設計図の手掛かり探しは難航していた。ここ数ヶ月、ウィリアム・レッドグレイブは毎日のように遺跡に潜った。
しかし、彼がした事といえば盗掘者の撃退くらいで、彼が望む成果は全く無かった。
絶滅社からスカウトされたが、もちろん断った。

「やはり、ラビリンスシティに行ったほうが良いのでは」
「だな……こっちにも異世界の技術が流れ着いている可能性はあるが、それをしらみ潰しに探すとなると骨が折れる」

第八世界ファー・ジ・アースにはラビリンスシティに繋がる場所がいくつかある。
輝明学園の地下迷宮「スクールメイズ」がそのひとつだ。
そう言った場所は、既に特定の組織が管理をしている場合がほとんどだ。今やシティはウィザードにとって重要な地点だからだ。

そういう訳で、シティに行くことも実は簡単ではない。しかし、抜け道が無いわけではなかった。

「ジェフティ、コスモガードの衛生カメラにアクセスしろ」
「何をするおつもりですか」
「ちょっと探し物をするだけだ。ムーンゲートのシグナルが異常に高い地点を探れ」
「了解です」

モニターに世界地図が映し出され、次に地図上にいくつかの赤い点が現れる。

「ここだな……」

ウィリアムはいくつかあるポイントから一つを指さした。そこは大西洋上のとある場所だ。
バミューダトライアングルと呼ばれる海域の中にある地点だった。

「ジェフティ、スーツを用意しろ」
「構いませんが、少々危険では」

ジェフティが懸念しているのは、その地点に行って実際にラビリンスシティに行けるか、という事だった。
ウィリアムが今、コスモガードの衛生監視システムを利用して探し出したのは、異界に繋がるゲートが出現している地点だ。
ラビリンスシティには決められた場所だけでなく、ランダムで発生する異空間へのゲートに突入することで行くこともできる。
世界結界が弱まりつつある昨今、このような不安定なゲートが多く出現するようになった。
イノセントが偶然そのゲートに入り、シティへ漂着することもある。
シティへ漂着するならまだいい方で、更に危険な異世界に流れ着くこともあるのだ。

「四の五の言うな。さっさとしろ」

しかし、ウィリアムはそんなことはどこ吹く風といった様子だった。
元々彼は破天荒な性格をしていたから、ゲートが不安定だとかは別段気にならなかった。
ジェフティもそれ以上は何も言わず、床のハッチを開いて銀色のスーツを出した。
何度も改良を重ね、今では彼が言ったようにレインコートの上からでも着用できる。
そしてパーツを両足、両腕、胴体、頭部に分割し、鎧を着込むようにして装着することも出来るようになった。

ウィリアムはスーツの両腕を取り外して自分に装着し、次に両足、胴体、最後に頭部の順にスーツを着た。

「装置を使わなくても着れるようになったのはいいが……自分でガチャガチャやるのは面倒くさいな。なんとかならないものか」

ぼんやりと次の改良案を考えながら、彼は亜空間ゲートをくぐってラボから出た。

◆ ◆ ◆

「ゲートを確認。シグナル、周波数をチェックします」

大西洋上空の、バミューダ海域に到着するとすぐにシティへと繋がるゲートを発見することができた。この海域は昔から船や飛行機、もしくはその乗務員のみが消えてしまうという伝説で有名な場所だ。
最も、こう言ったゲートに偶然船が入ってしまったり、エミュレイターの仕業で消されたりするので、ただの都市伝説というわけでもないのだが。

「どうだ?」
「シティとの接続率、79%です」
「充分だ。行くぞ」

シティにたどり着ける確率は約8割。その事実だけあればいいと、ウィリアムは一気にゲートに突入する。
まばゆい光の中を、銀色の男が翔け抜ける。
モニターを見る限りスーツに異常は発生していない。無事にシティに着けそうだ。そういえば、伊藤博士は元気にしているだろうか。そんなことを考えていた時。

