それは小さな願いだった。
望んだのは、人としての普通の生活。
家族や仲間と、笑って過ごしていたかった。
……だが、奴ら-悪魔-はそんなささやかな願いを……
平和だった家族の運命を……
全てを狂わせた。
血まみれのこの指先……
止められるのは、何もかもが終わる時だけ。
既に迷い込んでしまったなら、俺は家族だって、仲間だって倒してみせる。
宇宙の騎士リリカルなのはBLADE……
始まります。
海鳴市の住宅街。ここを、一人の青年が歩いていた。全身にかなりの疲労が溜まっているらしく、壁に手を付きながらヨロヨロと歩いている。
その男こそ、Dボゥイと同じ顔を持つ男……相羽シンヤだ。
「クソ……よくも……よくも……!ブレードッ……!」
ブレードの新たな技、『ハイコートボルテッカ』の直撃を受けたエビルは、かなりのダメージを追いながらも、なんとか撤退することに成功。
このまま歩いて行けば、もうすぐで八神家だ。シンヤはテッカマンである為に、怪我の回復力も人間のそれを遥かに上回る。
一晩も寝れば、なんとか回復するだろう。そんなことを考えながら歩いていると、前方から巨大な青い犬が歩いてくる。
「ザフィーラ……か……」
どうやら、シンヤが心配になったザフィーラがここまで迎えに来てくれたらしい。
「……シンヤ、無事だったか」
「ああ、当たり前さ……俺が負ける訳…………」
言いかけた所で、またしてもふらつくシンヤ。
「……無理をするな。乗れ」
見兼ねたザフィーラは、シンヤに背中を向ける。このままザフィーラに乗せて貰えば、安全に帰ることが出来る。
「フン……余計なお世話だよ、ザフィーラ。俺はこの程度で助けを求める程、落ちぶれちゃいない」
「フ……、そうだな。シンヤ」
強がるシンヤ。ザフィーラからも、クスッと笑いが漏れる。いつもと変わらないシンヤに、少し安心した。
こうして二人は、シンヤの速度で八神家への帰路をゆっくりと歩いて行く。
第6話「それは小さな願いなの(前編)」
それから十分程経過し、シンヤはようやく八神家の玄関にたどり着いた。
シンヤがドアを開けるや否や、すぐにシャマルが走ってくる。
「シンヤくん……!」
「シャマル……」
「良かった!無事で……。解散した後、シンヤくんだけ居なくて、心配したんだから!」
少し涙ぐむシャマル。同時に、子供をしかる母のような表情も垣間見せる。
「すまない……それより……」
喋りながら廊下を通り、リビングに入る。そしてソファにドサッと座り込んだシンヤは、シャマルを見据えた。
「あれは一体どういうことだ……!?」
「え……?あれって……」
「あの結界を破壊……いや、消滅させたボルテッカだよ!何故闇の書がボルテッカを使える……!?」
シンヤは、いつになく真剣な表情でシャマルを問いただす。
「ごめんなさい……それは私にもわからないの……」
「わからないだって……?冗談だろ?じゃあシャマルは、あれが何か解らずにボルテッカを使ったって言うのかい!?」
「聞いて、シンヤくん。私が唱えたのは、『破壊の雷』っていう呪文なの。どうしてボルテッカが起動したのかなんて、私も知りたいくらいよ……」
「破壊の雷……だって?その魔法の正体がボルテッカだというのか……!?」
「結果的に……そうみたいね……。」
これ以上聞いても埒が明かないと判断したシンヤは、大きなため息を付きながら、ソファの背もたれに体重を預けた。
そんな気まずい雰囲気を打破するのは、シグナムだった。シンヤの質問により忘れがちだったが、彼女達にはやらねばならない事がある。
「シャマル……それよりも、主に連絡した方がいい。きっと心配しているぞ」
「あ……そうだった!ごめんねシンヤくん……その話は後で……」
「いや、僕はもういい。それよりも、早くはやてに電話してやれ」
シンヤに言われたシャマルは、コクリと頷くと、すぐに受話器を取り、はやての携帯番号をダイヤルした。
その後シャマルは、ヴォルケンリッター全員とシンヤの無事を伝え、ひたすらはやてに謝罪した。
その甲斐もあって、はやては快く許してくれた。はやてが言うには、冷蔵庫には晩御飯のセットとデザートが入っているらしい。シグナムがそれを確認。
シャマルは最後に「本当にごめんなさい」と謝罪し、電話をヴィータに代わった。ちなみにその間、シグナムは冷蔵庫開けっ放しだ。
いくら電気代はおじさんが出してくれるからといって、それでいいのかシグナム!
