「まぁこんな堅苦しいプロローグはどうでもええわ」
「え!?なんか凄い壮大そうな話だったのに!?」
「まぁ確かに最後の大袈裟な一文以外は事実だしね……」
はやての言葉にツッコミを入れるなのはとフェイト。
なのはとフェイトの隣にはスバルとティアナの姿も見える。
ちなみにティアナは「それ以外にも不自然なところ無かった?」と疑問を浮かべているが、まぁどうでもいい。
「……で、4人に集まって貰ったのは他でも無い。今回の任務は潜入捜査や」
「「「「潜入捜査?」」」」
はやての言葉になのは・フェイト・スバル・ティアナの4人が口を揃える。
「ちょっと待って、はやて。何でライトニング分隊からは私しか呼び出されて無いの?」
「それは、今回の任務はある高校に潜入してもらいたいから」
真剣な顔で立ったままデスクに両手をつくはやて。
確かに高校となればエリオやキャロは少し幼な過ぎる。
まぁ黙ってはやての説明を聞こう。
「今回の潜入捜査では、とある人物を監視して欲しいねん」
「とある人物……?」
ゴクリと唾を飲み込み、はやてに質問するスバル。
「その人物とは--」


Episode 01「曖昧3年生」


「よ~し、今日はみんなに転校生を紹介するで~」
ここは第97管理外世界、日本の糟日部という街にある陵桜高校。その3年B組だ。
「こんな時期に転校してくるなんて、アニメみたいな展開だね~」
席に座っている青いロングヘアーの少女が、(≡ω≡.)こんな顔をしながら言った。
「家族の都合とか、色々とあるんじゃないでしょうか?」
ピンクのウェーブロングの髪に、眼鏡が特徴的な少女が微笑む。
「でも今転校してきても後は受験だけだよぉ……」
「いやいや、甘いよつかさ。最後の1年間で始まる物語だってあるんだから!」
青髪の少女はアホ毛を揺らしながら自信に満ちた顔で言う。
「え?そうなの……?」
「まぁ確かに、ドラマとかだとそういう展開有りがちですよね」
三人は、そんな平和な雑談で盛り上がっていた。

「じゃあ入ってこ~い」
関西弁の担任--黒井ななこ--の声に呼応するように、教室の扉がガラッと開いた。
茶色いツインテールをなびかせながら、転校生--なのは--は教壇に立つ。
「ほな自己紹介し~」
「高町なのはです。ちょっと訳あってこの高校に通う事になりました。よろしくお願いします」
なのはが「まぁ嘘はついてないからいいかな」と思いながら自己紹介を終えると、着席していた一同から拍手の声が聞こえる。
「じゃあ高町。泉の横が空いてるから、そこ座り」
「はい」
にこやかに青いロングヘアー少女を指差すななこに、なのはは元気よく返事を返した。


「よろしくね~なのはさん」
なのはの横に座る少女、『泉こなた』が猫口だからどことなく可愛く見えるかもしれない微笑みで話し掛ける。
「うん、よろしくね。え~と……」
「こなたでいいよ、なのはさん」
「あ、うん。こなたちゃん」
挨拶を交わしながら、なのはは一つの疑問に気付いた。
「え~と、なんでさん付けなのかな?」
「だってなのはさんのが合いそうじゃない?」
またしても(≡ω≡.)こんな顔をするこなた。
「だってなのはさんって何となくどこかの部隊の隊長とか、そんな雰囲気がするからさん付けのが合いそうじゃん?」
「……ッ!?」
一瞬で大量の冷や汗をかくなのは。擬音で表すならば「ギクッ!!」といった感じだ。
「あ、ちょっとそんな感じするかも♪」
紫の髪の毛に大きなリボンが特徴的な少女、『柊つかさ』が何も考えてなさそうな無邪気スマイルを振り撒く。
ちなみにつかさは既にこなたワールドに引き込まれてしまっているが、多分そんな雰囲気はしてない。
「いや~……それはないと思うよ~?」
「まぁ、ただの雰囲気の話だからね」
なのはは自分の正体に気付いていなさそうなこなたの表情に、胸を撫で下ろすのだった。


