ヤツの時間がきた ◆WqZH3L6gH6
『今晩は。三回目の定時放送の時間よ』
『繭、つまらない結末は見たくはないもの』
日光を弱点とする我々に対する当て付けか?とDIOは内心毒を吐いた。
『まずは禁止エリアの発表よ』
今いるエリアのB-7が選ばれる事はあるまいとDIOは高をくくる。
地下通路への出入口があり、殺し合いに乗り気である2人がいる施設。殺し合いの進行の加速を願う主催者がここを塞ぐ筈がないと。
【B-7】
【C-3】
【G-7】
「……!?」
何ィ!?
DIOの胸中がざわめく。隣にいるヴァニラ・アイスからも僅かながら動揺が感じられた。
『それから、自分の支給品確認はきちんとやっておいた方がいいわよ。
あと時間が来るまでに禁止エリア予定地を調べてみるのもいいかもね。
思わぬ所で得るものがあるかも知れないのだから
これは繭からのアドバイスよ』
既にホテルの探索は充分にしてある。まだ何かあるというのか?
『次は死んでしまった参加者の発表を始めるわよ』
「……」
脱落者の発表は情報不足な事もあり、今のDIOにとって内容よりも数の多さが重要である。
……死んだか。先程視聴したDVDからして予想しにくい悪辣な策を用いる男で、まともに相手にしたくない類の相手であったが
個人としての戦闘力はそれほどでもなかった事から脱落自体は驚くほどではない。むしろ僥倖。
読み上げられていく脱落者の多さにDIOの気が少々晴れていく。
一方で従者であるヴァニラ・アイスは神妙な面持ちで放送を聞いている。
「……」
奴も死んだか。一度不審な行動こそあったが、このゲームにおいても上手く立ち回っていたと取れる優秀な部下だった。
死んでしまったのは仕方がない。今後の計画にも組み込まれていなかった駒……未練はない。
『全部で15人よ、15人。残り24人。
ふふ……ここまでやる気があるなんて驚いたわ。今夜中にも決着がつきそうよね』
DIOとしても夜明け前にこのゲームの決着を付けるつもりだった。
ヴァニラ・アイスの命は惜しいが、最悪優勝すれば主催と接触する機会がある。
能力制限を受けている身とはいえ、主催の繭とか言うあの小娘の裏を掻く自身がDIOにはあった。
『でもね、もし長引いて決着がタイムリミット寸前になったとしても、
優勝した子にはちゃんとご褒美を上げるから心配しないで』
「…………」
DIOの困惑は強くなる。
もし追加の禁止エリアにホテルが含まれていなければ戯言と一蹴しただろうが。
おかしい。
そもそも禁止エリアがあるのは、殺し合いの進行を滞らせない為にあるのではなかったのか。
参加者を移動させざるを得ない状況に追い込み、参加者同士を接触させてゲームを加速させる。
なのに最後の繭の発言は殺し合いの早期終結を否定していた。
虚言の可能性も浮かんだが、そうする理由も見当たらない。どういう事だ。
『次は正子――午前0時に放送を始めるわ。また放送が聞けるといいわね』
放送が終わった。
DIOとヴァニラ・アイスは言葉を発さず、沈黙を続ける。
「……」
自尊と好奇と殺意に彩られていたDIOの心に疑問という感情が広がっていく。
今回の放送以前に感じられたゲーム推進という主催のスタンスを否定する放送をしたのは何故か。
DIOは『シャイン』という名のこのホテルに愛着を持っている。まさか嫌がらせの為だけにB-7を禁止エリアに指定したのか?
我らを追い立てる以外に理由があるというのか?
ホテルへの被害はエレベーター一台、テレビ一台とやけに凝った麻雀ゲーム機一台程度。
とても運営の支障がきたすほどの被害とは思えない。
地下通路の『ジョースターの軌跡』の内容からして主催がDIOを舐めているのは否定できない。
一例をとっても非参加者のジョセフ・ジョースターのコーナー内の、柱の男の紹介文からして嫌味ったらしく
吸血鬼の上位種族と強調していた位だ。嫌がらせ以外にそうする意味があるのか。
しかしそれでもだ、ゲームに忠実で優秀な我々をゲームの進行を無視してまで不利にする事にメリットはあるのか?
