紅に煌くセカイ
必ず夜を迎える真実を内包して、朝は廻り続ける。
朝に光る<露>(Tau)、朝靄に霞む<地平線>(Himmel)
そこに佇む一本の<大樹>(alter)
<紅の世界の物語>(Geschichte bei Morgenwelt)
大樹の傍には二人の少女。
吹き渡る微風に金と銀の髪を乗せ、笑顔で<世界>(草原)を駆け回っていた。
<待ッテイル蒼ノ世界ヲ知ラズニ>
彼女達の深い蒼と碧の瞳には、ただ希望だけが映されていた。
<待ッテイル悪夢ヲ現実ト識ラズニ>
積極的な<銀髪の少女>(Silber)は、消極的な<金髪の少女>(gold)の手を取って大樹の幹へと手を掛けた。
「この樹、登ってみようよ、Sophia(名前はノイズで隠す感じ)」
「嫌よ、怖いもの。」
「大丈夫、私が手を握っているもの。」
「でも…。」
するとSilberはGoldの手を離し、一人で幹を登りだした。
Goldは離された手をぎゅっと握って、すぐにSilberの後を追った。
遠ざかる地面、近づいてゆく空。
Goldは怖がりながらも、ただ<綺麗な空>(夢)を見ていた。
SilberとGoldは、枝に腰を掛け、遥かに広がる世界(Mongenwelt)を見た。
「凄いねSophia(ノイズ)、世界はこんなにも綺麗で。」
「えぇ、Lily、私達はこんな綺麗な世界で生きていくのね。」
夢に浸る少女達。一瞬強い風が吹き、その視界を遮るように大樹の葉が舞い落ちた。
Silberは何気なく手を伸ばしその葉を掴んだ。
「見て、Sophia(ノイズ)、葉っぱすらこんなに大きいなんて。」
「えぇ、凄いわ。何てちっぽけな私達。」
Goldもその葉に眼を奪われ、陶酔するように眺めた。
<そして、alterの魔力は少女達の夢を狂わせる。>
「ねぇ、Sophia(ノイズ)、この朝露も綺麗よ。」
「本当ね、Lily、ちょっと舐めてみない?」
綺麗な水滴に見惚れた少女達はその雫に舌を伸ばした。
夜に沈む<葉>(Blatt)、夕闇に霞む<地平線>(Himmel)
そこに佇む一本の<大樹>(alter)
<蒼の世界の物語>(Geschichte bei Nacht)
一人ベッドに沈む金髪の少女。
<大樹ノ魔力ニ魅入ラレタ不幸ナ少女>
その傍らには金と銀の髪の一対の人形。
<少女ハ識ラズニ記憶ヲ知ル>
『赦してお父さん(Vati)、私は嘘は言ってないの!』
『聴いてお母さん(Mama)、私の話は本当(事実)なの!』
夢の中でGoldの頭に響くSilberの声。
悪夢に飛び起きた少女、その時傍らの<銀髪>(Silber)の人形がベッドから滑り落ちた。
「どうして、どうしてこんな夢を見るの?酷すぎる夢だわ。
嗚呼、大丈夫なのLily?私不安で眠れないわ。」
月明かりの透けるVorhangを開いて、彼女は事実を識ってしまった。
セカイが見せる未来の記憶を。
紅に光る露(Blut)、蒼に沈む葉(Haare)。そして紅と蒼の狭間を辿る地平線(Horizont)
階段を駆け下り、Silberに走り寄るGold,自らも紅に濡らしながら、頬を蒼い涙が伝う。
そして彼女は自らの運命を悟った。
『助けてSophia!』
「嗚呼、あなたの分まで生きていくわLily。それが私に遺してくれた、唯一の選択でしょう。」
「嗚呼、あなたの代わりに見てくるわLily。それが私に下された、最後の宣託だから。」
『嗚呼、総テヲ知ルノハ其ノ樹ダケ』
蒼に沈んだセカイ。
再び朝を迎える真理を内包して、夜は廻り始める。
『嗚呼、総テヲ識ルノハ、租ノ樹ダケ』
最終更新:2007年01月06日 15:31