Mystery Circle 作品置き場内検索 / 「久遠コミネ」で検索した結果

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  • Masquerade vol.1
    ...さら) 藍戸碧 久遠コミネ 誰何(すいか) コメント 名前 コメント
  • Masquerade vol.1/久遠コミネ
    ...エンジェル  著者:久遠コミネ 自分を神経質だとか潔癖症だとか、特に思ったことはないのだけれど。 小湊(こみなと)ヒカリは、大きなつなぎ作業服をドラム式洗濯機に押し込みながら、改めてそう思った。 (ホント汚い…靴下、なんでこんなに汚れるの…) 靴を履いているはずなのに、ここまで汚れる理由がヒカリにはわからない。ドロなのか鉄錆なのか、茶色く汚れた靴下に脇の黄ばんだ白いTシャツ、それらを親指と人差し指で摘んで、ポイっと洗濯機に放り込む。洗剤を入れて洗濯機を回すと、すぐさま水が茶色くなって、ヒカリは思わず「うわぁ…」と声を出した。  さすがに、ここまで汚れたものを生理的に汚いと感じてしまっても、これは人として仕方がないことだと思う。例えその『汚している本人』が、ヒカリの恋人だったとしても。  2週間前から一緒に住み始めた恋人、志波(しば)朋寿(ともひさ)は、ヒカリより4つ年...
  • Masquerade vol.1/久遠コミネ02
    Last update 2008年04月19日 なんだかそう言われると、ヒカリが金でしか男を見ていないように聞こえる。でも実際、今まで付き合った人はみんなそうなのだから、そう思われても仕方がないのかもしれない。家が金持ちのぼんぼんだったり、会社の役員や経営者だったり、お医者さんだったり。そうじゃなきゃイヤ、と言ったことは一度もないけど、それに慣れて、甘やかしてくれることが前提で男の人を見ていたことは否定できない。 「言ってなかったけど、俺も一応社長なんだぜ?ヒカリ」 「え……なんのですか?」 「もちろんペンキ屋のだ。俺らはな、造船所の作業員でも、下請けになんだよ。それで去年独立して、会社作った。だからちっさくても会社で、俺は一応社長。つってもまぁ、そこまで俺が儲けてるわけでもねーけどな。でもこれくらいのマンションに住める程度には社長なんだよ」  確かにヒカリは、1LDKと...
  • MC vol.9/暇子
    Last update 2007年10月13日 オルゴール 著者:暇子 人生はどこかで帳尻が合うものだと思わずにはいられない。 やっとあたしの努力が実ったんだ。 報われない報われないと思っていたけど、とうとう来た留学の話。 こんなに努力しても無理なものは無理なんだろうかって諦めかけてた。 小さい頃から絵を描くのが好きだった。 小さい頃はそれで良かったんだよね。 でも大きくなるにつれ進路だなんだって話になると、親は渋い顔をするようになってた。 「好き」な事と「才能」は別のモノなんだって。 もっと将来に繋がる事をしなさい、と。 絵を描いて食べていける人なんてホンの一握りも居ないんだぞ、って…。 正直あたしを大学に行かせるお金も微妙だったみたい。 あたしは自分でバイトしながら学費を稼ぐと無理を言って、なん...
  • SMC vol.2/朔
    Last update 2008年03月16日 無題  著者:櫻朔夜  数え切れない程の抵抗を試みた。非道と言われようと、甲斐性無しと言われようと、こればかりはどうしようもない。それなのに、いつの間に入り込んでいたのだろう、僕の生活に。  時は夕刻、下校の時間だ。僕は隣でニコニコとしながら歩いているマイコをちらりと盗み見て、ため息をついた。どうしてこういうことになるんだろうか。そもそもの発端は、少し前にマイコからもらった手紙だ。そこには長々とマイコの気持ちが綴られ、締めくくりはこうだった。 『もし良かったら、今度一緒に帰ろ』  別にそれを快諾したわけではないが、かと言って無碍にもできず、仕方なしに“1度だけ”を条件に、僕は重い腰を上げたのだ。僕は自転車通学、彼女はバスと電車通学。駅までバスでも2~30分はかかる道を、自転車を押しながら彼女の歩調に合わ...
