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 そこは室内だ。
 天上からの蛍光灯の淡く人工な光と、窓からの冬季の淡さを持つ自然の光が、室内を照らしている。
 室内にはベッドが一つ。そこに一人の男が寝かせられている。
 男は負傷しているのか、胸に包帯を巻いていた。
 その男を見下ろし、儀天は鼻を鳴らして呟いた。
「未熟だな」
「……申し訳ない」
 答えたのは、胸に包帯を巻いてベッドに寝かせられている男。
 矢村・誠だ。
 沈んだ表情の彼に、儀天は容赦なく言う。
「十二人も連れて行って全員返り討ち。しかも手加減されて――か? 未熟という以外にないな」
「……いや、貴方の娘さんにやられたのですが」
「だから未熟だと言っている」
「ぐわっ!?」
 言い切りついでに傷口を小突いたら、矢村は苦悶した。儀天は無視して窓に近付く。
 二歩、という歩みを持って窓の前に立った儀天は、そのまま窓を開けた。
 瓢。
 と冷風が入ってくる。冬の風だ。
「……あの、寒いのですが」
「我慢しろ。換気だ。……だいたい個室でぬくぬくと静養しおってなんだ貴様は。儂は馬鹿娘が次に何をやらかすかと思って胃を痛めているというのに。――退院したらリハビリに付き合ってやろう。“脱ダムコース”で鍛え直す。いいな?」
「思いっきり遠慮したいところですが、……それはそうと、彼女は何でまたこんなことを」
「儂が知るか。……ひとつ言えるのは、儂の娘はどうしようもなく馬鹿でまだまだ未熟だが、大神による救済なんぞを望むなどという、敬虔な性根を持ち合わせているはずがないということだな」
 そこまで言って、儀天は唇の端を吊り上げた笑みを作る。
「――“神国化計画”か。臨時政府の無能連中も馬鹿なことを考えるものだな。……矢村、貴様はどこまで知っている?」
「……神触実験に必要な三要素のうちの二つ――、大神の遺伝詞を受ける降誕機構(クエストロン)には富士圏で発掘された喪失技巧(デステクノ)の航宙戦艦を用い、それを起動させる出力炉と大神遺伝詞を抽出する炉に日本の地脈そのものを用いる、というところまでは」
 矢村の答えに、ふむ、と儀天は考え込み、
「儂の知っている情報と同じか。――妙だな」
「妙、とは? そもそも自分の情報網は前班長である儀天氏のものを引き継いだだけですから、情報が被るのは当然では」
「下手すれば第三次大戦が起きかねないような計画だぞ? たかが特領の班長程度が知る情報ではないな」
 儀天は苦い表情を作って嘆息を一つ。
「新年早々面倒なことになったものだな。……子供の方でも、何やら新潟圏が攻め込んで来たとかで騒がしいというのに」
「新潟圏総長、田中・核衛。……殺括者(キリングホルダー)……」
 矢村がやや憂鬱な顔で呟き、しかし苦笑を浮かべた。
「まあ、うちの娘は大丈夫でしょうな。そちらのお孫さんが護ってくれますから」
「はン。どうだかな。あれは弱いぞ? 所詮は殺外者(キリングメイカー)であり……つまるところ覚悟すら持たぬ弱者だ」
「だが彼はうちの娘と約したでしょう、護りの誓いを。……まあ、自分も最近ようやく認められるようになったのですが」
「……護りの誓いを果たせるようなら一人前だな。何せ儂が果たせなかった――」
 と、そこで儀天は詞を切った。
 右手、巨大な義腕の掌で顔を覆い隠し、
「――つい詞を出しすぎたな。忘れろ」
「……儀天氏ほどの者でも、やはり過去からは逃れられませんか」
 ああ、と儀天は顔を隠す掌を下げた。
 自分は平静だ、という意思を持って左手で頬を撫でる。
「この記憶都市(イメージシティ)にいる限り、過去から目をそらすことは出来ん」
「……子供達もいつか、過去に悔やむことになるのでしょうか」
「悔やむしかないだろう。だが過去はやり直せん。……ゆえにああいう風に育ってしまった娘はもう直せない。どう悔やんでも」
「やり直せるならば、自分はもう少し家にいるようにしますよ。……仕事で忙しいからと小さい頃から芙雪を蔵人君と二人っきりにしていたせいで、もう娘は嫁に行ったような感じで……最近帰宅すると芙雪が目で訴えている気がするのですよ、“帰って来なければ荻原の家に泊まれたのに”と。……ううっ」
「ああ、儂も最近そんな視線を感じるな。邪魔者を見るような視線だ。……あの家の主は儂だというのにどういうことだ」
 二人は同時に嘆息。
 と、風が強く吹いた。肌寒さを感じて、儀天は窓に手をかける。
「そろそろ閉めるか――」
 窓の外を見ながらそう呟いた。
 その瞬間だ。
 ――儀天・心理技能・自動発動・殺気感知・成功!