一時間後。

「おーっす♪」
「あ、かがみん」
いつも通り、C組に在籍しているにも関わらず何故かB組にばかり現れる『柊かがみ』が現れる。
ただ、いつもとは一つだけ違う。それはかがみについてきた金髪の少女だ。
「あれ?後ろの人は?」
「あ、転校生のフェイト・T・ハラオウンです」
ペコリと一礼するフェイト。

「おお!?なんか今までに無いキャラだね?」
「キャラ……?」
「フェイト……コイツの言う事をあんまり真面目に捉らえない方がいいわよ?」
「え……あぁ、うん。わかったよ……」
呆れたかがみの言葉に、フェイトは泉こなたという人物がだいたい想像できた
「まぁそれは置いといて、そっちにも転校生きたんだ?」
こなたは「フェイトって凄い名前だな~」とか思いながら「何かを置いとく」ジェスチャーをする。
まるで右から左へ受け流すように。
ちなみにこなたにしてみればフェイト=ゲームタイトルによく使われる言葉という認識がある。

「にしても……おっきいね~」
「……何が?」
こなたの言葉に苦笑気味に質問するフェイト。
こなたはどう見てもフェイトの胸元を見ている。
「転校生は二人ともお姉様キャラか……」
「ってアンタは初対面でいきなりセクハラ発言かよ!」
いつも通り、にひひと笑うこなたの表情に気付いたかがみは、すかさずツッコミを入れた。


陵桜学園、食堂。
「……にしても伝説の少女Aの監視って何なのよ……」
「ま、まぁまぁティア。きっと何かあるんだよ?」
愚痴をこぼすティアナをなだめるスバル。
どうやらはやてからの指令は、「伝説の少女Aを監視せよ」とのことらしい。
まぁ伝説の少女Aって何だよって話だが、あまり気にしない方がいいんじゃないかと思う。
ちなみに二人が編入されたのは1年D組だ。
「まぁ、こんな学校生活も楽しいっちゃ楽しいかもしれないけど……」
「ホント、懐かしいよ。こんな雰囲気」
「な、なのはさん!?」
かけそばを食べながら愚痴るティアナは、突然のなのはの出現に驚く。
「私とフェイトちゃんはもう高校に通う年齢じゃないからね。またこうして一緒に学校に通えるとは思って無かったよ」
「うん……私も任務だとは解ってるんだけど、正直嬉しいよ♪」
食堂で買った定食をテーブルに置きながら微笑むなのはとフェイト。
二人にとっても任務なのに嬉しいなんて事は初めてだろう。

「ところでなのはさん……伝説の少女Aは……!?」
「あぁ、うん……もうなんていうか、早速見つけたよ……」
スバルに真剣な顔で問われたなのはは、苦笑い気味に答えた。
「で、どんな人なんですか?」
「え~と……こ、個性的な女の子……かな?」
今度はティアナの質問に答えるなのは。
ティアナとスバルは「はぁ……」と返事を返す。

「そういえば、何でフェイトちゃんは違うクラス行っちゃったの?」
ふと疑問に思った事を口にするなのは。
伝説の少女A……っていうか、こなたの監視が目的ならB組に来ればいいはずだ。
その問いにより「………………」と、しばしの沈黙が流れ……
「知らないよ……なんかこうなっちゃったんだよ……」
「「「えー……」」」
フェイトの頼りない台詞に、なのはを初めとするスターズ分隊は「ドンマイ……」みたいな顔をするのだった。