ヴィータに電話を代わったシャマルは、一人庭で夜空を眺めていた。どうでもいい話だが、中々いい作りの庭だ。
そこへ、冷蔵庫を閉めたシグナムがシャマルのそばに歩いて来る。
「……寂しい思いをさせてしまったな……」
シグナムに言われたシャマルは、小さく「うん……」と頷いた。はやてには本当に悪いことをした。
「……それにしても、お前を助けた男は一体何者だ?」
「わからないけど、当面の敵では無いみたい……」
今日、クロノからシャマルを救った仮面の戦士。もちろんヴォルケン一同、そんな訳の解らない男とは面識が無い。
ヴォルケンと面識がある仮面の戦士は、赤い悪魔と、白き魔神だけだ。
しかも闇の書が完成したとしても、その力が使えるのは主であるはやてだけだ。他人が協力する意味がわからない。
「……それに、闇の書が放ったボルテッカの件もある。闇の書がテッカマンと
無関係とは言えない以上、管理局の連中もますます本腰を入れるだろうな……」
「そうね……管理局のテッカマンブレードにも、これからはもっと注意しなくちゃ……」
まさか人外の強さを誇るテッカマンエビルが敗れるとは、シグナムもシャマルも……いや、誰も思ってはいなかった。
恐らくシンヤとしても、これからはさらにブレード打倒に燃える事は間違いないだろう。
「だが、あまり時間も無い……」
「うん……」
「一刻も早く、主はやてを闇の書の真の所有者にしなければ……」
月を見詰めるシグナム。今回の砲撃魔法『ボルテッカ』のせいで、闇の書の頁は随分と減ってしまった。
早く集め直さなければ、本当に手遅れになってしまう。二人は、再び闇の完成を心に誓った。
一方、海鳴市・ハラオウン家。
なのはとフェイトは、レイジングハート・バルディッシュの新たな力の説明を受けている最中だ。
Dボゥイはそれを簡単に聞き流しながら、ソファに腰掛けていた。さっきから、どこか頭がクラクラする。座っている方が楽だ。
すると、Dボゥイの横に人間形態のアルフが並んで座った。やけに嬉しそうな顔をしている。
「Dボゥイ!復活おめでとう!」
「……ああ。お前達の力があってこそだ」
心なしか、Dボゥイも嬉しそうな顔をしているような気がする。
「管理局の白き魔神!テッカマンブレードがさらに強くなって復活したとあっちゃあ、もう怖いもの無しだね!
あのエビルとかいう奴も手も足も出ないだろうさ!」
「……いや…………」
アルフは嬉しそうにDボゥイの背中を叩く。だが、Dボゥイはエビルという単語を耳にした途端に、その表情を変えた。
「奴は……俺の知っているテッカマンエビルは、この程度で終わるような奴じゃない……」
「え……あ、あいつってそんなに凄いのかい?」
「ああ。奴はトドメを刺さない限り、何度でも蘇る。そして……トドメを刺せるのは、俺だけだ……!」
「Dボゥイ……」
アルフは本当のエビルの恐ろしさを知らない。だからこそ、あれだけ力の差を見せ付ければ、次からも負けないと思っていたのだ。
「恐らく奴に2度同じ手は通じない。次会うまでに、俺ももっと強くならなければ……」
「大丈夫よ。貴方なら……人よりも人らしいんだから、きっとまだまだ強くなれるわ!」
「リンディ艦長……」
そこへ割り込んで来たリンディ。気付けばエイミィの説明も終わったらしく、なのはやフェイト、クロノ達もDボゥイの話を聞いていた。
特に、実際に戦ったフェイトはDボゥイの言葉をよく理解していた。
「……私も、あのテッカマンエビルからは、凄く残虐な……何かを感じた。多分、次も来ると思う」
「実際に戦ってみた者にだけ解る感覚だろうね……」
コクコクと頷くエイミィ。
「それにあのテッカマン、とんでもなく強いよ。多分、私との戦いでも半分以上の力をセーブしてたと思う」
「フェイト相手に半分以下って……」
なのはの肩に乗るユーノが、「マジかよ」といった口調で呟いた。