  • AMC vol.3/国見弥一
    Last update 2008年03月16日 ハーフロック  著者:国見弥一  あった。あの店だ。  オレは浩美に教えてもらった店をようやく見つけた。  やっぱり、あの店だったんだ。  小さなネオンの看板があることはあるが、灯りが弱々しい。人がやっと擦れ違えるほどの通りをしばし歩かないと見つけられない店。夜半にはまだ時間があるけど、閉店間際に入るのは嫌だった。だから、早めに辿り着けてラッキーだった。  場所からして、誰が見ても常連しか相手にしてないような店のように思えるだろう。  浩美がつい先日の夜に寄ったという小さなジャズ・バーだ。  別にジャズの生演奏が聴けるわけではない。店が女性好みの洒落た作りってわけでもない。男が一人旅の町でふらっと入りたくなるような雰囲気。せいぜい、そんなところか。  オレは、実は、マスターに会い...
  • MC vol.9/なずな
    Last update 2007年10月13日 天使たちのいる部屋 著者:なずな クリスマスの賛美歌のオルゴールが 部屋中に響いた。 何か音楽でも・・と ミホの入院中に ユウジが次々買ってきたCDの中の 一つ。 入院用のバッグの中身を出して ミホは黙々と片付ける。 「オレに 手伝えることない?」 「・・・ない」 飾り棚に並んだ天使の置物を、所在なげに眺めていたユウジは そのCDを選んでプレイヤーのトレイにのせると ミホに遠慮がちに 聞いた。  「ひとりで 大丈夫? 泊まっていこうか?」 「・・・いい。」  ☆  ユウジに付き添われて退院したその日 自分の部屋で やっと一人きりになって ミホは はじめて 泣いた。  ─ ごめんね、ごめんね ご...
  • MC vol.9/フトン
    Last update 2007年10月13日 僕と彼女の関係 著者:フトン その姿には、見ている者をぞっとさせる、鬼気迫るものがあった。 歩道に座り込み、心配そうに寄ってくる人々を睨み付け、激しい言葉を投げては全てのものを遠ざけ様としているその姿に、なぜか僕は惹かれた。 僕は彼女から視線を外す事も、その場から離れる事も出来ずに、ただ彼女の姿を見つめていた。 全ての物が何もかも自分の敵のように、激しく高揚している彼女を見つめ続けた。 何時間も・・・・何時間も・・・・             ✖✖✖✖✖✖✖✖✖  彼女を自分のアパートに連れてきた頃には、もう真夜中で、僕は彼女に付けられた傷でボロボロだった。 疲れ果てた僕は倒れこむように、ベットに飛び込んだ。 「好きにしていいよ。僕は眠るよ・...
  • SMC vol.2/篠原まひる02
    Last update 2008年03月16日 Motor Drive  著者:篠原まひる  エイジからのお誘いは、翌日の昼過ぎに来た。  私はすぐに、「行くよ」と返す。 それからアルバイト先に休む為の電話をして、大いに嫌がられた。  そのすぐ後にウェインから、「今から逢わないか」と言うメールが来るが、「今日は無理」と返事をして、いつものように服のセレクトに入る。 私は少し可笑しくなって、後でウェインに、「案外ウエダ君はいい人なんだね」とでもメールをしようと思った。 間違い無く彼は、不満気な顔をするだろうが。  夜の八時。 私は約束の場所へと出向く。 どう言う訳か、エイジの指定して来た待ち合わせ場所は、駅でもなければどこかの店でもなく、大通りの高速道路下の路肩だった。  こんな場所に呼び出されたのも初めてだなと思いながら、私はエイジを目で探す。 すると、少し...
