――――某管理外世界
「レリックの確保を確認。」
硝煙と火薬の匂いが当たり一面広がり、至る所に何かの残骸が散らばっている中で男たちは赤い宝石みたいな物体を専用のケースにしまった。
「損害報告。」
隊長と思われる男の声に部下は直ちに反応する。
「負傷者7名、内重傷3名、その中の1名が肩の骨が外れました、ですが命に別状はありません。」
「いくら強化しているとはいえ12,7㎜(A・Mライフル)を連射するからな。」
「仕方ありませんよ、こっちが持ち込んだRPGやTOWとグレネードの数は少なかったですし、まぁカールグスタフのバックドラフトに巻き込まれなかったのが
 いなくて良かったですよ。まぁそれ自体…」
「これ(質量兵器)を使うことは定めた法を覆すからなぁ。」
自嘲気味に笑う隊長だった。
「仕方ありませんよ、AMF装備している連中に対して隊長ですらA、そして我々はBかCですよ。」
「ん?まぁな。」
何か言いかけようとする隊長であったが、何か接近していることに気づく。
「ああ、ようやく航空隊の援軍が到着したよ。」
「遅すぎる増援ですね。」
隊長と副官は空に浮かぶ小さな点を見つめた。
クロノ・ハラオウンは隊員達が無事だったことに安堵した。
「クロノ一佐、レリックの回収は成功しました、ああ例のガジェットと交戦、部下は怪我したの何名かいますが全員無事です。」
「そうか…だが…。」
クロノは隊員達が持っているものを確認し鋭い眼で睨む。
「これは質量兵器じゃないか!」
「ええ、そうですが。」
クロノの問いに彼より年上の隊長は素っ気無く答える。それがクロノを苛立たせる。
「これは管理局が定めた法に違反するのか分かっているのか!」
「ええ、分かってますよ。無論それに伴う罰も受け入れる覚悟ですが・・・。」
隊長は非難めいた視線でクロノを見つめる、丸で駄々をこねる子供を非難するような視線で。
「では支援要請して一体何分かかったのですか?普通10分と言いましたがあれから25分一体あなたは何をしていました?」
「こちらもガジェットに襲われて。」
「でしょう、ですからこちらも生きるために。」
「だからと言って法を破ることは…。」
あくまで反発するクロノに対し隊長は殺気をこめた…そう長い間死線を掻い潜ってきた者のみ持つことが許される目で見据える、それにたじろぐクロノ。
「では我々に対して死ねと?」
「そんな事は言っていない!」
「ではどうすればよかったのです?あなたはガジェット相手に大忙し、こちらはランクの低い陸戦魔道士…精々持って20分程度、我々だって生きたいし、
 何よりもロストロギアであるレリックを他者に奪われる行為は絶対に避けるべきでした、そして我々は苦渋の決断を行い法を破った、無論それに弁明はしません、
 しかし私は部下全員を生きて帰す義務があります。」
「そ、それは…」
言葉に詰まるクロノに隊長は更に言葉を続ける。

    リリカルなのは・ストライカーズ エピソード秘話 
          「  黄色の悪魔  」

「今貴方が言おうとしていることは我々に死ねと言っているようなものです、おおこれはこれは問題発言ミッドの新聞にこう載るでしょう、
 名将クロノ・ハラオウン形式に囚われ過ぎて部下に死ねと命令、これが本局にばれたら知られたら?ただでさえ溝が深い陸と海の中は更に悪化するでしょう。」
完全に何もいえないクロノに対し隊長は閉めの言葉を言った。
「失礼しました、少し言い過ぎたようです。ではレリックをそちらに回します。」
「う、うん…。」
そしてレリックを抱えたクロノを離脱した後、隊員達は吐き捨てる。
「頭の固い青二才が。」
「ガキンチョが」
「少し階級が高いからってふんぞり返りやがって。」
「親父とは全然違う頑固者が。」
「泥や血にまみれたこともないエリート気取りが。」
それを尻目に副長は言った。
「しかし、どうします?隊長は悪法と言えども法です。」
「まぁそん時はそん時だ。」

クロノは歯を噛み締める、質量兵器使用した報告は途中で握りつぶされたのだ。
「レジアス・ゲイズか…。」
そしてもう1人の男の顔が浮かぶ・・・。
「あいつのせいで・・・。」