ユーノは以前、なのはと行動を共にしている間、フェイトとは敵として……いや、ライバルとして戦い続けた。
そんなフェイトの実力を知っているからこそ、それが信じられなかった。
「だからこそ、エビルの相手は俺じゃ無きゃダメなんだ。奴だけは……俺がこの手で!」
「Dボゥイ……」
何故こうまでしてエビルを倒そうとするのか。それはDボゥイにしか解らないが、肝心の記憶を失っている為にそれ以上の情報は聞き出せない。
「あ、そうだDボゥイ!ペガスの説明しなきゃ!」
だが、そんな緊迫した空気は、エイミィによって破られた。
「そうだな……あのロボットについて、僕たちはまだ何も聞かされて無い。」
「うんうん、私も気になる!あのロボット!」
クロノとなのはも、ペガスの説明会というイベントに食いついた。特になのはは、元々この手の話が好きなだけに、素で嬉しそうだ。
「えーと、じゃあモニターで説明するね!」
リモコンを押すエイミィ。それにより、部屋が暗くなり、巨大なモニターが現れる。
「はい、今日もなぜなにエイミィの時間がやってきました!今回はあの青いロボットの説明だよ♪」
楽しげに解説モードに入るエイミィ。この演出には一同少し驚き気味だ。
モニターにでかでかと表示されているのは、青いロボット。名はペガス。
アルフも「さっきの青いロボットだ!」と指を差す。
「コホン……まずこれは、管理局の作業用ロボットを改造した、サポートロボ『ペガス』って言うの。」
「改造大変だったのよ?」
クスクスと笑うリンディ。実際に自分が改造した訳では無いが。
「このロボット……ペガスの役割は、テッククリスタルが割れてしまったDボゥイの変身を助けること……
それから、単純な戦闘支援。全身に装備した魔法兵装が特徴で、ブレードと一緒に戦う際には飛行形態に変型するよ!」
「変型かぁ……」
キラキラと目を輝かせるなのは。とりあえずなのはは無視し、ユーノが一つの疑問を口にした。
「ちょっと待って。変身を助けるってどういうこと?前までは一人で変身してたじゃない」
「そういえば……さっき、ペガスの中に入って、ブレードになってたね……?」
フェイトも首をかしげる。エイミィも「いい質問だね!」とフェイトを指差した。
「残念だけど、今の管理局の技術では、ロストロギア級のデータを持ったテッククリスタルを完全修復……って訳にはいかなかったんだ」
「だから、割れたクリスタルをペガスに内蔵し……俺はその中でのみテックセットできるということか」
「そーいうこと!じゃあここで質問コーナーね……はい、匿名希望の艦長ママさんからの質問!」
笑顔で話を進めるエイミィ。艦長ママってあの人しかいないじゃないか……。
リンディも、「フフフ」と微笑んでいる。珍しくクロノも何も突っ込まないが。
「『ハイコートボルテッカって何なの?お姉さん!』……との質問です!」
「ハイコートなんとかって、あのエビルを倒した物凄い砲撃のことかい?」
腕組をしながらアルフが口を開いた。
「その通り!ハイコートボルテッカっていうのは、ペガスに搭載されたフェルミオン砲と、ブレードのボルテッカを融合させて……ってあれ?」
様子がおかしいことに気付いたエイミィ。それもそのはず。聞き慣れない単語続出で、一同は完全に取り残されている。ポカンとしている。
「え、えーと……まず、ボルテッカについて説明して欲しいかな?」
となのは。
「う~ん、わかりました!まずボルテッカっていうのは……」
ピッとリモコンを押し、モニターを切り替える。次に映されたのは、線で書かれたテッカマンブレードの図だ。
「まずボルテッカっていうのは、反物質ビーム砲っていったら解るかな……まぁ簡単に言うと、『触れた物を消滅させる物凄いビーム』だよ」
「「しょ、消滅……!?」」
驚く一同。
「その原理は、『反物質粒子フェルミオン』っていう、触れた物を対消滅させちゃう粒子を体内で蓄積させて……」