しかもこのホテルは夜明けまでに決着がつかない場合、引続き拠点として使える施設であるにも関わらず。
訳が解らない。
DIOは目標はそのままに今後の計画の見直しをせざるを得なかった。
主催がこちらに更なる害意を持っているのなら、これまで通り単純に動くのはまずいと思ったから。
優勝したところでまともに相手にされず適当に遊ばれ処分されて終わりでは洒落にならない。その恐れが出てきた。
「…………」
DIOは熟考の末、傍らの部下の方を振り向く。
ヴァニラ・アイスは顔を少し上げ、主の命令を待った。
「執務室に行こうか。ああそれと、君の身にこれまで起こった出来事も詳しく話してくれないか?」
そう言うDIOの声は少しばかり掠れていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
D:『すまないが故あって例の場所に行けなくなった。
契約は続行するので、可能ならまたこちらから連絡する』
同盟者の
セイバーがチャットを見れるかどうかは知らないが、とりあえず通知文書は書いておく。
先ほど自分が書き込んだのも含めたチャットの文章を確認しながら、DIOは部下から提供された情報……事実を噛みしめる。
――坂田銀時
己に多大な屈辱を与えた本能字学園での3人の内1人。
名は地下施設『万事屋の軌跡』を確認したヴァニラ・アイスによって知らされた。
奴の関係者である他6人の参加者についても。
そしてホテルから南にある『モンスター博物館』の情報をも。
坂田銀時……先程の放送で死が判明した、銀髪の寝ぼけ眼の口減らずな侍。
「……」
あの実力から脱落はしないと思っていたが、それでも命を落とした。
予想外。想定できなかった自分に対しても得体の知れない悪感情が湧いてくるのをDIOは悟る。
彼に報復する事はもうできない。その事実からDIOの唇が怒りに歪んだ。
行き場のない怒りはどこに向ければいいのか。
「戻りました」
「! ……セイバーはこちらに来ていないようだな」
素面に戻ったDIOの問いに、ホテルの外を確認してきたヴァニラが頷く。
DIOが席を外すと、ヴァニラ・アイス主に二言声をかけるやパソコンに向かい文章を打ち込んだ。
I:『一番目のMと、五番目のD。今夜、地下闘技場で話がある』
それはヴァニラ・アイスの策。主の許可は取ってある。
そうした理由はこれから自分らが向かう方角に参加者を集める為のと、チャットでの頭文字を確認の為の。
DIOはその文章を見て満足そうに口元を歪ませた。
頭文字Dを持つ参加者は現状DIOのみ。そしてDIOを警戒する参加者が多くいるだろう事は当人にも予測はできる。
自らの危険性と、携帯型情報端末を持つと思われる『にぼっしー』や『犬吠埼風』らの仲間意識を逆手に取った策。
ホテルに代わる拠点は北西の駅が第一候補。充分な日光対策の可否を確認した後、駅か闘技場の周辺で標的を探すのもいいだろう。
「行こうか」
「はっ」
放送前、DIOはチャットを確認してから自らの館に向かい、そこで待っているだろうセイバーを殺害するつもりだった。
しかし放送をきっかけに、冷静さと用心深さを強くしたDIOはその選択を少々の逡巡の後切り捨てた。
セイバーにも制限が掛けられている可能性にも気づいたし、
神威のようなセイバーと同等の危険性を持ち得る未知の参加者がいる可能性にも思い至ったから。
地下施設『モンスター博物館』でヴァニラ・アイスが人外の情報を得たのもその理由。
2人は地下を降りていく。
行き先は地下通路 地下闘技場方面。
4箇所あると思われる地下施設の、唯一未確認の施設を確認する為に。
仮に優勝を目指すにしても情報を多く得る事は有益に違いない。
放送前のDIOなら部下に『ジョースターの軌跡』を見せるのに躊躇したが、今はもう構わない。
「アイスよ、君が
範馬勇次郎の腕輪を回収したのは、腕輪を解除する術を探る為だろう?」
「その通りです……。恥ずかしながら解除の目処は立っておりませんが……」
「恥じずともいい。これから参加者から情報を集めればいいじゃあないか」
「では……これからは一部の参加者はあえて生かすと?」
「生かすのは比較的弱い相手からだな。此方の命が危うくなれば話は別だが。
それに負傷し行動不能になった相手でも、最悪廃人でもいい」
「肉の芽を利用されるのですね」
「使わずに協力してくれる者がいれば、それはそれでいいんだが。
あ、
桂小太郎やコロナは当然始末するぞ」
どうしても始末せねばならぬ邪魔者を始末した後は、タイムリミットまで主催対策を取る積もりでいる。
残すのは我らを含めて10名以下にするのが無難か。主催を斃す頃には5名以下になってそうだが。
可能なら主催についての情報を持つものがいればいいが、そこまでは期待してない。
異能や技術の情報を主に集め、主催の裏をかく方法を探る。
まずは此方の能力を制限していると思われる腕輪の解除を目指すか。
「DIO様……」
ヴァニラ・アイスは自らの2枚の黒カードを取り出す。
DIOは視線のみ動かし、支給品の受取を拒否した。
「君が持っていろ。わたしは他の参加者から必要なものを奪う」
「…………感謝いたします」
「……」
ヴァニラ・アイスとの緻密な情報交換の結果、得られたものは非常に大きい。
更なる地下施設の存在やヴァニラ・アイスのスタンドの制限なども。
主催に対する警戒心も。DIOは途中鏡に映った己の姿を横目で見てふと思った。
飢えた狼のような雰囲気を持つ自らの顔を見るのは百何年ぶりだろうかと。
前にそうなったのは自らを吸血鬼へと変えた石仮面を入手する前後か、それより前のジョナサン・ジョースターと出会う前かも知れない。
そういう表情になっている理由は今なら解る。