―――時空管理局地上本部
入り口前に一台の豪華な車(リムジンを思い浮かべるべし)が止まり一人の男が入り口正面に足をつけた、熱気が全身を包み込み、強い日光が量目を射た。男の名前は市川守二佐、
陸戦課の制服を着込んだ彼の身体は小型であったが丸で楔のように引き締まっていた、とても40には見えない30…いや下手をすると20後半とも言ってもいいぐらいだった、
彼はある世界においてある戦争に加わり管理局が支援する軍の特殊部隊隊長として捕虜になり4年間捕虜となったものの一度たりとも身体を鍛えることを怠らなかった、
顔が青白いことや幾つかの痣、腕の部分に注射針跡も彼が4年間一度も口を割らなかった勲章でもあった、そして彼はある場所に向けて歩き始める、途中何人かの局員は「お帰りなさい二佐!」といい敬礼し、
またある者は彼の裏を知っているため目を合わせないようにした、そして彼はある一室に立つとノックし、自分の名前と階級を言う、そして部屋の主は二つ返事で入れと言う。
「市川守2等陸佐只今帰還しました。」
綺麗な形の敬礼を行う、そして主は微笑むは楽にしていいと言う、そして…。
「4年間・・・いや6年間君には苦労をかけたな。」
「いえ、これも任務ですので。」
「そうか…。」
レジアス・ゲイズ中将は最も信頼している部下に労をねぎらい、そして4年間の状況などの情報など提供した。
「例のガジェットドローンの事は知っているか?」
「ええ、強力なAMFを装備しており通常の魔法では通用していないと、さっき車の中で確認しました。」
「そういった状況下において独断で質量兵器を使用し始める例が増えてきた、まぁ主に君の下で働いてきた部下たちだが。」
自嘲じみた笑みを浮かべるゲイズに市川は淡々と応える。
「ええ、最終的な責任があるとすれば私です、責任をとれと言ったらいくらでもとりますが?」
「いや大丈夫だ、そういったことは私の権限でもみ消しているし、君みたいな優秀な人材を
 何ゆえ責任をとらせなければならない?取るとすればそんな状況を想定してない過去のお偉いさん方だ。」
「そうですか。」
そしてゲイズは市川に説いた。
「ところで例の連中だが。」
「ああ、あのレアスキルを持つ八神はやて達の事ですか?」
「ああ、彼女が説いている機動第6課のことなんだが、君の視点からどう思う?」
「私としては賛成ですね。」
「ほう?なぜそう言いきれる?」
大まかこの答えを予想していたのだが不思議そうな顔でゲイツは問う。
「中将も知っていますが、私は過去第97管理外世界のSASに入隊し世界情勢を見てきました、あの世界はミッドチルダにくらべて
劣っている分野もありますが、緊急展開軍、特殊部隊を含む軍事、通信関連などは正直こちらの模倣となるべき点が多数存在しています。」
市川は以前、グレアムという男の伝で欧州最強の特殊部隊SAS(イギリス軍特殊部隊)に入隊、そこで過酷な訓練を重ねGSG-9(ドイツ特殊部隊)、
デルタフォース(米陸軍特殊部隊)、シールズ(米海軍特殊部隊)、スペツナズ(旧ソ連特殊部隊)ですら恐れられ、イラク戦争やアフガン内戦でも派遣され、
航空機・スカッド破壊任務、対ゲリラ掃討作戦などに参加し多くの戦果を挙げ勲章まで授与するという快挙まで成し遂げたのだ、そして彼が除隊する際も上層部が名残惜しそうに
「そのまま残ってくれたら・・・。」と嘆かせたほどもあった。
市川はそれらを纏めたレポートデータを転送して話を続ける。
「それに比べこちらは多数の手続きを行い、幾度か危険な目に合ったりひどい時は持ち去られている例も少なくはありません、ですから有事の際は瞬時に行動できる部隊が必要だと私は思いますが。」
「そうか、分かった。」
「一つ聞いても宜しいでしょうか?」
「何だ?」
「なぜこのことを私に聞くのですか?」
ゲイツはニヤリと笑うと言った。
「その八神二佐が君を引き抜きたがっている。」
「ほう?」
意外そうな顔を浮かべる市川だった。
「私としては反対なのだがな。」
「…今は考えさせてください。」
「そうだな、4年間収容所にい続けた君は酷な話だな、しばらく休むといい。」
「了解しました。」
市川は敬礼するとすぐに部屋から出て行った。
「その君のむす…出て行ったか。」
ゲイズは誰もいないことを確認すると引き出しから二枚の写真を取り出す、一枚は自分と戦友であったゼスト、市川の3人で取った写真、そして部隊の集合写真を懐かしむように眺めた。
「なぁゼスト…ひょっとしたら私もとんでもない過ちを起しているかもしれんな…ひょっとするともう1人の戦友を君の元に送るかもしれん。」
そしてゲイズはしばらく項垂れた。