モニターの中の、線で描かれたブレード図の肩が開く。
「それを加速して放出。当たった物を消滅させるんだ。」
簡単な図ながら、ブレードの肩から伸びた線は、向かい側のターゲット図に命中。ターゲットは消滅。ボルテッカを表しているのだろう。
一同も、なんとなく分かったらしく「なるほど~」と頷く。まったくエイミィお姉さんの説明はわかりやすい。
「……にしても、フェルミオンなんて聞いた事無いな……」
「私も最初は聞いた事無かったよ。でも、本局データベースを漁ってたら、フェルミオンって項目があったんだ。
どうやらどこかの管理外世界で発見されたらしいけど……」
声のトーンを落とすエイミィ。何か言いづらいことでもあるのだろうか。
「けど……何だってのさ?」
「それに関するデータが、全部抹消されてたんだよねぇ。何者かに、意図的に……」
「どういうこと……?」
「だから、フェルミオンって物質自体は観測されてるんだけど、発見場所とか、時代とか、詳しいデータが全部抜け落ちてるんだよ」
「それは……不自然だな……」
クロノも、腕を組んで考え込む。
管理局の上層部の連中が、何らかの思惑があって抹消したのか……?だが何の為にそんなことをするのかが解らない。
「うん……それと気になるのは、今回闇の書の騎士達が使った結界破壊の砲撃魔法……あれは間違いなくフェルミオンだよ」
「え……?」
「あの光は間違いなくフェルミオンの輝きだよ。Dボゥイは何か感じなかった?」
エイミィに振られたDボゥイは、ゆっくりと顔を上げた。
「ああ……間違いない。あれはテッカマンのボルテッカだ。砲撃の直前、僅かにだが他のテッカマンの感応派を感じた。」
「じゃあ…エビル以外にもテッカマンが……?」
「それは解らない。だがどうやらエビルも知らなかったらしい。少なくとも、俺と奴以外のボルテッカだ。」
「……騎士達にとっても、所詮協力者に過ぎないエビルに、そこまで教える必要が無かった……ってことか?」
Dボゥイの言葉に、クロノが憶測を口にした。確かに本来仲間では無いエビルに、無駄な事を教える必要が無いというのはわかる。
「え……えーと、話が逸れちゃったけど、ハイコートボルテッカの話だったね。」
エイミィはコホンと咳ばらいし、説明を再開する。同時に、モニターの図にペガスが追加される。
「ハイコートボルテッカは、ペガスに搭載されたフェルミオン砲を、ブレードのボルテッカと連動させて……」
モニターに映るのはハイコートボルテッカ発射図。ブレードから出た線が、ペガスの上で増幅され、太線となっている。
「威力を倍増する!まぁ、つまり、ペガスとブレードの合体ボルテッカだよ!」
「え~と……つまり、ボルテッカを光とすると、ペガスはそれを増幅させるレンズみたいな物……ってことかな?」
「うん、ユーノ君、いい例えだね!だいたいそんな感じ」
エイミィお姉さんの説明に、皆が納得した。とりあえずペガスについての説明は、これにて終了だ。
ふと、時計を見ると、時間は既に10時を過ぎていた。そろそろ帰らねば高町家の一同が心配するとの事で、なのはとユーノは先に帰宅した。
一同が解散した後、寝る準備も済ませ、フェイトとDボゥイが二人でソファに座っていた時の事だ。
さっきからDボゥイの様子が可笑しい。どうにも苦しそうなのだ。心配になったフェイトは、話し掛けてみることに。
「……どうしたの?Dボゥイ」
「……いや、何でもない……気にするな」
言いながら立ち上がるDボゥイ。
「水を一杯貰うぞ……」
Dボゥイは少し歩いてキッチン前で立ち止まる。そしてコップを取り、水道の蛇口を捻った。
コップには水が注がれ、Dボゥイはそれを口にしようとした。
その時だった。
『ガシャァンッ!!』
ガラスが割れる音。音はキッチンから聞こえた。驚いたフェイトは、そっちを見て浚に驚く事となる。
なんと、そこで突っ伏して倒れているのは外ならぬDボゥイだ。近くには割れたコップの破片が四散している。
