リボンなナイト11 第三話
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「…だから…アスナさん、ずっと…」
それは、涙声だった。
シャワーで髪の毛を洗い流した明日菜は、桶に注いだ湯をネギの頭上からどばっと注ぐ。
ネギは、ごしごしと掌で顔を拭っていた。
「ネギ」
「はい」
「だからネギ、こっち向いて」
「はい?いっ!?」
言われるままに振り返ったネギは、
腰に右手を当てて堂々と立っている明日菜を目の当たりにして
慌てて首の向きを元に戻して下を向いた。
「だから、こっちを向くの」
「え?アスナさん?」
「早く」
猛烈な意思のせめぎ合い、何度となく首が前後に振れる心の動きすら、丸で目に見える様だった。
明日菜の念押しを聞いて、ネギは腰掛けを軸におずおずと座ったまま回れ右をする。
「はい、前向いて」
キビキビとした明日菜の口調に、
下を向いていたネギはヤケクソの様にそれに従う。そして、言葉を失う。
「どーお、ネギ?この年頃の半年って早いんだからねー。
あの時よりちょっとは大人になった?」
「わ、分かりません」
頬を染めながらも、ニカッと笑って尋ねる明日菜に
ネギは下を向いてブルブル首を横に振った。
「綺麗だって言ってくれた…」
「え?」
一転、ぼそっとした明日菜の言葉をネギが聞き返した。
「ずっと、乱暴者って思われて友達だってそんなにいなくってさ、私」
「そんな事、ないですよ」
明日菜の独白に、ネギが優しく声を掛ける。
「アスナさんの友達は、
本当にアスナさんの事を大事に思ってる素晴らしい友達です」
「ありがと、ネギ。
そーんなガサツな私の事、ネギは綺麗だって言ってくれたんだよね」
「綺麗です、アスナさんは」
「ほらー、その笑顔、本気で笑って本気で言ってるからたまらない天然女殺しってさー、
それでどんだけフラグ立てれ女泣かせたら気が済むのあんたはって」
「はうぅー、ごめんなさい」
今までもなんとなく指摘されている事に、ネギはぺこぺこ頭を下げる。
「でも、だからネギはいつでも本気でいつでも信じられるんだ。
だからもう一回、ちゃんと見て、それで言ってくれるかな?」
明日菜の言葉を聞き、ネギは静かに顔を上げて、ほーっと言葉を失った。
体力バカらしく全体に引き締まっていながら、比較対象がぶっ壊れていると言うだけで、
年齢を考えるなら女としても早熟な程に主張している見事な造形だった。
「綺麗です、アスナさん…」
「ありがと、ネギ」
ほーっと魂が抜けた様に言うネギに、明日菜は照れ笑いを交えて応じた。
「立って、ネギも」
「え…」
「私だけこんなの、ん、恥ずかしいんだからね」
「は、はい」
明日菜の思わぬ言葉に、ネギはおずおずと立ち上がった。
そんなネギに明日菜がつかつかと近づく。さすがに羞恥心がネギの体を動かそうとするが、
ネギはネギの考えでそれを押し留める。
「んふっ、ネギ、ネギこそね、半年かそこらで逞しくなっちゃって。
ホント、無茶ばっかりしてたモンねこの修行バカは」
「ごめんなさい」
「ホント、心配したんだからねネギ。
でも、だからそれで、得るものは山ほどあったんだよね」
「はい」
「後悔、してないよね」
「はい」
敢えて、声に出しての応答だった。
後は、無言で抱き合っていた。
「ん、ネギ」
「はい」
「スケベ」
「ごめんなさい」
どこか夢見心地な言葉のやり取り。説明は、下半身のちょっとした動きで十分だった。
「やっぱりこんな風に、カチカチって言うかそういう風になるんだ。あっつい感じだし」
「はい、そうみたいです」
「ふーん」
ふわふわとした会話を経て、明日菜はすっとネギから離れ、