―――通路
「市川二佐」
市川は誰かに呼び止められ愛娘と会う時間がすこし延ばされたことに不満を覚えつつも声の主の方に顔を向ける。
「八神3等陸佐か。」
八神はやてとは彼女が管理局に入局した時にも色々と援護に回ったり、ある時は娘の世話をしてもらったこともあり良好な中でもあった。
「いいえ、今は2等陸佐です。」
同階級ながら八神はやては年上の市川に敬語で応えた。
「何の用だ?」
「ええと、今度うちらが作る。」 
ああ、何がいいたいのかわかった市川は言った。
「機動第6課か。」
「ええ知っていたのですか?」
「さっき、中将から話を聞いた。考えとしては悪くはない。」
「ええ、ぜひとも市川三佐には6課に入っていただきたいのですが。」
「理由は?」
「確かになのは一尉もフェイト一尉もいて戦闘部隊も充実していますが、多方面から引く抜く新人4名の教育、
 ならびに優秀な指揮官でもある貴方のバックサポートも課として必要なのですが。」
「ふむ…今すぐに返答は出せないな、それに久々に帰ってきたかしばらくはゆっくりさせてもらいのだがな。」
そうだ、まだ市川は帰って来たばっかりなのだ。
「す、すんまへん。」
慌てて関西弁丸出しで頭を下げるはやてに市川ははやての頭に手を乗せて撫でた。
「う、うちはもう子供やあらへんで!」
抗議の声をあげるはやてに市川はばつの悪そうな笑みを浮かべ別れを告げた。

「あれがはやてが言っていた市川守二佐?」
「ええ、フェイトちゃんあの人がうちが陸戦課から引き抜きたい人なんや。」
「すごい人なの?」
フェイトの疑問になのはは応えた。
「あの人のランクはAA-だけど、以前私も1VS1で戦ったけど・・・3戦中2敗したんだよぉ。」
その答えに驚くフェイト、エースオブエースと知られるなのは相手に2勝する相手なんてそうそういないのだ。
「え?本当で?」
驚く声をあげるフェイトになのはは言った。
「一敗目は建築物内部戦闘で、隠れていたことに気づかずそのまま不用意に飛び出してナイフで頚動脈切られて負け、
 二敗目は囮にまんまと引っかかって遠距離からスナイパー攻撃で頭吹き飛ばされて負け、残った一勝も相手が不調だったと言うおまけ付き」
「ああ、あいつは実質的な戦闘力ではAAAランクに匹敵するからな、何せ私相手のクロスレンジ戦でもナイフ(実際はククリナイフ)で切り結べるほど実力者だからな。」
納得したようにシグナムは頷く。
「まぁ彼は平然と無視して質量兵器使うから上層部には無茶苦茶受けが悪いやけどな。」
はやては苦い笑顔を浮かべていた。
「どうりでクロノ君は彼を嫌っているんだよねぇ。」
「あ、聞いたけどユーノも一回彼の作戦に加わってリアル死にかけたとかなんとかかんとか。」
「だけど課を完璧にするにおいては必要とする人物なんや。」