「ゲートに異常発生。周波数が異常値を示しています」
「なんだと!?」
「ゲート内のマナの濃度が急上昇。このままではシティに到着するまでウィリアム様の身体が持ちません」
「どこか別の出口を探すぞ!一番近いところから脱出するんだ」
「了解」

ゲートを潜り抜ける前にマナの奔流に流され、命を落とす危険が迫っていた。元々不安定なゲートだっただけに、この事態はいつ起きてもおかしくなかった。
組織が管理しているゲートならば、安定しているためこのような不測の事態もなかっただろう。しかし、今そんなことを考えてももう遅い。

「出口を確認しました」

モニターに別のゲートがズームで映し出される。本来目指していたゲートではないが、このままではどちらにしても死んでしまう。迷う暇もなく、ウィリアムはそのゲートから脱出を図った。

◆ ◆ ◆

間一髪ゲートを潜り抜けると、どこかの都市なのか、多くの建造物が目についた。
しかし、よく見るとかなり荒廃している事が分かる。建物自体の作りも年季を感じさせるもので、中世ヨーロッパのそれに通じるものがあった。

「ここは一体……?」

リパルサージェットの出力を少しずつ下げ、ウィリアムは着地した。
マスクを上部にスライドさせて肉眼で辺りを見渡すが、人の気配は一切しなかった。
この街はもう動いていない、生きていない。それを肌で感じ取ったウィリアムはマスクを下げ、建物の高さぎりぎりの所を飛行し始めた。

「ひどい有様だな……」

建物はほとんどが崩壊しており、その内部を露わにしていた。
かつてはもっと栄えていたのかもしれないが、全くその面影を感じない。
何か大きな災害があったことを連想させていた。
しばらく街の中を飛んでいると、読み取れる文字が刻まれている、石の塊を見つけた。
着陸し、その石塊に近づく。

「カイゼルクラウン……」

第八世界では見慣れない特殊な言語だが、そう読み取ることができた。

「カイゼルクラウン。500年前に存在していた小世界です。支配階級が敷かれていた都市国家で、当時の統治者が魔王の召喚に失敗し、冥魔王を呼び出したことで一夜にして滅んだと言われています」
「魔王の召喚ね……なんでまたそんなことを」
「魔器を作る術を授かろうとしたようです」
「で、失敗して何もかもおじゃん、か……他には?」
「冥魔王とその軍勢の侵攻を防ぐために、どの世界にも接続できないように切り離してから、マリアン・グレイスというウィザードが楔となることで街に冥魔王とその軍勢を封印したと言われています」
「生贄か……ま、そこまで珍しい話でもないな」

よく見ると、カイゼルクランの名前が刻まれているのは何かの石碑のようだった。

「支配階級を敷いていたと言ったな」
「はい。階級ごとに住居エリアを分けていたようです。支配層であるほど高い場所に住居を構えていたようですが」
「となると、ここは多分上流階級の人間が住んでいたエリアだな。一応記念碑っぽい体裁は保っているから、ここが被支配層の住居エリアだとは考えにくい。……それにしても、なんで魔器の技術なんだ」
「カイゼルクラウンは地下資源の宝庫で、様々な鉱石が採れていたそうです」
「そいつを有効活用するためか。で、被支配層を下に住まわせて仕事をさせたと」
「その可能性は高いかと」

そこまで言ってウィリアムはあることに気づいた。ここが支配層の住居エリアなら、かつての建物も立派なものが多かっただろう。それにしては、不自然な事がある。

「建物が崩壊している割に瓦礫が妙に少ないな」

そう、廃墟と呼ぶには「あまりにもさっぱりと無くなり過ぎている」のだ。

「もっとゴロゴロと瓦礫が転がっていても良さそうなもんだが」
「冥魔王が召喚された場所に近ければ、瓦礫すら消し飛ぶ被害も予想できますが」
「そうだな……召喚を命じたのが統治者なら、支配層に近い場所……いや、一番高いエリアで召喚の儀式を行っても不思議じゃない。そこから近いこの支配層なら……」