  ――儀天・義体技能・発動・義腕「右豪鉄」戦闘機動開始・成功!
 一瞬で右の戦闘義腕の全力機動させた儀天は、
「でぇい!」
 ――儀天・義体/腕術技能・重複発動・音速超過打撃・成功!
 拳速が音速を超える一撃を虚空に放った。
 豪、という音を立てて、衝撃波が大気を穿つ。
 何かが弾き落とされたような音が響いた。
 見れば、冬の大気の中に、不自然な黒色が散っている。
 ――儀天・視覚技能・発動・確認・成功。
 音速衝撃波で叩かれ、砕かれたそれは一匹の蝙蝠だ。
 と、飛び散った蝙蝠の破片が蠢いた。
「む――」
 儀天はうなり、顔をしかめる。
 落ちていく黒の砕片のそれぞれが、一回り小さい蝙蝠になって飛んだのだ。
 通常の生物ではない。
 妖物か、風水の産物か、異族だ。
 娘か孫なら遺伝詞を見て判るのだろうな、と思いつつも儀天はそれらが飛び逃げるのを見て、
「!」
 ――儀天・義体/腕術/回避技能・対抗重複発動・掴み・成功!
 風を切って飛んできたそれを儀天は掴み取った。
 投擲用の短刀だ。大したものではなく、街中で売っているような大量生産の安物。
 そしてその柄に、白い紙が結わえ付けられていた。
 ふむ、とそれを紐解いていると、矢村が驚きの声音で、
「ど、どうされました、一体。いきなり音速超過打撃など」
 問いかけに、儀天は振り向かずに答えた。
 自分は平静ではないな、との意思を持ちながら、右手で頬を撫でる。
「――招待状だ。やり直せぬ過去からの、な」




 そう言い、紙片を握り潰した儀天の顔を矢村は見た。
 平静な表情だ。感情を無理矢理に押し込めた無表情。妻が隠し事をする時の、内燃詞(クローズ)の表情とよく似ている。
 すべてを覆い隠そうとする表情の儀天を見て、矢村は口を開く。
「……三十年前の過去、ですな。信濃圏守護役の一族が滅びた……」
「未熟な話だ。……世界に声を届かせる塔の建設が始まり、誰も彼もが革新を夢見ていた。分不相応にもな」
「……自分は……、いえ自分だけではなく、若い者の皆が三十年前の騒乱の詳細を知りません。騒乱の中心にあった者達に訊ねても、皆が口を閉ざしますからな。あれは、――何だったのですか?」
 問いに、儀天は表情を変えなかった。
 内燃詞のまま、意思を隠して言ってくる。
「教えられんな。詞(テクスト)を放てば遺伝詞(ライブ)が動く。遺伝詞が動けば反響(リフレクス)して虚霊(コダマ)を生み、過去を再生(リピート)する。……儂は、かつてあの戦渦の渦中に身を投じた者の一人して過去を隠す義務があり――、また、あの戦いで何かを喪った者の一人として過去を噤む権利を持っている」
 前にも一度言ったはずだな、と儀天はこちらを見て、
「何故、聞こうとする?」
 問われ、矢村は口の端を吊り上げた。
 笑み。それを作ろうとして頬を歪め、しかし作れない。
「儀天氏もご存知でしょうが――、常念岳守護役であり信濃圏守護役の分家の傍系である自分の妻は、あの騒乱にて両親を失っているのですよ。……そして、自分もまた、戦火に巻き込まれて両親を失いました」