その場にしゃがみ込む。
「ふーん」
「あんっ」
しゃがみ込んだ明日菜が、目の前で、未だ幼いのが分かる外見ながらも
精一杯天を目指している白い茎をつんつんと指で突いてみる。
「やっぱり熱い。それに硬くなってるし」
「それは、アスナさんが、ひあっ!」
荒々しい程の明日菜の印象からはかけ離れた柔らかな掌。
熱い急所をその柔らかな感触に包まれ、それだけでネギは悲鳴を上げる。
「え、何?」
「いやっ、アスナさんっあ、あんっ、ああっダメあーっ」
「え?うわっ!?」
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もぞもぞと何となく掌を動かしただけのつもりだったが、
弾け出した暴発の直撃を受け、丸で経験の無かった明日菜は流石に仰け反り尻餅をついていた
そして、明日菜が手を離すと同時に、ネギも尻餅をついて荒い息を吐いている。
「んぺっ、んっ」
「あ、あの、アスナさん」
そのネギの口調は、ひたすらおろおろして又泣き出しそうでもあった。
「んんっ、あーそう、ネギってもう射精出来ちゃうんだ、やっぱ男だねー」
笑い声を交えた明日菜の声は、所々キーが外れていた。
「えーと、アスナさん、アスナさんごめんなさい、あの、なんか急に凄く何かが…」
「へーほーふーん、じゃあネギ、今の何だか分からなかったの?」
「え、あの、多分そのもじょもじょ…」
「そ、射精で精通、でしょネギ。
柿崎の言う通り、ネギもちゃーんと男って事、こっちの方はね。
あー、分かってるって、これでも神楽坂明日菜保健体育マスターよ、
男の機能が成長して興奮して射精してってそーゆー仕組みだって事ぐらい知ってるから」
「は、はい」
バタバタと言う明日菜に、こちらも一応大卒学力のネギがこくんと頷く。
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シャワーで手と顔をばしゃばしゃ洗った明日菜が、
腰掛けに戻ったネギにすっと近づきしゃがみ込み、まずはじゃーっとシャワーで洗い流す。
「あうっ」
「うん、さっき大きくなった時はちゃんと見えてたよね。
いーい、ここもちゃんと洗っておくの」
「は、はい」
ネギはやっとやっと返事するが、矢の様な勢いで硬度を増しているのだから
明日菜も当然それは察知出来る。
明日菜は一旦手を離し、呼吸を整えているネギを眺める。
ふーっと一息ついたネギが、ささっと視線を外した。
「ネギ」
「はい」
努めて平静に返答するネギの声に、明日菜はくすっと笑みを浮かべる。
「触ってみる」
「え?」
「ほらっ、次は無いかもよ」
しゃがみながらも堂々と胸を反らし、そしてそっぽを向いて言う明日菜を見てネギはごくりと喉を鳴らす。
「あ、んんっ、どう?ネギ?」
「凄く、柔らかくて温かい。凄く気持ちいいです」
「そ、そう?あんっ」
「アスナさん?」
年齢を考えるなら豊かと言うべき乳房を優しい手つきで包み込まれ、
声を上げた明日菜にネギが問い返す。
「大丈夫、って言うか、くすぐったくて気持ちいい。
あんまり強くすると痛いから」
「気持ちいいんですか」
ほっとした様なネギの素直な返答に、付き合いの長い明日菜は何かいやーな予感を覚える。
「良かった、気持ちいいんですかそうですか」
「あ、ちょい待ちネギ、ちょっ、あ、あっ、あっあっ、あぁー…」
十分な質感と柔らかな中にも張りがある絶妙の感触。
それを掌一杯で楽しむ、天性の器用さを発揮した絶妙の力加減。
急加速で沸き上がる何かに明日菜が気付いた時にはもう手遅れだった。
最終更新:2012年01月28日 17:22