  • MC vol.6/Clown
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:Clown 「――牛が見たい」 「は?」  ご令嬢が呟く言葉を、俺は全力で聞き返した。  牛? 何故牛? 近江牛? 松阪牛? そう言えば最近霜降りのやつ食ってなかったなぁ。こう、たまには厚切りステーキを次の日胃もたれするくらい腹一杯食ってみたいものだが、そんな贅沢は俺が許しても俺の財布が許さないというかねぇ、極貧生活こんにちは。 「ねぇ、この辺で野生の牛が見れるところはないかしら?」 「しかも野生かよッ!?」  取り敢えず全力でツッコんで見る。  野生て。この東京のど真ん中で野生て。あれか、ムツゴロウ王国の飛び地でも東京に出来たのか? 王国の逆襲? スターウォーズ? それともここはかの歌で有名な砂漠ですか。東京砂漠ですか。内山田洋とクール・ファイブ? ...
  • MC vol.28/松永 夏馬
    Last update 2008年03月16日 白い轍  著者:松永夏馬 「この寒い晩にオサンポに行ってる。やっぱロシア人はちがうわ」  アタシはそう言って寝袋と毛布に包まれたまま視線だけをその男に向けた。 「オレはロシア人じゃない」  屋内にも関わらず白く煙る息が厳しい寒さを物語っている。短く刈り込まれた銀髪ととび色の目をした長身のこの男はこう見えて国籍はアタシと同じ日本だ。 「ロシア人の血を引いているのは間違いじゃないでしょ?」  母親の血が色濃くでた外見だが生まれも育ちも、流暢に話す言葉もジャパニーズ。もっとも英語とロシア語に加えさらに数ヶ国語も流暢。アタシには真似のできない芸当だ。 「母だって日本人だ」  床に転がったアタシを見下ろしたまま抑揚無く言い切る。彼の年齢から推測するに、おそらく彼の母親は元ソビエト人で元ロシア人で今は日本人男性...
  • MC vol.23/知
    Last update 2008年03月15日 決戦、前日  著者:知 「本当にそうだろうか。彼女と俺は、同じ種類なのだろうか」  ベッドに寝転がり、そう呟いた。  あの日から、決して答えの出る事のない疑問が頭の中を駆け巡っている。  気が付くといつも同じことばかり考えている。  枕元に置いていた携帯を取り、受信メールを見る。 「明日、時間大丈夫?」  今日届いた、彼女らしい何のかざりっけのないシンプルなメール。だけど、このメールを見た瞬間に頭が真っ白になった。 「今日は時間がないから次に話すね。何故、ぼくが、再び書きはじめたのかを」  互いに色々と忙しく時間が作れなかったため、彼女がそう言ってから数週間が経っていた。  このまま何もないままになるのでは、そう思っていた。しかし、遂にこの日が来た、そう思うと何も考...
  • MC vol.17/真紅
    Last update 2008年03月14日 聖夜  著者:真紅 『そうらみろ、刑務所の中にもランプが一つ点いたぞ。』 彼女を皮肉る。 「・・・失礼な。」 彼女は不服そうに頬を膨らました。 「エーコ、僕という男が来てるんだから部屋は片付けなよ?」 床には、熊や犬のぬいぐるみや小物が散乱している。 まぁ・・・下着が無いだけマシか。 多分あったら、極度の照れ屋の僕は失神するだろうが。 僕は散らかり過ぎて、すっかり狭くなったその部屋に腰を下ろす。 ふむ、刑務所という比喩は正しかったようだ。 「良いじゃない、あなたなんだしさ。」 開いた口が塞がらない。 お互いの事を知ってるとはいえ、それは無いだろう。 更に畳み掛けるように彼女が言う。 「それでも好きなんでしょ?私の事。」 笑いながら僕の目を見つめてくる。 ...