 は、と息を吐き、矢村は儀天の目を見据えた。
 右の拳を強く握り、言う。
「――何故、貴方達は過去を隠す?」
 力を込めた問いに、しかし儀天は右腕を上げた。
 機械式の巨大な戦闘用義腕。その手指のうち、親指以外の四指を広げ、
「貴様の両親と貴様の妻の両親で四人。――駄目だな。たった四人の死人だけでは、過去を明かすには足りない」
「っ……」
「儂が持っている、過去を隠す義務と過去を噤む権利。――これ以上の詞を持ってこなければ、教えられんな」
 だから、と儀天は言葉を続け、腕を組み、床を踏みしめ、
「どうしても聞きたければ、力ずくで聞き出すのだな」
 ――儀天・心理技能・発動・威圧・成功!
 ――矢村・心理技能・対抗発動・威圧反射・失敗!
 気圧され、は、と矢村は息を吐く。
 ……無茶を言う。
 相手は拳王位の近接義体師で殺人者。
 人を殺すための舞闘を修め、人を殺す力を持ち、人を殺したことのある者だ。
 人を殺したこともなく、殺せるだけの覚悟もない自分では、勝てるはずがない。
 挑めば、儀天は本気でこちらを殺そうとするだろう。
 ……そして殺される、か。
 自分にはできない、と思い、儀天の左手に握られている紙片を見た。
 それが果たし状だと言うことを、矢村は知っている。
 自分と同じように三十年前の過去を探る――不死身の女からの、だ。
 矢村は握った拳を開き、は、と息を吐いた。
「そういえば、儀天氏が特領を辞されたのも、力ずくで聞き出そうとする彼女に付き合う為でしたな」
「曲解するな。儂は元々、官憲も政治家も嫌いだった」
「……それは元・特領第八班班長として問題発言では?」
「発言の自由、というものだな。……む?」
 ――儀天・心理技能・自動発動・気配感知・成功。
 と、儀天がドアの方を見た。
 ――矢村・聴覚技能・発動・聞耳・成功。
 耳を澄ませば、病院内の雑多な音の中に、聞き慣れた音が混じっていた。
 足音だ。それも二人分。
「この足音は――」
 それには話し声も付随していた。
 一つは少女の声であり、もう一つは少年の声だ。
 少女の方は喜色の混じった声音で少年に話しかけ、少年の方はやや堅い、しかし穏やかな声音で答えている。
 声と足音が部屋の前で止まり、ドアが開いた。入ってきたのは二人。
 一人は右眼を白の義眼にした、暖かな雰囲気を持つ制服姿の少女。表情は笑みで、少年の手を握っている。
 もう一人は周囲を拒むような雰囲気を持つ学ラン姿の少年で、表情は疲労に諦観の入り混じったものだ。
 やや驚きつつも、矢村は二人の名前を口にした。
「芙雪に、――蔵人君?」
「大丈夫? 父さん。蔵人の診察のついでにお見舞いに来たけど」
 蔵人の手を握ったまま、笑顔で言ってくる娘に矢村は、
 ……実の父親はついでかー!?
 内心で叫び、しかし、
 ――矢村・心理技能・発動・抑制・成功!