主催者。
宿敵の一族をも含めた自らの経歴を調べあげ晒し物にし、能力を制限させた上で殺し合いに放り込み見世物へと貶しめた大敵。
いいだろう……。DIOは今、貴様等に敗北し地の底に落とされているという事にしてやろうではないか。
大きな屈辱だが、種類は違えど自らの負の感情に悩ませられる事はこれが初めてではない。
ジョースター家の存在を知る前、海底で封じられた期間を思えばどうってことはない。
過程と方法はどうあれ勝利し支配し、なおも高みを目指す。ディオ・ブランドーという男はそれでいい。
程なくして地下通路出入り口に着いた。
扉にはこう書かれていた。
『一日目 午後9時にここは通行禁止になります
新しい出入口は本能字学園 本校舎内地下になります』
最初に見た時なかった文章に2人は書き込んだ第三者の存在を警戒したが。
痕跡は見当たらない。元から遠くから書けるような細工がしてあったのだろうか。
そう言えば、昼12時には橋の修理が行われているとの通達があった。
運営の誰がどういう方法で工作を行っているのか。どこまでもコケにしやがって。
ああ、そうだ坂田銀時へ向けるはずだった怒りは主催に向けよう。それで丁度いい。
2人は眉間に皺を寄せながら扉をくぐった。
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放送から一時間を過ぎ2人が本能字学園近辺の地下道にいた頃。
ホテルの地下道出入り口に白と黒の蝶が数匹どこからともなく現れた。
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【B-6/地下通路/一日目・夜】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、桂、コロナと主催への屈辱と怒り(大)
[服装]:いつもの帝王の格好
[装備]:サバイバルナイフ@Fate/Zero
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず邪魔者を中心に他参加者を9人以下になるまで始末する。それと並行して主催殺害への準備を進める。
0:地下通路で地下闘技場方面に向かい、その近辺にあると思われる施設を確認し、それから今後の進路を決定する。
1:長髪の侍(桂)、格闘家の娘コロナ、三つ編みの男(神威)は絶対に殺す。優先順位はコロナ=桂>神威。
2:セイバーの聖剣に強い警戒。もし遭遇すればヴァニラ・アイスと共に彼女を殺す。 捜索はしない。
3:情報収集をする。
4:
言峰綺礼への興味。
5:承太郎を殺して血を吸いたい。
6:
一条蛍なる女に警戒。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも花京院の肉の芽が取り除かれた後のようです。
※時止めはいつもより疲労が増加しています。一呼吸だけではなく、数呼吸間隔を開けなければ時止め出来ません。
※車の運転を覚えました。
※時間停止中に肉の芽は使えません。無理に使おうとすれば時間停止が解けます。
※セイバーとの同盟は生存者が残り十名を切るまで続けるつもりです。
※ホル・ホース(
ラヴァレイ)の様子がおかしかったことには気付いていますが、偽物という確信はありません。
※ラヴァレイから嘘の情報を教えられました。内容を要約すると以下の通りです。
・『ホル・ホース』は
犬吠埼樹、
志村新八の二名を殺害した
・その後、対主催の集団に潜伏しているところを一条蛍に襲撃され、集団は散開。
・蛍から逃れる最中で地下通路を発見した。
※麻雀のルールを覚えました。
※パソコンの使い方を覚えました。
※チャットルームの書き込みを見ました。
※ホル・ホースの様子がおかしかった理由について、自分に嘘を吐いている可能性を考慮に入れました。
※顔が少し若返っているように見えます。
【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、怒り
[服装]:普段通り
[装備]:範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、ブローニングM2キャリバー(650/650)@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
黒カード:双眼鏡@現実、不明支給品(確認済、武器ではない)、勇次郎の不明支給品(確認済)、ブローニングM2キャリバー予備弾倉(68/650)
[思考・行動]
基本方針:DIO様の命令に従う。
1:DIO様に土を付けた参加者は絶対に殺す
2:腕輪を解除する方法を探す。
3:セイバーの聖剣に強い警戒。可能な限り優先して排除する
4:日差しを避ける方法も出来れば探りたいが、日中に無理に外は出歩かない。
5:自分の能力を知っている可能性のある者を優先的に排除。
6:承太郎は見つけ次第排除。
7:白い服の餓鬼(
纏流子)はいずれ必ず殺す
[備考]
※死亡後からの参戦です
※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました
※スタンドに制限がかけられていることに気付きました
※
第一回放送を聞き流しました
どの程度情報を得れたかは、後続の書き手さんにお任せします
※クリームは5分少々使い続けると強制的に解除されます。
強制的に解除された後、続けて使うには数瞬のインターバルが必要です。
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最終更新:2016年10月21日 13:33