  • MC vol.31/松永 夏馬
    Last update 2008年06月01日 深き蒼色の海を  著者:松永夏馬 『不完全犯罪』 著者:蒼  闇の中から引きずり出してみたら、色あせてしまうものなのかもしれない。雨宮一子はそう感じていた。心の奥底に潜むそれに光を当て、言葉に表そうとしても無駄なのだ。自分でさえも上手く説明できないものはどう言い繕おうとも表現しきれるものではない。引きずり出したところで自分にとってもはや別物となるのだ。  だからこそ動機については言及するつもりもない。愛憎の果てであろうと、仇討ちであろうと、欲深い金品の奪い合いであろうと、いっそのこと狂人による通り魔的犯行であろうと、結局のところ結果に変わりは無いのだから。  一子は深く考えないことにした。考えなければならない問題はこれから。全て計画どおりになどいくわけがないとわかっているから、あらかじめ立て...
  • MC vol.13/七夜実
    Last update 2007年11月10日 first encounter -battle style Lv.1-  著者:七夜実 曲がって、曲がって、曲がって、曲がる。 目標をはずす光弾など、ただのひとつもない。 そのすべてを、両手から伸ばしきったワイヤーで、 叩き、割り、逸らし、落とし尽くす。 周囲を飛び交うのは熱を帯びた疾風、周囲に飛び散るのは光となった鉄鋼。 そのどちらもが互いに尽きぬ故に、状況は順調且つ停滞。 既に視界では把握しきれなくなった光弾を、糸同士の共鳴のズレから位置を割り出しては追撃しながら、 どうして、こんなことになったのか、思考の一部を記憶に割り当てた。             * * * * * * * * 音もなく走る影が二つ。 どちらも...
  • MC vol.5/カラス
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:カラス  私は何かしらゾッとして、前のガラスに映る人の姿を見た。  盆休みを返上して取材に出ていた私の行動は、ついにその成果をなしたといってもいいだろう。  古き良き時代。その街並みが今も色濃く残る場所。  綺麗に舗装されたアスファルトの通りに違和感を覚える。  それもそのはずである。脇を飾る瓦屋根の木造住宅。ブリキの看板が淡い色でアクセントを添える。  強い日差しを忘れそうになる。  見つけた。  その想いが私を少年に帰らせる。  年季の入った木戸に嵌め殺しにされたガラス。その向こうでは規則正しく本棚が並んでおり、奥に見える帳場には和服姿の女性が座っている。 「りさいくる網捨」  この店の名前のようだ。  ここがうわさになっている古書店に間違いない。 ...
  • MC vol.21/ヨーノ
    Last update 2008年03月15日 C.C.(某アニメのシーツーとは違うらしい)  著者:ヨーノ  マダムがその気だったら、それですべてがいいのでした。  なにせ、ここは「Mystery Circle」だから。マダムが総支配権を持ち、マダムの主観によって全てが構築される居酒屋、ミステリーサークル。略してミッサ。  街の目抜き通りから小道に分け入り、飲み屋街とラブホ通りの丁度中間辺りにひっそりと軒を構える。終電に乗り遅れた者達が集まる漫画喫茶とカプセルホテルと一緒に軒を連ね、家に帰り損ねた者達が「Mystery Circle」とカボチャ色したネオン看板に釣られてやってくるのだ。  ミステリーサークルとの言葉響きにオカルト・SFを期待してはいけない。やけに意匠の凝った重扉を引き開けると、マダムが白いワンピースの裾をひらひらさせながら踊っているのに誰...
  • MC vol.29/rudo
    Last update 2008年03月16日 蛇  著者:rudo 「人が変わっていくのは救いであって 自分が変わらない世界なんて、私はごめんこうむりたい」 なにそれ・・誰が言ったんだっけ。 無理やりつれていかれた自己啓発の講義の中だったか 変な宗教かぶれの客が言ったんだったか・・ 私はいやだ。 私はいまのままでいい。 自分が変わってしまう世界なんて それこそごめんこうむりたい。 誰が死のうが生きようが そんなことは知ったこっちゃない。 それが私だ。 いままでも・・・これからも。  ----------------------------------------------------- 激しい喉の渇きで目が覚めた。 「ちょっと 飲みすぎたかも・・」 のろのろと起き上がりふすまをあけたと...
