しっと団の逆襲! 狙われたエリオとキャロ 編

ミッドチルダの地下に管理局にもその存在を知られる事無く存在する謎の空洞が存在する。
それこそしっとマスクが組織したしっと団のアジトであった。
「これからしっと団定例会議を行う!」
しっと団の総統であり、定例会議の議長を務めるしっとマスクの号令により
しっと団定例会議が開始された。無論…この会議にはしっとレディ=フェイトも出席している。
「我々しっと団がアベック撲滅運動を推進するにあたって機動六課が最大の障害に
なっている事は皆も知っての事だろう。故に今回は機動六課のメンバーをピンポイントに
狙った作戦を私は提案したい!」
「それはどんな作戦なんですか総統?」
「うむ。まずこれを見て欲しい。」
しっとマスクがリモコンをコントロールすると、会議室のモニターに一枚の写真が映し出される。
それは機動六課のメンバーの一人、エリオ=モンデゥアルであった。
「彼…エリオはただでさえ美女揃いの機動六課の中でも数少ない男性隊員である。
これは由々しき事態だとは思わないか? 見たまえ彼のこの顔を! 見るからに
ショタ丸出しで女の子に持てそうな風貌のこやつが美女揃いの機動六課にいるんだぞ!?
思い切りハーレムも同然じゃないか!!」
「おお!! 許せねぇ!!」
「このガキをぶっ殺せぇ!!」
「畜生…俺があのガキ位の歳の頃は女の子から臭いから寄らないでって
言われたのにこのガキと来たら…うおおおおおおおお!!」
ある者はエリオに憎悪を燃やし、またある者は自分との差に悔やみ涙を流していた。
「だがそれだけでは無いぞ!! この写真を見ろ!!」
さらにしっとマスクがリモコンをコントロールし、また一枚の写真が映し出される。
それは同じく機動六課のメンバーの一人、キャロ=ル=ルシエの写真だった。
「この写真の女の子の名はキャロと言ってな、先に見せたエリオはこの子と
付き合っているらしいとのもっぱらの噂だ! これもまた由々しき事態だとは思わないか!?
二人ともまだ10歳だぞ! 10歳でそこまで進行してるんだぞ!?
そりゃ俺だって小さい子供同士のカップル襲う程外道じゃねーよ! でもこいつ等はやべーよ!
こういうのが後5~6年すりゃラブホテルとか行って『ピーッ!!』とか『ズギャンドギャン!!』とか
やっちまうんだよ! だから今の内に潰しておくべきだろこの二人は!!」
「当然ですよ総統! 俺達も気持ちは同じですぜ!」
力説するしっとマスクの言葉にしっと団員達の誰もが賛同した。
「俺あのエリオとか言う奴絶対にぶっ殺すよ!! そしてキャロちゃんお持ち帰りするんだ!」
「馬鹿野郎!! キャロちゃんは俺の嫁ぇぇ!!」
「まあまあ、まずそこはエリオとか言う奴を殺した後で考えようじゃないか!」
「すまん…俺達熱くなりすぎちまった…。」
そりゃしっと団員達は管理局を含め、ミッドチルダ全土から集められた
持てない男達の精鋭部隊。当然その中にロリコンが混じっていても可笑しくあるまい。
だからこそ彼等はエリオに憎悪を燃やし、キャロに興奮していたのである。
そしてしっと団員達は大いに燃え上がっていた。一人を除いて…
「よし! それでは次の作戦はエリオ&キャロ襲撃と言う事で決定だな!
勿論しっとレディ! 君も参加してくれるよな!?」
「あ…ああ…。」
「よし頼むぞ! しっとレディ!」
しっとマスクはしっとレディの肩をポンと叩くが、彼女は断れなかった。
フェイト=T=ハラオウンとしての彼女にとってエリオとキャロは家族も同然。
だが…しっとレディとしての立場上その様な事を口に出す事は出来なかった。
「エリオ…キャロ…ごめん…。」
しっとレディは小声でそう呟く。少なくとも彼女はどさくさに紛れて
しっとレディをやる目的…桜花の破壊とユーノの抹殺の方に集中しようと考えていたが、
エリオとキャロがちゃんとしっと団の猛攻を凌げるかどうか心配だった。

しっと団の恐るべき野望など知る由も無く、前回桜花がガジェットの残骸から作り上げた
桜三型飛行翼を装着した桜花とエリオ&キャロを乗せたフリードが空を飛んでいた。
「わっとっと! 出力の調整が! 中々これが!」
「わっ! 危ない!」
「もう見てられません!」
前回土壇場での使用だった桜三型飛行翼での飛行に完全に慣れる為に桜花は飛び、
それにエリオ&キャロ&フリードが付き添うと言う形だったのだが(監視役とも言う)
元々陸戦用の機体に翼と推進装置を付けて強引に飛行させる形を取った
桜花桜三型飛行翼装備形態は上手く飛行出来ていなかった。
出力的には桜花の超小型高性能原子炉から直結しているので申し分無いのだが、
その出力調整などが実に難しい。出力を上げれば前回みたいに月まで飛んでいってしまいそうだし、
かと言って出力を下げれば落ちてしまう。その為に急激に上がったり落ちたりする
桜花の危なっかしい姿はエリオ&キャロとしても寿命が縮む思いだった。
「わー! キャー!」
「まったく危なっかしくて見てられないよ…。」
「本当…。」
当然周囲の被害を考慮して街から離れた何も無い場所で飛んでいたのだが、
本当に危なっかしく飛んだり落ちたりする桜花の姿にエリオとキャロは呆れていた。
「あのー! そこまで無理して飛ぶ必要は無いと思いますよー!?」
「いいえ! 絶対飛びます! 飛んで見せます!」
桜花は何が何でも飛ぶつもりだった。それだけ自在に空中を移動出来る
なのは達に憧れを抱いていたのだが…気持ちだけではいかんせんどうにも出来ず、
ついには桜三型飛行翼が急激な出力の上下に耐え切れずに煙を吹いてしまった。
「あっ! キャァァァァァ!!」
「危ない!」
桜三型飛行翼の故障によって落下する桜花をフリードが追って掴み上げようとするが、
桜花元々の七百五十貫(2.8トン)の自重に加え、さらに落下によって付いた勢いは
フリードの力を持ってしても止める事が出来ず、皆一緒に落っこちてしまいましたとさ…
「おひょぉぉぉぉぉ!!」
周囲にその様な皆の悲鳴と大爆発が響き渡った。