一方、1年B組。

「あれ?フェイト来てないの?」
「おや、かがみん。フェイトちゃんとも早速うちとけたみたいだね~」
「まぁね……って何よその笑いは?」
こなたの笑みに気付いたかがみは「今度は何よ?」みたいな顔をする。
「いやぁ……いっつもハブられてC組来てるかがみんにも同じクラスの友達ができると思うと嬉しくて」
「なっ!?いるわよ友達くらい!!」
かがみにツッコまれながらもこなたはニヤニヤと不適に笑うのだった


「お、元気そうやな高町~」
「あ……ななこ先生。」
3年のクラスが集中する廊下でB組担任のななこに話し掛けられ、立ち止まるなのは。
「うちのクラスは個性的なんが多いからなぁ、楽しそうやろ?」
「えぇ、まぁ……そうですね。特に泉さんとか」
ちなみになのはは何となくこなたのテンションについて行き難い。
「お~、早速ええとこに目つけたなぁ」
「いいとこ……?」
予想外の反応を見せるななこ。
もしやこれはチャンスじゃないか?早くも何か情報を聞き出せるかもしれない。
「いやな、泉とはほぼ毎日プライベート(ネトゲ)で会っててな、なかなかおもろいんよ」
「そうなんですか?じゃあ結構仲良いんですね?」
「ん……まぁな。泉なら何でも知ってるからわからんことあったら聞いてみたらええわ」
まぁもちろんオタク知識限定だが。
「はい、ありがとうございます!」
なのはは笑顔でペコリとお辞儀する。
恐らくななこの言わんとする事はちゃんと伝わってないが、それはそれでいいんじゃない?と思っちゃったりする。
「にしても、ななこ先生の雰囲気、どことなくはやてちゃんと重なるなぁ」
なのはが「フフ」と微笑みながらポツリと呟いた独り言に反応するななこ。
「雰囲気?ほぉ、もしかして友達に関西人おんのか?」
「はい、だから関西弁聞いてたらなんだか落ち着くんですよ♪」
言い終えると同時に、幸せそうな顔のななこがなのはの肩に手を伸ばす。
「高町……」
「え……な、何ですか……!?」
「そんなん言うてくれるのアンタだけや……!」
自分の肩を掴みながら「るーっ」と涙を流すななこに、なのはは「何この状況?」と思いながらも苦笑いを続けるのだった。
「まぁうちは関西人ちゃうけどな」
「え……?」


放課後。

「そういえばなのはさんの家ってどこにあるの?」
「え?私は海鳴市だよ。フェイトちゃんと同じなんだ♪」
「あ~、じゃあ帰りの電車一緒だね~」
カバンを持って立ちながら話をするこなたとなのは。こうして見ると身長差は歴然だ。
この任務中はフェイトもなのはも海鳴市の実家で生活することになったという。

「こなたー、帰るわよ?」
「なのは、帰ろうか♪」
そこに、かがみ・フェイトがそれぞれ現れる。
「じゃあ今日はなのはさんとフェイトちゃんも帰りは一緒だね~」
「ってなんでよ?海鳴市って逆じゃなかった?」
不敵に微笑むこなたに、かがみが質問する。
地図で表すならこなたやかがみの家は北。海鳴やみゆきさん家やアキバは南のはずだ。
「いやぁ、今日もアニメイトとか寄りたいからね~」
「また行くの?流石というか何というか……」
半ば呆れ口調で言うかがみ。ちなみにこなた的にはこんなかがみこそツンデレと言うべきらしい。
「ねぇ、アニメイトって何なの?」
フェイトが?マークを浮かべる。初めて聞く店名だ。
「ん~……まぁそういうお店だよ。なのはさん達も一緒にいく?」
「良いの?じゃあ私たちも行くよ♪」
こなたの奨めに乗るなのは。
まぁこなたと仲良くなるチャンスではあるが……
「(あぁ……こうやって二人もこなたの世界に引き込まれて行くんだろうなぁ……)」
かがみだけは、「二人もこなたの術中にハマってしまったか……」と言いたげな、可哀相な物を見る目でなのは達を見つめていた。

そう……かつての自分のように……

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最終更新:2007年09月16日 12:38