 耐えた。表情には出さない。腕を上げてガッツポーズを取り、笑みを浮かべ、
「はは、大丈夫だ。父さんは強いぞ!」
「……負けたのに?」
 娘の言葉がクリティカルに心に突き刺さる。
 いかん、と汗を流す。このままでは、
 ……父の威厳が!
 ただでさえ家庭内の立場が微妙になっている。これ以上どうかしたらなんだか非常にまずい。
「い、いやしかしだな、芙雪。相手が――」
「……父さん、言い訳は見苦しいと思う」
 ――矢村・心理技能・自動発動・抑制・成功!
 表情は無理矢理笑みを保つ。
 ……墓穴を掘った!
 焦り、芙雪から視線を逸らすと儀天と目が合った。
 儀天は焦るこちらを見て口端を歪めて笑い、
「そうだな。――矢村の娘。この未熟者はなんと、今まで幾度も戦ったことがあり、手の内も知り尽くしてる相手と戦って負けたそうだ。しかも部下を十二人引き連れて包囲した上でな」
「――ちょっ、儀天氏!? 貴方がそれ言いますか!?」
「だが事実だな。そうだろう? ん? 否定はできまいな」
「父さんって……」
「ままままま待ちなさい芙雪。いいか? この殺人趣味な老人の言っていることは事実だがやや歪んだ事実で――」
「でも儀天さんは嘘ついてないし。むしろ父さんに焦りの感情がやたら見えるのが気になるんだけど」
「協音の領主(サトリ)の力で遺伝詞を見るのはやめなさい! というか、父さんの言葉を信じられないのか!?」
「わたしは――」
 と、芙雪が口を開いたときだ。
 蔵人がその手を引き、その詞をとめた。
 わ、と体勢を崩した芙雪を軽く抱きとめ、
「――ともかく、大事がないようで何よりです」
「あ、ああ……」
 生返事をして、矢村は思う。
 いい子だ。とてもあの祖父と母と父の血を継いでいるとは思えない、と。
 矢村は蔵人に抱きとめられた芙雪が頬を赤らめ、喜色の笑みを浮かべるのを見ながら、
 ……この光景があと五年先だったら……!
 と内心で嘆く。
 五年後だったらこうも微妙な感情は湧いて来ないだろう、と。
 そして苦笑する。この思考も芙雪には判ってしまうのだろうか、と。
 それを判っていて、それでもなお芙雪に触れることのできる彼は、実にいい少年だと矢村は思う。
 ……だが。
 と思考を重ね、矢村は娘と視線を合わせた。
「芙雪」
「な、何? 父さん」
 芙雪はややうろたえて、縋るように蔵人の腕を掴んで答えた。
 その様子を見ながら、矢村は一つ頷いて言った。
「――父さんは、学生結婚は許さないぞ」
 矢村は実の娘に殴られた。




 儀天は腕を組んで立っている。
 地面はかつて水田だった場所だ。国の減反政策により放棄されたままの田。
 その荒れた地面を踏みしめ、夕日が山向こうへと沈んでいくのを儀天は見ていた。
 空が夜色へとその色を変え始め、風がその冷たさを増していく。
 逢魔が時だ。
「――さて、あの小娘はまだのようだな」
 ――儀天・義体技能・発動・義腕「右豪鉄」戦闘機動開始・成功。
「自分で時刻を指定しておいて遅れるとはな。どうにも育て方を間違えたか」
 ――儀天・義体技能・発動・義腕「左迅鉄」戦闘機動開始・成功。
「いや、そもそも殺人者に子を任せる奴が悪いのだな。何を考えていたのやら」
 ――儀天・義体技能・発動・強化内臓起動・成功。
「まったく……」
 ――儀天・義体技能・発動・内臓式「浮神神器」起動・成功。
  ――儀天・義体技能・発動・義体リミッターカット・成功!
「……ワケの判らん男だったな!? そう思うだろう!」
 ――儀天・心理技能・自動発動・殺気感知・成功!
  ――儀天・視覚技能・発動・発見・成功!
