいたが、その間にエリオとキャロはバリアジャケットを装着し、戦闘態勢に入った。
「とにかくだ! エリオとやら! お前には死んでもらうぞ!」
「どうして? どうしてエリオ君を殺そうとするの!?」
「それは自分の胸に聞きやがれぇぇぇぇ!!」
またもしっとマスクは血の涙を流しながら号泣した。持てない男達の精鋭である彼等にとって
エリオがどれだけ羨ましく、また妬ましい存在であるかは想像にも出来ないだろう。
「自分の胸に聞けと言われても僕にはお前達に恨まれる筋合いは無い!」
「くあああああ!! それが腹が立つぅぅぅぅ!!」
やはりエリオとキャロに何故しっとマスク達がエリオを恨むのかは理解していない様子であり、
それが余計にしっとマスク達を余計に激怒させてしまうのである。
「こうなったら行けぇ! しっと団員達よ!」
「オオ―――――――――!!」
しっとマスクの号令によってしっと団員達が一斉に飛びかかった。エリオはストラーダを構え、
キャロを守る様に前に立っていたのだが、しっと団員達はエリオを無視してキャロの方に突撃していた。
「ハッハッハッー! キャロちゃんお持ち帰りー!!」
「嫌ぁぁぁぁ!!」
何と言う事か、しっと団員達はエリオを殺すと見せかけてキャロを抱き上げていたのである。
これにはキャロも悲鳴を上げる。と言うか、褌一丁のオヤジに抱かれるのは誰でも嫌だ。
「ハッハッハッハッー! あんなクソガキなんかより俺の方がよっぽど良い男って事を教えてやるぜ!」
「ああああ! ヒゲ痛いヒゲ痛いヒゲ痛い!」
挙句の果てにはブツブツヒゲで頬擦りされてしまう始末。もうキャロは完全に泣いていた。
このまま自分はこのキモイオヤジ軍団に18禁同人誌みたいな事されてしまうのかと…。が…
「くおらぁ! キャロちゃんは俺んだぁ!」
先程までキャロを抱いていたしっと団員が別の団員に殴り飛ばされてしまった。
「キャロちゃ~ん! おじちゃんが何でも好きな物買ってあげるよー!」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
「こらてめぇ! キャロちゃんは俺の様な逞しいナイスガイが好きなんだよこらぁ!」
と、キャロを巡ってしっと団員同士の醜い仲間割れが勃発してしまっていた。
忽ち周囲でしっと団員達の壮絶な殴り合いが展開されてしまうのだが、その隙にキャロが
何とか彼等の囲いを脱出していた。
「はぁ…はぁ…怖かったよぉ~…。とりあえず今の内に逃げようエリオ君…ってあれ?」
そこにエリオの姿は無かった。が、良く見ると…
「ああ!」
いつの間にかにしっと団員達の醜い殴り合いに巻き込まれてタコ殴りにされるエリオの姿があったとさ。
「オラオラ! お前の様な軟弱な男は女の子一人守る事も出来んぞ!」
「ああ! エリオ君!!」
キャロはエリオを助けたかった。しかし…しっと団員達の殴り合いの中に飛び込んで
行く事は彼女には出来なかった…。
「フェイトさん! これで…これで貴女は本当に良いんですか!?」
「だぁから私はフェイトじゃねぇっつってんだろ!!」
なおも桜花と戦闘中のしっとレディに向かってキャロは叫ぶがやはり否定された。
そりゃしっとレディ=フェイトだってエリオが心配だし助けたい。
しかししっとレディとしての立場上その様な事は出来ないのである。
だからこそ…今は何も考えずに桜花との戦闘に集中するしか無かった。
「行け! プラズマランサー!」
「消えろ!!」
しっとレディのプラズマランサーと桜花の桜三型光学熱線砲が空中でぶつかり合い、
次々に爆発音が響き渡っていく。その光景にキャロも絶望した。
「も…もう神も仏もいないの…そんな…そんなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その時だった。突然桃色の輝きを発する魔法がしっと団員達に降り注ぎ、次々に
大爆発を起こしてしっと団員達を吹っ飛ばしていた。
「おひょぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「え?」
「みんな大丈夫!?」
突如現れたのはなのはだった。そしてキャロの前に降り立つ。
「なのはさん…。」
「様子を見に来たらこんな事になってるなんて驚きだよ。さあ後は私に任せて下がって…。」
なのははレイジングハートシューティングモードを構え、しっと団員達に狙い定めていたが…
「そんな事よりアレを見てください。フェイトさんが…変態マスク女に堕ちてしまいましたぁぁ!!」
キャロは血の涙を流しながら、なおも桜花との激戦を繰り広げるしっとレディを指差すが、
そのしっとレディを見た瞬間になのはの顔は歪んだ。
「はぁ? それひょっとしてギャグで言ってるのぉ?」
「え…。」
「だってそうでしょ? あれの何処がフェイトちゃんなのかな?」
「え? あれどう見てもフェイトさんですよ! 分からないんですか!?」
説明させていただくと、なのはだけはしっとレディの正体がフェイトである事に
真剣に気付いてはいない。だからこそなのははキャロの頭が可笑しくなったのだと考えていた。
「考えても見てよ! フェイトちゃんはあんな馬鹿な事はしないよ! まったく…
フェイトちゃんとあんな馬鹿変態覆面女を一緒にするなんてフェイトちゃんに失礼だよ!