  • MC vol.25/グラン
    Last update 2008年03月16日 20260815  著者:Glan 「えっと、ミラーさん……だよね?」  声の主は窓辺に立っていた。白い白い、汚れ一つない壁に寄りかかっていた。 私が驚いて何も言い出せないのも気にせず、ゆっくり近づいてくる。 そうして目の前にあったPCを覗き込み、「綺麗な壁紙だね」と感嘆した。 「あ、あのえっと」  情けないくらいに挙動不審だった。 緊張で喉が縮まるような感覚。絞り出そうとしても声が出てこない。 「それにしても、早く起きないといけないのに夜遅くまでPCとはね」  え? なんだか声が変わった。それに口調も。 誰、と思いつつ私は声の主を確認しようと首を動かすが、窓からの光がまぶしくて何も見えない。 ならば直接近づいてみようと思い立った私は、瞬間、世界が逆さまになって落ちて...
  • SMC vol.2/なずな02
    Last update 2008年03月16日 天使の落し物~光降る坂道で  著者:なずな 「母さん、この前ね、大天使に会った」 幼い少女の写真に花を供える母、美幸の後姿に、静弥は声を掛けた。 「え?」 「何でもない。行ってきます」 美幸は伏目がちに微笑んで、 「電車、随分早いのに乗ることにしたのね、今までのでも十分に間に合ったでしょうに」 まだ同じくらいの身長しかない息子の肩のほこりを払って、 「いってらっしゃい」 と手を振った。 「母さん」 「何?」 「今年の命日も・・自分で花は供えられない?」 言ってしまってから、静弥は少し後悔する。 母の表情がみるみる曇り、唇がもう小刻みに震えたのを見てしまったからだ。 「ごめん・・」 一言言うと静弥は後ろ手でマンションの玄関扉を閉め、足早に階段を駆け下りた。 大天使だけでなく・・...
  • MC vol.21/空蝉八尋
    Last update 2008年03月15日 バイ霊ガル  著者:空蝉八尋  むし暑い夏の夜でした。  夏、と言えば海。海、と言えばデート。デート、と言えば手を繋ぐ。手を繋ぐ、と言えば。  遠足だか修学旅行だかなんだかの、ほぼ悪ノリイベントとも称する肝試し。  恒例パターンとしては林道を通ってお墓や寺まで行き、カードを取って帰ってくるという一見簡単なハイキング。  ただ、時間帯を除いては。  どうして肝試しっていう奴は、昔から太陽が落ちた夜だと決まっているんだろうか。  もし昼間だろうと、熊とでも遭遇すればある意味本当の肝試しになるんだろうが、早々都合よく腹へり熊は登場してくれない。   嗚呼、僕はこれほどまでに幸運と不運の板ばさみに挟まれたことがあっただろうか。  説明しよう。  まずは自慢したいくらいに幸運の板...
  • MC vol.29/朔
    Last update 2008年03月16日 サイレン  著者:櫻朔夜  人が変わっていくのは救いであって、自分が変わらない世界なんて、私はごめんこうむりたい。いつだってそう思ってる。それなのに何だろ、この異様な焦燥感。  私は、オーバーな身振り手振りで話す男と、行きつけのカフェにいた。そして、話しながらひっきりなしにキョロキョロとする、落ち着きのない私の彼―ショウをぼんやりと眺めていた。コーヒーカップに指をかけたまま、口を挟む余地すらないその一方的などうでもいい話を、無反応にやり過ごしながら。  ショウにとって、相手が相槌を打ってるとか、聞いているかどうかは問題じゃない。ただ、自分が『話している』事実だけで満足なのよね。その証拠にほら、私が今外を通り過ぎたちょっと好みの男を目で追いかけている事にすら気付いていない。  彼の前には、氷が溶けて茶色と無色...