しかし彼の言葉は、大きな地震によって遮られた。ずん、と腹に響くような音と振動がして、ウィリアムは離陸した。

「今度は何だ?」

ぼこぼこと地面が割れる音がする。砂埃と共に、「それ」は地面から這い出た。

「……おい、なんでコイツがここに居る」

ウィリアムの前に姿を現したのは、赤ん坊……と呼ぶには、あまりにも大きすぎる異形の怪物だった。両足で立ち、その顔に目や瞼といったものは無く、両の手のひらには鋭い牙を持った口が一つずつついていた。
彼はそれらの特徴を持つエミュレイターを知っている。貪欲の女王アー=マイ=モニカが使役している下級エミュレイター「グリーディチャイルド」だ。

しかし、奴らの大きさはせいぜい小柄な人間ほどしかないはずだった。

「冥魔王の撃退には、ウィザードの他に何柱かの魔王も参加していました。アー=マイ=モニカもその一人です」
「要は当時の生き残りか……。それは分かったが、なんでこんなにデカいんだ。モニカはこいつとT-レックスにプロレスでもさせるつもりなのか?」
「データを解析します」

二人がそんなやり取りをしていると、グリーディはその辺の瓦礫をつかみ、ウィリアムに投げつけた。リパルサーの出力を急上昇させ、ギリギリのところで躱す。

「ご指名みたいだな」

今度はウィリアムが両手のリアクターガンを起動させ、ビームを放つ。ジェフティのサポートによって寸分違わず眉間に当てたはずなのだが、怯む様子すら見せなかった。

「だったら、こいつでどうだ」

ウィリアムは狙いを定められないようにグリーディの周囲を飛び回りながら肩に複数個収納された小型ホーミングミサイルを発射しようとする。

しかし

「ミサイル、オフライン。使用できません」
「なんだって!?」

思わずジェフティの報告に気を取られてしまったため、横薙ぎに払われたグリーディの腕を躱すことができず、もろに受けて吹き飛ばされてしまった。

「ぐおっ!」

そのまま墜落し、地面を転がっていった。ある程度頑丈に作ったため、ウィリアム本人にダメージはないが、とにかく目が回った。

「パワーもかなりあるようです」
「言われなくても分かる!」
「解析の結果ですが、あのグリーディチャイルドからは同種のプラーナが複数検出されました」
「つまり……」
「共食いによってあのサイズまで異常に発達したものと思われます。プラーナも上級エミュレイターに匹敵する量を持っています」
「なるほど……さすが“貪欲”だ。で、なんでミサイルが使えないんだ」

リパルサーを起動させ、再び上昇する。幸い動きは鈍重なようで、吹き飛ばされた自分に追いつくほどのスピードをグリーディは持っていなかった。

「無茶な空間移動を試みたせいで、スーツに異常が発生したものと思われます」
「他の兵装はどうなっている」
「リアクターガン、オンライン。ブレード、オンライン。フレア、オンライン。ドリル、オフライン」
「使える武器5つのうち2つが使えないのか……」
「自爆装置、オンライン」
「それは結構だ。さっさとあれを倒して帰るぞ」

身体を水平にして一気にグリーディまで接近する。口のついた手で飛んできた銀色の獲物を捕まえようとするが、ウィリアムは旋回しながら回避し、すれ違いざまにリアクターガンを後頭部に撃ち込む。しかし、先程と同じく怯む様子は見せずすぐにこちらに向き直った。

「この距離でダメなのか」
「あのエミュレイターの表皮は鉱石に近い性質を持っています」
「鉱石……なるほどな。あいつが食べたのは自分の兄弟だけじゃなかったってことか」
「瓦礫が少ないのは、アレが食べたのが原因だと?」
「それだけじゃないかもしれないが、原因の一つであることは間違いないな」
「それでは物理攻撃は効果的ではありません。魔導ジェネレーターを起動させ、レーザーブレードで戦闘する事を推奨します」
「そうだな。光の剣を携えて、化け物退治と洒落込むか」