何なら今ここでキャロの頭冷やさせてあげても良いんだよ?」
「あああああああ!! ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ!!」
その時のなのははかつてティアナの頭を冷やさせ、見ただけで桜花の背筋を絶対零度にまで
凍り付かせた恐怖の顔になっており、キャロも血の涙を流しながら高速連続土下座するしか無かった。
「まあいいわ。今はあの変態達を何とかするのが先…。」
既に先の砲撃によって吹き飛んだしっと団員達も回復し、なのはに向かって来ていた。
「うおお! 美人のおねぇさんどぅぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あのおねぇさんは俺んだぁぁぁぁ!!」
「いや、俺んだぁぁぁぁぁぁ!!」
なのはの攻撃魔法が彼等に通用していないワケでは無い。だが、彼等の女性に対する
欲望のパワーが彼等の身体を突き動かしていたのである。しかしなのはにとっては迷惑千万だ。
「ああ気持ち悪い! アクセルシューター!!」
「ギャァァァ!」
「おわぁぁぁぁ!!」
レイジングハートから多数の魔法弾丸が発射され、しっと団員達を次々に吹っ飛ばしていく。
どさくさに紛れて何故かエリオまで攻撃を受けていたりする始末。
そして桜花対しっとレディの方も双方互角の大熱戦が繰り広げられていた。
「殺してやる! 今度こそ殺してやるぞ変態金髪覆面!!」
「ならば私はお前を破壊してやる!!」
桜花は近くに生えていた大木を強引に引き抜き、しっとレディに殴りかかるが
しっとレディはザンバーフォームバルディッシュで大木を両断する。
続けてしっとレディは超高速で桜花の周囲を飛び回り、その全身を斬り裂こうとするが…
桜花の重装甲には傷一つ付かず、かと言って桜花の方もしっとレディのスピードを
捉える事が出来ずに翻弄されていた。
「くそ! 何て素早い奴なんだ!?」
「くそ! 何て装甲の堅い奴なんだ!?」
桜花が重戦車ならしっとレディは超高速戦闘機。お互い決定打を持たない互角の勝負が展開されていた。
「しかし…スタミナは原子炉稼動の桜花が遥か上…ここは早い内に決着を付ける!」
流石のしっとレディもスタミナ面で桜花に劣るのは否めなかった。彼女も生身の人間なのだから。
だからこそスピードを生かして何とか関節等、装甲の薄い場所を破壊して桜花を倒そうとしていた。
そして桜花もまた、長期戦に持ち込んでしっとレディが疲れて動きが鈍るのを待ち、その後で
熱線を当てて決着を付ける作戦に移行していた。
「肉を切らせて骨を断つ…最後まで耐えて耐えて痛い一撃をお見舞いしてやる!」
桜花は防御体制に入り、それと同時に熱線のエネルギーチャージを開始していた。
なのははしっと団相手に大暴れ、巻き添えで一緒にフルボッコされるエリオ、
桜花としっとレディ=フェイトはパワー対スピードの大熱戦の真っ最中。
もうこの場で戦っていない者はキャロ一人しかいなかった。
「もうやめて…みんなやめてよ…。」
キャロは血の涙を流しながら言った。しかし…誰一人戦いをやめようとしない。
「やめて…やめてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
キャロの血の涙が周囲に飛び散り、彼女のバリアジャケットを赤く染め上げた瞬間だった。
その周囲に巨大な魔法陣が出現、さらに巨大な黒竜が姿を現すのである。
「ヴォルテェェェェェェル!!」
「おわ――――――――――――!! 何かでかいのが出てきた――――――――――――!!」
これには流石の皆も慌てた。しかし…その直後にはキャロの召喚したヴォルテールが
有無を言わせずに吐いた火炎がキャロを除くその場にいた全員を飲み込んで行った…
ヴォルテールが姿を消した時、そこには彼方此方にクレーターの出来た広大な荒野の
真ん中に一人立つキャロの姿のみが残されていたと言われている。
もちろんその後でキャロはみっちり叱られたそうな。
しっと団の逆襲! 狙われたエリオとキャロ 編 完
最終更新:2007年09月19日 19:33