「男が記憶喪失になったようです(仮)47」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
男が記憶喪失になったようです(仮)47 - (2010/05/01 (土) 21:35:48) のソース
登場ジャンルより表記一例 ※注意:多少ゆがんだ観点多いです 新ジャンル全般=男 新ジャンル「淡白」=淡白 ---- 彼女の摘んだ花は奇麗だった。それだけは確かに覚えている 忘れたくない、というご主人様へと。 その生の最期を費やして。 泥だらけになって供えたであろう花は、つまり、彼女という存在を端的に表象していた 部外者の私では推測でしか語れないが、おそらく彼女は、男の登場を待たずして救われていたのだろう。 その『ご主人様』と出会った時点で、彼女は手に入れていたのだと思う。 例え泥にまみれるような苦難の中にあってさえ、決して見失わないような。 彼女を、普遍的な『人工幼女』ではない、かけがえのない『彼女』たらしめる何かを。 男への拒絶は、だから、彼女が確かに彼女であったことの証拠なのだろう。 そしてそんな彼女が供えた花は、とても力強くて優しくて。 雨で泥が流れ落ちる様は泥中の蓮が花開く姿にも似て。 それが奇麗で、荘厳で、ひれ伏したくなるような気持ちになって… 悲劇の果てに有っても、自分を示す事の出来た彼女が、私には ほんの少しだけ、羨ましかった。 けれどそんな感情も結局は、過ぎ去った物でしかない。 あの時私がそう思ったのは確かに覚えていても、もはや色あせてしまって、いくら思いだそうとも何も感じない。 その事実が、ただ、かなしい ◇ ◇ ◇ 男 「―――ん?ああ。ケータイ、繋がらないんだ」 淡白「?」 男 「いやな、さっきから約束してる相手と連絡とろうとしてるんだが、電話出ないんだ」 淡白「メールは?」 男 「うんにゃ。返ってこねえ」 淡白「そう」 男 「台風来てるっつうし、雲が出てきて暗くなってきたしよぅ…実際」 淡白「そうね。風も強くなってる」 空 ゴゴゴ..... 男 「しゃーねっ。とりあえず、先に墓参りだけ済ましちまうか」 淡白「ええ。それがいいわ」 ◇ ◇ ◇ 墓碑:『余命クール』享年十八歳 「………」 「おや、お墓参りの人かい?」 「………すみません」 「なにを謝る必要があるんだい。彼女もこうして参ってもらって嬉しいだろうに」 「いえ…たまたま墓碑が目に入って…その…ずいぶんお若くして亡くなられたようなので……つい」 「そうかそうか…それでも喜んでるだろうよ。あれから何十年と経つ。 もう同じ年頃の人は来てくれんからのう……良かったら一緒に拝んでくれんか?……君が嫌でなければ、じゃが」 「喜んで」 「ああっ。ありがとう。ありがとう……少し待ってておくれ。今、線香をつけるから……」 ・ ・ ・ ・ ・ 「彼女が亡くなったのはね、わしらがまだ学生の頃だった……」 「………」 「余命一年と告げられ、春に逝ってしまった……それからこうして機会を見つけてはここに来ているんだ…」 「………」 「卒業して、就職して、結婚して、子供が産まれ、その子供がまた子供を産んで…… 何十年という間、途絶えることなくお参りして、彼女の法要も親族に混じって行ってきた。 まったく…くっくっく。我ながら実に執心深い。妻子有る身だと言うのにね…」 「忘れたく…なかったのですね」 「ああ、忘れたくなかった。いや。より正確には、忘れるのが怖かったというべきか」 「………」 「その後の人生でも大切な物はいくらでも出来た。同時にいくつも失ってきた。 けれど彼女だけは特別だったのだよ。彼女がいたから今の私がある…そう言っても過言ではないかもしれない 万に一つでも忘れてしまえば、私が私でなくなってしまう。そんな気がしてね…… 結局、この歳になるまでお墓参りを続けてしまったんだ…」 「………」 「すまないね。老人の自分語りなど聞かせてしまって。何かお礼ができればいいのだが……」 「あの…人を探しています。この霊園内にいると思うのですが……」 「特徴はどんなだい? …………… ―――ああ。見たよ。見た見た。そのカップルなら隣の区画へ行ったよ。 ん?もう行くかい?いやいや。こちらこそ。あまり力になれなくて悪かったが…… 最後に名前だけ聞かせてもらえんかのう?」 「通訳、と。 こちらこそ、教えてくださってありがとうございます。お爺さん」ペコ ◇ ◇ ◇ 淡白「………」 男 「なーーんも、変わってねえなあ…花もワンピースもジェネレーターもそのまんまだ」 淡白「………」 男 「って当たり前か。一昨日来たばっかだもんな。はは…」 淡白「そうね」 男 「……… ………買ってきた花、供えるか。」 淡白「前の花はどうする?