「……ッ!?Dボゥイ!?」
フェイトは走ってDボゥイに寄り添う。
「どうしたの、Dボゥイ!?大丈夫……!?」
「あぁ……大丈夫……だ。少し……目眩がしただけだ……」
Dボゥイは、頭を押さえながら立ち上がった。どうやらなんともないようだが……
「目眩って……今日の戦いのせい?」
「解らない。きっと疲れてるんだろう……。悪いが今日は先に眠らせて貰う……」
「ちょ、ちょっとDボゥイ!?」
Dボゥイはフェイトの顔を見る事なく、頭を押さえながら自室へと向かっていった。苦しそうに。ふらつきながら。
まさかこの時、フェイトもDボゥイも……いや、誰もが想像し得なかっただろう。
Dボゥイの体の中でとある異変が起こっていた事を。
残酷な運命が、彼の体を蝕み初めていたということを……。
翌日。クロノとユーノ、それからエイミィは、本局で二人の人物に会っていた。
その二人はソファに座り、猫のような耳を頭から生やしている。
「なるほど……闇の書の捜索と……」
「ラダムと、テッカマンについて……か。」
「ああ……よろしく頼む」
クロノ達の向かいに座る二人の女性。『リーゼロッテ』と『リーゼアリア』だ。
今回クロノは、この二人に、ユーノの『闇の書及びラダムについて』の調べ物の協力を要請するのが目的だ。
「それで……どうするの?」
問われたクロノは、神妙な面持ちでその口を開いた。
「彼の……無限書庫での調べ物に協力してやって欲しいんだ」
アリアとロッテに簡潔に内容を伝えるクロノ。当のユーノはかなり不安そうだが……。
「無限書庫、ねぇ……」
そんなユーノを見て、アリアとロッテは「ふっふ~ん」と、怪しげに笑った……。
一方の海鳴市では。
楽しそうに雑談をしながら学校から下校するなのはとフェイト。
ちょうどDボゥイの話をしていた。そこでフェイトは、昨日Dボゥイが目眩で倒れた事ついて話すことに。
「……へぇ。やっぱりボルテッカって疲れるのかなぁ?私もスターライトブレイカーとか撃った後は疲れちゃうし……」
「うん……そうだろうね。やっぱり破壊力の高い技は何でもリスクを伴うんだね~」
一通りの話を聞いたなのはは、単純にボルテッカの威力が高すぎるせいだろうと判断。そのまま話を進める。
そうこう話しながら歩いていると、二人は市内の某大手スーパーの前を通り掛かる。
それにより、自分の用事を思い出したフェイト。
「あ……後で晩御飯のお使い行ってこなきゃ!」
フェイトの家庭はただでさえ忙しい人が多い。自分が買い物に行ける時は行かなければならないのだ。
「あ、じゃあ私もフェイトちゃんと一緒に行くよ」
立ち止まったフェイトに、なのはが微笑みかける。本当に仲が良い二人だ。
「ってアレ……?」
その時だった。二人の目に入ったのは、スーパーの向かい側を歩く見慣れた人物……Dボゥイだ。
「あ……Dボゥイ!」
「Dボゥイ!もう大丈夫なの?」
早速Dボゥイに駆け寄る二人。だが、Dボゥイの様子はどこかおかしい。何かが違う。
Dボゥイも二人を見てはいるが、一言も喋らないのだ。それにどこか、Dボゥイよりも冷たい雰囲気だ。
「あれ?Dボゥイってこんなに髪の毛長かったっけ?」
「………………」
問われたDボゥイは、一瞬なのはを見る。
そのDボゥイは、いつもの赤と白の変な服を着ていない。黒いシャツに赤いジャケット。胸にはネックレスという至って普通なスタイルだ。
「Dボゥイ……どうしたの……?」
さすがにおかしいと思ったフェイトも、怪訝そうな表情でDボゥイの顔を見つめた。
「………フン……。」
「あっ……Dボゥイ!?」
だが、Dボゥイが返事を返すことは無かった。ポケットに手を入れたまま、Dボゥイは黙って立ち去っていったのだ。
「……何?あの態度……」
「変なDボゥイ……」
二人はキョトンと顔を見合わせた。
最終更新:2007年11月21日 18:42