左のガントレットに収納されているレーザーブレードユニットを起動させる。高熱を持った光の剣が手の甲から伸びた。

「しかし、相手は異常な発達を遂げた上級エミュレイターです。ウィリアム様一人では」
「違うだろ」

ジェフティの言葉を、彼は静かに遮る。

「お前が居る。一人ならまだしも、二人ならなんとかなるだろ」
「……了解です」

ウィリアムはレーザーブレードを構え、再度接近する。
横薙ぎに払われる手を、今度は急上昇によって躱す。勢い余ってグリーディがよろめいた隙に急降下し、右肩から左の腰のあたりまで切りつけた。

「おぎゃぁ……おぎゃぁ……」

ようやくまともなダメージを与えることができたのか、グリーディは身じろぎするように後方へ下がる。切りつけられた箇所は熱によって赤い光を発し、その硬い表皮の奥にある肉すらも焼けているのが見えた。

すかさずそこに右手のリアクターガンを撃ち込む。攻撃が効いたことを確認し、更に撃ち込むとグリーディは尻餅をついて倒れた。その衝撃によってグリーディの近くにあった崩れかけの建物が、跡形もなく崩れる。

「さすがに中までは硬くないようだな」

この厄介なエミュレイターの弱点を見つけたことで、ウィリアムは得意げになった。
もう一度ブレードで切りつけるために接近する。
彼は勝利を確信していた。だから、グリーディが倒れた衝撃で舞い上がる土煙に躊躇なく突っ込んだ。

しかし、それがまずかった。グリーディが起き上がり様に投げつけた瓦礫に正面から当たりに行ってしまった。

「ぐあっ!」

バランスを崩し、またしても地面に転がり込む。慌てて立ち上がろうとすると、身体を掴まれる。グリーディの目のない顔と、大きな口が目の前まで迫る。

食われる。そう思ったウィリアムは咄嗟にグリーディの顔を切りつけた。
一瞬怯む素振りを見せたが、今度は右手の手のひらにある口でウィリアムの左腕を飲み込むように食らいついた。
メキメキと金属が軋む嫌な音が、左腕だけでなく胴体からも聞こえる。
ウィリアムの身体を掴んでいるグリーディの左手の口も、ウィリアムの側腹部を噛み千切ろうとしているのだ。

「まずいっ……!」
「ブレード、オフライン」
「フレア発射!」

ウィリアムが絞り出すように叫ぶと、腰に収納されているダイヤルが突出する。ダイヤルはすぐさま回転を始め、小型のエネルギー弾を発射し始めた。

胴体に食らいついた左手の口内に、いくつものエネルギー弾がぶちまけられる。すぐにグリーディが左手を離す。
次いで、グリーディの身体に刻まれた袈裟斬りの傷口にもエネルギー弾が叩き込まれる。たまらずグリーディは右手の口を開けてウィリアムの左腕を解放し、ウィリアムを押しのけるように突き飛ばした。

地面に衝突する前に両足のリパルサーを起動させて姿勢を安定させ、そしてすぐにその場から離れた。

◆ ◆ ◆

グリーディの姿が見えなくなったことを確認して、ウィリアムは比較的崩壊が少ない建物の中に身を隠した。

モニターはスーツがかなりのダメージを受けていることを示していた。
スーツの3Dモデルの左腕部分と右側腹部が赤く点滅している。

左腕部分を大きく損傷したことで、頼みの綱だったレーザーブレードはおろか、左手のリパルサージェットすらまともに機能しなくなった。フレア弾もグリーディの拘束を解くために全て撃ち尽くした。
まともに動いている兵装は、右手のリアクターガンのみとなった。

リパルサーは両足のものを使用するしかない。単純に考えると、機動力は二分の一に落ちたのだ。

「ジェフティ、エネルギーの残量は」
「残り30%。グリーディチャイルドを倒す前にエネルギー切れになるかと」
「そうか……」

ぱちぱちと、時々火花を散らせながらウィリアムは立ち上がる。

「ジェフティ、自爆装置はどうなっている」
「オンライン。使用できます」
「分かった。……それで奴を倒すぞ」

◆ ◆ ◆

獲物を探すグリーディチャイルドの前に、ウィリアムは姿を現した。両足のリパルサージェットで飛行しつつ、右手のリアクターガンを発射する。狙いはつけない。ただグリーディに当たればいい。そんな風に思えるような、いやに適当な攻撃だった。

