「……ねぇつかさ、チョココロネってどこから食べる?」
ある日の昼休み。こなたはマジマジとチョココロネを見つめながら食べていた。
「え?う~ん……頭からかな?」
「……そう」
こなたは一言呟くと、再びチョココロネを食べ始めた。

「ところで……頭ってどっち?」
刹那、つかさの表情は固まった。


Episode 02「癒し効果」

「ねぇ、なのはさんはどう思う?」
「え……?」
こなたの問いに、なのはもまた固まる。
どっちがチョココロネの頭かって?考えた事も無いよ。
「多分細い方……かな?」
「うん、私もそう思う」
とりあえず気分で答えてみるなのは。つかさもそれに合わせる。
「そう……私は太い方が頭だと思った」
「どうして?」
「だって芋虫みたいじゃん?」
「「いも……ッ!?」」
なのはとつかさはショックを隠し切れず、固まったままその場に立ち尽くした……。

「え~と、こなちゃん。もうちょっといい例えないかな?」
「そうだよ……貝とかの方がまだいいよぉ」
なのはもつかさも芋虫というイメージには猛反発。
そりゃおいしいチョココロネのイメージが芋虫なんて言われたら誰だって否定するだろう。
つかさが貝ならなのはのイメージは何だろう?気になったこなたは聞いてみることにした。
「……じゃあ、なのはさんはどんなイメージなの?チョココロネ」
「え……私のイメージ……?」
「うん。つかさが貝なら、なのはさんはどんなイメージなの?」
「…………?」
またもこなたに意外な質問をされたなのはは、しばらく考えるそぶりを見せ……
「う~ん……ドリル……かな?」
満面の笑顔で答えたなのは。それにより、再び微妙な空気が流れる。
「なのはさん……土曜日の朝は、何見てる?」
「……え?」
訳のわからないこなたの反応に、なのははキョトンとした顔をするのだった。


「どーも、ティアナサン」
「え……?えぇ、パトリシアさん……だっけ?」
ここは1年D組。突然話し掛けられたティアナは、早速覚えたばかりのクラスメートの名を口にした。
「ティアナサンも私と同じで、ニホンの文化を学ぶ為に留学したデスカ?」
「え……ま、まぁそうね」
ティアナは留学生ということでこの陵桜学園に通っているため、立場的には
この『パトリシア=マーティン』こと、パティと同じことになる。
「やはりそうデシタカ!いやー、ニホンの文化は素晴らしいデスよねーっ!」
「まぁ、そうね。確かにいい国よね、この国は」
「同じ趣味を持つナカマとして、よろしくお願いしますデース!」
「(同じ趣味……?私、趣味なんて言ったかしら?)」
ティアナはそんな疑問を浮かべながら、適当に「よろしくね」と笑顔で挨拶する。
ちなみにパティは、日本にいる人間を全員オタクだと思い込んでいる節があり、ティアナもまたその勘違いの被害者の一人である。
「とりあえずティアナサン、ツインテールとはポイント高いデスネ!」
「は……?あ、ありがとう」
別にそんな需要とか気にしてツインテールにした訳では無いが、一応お礼は言っておく。
今後この二人の勘違いは、間違いなく深まってゆくだろう……。


「ひよりん、それ何してるの?」
「あ、スバルちゃん……」
一人で黙々と机に向かっている黒髪の少女、『田村ひより』に声をかけるスバル。
こういう時、どうしても声をかけてしまうのがスバルのいい所なのかもしれない。
「いやね、漫画書いてるんだけど、締切が迫ってて……」
「へー、漫画書いてるんだ!?凄いじゃない!」
「え?い、いやぁそれほどでも……」
褒められて素直に喜ぶひより。
だが、この喜びも次の瞬間には焦りへと変わる事に、ひよりはまだ気付いていないのであった……。

「どんなの書いてるの?ちょっと見せてよ♪」
「ってわぁああああっ!ちょ……ちょまッ!!」
いつも通りのニコニコスマイルで原稿に手を伸ばすスバルを、必死な顔で制止するひより。
「え……ど、どうしたの?ひよりん……?」
「いや、その……えっと……」
スバルも少し驚いた表情でひよりを見る。なぜかひよりの顔は少し赤くなっている。
「あの……その、み、見ない方が……いいかもよ……?」
「ゆーちゃんまで……どうしたの?」
そこに、さっきまで微笑みながら見ていただけの赤髪ツインテール少女、『小早川ゆたか』ことゆーちゃんが割り込みをかける。
ゆたかの顔もまた、ひよりと同じくらいに赤面している。
「あの……ホラ、まだ本になってないから、発売したら見せてあげるから!ね?」
「あぁ!なんだ、そういう事かぁ。そういう事ならわかったよ!」
「あ、ありがとうスバルちゃん……」
ひよりの必死の言い訳を疑う事なく信じたスバルは、快くそれに従うことに。
「(良かったね、見られなくて……)」
「…………。」
ひよりに目で合図をするゆたか。
ゆたかはすでにこなたという伝説の少女によって、ひよりの書いている漫画の内容が知らされているのだ。
「(あぁ……正直かなり恥ずかしい!)」
ゆたかにまでそんな気を使わせてしまったひよりは、擬音で表すなら「カビーン」といった感じに落ち込む。
「ん?どうしたの、ひよりん?」
ひよりが何故ヘコんでいるのかなど想像もつかないスバルは、何事も無かったかのように話し掛ける。
「(あぁ……しかもこの漫画出たらスバルちゃんにまで見せなくちゃならないんだーッ!?)」
さっきの「発売するまで待て」って言い訳……
アレはミスった!ひよりは心の底からそう思ったという。