  • MC vol.19/なずな
    Last update 2008年03月15日 What A Wonderful World  著者:なずな  ******** 『人間に会った瞬間、叱責の幻聴が聞こえて来る・・という訳だ。』 黒猫が申します。 黒猫は、月夜の晩にやって来る 子猫の大事な友達でありました。 いつも子猫の もやもやとした色々な気持ちなどを 非常に上手い言葉で言い表してくれる 思慮深い友達でした。 一人っきりの、心通わす 優しい友達でした。 『 ・・・お・・おそらくは そういう言い方もできると思われる』 子猫は よくよく言葉を選び せいぜい賢そうに答えます。 『きみが 初めて拾われた時の話ですね。 拾い主のこどもが その母親に 酷く叱られて 泣く泣くきみを 元のところに戻した、というのは』 今でも 思...
  • MC vol.20/グラン
    Last update 2008年03月15日 死刑執行人  著者:グラン 「まずは一人目」 「え?」  驚いた私は、思わずティーカップを落としそうになった。  考え事をしていると、まるで耳が塞がれたのかと思うくらい生活音が消えてしまうことがある。  私もまさにそんな状況で、目の前にいる無精ひげを生やした男が部屋に入ってきたことに気づかなかった。 「何をそんなに驚いてる。時間通りだろ」  彼はやや幼さの残る顔で、それとは不釣合いな野太い声で私に話しかけた。溜め息が出る。  第一印象は良くない。電話で連絡をとった時の、嫌な印象が残っていたのかもしれない。 「あと、何人くらい?」 「さぁな。いつもならこの時間帯は部屋が女子高生で溢れる」  彼のおどけた顔が、窓から差す夕日のオレンジで照らされた。  なるほど。私はそう心の中でつ...
  • MC vol.21/なずな
    Last update 2008年03月15日 波紋  著者:なずな 「お芝居が、うまいのね」 小さな嘘やごまかしに対して、母はいつもそういう風に言った。 それは 頂き物のお菓子をこっそり食べた事をとぼけてみせた時、 友達との喧嘩の傷を、ささいな事故と偽った時、 いじめられた事実を隠して何事も無かったようにした時などだった。 特に長い言い訳や作り話をしたとは思わない。 まして 演技のようなもので母を騙そうなんて思った事も無い。 ばれて叱られることなど、恐れてはいなかった。 むしろ小さい事ならば、その場で笑って指摘し、 深刻な場合はそれとなく気づいて見守って欲しかった。 何故、よその母親みたいに「嘘をつくな」と叱らないのか、 「お芝居がうまいのね」・・その言葉の中に 母のどんな感情が詰まっているのか  ...
  • MC vol.2/カラス
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:カラス 「どうですいい景色ですか?」  助手席に乗っている遠藤がこぼした。  フロントガラスを大粒の雨が殴りつけている。ひっきりなしに左右に踊るワイパー。延々と続く峠道。左右へと視線を走らせれば美しい山間の景色……が見えるはずだったのだが、それも今は適わない。今頃はきっと深緑で山々の草木たちが活気付く季節なのにもかかわらず。いや、正確に言うとすでに草木たちは活気付いている。ただ、悔しいかなこの豪雨がフィルターとなって我々の視界を遮っているのだ。  山の天気は変わりやすいとよく言うが、この土砂降りの雨は季節外れの台風がもたらしたもので今朝からずっとこの調子なのだ。先ほど崩れた天候に文句を言うのならまだしも、峠道に入る前から悪天候だったのだ。  それを彼は皮肉たっぷりに言ってのけているのだ...
  • AMC vol.2/空蝉八尋
    Last update 2008年03月15日 言い訳Gum  著者:空蝉八尋  ここに居ろよ、って。  あんたはそう言ったよね。  笑っちゃうくらい真剣な顔して、いまにも泣き出しそうな顔して。  あたしとあんたじゃない人が大勢通り過ぎる空港のど真ん中で、あんたは言ったよね。  あたしじゃなくて、準ちゃんに。  ねえ、準ちゃんとあたしが初めてキスしたとき。  あんなに綺麗だった桜はもう、葉っぱに変わってた頃だった。  そこからなんであんたが出てきたわけ?  何処に隠れてたとか、何時から見てたのかとか、そういうのはもういいの。何も聞かないでおくから。  それよりも。それよりもそれよりも。  なんであんたにあたしは、キスされなきゃいけないわけ?  しかも準ちゃんが居る目の前で、見てる前で。  ……成。その直後のあんたの...