攻撃を受けたグリーディはまっすぐウィリアムのもとへ向かう。その歪な手がウィリアムに届く寸前、彼は左手に持っていた「小さな箱型のデバイス」を放り投げた。

それは緩やかな放物線を描いてグリーディの、だらしくなく開いた顔についている方の口の中へ入る。デバイスが飲み込まれる寸前、口の中にあるそれをリアクターガンで撃ち抜いた。

◇ ◇ ◇

「自決用のものではないと記憶しているのですが」
「その通りだ。あいつを道連れに死のうなんて、誰も言っていないぞ」

ガチャガチャと、ウィリアムはスーツの両腕、両足、胴体、頭部のパーツを外す。

「よし、あったな」

分解されたスーツから取り出されたのは、箱型の小さなデバイス。ウィリアムがスーツに搭載した自爆装置だ。これ自体が起爆するように設定してある。

「よく考えると、衝撃でこいつが誤作動して自爆する可能性もあったんだよな」

笑顔を引きつらせて、自爆装置を手に取った。

「結構な威力で爆発するようにしたからな。これなら、奴を吹き飛ばせるだろう」

そう言って再びスーツを装着する。

「ジェフティ、今のうちに自爆装置と連携しているお前の停止プログラムをオフラインにしろ」
「了解。……オフライン、正常に設定できました」
「よし、あとはこいつをご馳走するだけだな」

◇ ◇ ◇

グリーディの口の中に放り込まれた自爆装置は、リアクターガンに撃ち抜かれた衝撃で爆発を起こした。グリーディの頭部は内側からの爆発によって粉々に砕けると同時に、爆風によってウィリアムも吹き飛ばした。

この短時間で地面に叩きつけられるのは何度目だろうか。そんなことを考えながらウィリアムは地面に横たわりながら、頭部どころか胴体の上半分も失ったそれが前のめりに倒れた後にボロボロと崩れる様を見ていた。

「勝ったな」
「ええ」

ウィリアムが仰向けになって勝利の余韻に浸っていると、上空にブラックホールのようなものが現れる。今の爆発の衝撃だろうか、異空間への扉が開いたのだ。

「そう言えば、元々ラビリンスシティに行く予定だったな」
「ですが、エネルギーが22%まで低下しています」
「だったらリパルサーに集中させろ。さあ、行こうか」

ウィリアムは両足のリパルサーを起動させ、上空に現れた扉へ飛び立った。

◆ ◆ ◆

幸いにして、先程のようなトラブルもなく扉の中を潜り抜けることができた。
無事扉の外に出て目に入ったのは、澄み渡るような青。それが空ではなく、海だと認識するのに数秒ほどかかった。

「もしかして、表界の方に出てしまったのか?」

彼がそう思うのも無理はない。先ほど彼は、大西洋場にある扉からカイゼルクラウンに漂着したのだから。

「エネルギー、徐々に低下。16%」
「え?う、うわあっ!」

急にリパルサーが起動しなくなったかと思うと、またすぐに起動して姿勢を持ち直す。かと思えば、また一瞬リパルサーが停止する。まるでスイッチのオン、オフをぱちぱちと何度も切り替えているようだった。

ウィリアムの叫び声は虚しく空に吸い込まれていく。何とかして溺れることだけは避けようともがいた甲斐があったのか、着水してすぐに砂浜に打ち上げられた。

「おめでとうございます。無事、ラビリンスシティに到着しました」
「これのどこが無事なんだ、ジェフティ」

7%までエネルギーが低下していることを確認しながら、ウィリアムは口を尖らせた。




サブストーリー/ウィリアム・レッドグレイブ 「二人きりの戦い」 完

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最終更新:2013年07月31日 18:14