―――本部前タクシー停留所
市川二佐はタクシーを捕まえようとするが、あいにくタクシーは出払っていた、
やれやれと思ったらタクシーとは違う一台の車が止まると1人の男が現れた、
管理局の職員ではないな断定した市川だが厚ぼったい印象を与える顔面、
とりわけ両目には市川が戦場でンバンドか見たことのある虚無的な陰があった、
彼はこの世の最悪な部分を戦場以外のどこかで見てきた男なのだろうと市川は思った。男はねむたげな声で尋ねた。
「市川二佐ですか?管理局義勇特殊戦隊隊長の?」
「貴公は?」
「フレイザー警部補」
男はミッドチルダ警察手帳を見せた。
「悪い知らせを持ってきました。車に乗りませんか。家まで送りますよ。」
二人が乗り込んだ車は本部の営門にむかった。
「きっと驚きますよ。」
フレイザーは言った。
「君が何を教えてくれるのかにもよる。」
市川はそっけなく応えた、町の情景を見ると市川は感じ取ったこと警察の数が多いことだ、ああこの街(クラナガン)裏は二つの勢力があるのだ。
「君はどちらなのだ?」
「何がです?」
「薬を飲む前なのか、後なのか?」
耳の後ろに汗を噴出したフレイザーは人々の尊敬あつい医師の様な表情を浮かべ応えた。
「少数派です。」
「正義は常に宝石のようなの物だからな。」
「管理局義勇特殊戦隊か。」
フレイザーはため息をつくように言った。
「大変だったのでしょうね。私も行きましたが一応は憲兵的役割のおかげで薬を飲まずに済んだのかもしれません。あなたはどうなのです?」
「ああ、小さな輸送機で敵の兵站基地に空挺落下した。そして情報収集と破壊活動を行った、そのときに薬を飲んでしまったかもしれない。
 敵の連中は我々のことをギャングかテロリストとか呼んでいたよ。」
ある管理局管轄世界で、管轄に不満をもった国々が連合して支持派の国に襲い掛かった戦争があった、支持国の必死の要請に管理局は義勇軍を派遣することになった、
そこで市川はSASで活躍したことにより(あと上層部からの受けの悪さ)特殊戦隊隊長として活躍したのだ、しかし管理局にとってそれは忘れたい名前の一つなのだ。
「確か黄色い悪魔とも呼ばれていましたね。」
「その魅力的な別称を知ったのは部下を逃がして捕虜になった後だ。いささか過大評価の気がある。我々は義勇軍であるが正規軍に組み込まれていただからこそ
 条約に遵守しつつ行動したのだ。」
「ま、二つの兵站基地と3つの工場、挙句に敵の上級指揮官クラスを4名、佐官も10名以上潰されたら過大評価もうべなうかな、でしょう。」
「ダム1つと4つの発電所も付け加えて欲しい。しかし、よろこばしいね。部下に聞かせてやりたい素晴らしい賛辞だ。彼らを褒め称えるものは少ない、
 私はあの戦争が管理局にとって防衛戦だと認識している他に方法がないから戦っていたと。先に手を出したのは連中だからね。」
「構成要件の判断はゆえに恣意的なものになりがちなんですよ、特に管理局法ではね。声が大きい奴が勝つと言ってもいいくらいに。」
「さすがだ、警察と憲兵を兼業するだけの事はある。」
「いえ、大学で受けた刑法の講義で教えられたのです。」
「今度は君が話す番だな。」
「現在クラナガン郊外である貴方の家には誰も住んではいません。」
「君が現れたときには予想していた。で、娘はどうなった?あれなりに納得して暮らしているのならば問題はない、寂しくはあるが。」
「考え方でしょうね」
「残念なことに君が何を考えている人間なのか、私はまだ知らない」
「貴方の娘さんはクラナガンでちょっとした有名人です。色々な意味で。」
「私が知らぬ間にずいぶんと性格が変わったな、おとなしい子だったが。」
「さて、そこまでは分かりませんが。彼女はリッチェンスという男の屋敷に住んでいます。大きな屋敷です、少なくともお金には困っていないでしょう。」
「ふむ、リッチェンスとはどんな男なのだ?」
「そうですね実業家です。」
「警察が興味を持つような?」
「出来れば法規の全てを忘れ去って射殺したくなるような。」
「しかし、そうは出来ない?」
「ええ、あなたの娘さんはそんな男の情婦になっています。」
車は市川の家に前に止まった。あがって茶でも飲んでいくかね市川は訪ねた、今日の所はこれで失礼しますとフレイザーは言った。
ええ、またお会いする機会もあるでしょうから。かも知れないねと市川は応えた。ハイ、恐らく、我々は共通の敵を持っていますからと
フレイザーは頷いた。例え彼が薬を飲んでいたとしても、その効力は切れかけているのだ。