  • MC vol.17/なずな
    Last update 2008年03月14日 熱のせいだけじゃなかった  著者:なずな 気長に待っていてくれた客は、 選りにも選って一番会いたくない相手だった。 艶やかに磨き上げられた 黒塗りの高級車。 深い藍色の空の下、駐車場の照明の中 ひっそり降り立った巨大宇宙船みたいに見えた。  従業員用の扉から出た僕に気づいて 運転手が後ろのドアを開く。 「コーヒーでも飲んで、待ってて下さったら良かったのに」 わざと のろのろ仕事を延ばし、待たせていた。 どうせファミレスのコーヒーなんて飲まないんだろう。 解っていたけれど、言ってみる。 後部座席、ゆっくりと背をもたせ 腕を組んで目を閉じ 貴之の父親、篠原貴一郎は座っていた。 車内に流れるのは 交響曲。 貫禄。 ぶるり悪寒がし...
  • MC vol.6/おデブちゃん
    Last update 2007年10月07日 タイトルなし 著者:おデブちゃん 「女性にぶたれるなんて、男冥利につくと思うけどなァ。俺」 そう受話器の向こうから聞こえる声は、相場 拓弥、18歳。高校3年。 小学の物心がついた時から中学高校と、制服と私服を着分けることができ、相場は私服で茶髪とあのブランドのBlack flysのサングラスと格好つけたりしたりと、 いつの間にかそれが定番となっていた。 だが、高校1年の夏休みが終わってからサングラスをしなくなった。理由は「もう似合わない」という一言だった。けしてそんな事はなかった。ずっとつけていたので、逆に違和感に感じていた。 相場は、身長は165センチ。中肉中背。 髪はショート。ややつり目で、それがまたサングラスとそれがよかった。 唇が薄く、男に使うのは変だと河口は思っていた...
  • MC vol.27/松永 夏馬
    Last update 2008年03月16日 ある閉ざされていない雪の山荘にて  著者:松永夏馬  ただ生きていくことにも大変なのだ 。  元々さほど活動的でない毎日を過ごしてきた黛禄郎であっても、生きることは非常にエネルギーを使う。それにもかかわらず高校に進学して貴島虎雄、猫田美紀恵という常にエネルギーを発散しつづけているような二人に捕ま、……もとい、出会って1年と8ヶ月。彼らと付き合う毎日はムダにエネルギーを消費しているとは思うが、最近では慣れたのか不快ではなくなってきているのが不思議だ。  期末テストが終わり冬休みに入った。エネルギーコストが低い朝の布団のぬくもりを、充分に堪能できるはずの毎日は3日目にして早くも途切れることとなる。  けたたましく鳴る小さな機械を、禄郎は布団の隙間から手を伸ばして掴むと、ぼんやりとした視界の中でそれを開いた。小さ...
  • MC vol.28/なずな
    Last update 2008年03月16日 アーネスト、舞い降りて  著者:なずな 「無いんだ。世界のさかい目が」 トシ子さんの後ろ姿を見ながら 奏子はぼそり、そう言った。 奏子が風邪で寝込んでると聞いた時、あたしの手元には彼女の生物のノートがあった。 このまま休んだら、期末テストに突入してしまう。 ノートもとらずにぼんやり授業を受け、赤点覚悟でへらへらしていたあたしに奏子が無理やり押し付けた。 借りっ放しでテストを受けるのは、いくら何でも気が引ける。 最近奏子が、トシ子さんの話題をあえて避けているのは感じていたから、行っても良いものか少し迷った。 奏子の祖母で、「作家」のトシ子さん。 小学生の頃、あたしたちはよく奏子の家で遊んだ。 「そうこ」。 頭が良くて、しっかりもので可愛い奏子を、からかうネタがこれしかなかったのだろう ...
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