「そういえば今思ったんだけどさ、ティアナちゃんとスバルちゃんの組み合わせって
ゆたかちゃんとみなみちゃんの組み合わせに似てない?」
「「「………………?」」」
突然のひよりの言葉に、お互いの顔を見合わす一同。
「(私が似てるって……みなみにかな?)」
「(私は……やっぱりみなみよね?)」
「(え……私ティアちゃんみたいにスタイルよくないよぉ)」
「(……似てない。)」
スバルとティアナはみなみに、ゆたかはティアナに、それぞれ目線を向ける。
まぁみんな思っていることは違うようだが。
しかもひよりの言葉に誰ひとりとして返事を返そうとしない。
「……はいはい、そうっスよね、似てないよね、どーせオタク思考ですよー」
ひよりは、「ハハ……」と、まるでフリーダムを落とした直後のシンの様なよくわからない笑みを浮かべた。


「で、私が誰に似てるっていうのよ?」
「ほら、ショートヘアにツインテールって組み合わせ。あとはクールと天然を入れ換えた感じ」
ティアナの問に答えるひより。
「え~……なんかややこしいなぁ……」
スバルも頭をフル回転させる。
いや、なんかややこしそうに聞こえるだけで冷静に考えればどうってこと無い話である。
「だから、こうなればいいんだよ~」

『ねぇねぇスバルっ♪』
『何よ、ティア……』
明るい表情のティアナが、クールな表情のスバルに話し掛ける。
なんだこの図は。

「もしくはその逆かだね」
言うべき事を言ってやった!的な表情で微笑むひより。それはもう実に楽しそうな表情だ。
うん、もちろんひよりだけ。一同「……」状態だ。

「あ……っ!」
「どうしたのよ、ひより?」
「あ……ううん、何でもないよ……」
突如何かに閃いたひよりは素っ頓狂な声をあげてしまう。
「(言えない……転校生組はスタイルいいけど、ゆたかとみなみは胸ぺったんガールズだなんて……ッ!!)」
また妄想モードに入ってしまったひより。
ひよりはどんな些細な事でも、使えるネタはどんどん使うのだ。漫画に。

「アンタ、さっきから何考えてんのよ?」
度々訳のわからないモードに切り替わるひよりに、ツッコミを入れるティアナ。
ひよりのティアナメモにはツッコミポイントが追加された!
「え……いや、何でもない……カナ?」
「かな?って何なのよ……」
適当にはぐらかすが、今ひよりはある事実に気付いた。このティアナの態度……そして喋り方は……!
「あぁ……今気付いたよ。ティアちゃんはクールっていうよりツンデレなんだね……」
「……ツンデレ?」
初めて聞く単語に首を傾げるティアナ。
「ティアちゃんはどちらかと言うと柊(かがみ)先輩のが近いんだよ」
こうしてひよりは再び妄想モードへと突入するのだった……!


3年C組の風景。

その日、日下部みさおはいつも通り教室へと入室するため、勢い良くドアを開けた。
「(おっ、あれは転校生!)」
入室するや否や早速フェイトを発見!
みさお的にもここで絡まない手は無い。
「おーっす、フェイト!」
「………?」
「あ、アレ……?」
元気よく挨拶したのはいいが、どこかフェイトの様子がおかしい。
返事を返す事もなく、黙ってみさおの顔を見つめているのだ。
「……どしたん?元気ねーなぁ」
「ごめん。キミ……誰だっけ?」
「はぅあッ!?」
次の瞬間、みさおはかがみの元へと駆け出していた。

「ひ、酷い……あいつ、酷い!」
「ま、まぁまぁ……まだ転校したばっかなんだから、仕方ないでしょ?」
かがみは自分に擦り寄るみさおをなだめながらフェイトをフォローするのだった……。


放課後。

「なんだかんだでゆーちゃんと一緒にいると癒されるなぁ」
「え……そ、そうかな?」
突然のスバルの褒め言葉に、顔を赤くするゆたか。
「いや~そういう反応が癒しポイントアップに繋がるんだよ~」
「そうそう、それそれ!ポイントとかよくわかんないけど!」
「そうだよね……わかんないよね……あとそれ風間大介だよね……」
このスバルの一言により再びひよりの泣き笑いスイッチがオンに!

「まぁともかく、アンタも少しは見習えば?」
「なっ!?酷いティア……まるで私が癒しポイント0みたいじゃない!」
「そうは言ってないわよっ」
楽しそうに言い争いを始めるスバルとティアナ。
二人の光景はまさに中のいい女キャラ同士……例えるならばアイビスとスレイが仲良く喧嘩をしているような、そんな微笑ましい光景だ。
「(あぁ……なんかいいネタが閃きそうかも……!)」
ひよりはそんな光景を、またしても百合漫画のネタにしようとしているのであった……!
まぁいつも通りっちゃいつも通りですよ。



「ねぇ、ティア……」
「何よ?」
「なんか誰か忘れてない?」
「誰かって……誰よ?」
スバルに話し掛けられたティアナは、一緒に忘れられた人物を考えるが、どうにも思い出せない。
そんな時、二人の元へとやってきたのはひよりだった。
「あ、パティは空気キャラってのもポイントの一つだから気にしなくていいっすよ」
「「……あッ!!」」

そうだ、パティだ!

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最終更新:2007年09月19日 19:44