―――市川邸宅
荒れているだろうとの予想に反して部屋は綺麗に整頓されていて、人の温もりも感じられた。それは誰なのか市川は理解した庭に面している居間に入ると、
庭に人影があった。
「オーリスか。」
「ご帰還おめでとうございます。」
オーリスは頭を深くさげた、市川は敬礼を返した。
「勝手だったかもしれませんが、片付けさせてもらいました。」
例の戦争が起きる前に市川とオーリスを再婚させようと周囲が活動していたことも覚えていたし、ゲイズにしても。
「ああ、彼なら彼女をきっと幸せにしてくれる…互いに一緒に戦った中だあいつはいい夫になってくれる。」
とまで言い出す始末だったが、戦争が始まったことによりすべてがご破算になった所だ。風呂も沸いていますというオーリス、
市川は小さく頷いた。本来ならば数年ぶりに体感する女の存在感に圧倒されオーリスに襲い掛かるようにしてもおかしくはなかった、
オーリス自身も全身で承諾の印を示していた。かれらはそんな関係だった・・・短い沈黙があった、そして市川は立ち上がると仏壇に行き、
妻の遺影をしばらく見つめ線香に火をつけ位牌に手を合わせた。そして遺影の方を見ながら市川は言った。
「娘がどうなったのかご存じないのかね?」
「私も仕事がありまして。」
オーリスも管理局職員としての仕事があるのだ。
「私が戻っていきた時には何もかも・・・。」
「終わっていたということか。」
「ええ」
「では経過を教えてくれないか?」
そうするとオーリスは日記帳を持ってきた、内容は父への思いについて書かれていた、市川が娘の教育に失敗したことに気づくと
同時に内心突き上げる愛おしさも浮かべていた。
「それでほかには?」
詳しいことは私も分からないのですが、貴方がちょうど捕虜になった時に悪い男と出会ったことは確かです、それはもう手遅れでした。
 それに市川は事務的な口調で訪ねた。
「場所は分かるのか、あれの暮らしている場所が。」
「いきました、一度だけ。」
「勇気ある行動だ。」
「会えなかったのです・・・。」
口ごもり始めるオーリス
「真実をくちにすることを恐れてはいけない。」
「会いたくないと伝えてきたのです、彼女は・・・それに彼女は私のことを・・」
市川はオーリスの言葉をさえぎるように言った。
「会いにかなければならない、私は彼女の父親だ、その程度の責任は果たさなければならない。」
「いつ?」
「すぐに、1人で行く、貴方は私のスーツを片付けてくれたのではないのだろうか?」
オーリスは準備万全おこたりなかった。

――――道中
市川は車を持っていなかった、出征前に持っていた車は売り飛ばしていた、しかし乗り物を操ることが出来る、
SAS時代や管理局で叩き込まれた操作技術は彼の身体に今でも染み付いている、小は自転車、バイク、
大はF-35ライトニングⅡやストームレイダーなど、数時間前にクラナガンに帰って来た男とは思えないほどきっちりとスーツを着こなしていた、
そして暑い環境ながら彼は汗をほとんどかいていなかった、そうすれば戦場で長く生きていられるのだ。彼はすぐにタクシーを止めた、そして行き先を言うと運転手はおびえたように尋ねた。
「旦那、あんたはそんな商売人に思えないのだが。」
「別にリッチェンス氏の同業者ではない。」
「そうかい・・・こういっちゃなんだが碌な人間じゃないね、その人は。」
「そうなのか?」
「そうですよ、あいつらは表では善人面しているけど裏では・・・。」
市川は苦笑を浮かべ。
「急いでくれ、もうすぐ日が暮れる、私は夜が余り好きではない、夜はお化けが出るからな、主に私の心に。」
運転手は必要以上の料金を受け取ろうとしなかった。

――――リッチェンス邸
市川は、娘が情婦として暮らしているはずの屋敷の周囲を一巡りした。成る程、塀にはすくなくともAAAランク級の攻撃を受けても耐えられるように強化してあるし、
空には罠を張っている跡がある、ほぼ正方形の建物は一つの要塞だ…だが、市川は思う、屋敷の周辺が完全な直線の道ではなく、庭に植えられている様々な木はそこを守りにくくした、
全く、自分は何を考えているだ市川は苦笑した。管理局の影響が強いクラナガンの近郊で戦争をはじめる準備をしようとは、まぁそれが解答そのものだが。

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最終更新:2010年04月09日 21:14