あなたが供えたのと…彼女が摘んだのと」 男 「ああ。俺のだけ捨てる。あの子には……もうちょっとだけご主人様のそばに居させてあげよう」 淡白「じゃあ私が捨ててくるわね」 男 「おう。その間に線香と花、供えとく」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 男・淡白 合掌 男 「………」 淡白「………」 男 「忘れたく、無いんだとさ」 淡白「?」 男 「記憶。俺が忘れたものを、アイツは忘れたくないって言うんだ」 男 「こんなふうに、服とジェネレーターだけになってまで、忘れたくないものなのか?」 男 「今の俺にはわからない。けど、俺もメカ幼女の事は忘れたくないって思ってる。」 男 「この花は…あの子の主人とあの子に供える。行為にして、出来るだけ忘れないようにする…」 男 「それがアイツの最期に出くわした俺の…………」 淡白「………」 男 「………」 淡白「………」 曇り空 ゴゴゴゴゴ、、、、 男 「………」 男 「記憶失う前の俺も…記憶失うって知ってたら、やっぱり忘れたくないって思ったんだろか…」 淡白「………そうかもしれないわね」 男 「なぁ」 淡白「なに?」 男 「………」 淡白「なによ?」 男 「お前、『別に記憶無くても俺はそのままで良い』って言ったよな?」 淡白「そうね」 男 「すまん」 淡白「なんで謝るの?」 男 「俺は…なんつうのか、今はまだ上手く説明できないんだが、やっぱり記憶、取り戻したい」 淡白「そう…」 男 「俺の周りにはいろんな奴らがいて、まあそれなりに毎日楽しく過ごせるみたいだ。 最初は当たり前だと思ってた… でも、そういう当たり前のことって、本当は何よりも貴重なもんかも知れないってな メカ幼女の姿を見てから思うようになってったんだ… だっていうのに、それを作り上げてきた日々を俺は忘れちまった……だから、その………すまん」 淡白「謝る必要なんて………ないわ」 男 「でも、お前に悪い。そのままで良いって励ましてくれたのに」 淡白「……………………………………………………………………………………本当は」 男 「?」 淡白「なんでもないわ。それよりこれでお墓参りは終わり?」 男 「あ、ああ。そだな。一応これで。まっ、今度はもっと賑やかな感じで来てやるさ!淡白も一緒にな!?」 淡白「………そうね」 男 「――ってと…」pi 男 「………………」 男 「やーっぱ出ないのう……ツンの奴…ったくしょうがない奴め」 淡白「なにか事件に巻き込まれたりとか」 男 「え!?」 淡白「冗談よ」 男 「び、びっくりさせんなぃ!てか、いや、でも……電話繋がらないって…」 淡白「警察に連絡する?」 男 「つっても何でもないかもしれんしなぁ。だったら面倒だし…はあ… ―――今すぐ公園に行って、居なけりゃ、サクっと決められるんだが、場所わからんし…」 淡白「公園?」 男 「ああ。ツンから言われてるんだ。 なんでも自分で思い出そうとすると記憶が戻るらしいから、どこかわからんが公園探せってな。 ほれ」 携帯の画像:公園 淡白「………」 淡白「良かったら手伝いましょうか?」 男 「ん?」 淡白「もし事件に巻き込まれてるなら、警察に電話するかどうかの判断は早い方がいい 今回の話は諦めることにして。連絡がとれないうえに台風も来てるんだから、彼女も納得してくれるわ」 男 「え、でも、そんな早くわかるのか?場所」 淡白「画像からでも結構わかる。っていうかここ、不鮮明だけど公園の名前が出てるじゃない」 男 「ぬぉっ。ホントだっ」 淡白「あとは人に聞くなり地図で調べるなりして。携帯でネットができるならそれでもいいわ。 なんにせよ思い出さずに見つけるだけなら簡単にできるけど……どうする?」 男 「う~ぬ…」 男 「だなあ……まっ、俺が忘れてんのはこの公園だけじゃないからな ――――悪いな。ズルズルとつき合わせちまって……ってオレ何度もお前に謝ってるのう」 淡白「そうね。それより急いだ方がいいわよ」 風 ゴオォォォォ...... ---- ....ォォォォオゴゴゴ 携帯 ブーッブーッ ツン「はあはあ…はあ……男、今度は…逃がさないっ…!」 携帯 ブーッブーッ ツン「絶対、、、捕まえるんだからっ」 携帯 ブッ…… ツンデレ=ツン(男のことが幼稚園のころから好きだが素直になれない。真実薬の効果は継続中) [[男が記憶喪失になったようです46(仮)>http://www4.atwiki.jp/newgenreschool/pages/771.html]]← →[[男が記憶喪失になったようです48(仮)>http://www4.atwiki.jp/newgenreschool/pages/773.html]]