「あ……………。」
「い……………。」
「う……………。」
それから…桜花達が地面にめり込んでピクピクと痙攣していると言う
一昔前のギャグ漫画の様な光景が展開されていた。
だが、一昔前のギャグ漫画の様な状況だからこそ、桜花はともかく生身の人間であるエリオと
キャロが高高度から落下しても死ぬ事は無かったのかもしれない。
「あらら…桜三型飛行翼がもう壊れちゃいました…。元々がぜっとの残骸から
作った奴ですからここまで持てば良い方ですけど…。」
「がぜっとじゃ無くてガジェットですよ…桜花さん。」
ロボットでありかつ頑丈な桜花は一番先に立ち直り、落下の衝撃で損壊した
桜三型飛行翼の心配をしていたのだが、未だ地面にめり込んで死にそうに痙攣しながらも
桜花に対して突っ込みを入れている辺り、エリオとキャロもかなり大丈夫だろう。

それから何とかエリオとキャロも回復し、皆で海でも眺めながらゆっくりしていた。
「ミッドチルダでの生活にはいい加減慣れましたか?」
「え…ええ…おかげさまで。」
「そんな事言ってまたフェイトさんを熱線で撃つんでしょ? それはやめてくださいよ。」
未だに桜花はフェイトを敵と認識し、容赦なく熱線を撃っていたのだが、
そこにはエリオとキャロとしても困っていた。
「でもアレだけは分からないんですよね。」
「私達としても桜花さんが金髪に反応すると言う習性がある事や、それがフェイトさんを
撃つ理由だと言う事は知ってますが…どうしてユーノさんも同じ金髪なのに平気なんですか?」
「前にも昴さんに同じ質問をされた事があります。」
「あの~昴では無くスバルでは無いかと…。」
未だにスバルの事を「昴」と呼ぶ桜花にエリオとキャロは呆れていたが、桜花は真剣だった。
「実は私にもそこは分からないんです…。あの人も金髪なのに…敵意が沸いてこないんですよ。
と言うより…撃ってはいけない何かを感じてしまうんです。」
「そ…そうなんですか? 不思議な事もあるものですね?」
やはり何故ユーノが桜花に敵と認識されないのかは謎であったが、やはりそれが
ユーノの持つ人徳と言う奴なのかもしれない。

その後、エリオとキャロ、フリードも先の高高度落下による痛みも随分と引いて来たので
皆で帰ろうと言う事になっていたのだが…そんな時だった。
「ちょっと待てぇぇぇ!!」
「ん!?」
突如として何者かが現れ、立ちはだかった。
「誰だ!?」
「持てない男を助け、持てる男とアベックを挫く愛と正義としっとの使者! しっとマスク! 参上!!」
突然現れたのはしっとマスクだった。そして高く飛びあがると共に桜花達の前に降り立つ。
「また現れたな変態!!」
桜花は拳を振り上げ、しっとマスクを殴り飛ばそうとした。が…
「おっとそうはさせない!」
「うあ!」
直後に何者かが急接近し、桜花を逆に吹っ飛ばす。それはしっとレディだった。
「アベックも許さないがフェレットも許さない! それがこの私! しっとレディ参上!」
「…………………。」
吹っ飛ばし、地に突っ伏した桜花を足蹴にしながらしっとレディがバルディッシュを
格好良く構え、それにはエリオとキャロも一瞬声が出なかった。
そして余程恐ろしい光景に写ったのか、キャロは思わず目に涙を浮かべてエリオに抱き付いていた。
「エリオ君…フェイトさんが…フェイトさんが何かおかしいよぉぉ!!」
「フェイトさん…いくらなんでも…それ絶対頭おかしいですよ…。」
エリオもまた哀れな者を見るような目でしっとレディの目を見つめていた。
そう、エリオとキャロもまたしっとレディの正体がフェイトである事を見抜いていたのである。
まあしっとレディ自体がただフェイトがしっとマスクを被っただけで、首から下は
何時ものバリアジャケット装着状態だったのだから仕方ないけど。
「違う! 私はしっとレディであってフェイト=T=ハラオウンでは断じてない!」
「無理して正体を隠さなくても良いですよ…フェイトさん…僕達は何も思ってないですから…。」
「そうですよ…一体何が貴女をそうさせてしまったのかは分かりませんが…
そんな変態に身を堕としてしまってもフェイトさんはフェイトさんです…。」
相変わらず可哀想な者を見る目で見つめるエリオとキャロにフェイトは苦しかった。

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最終更新:2007年09月19日 19:21