 殺気を送ってきた相手は上。
 完全に戦闘態勢に入った儀天は見た。
 薄闇の中、金の髪を波立たせ、白衣を翻してこちらへと落ちてくる女がいる。
 女は杖を持っていた。歩行補助のものではなく、戦闘用の杖型神形具(スタッフ)“十月・改”だ。打撃部の逆面から推進炎を吹き上げ加速している。
 女は杖を振り下ろしながら、言葉を放った。
「――父を侮辱するなッ!!」
「本当のことを言われた程度で激昂するな小娘が」
 言葉を返し、儀天は右の拳を握った。
 迎撃する。
 ――儀天・義体/腕術技能・重複発動・加速打撃・成功!
 蒸気を吐き出して加速した右の拳は、重力加速と推進加速を得た女の杖と激突し、拮抗し、
「――重さが足りんぞ!」
 笑い、儀天は己の詞を放った。


 諦観の日が過去にあり
 前進の意が此処にあり
 闘争の力が其処にある
 忘れぬ人に報いるため


「吹き飛べ!!」
 ――儀天・浮神神器・発動・対象浮揚・成功!
 浮神神器(フローティングハイリズム)。
 女の身体を浮揚力の遺伝詞が包み込み、
 ――儀天・義体/腕術技能・重複発動・加速打撃・成功!
 打撃する。
 軽くなった杖打を儀天は弾き飛ばした。
 女は白衣を広げて風を受け、体勢を整えて着地する。
「久しぶりだな、吸血鬼の小娘。元気そうでなによりだ」
「……いつになったら私を名前で呼ぶのだ? カンナ・トルーマンという名を」
「オマエが儂にとって名を呼ぶに相応しい者になったら、だ。小娘」
 不服そうに口を尖らせるカンナの赤い瞳を見据え、
「貴様だけだな。儂に、力ずくでも過去を話させようというのは」
「……私も私なりに調べたのだ。だが――」
 カンナは視線を強く、豊かな胸を張り堂々と、
「儀天の他に、あの過去を知る者は居なかった!」
「ああ。皆、死んだし、殺したからな。……オマエの父親のように」
「信じないぞ!」
「信じておけ。オマエの父、アイザック・トルーマンは戦渦の中で誤って儂の妻、荻原・封花を斬殺したため――」
 儀天は右腕を掲げた。
 ――儀天・義体技能・発動・杭打ち・成功!
 石を砕いたような音を響かせ、掌から金属の杭が突き出す。
「――儂はこの杭で奴の心臓をぶち抜き、焚滅(アッシュ)させた。何度も言ったはずだな。それこそオマエが子供の時から」
「そんな虚言を、よく言う! 自分でも信じてないような言葉など、誰が信じられる!?」
「儂は信じているさ。そう信じたいからな」
 吐息。
 右腕は腰溜めにして拳を握り、左腕は肘を前に向けるようにして手刀に構える。
「問答の限りを尽くそうと言葉では無駄だ。聞きたくば力で来い」
「――そんなことだからッ!」
 カンナは白衣の下からペットボトル大の流体推進槽を取り出し、杖の打撃部の逆面へと接続。さらに紋章板を打撃部へと接続。
 一振りすれば杖先から炎が吹き出た。
「私は御前のことを信じたいのだ、儀天! 私の――、私の! 育ての親である荻原・儀天!!」
「あいにくだが、儂は信意など望んでおらんのでな!!」
 儀天は右の義腕を引き絞り。
 カンナが炎を纏う杖を振りかざし。
 ――カンナ・杖術/投術技能・発動・炎熱投射・成功!
 ――儀天・義体/腕術技能・重複発動・音速超過打撃・成功!
 二つの力が炸裂した。




 接続した流体推進槽から流れ出る流体は、打撃部の紋章板へ触れた瞬間炎となる。
 金属すら溶かす炎だ。義腕で迎撃すればその腕を融解し、強度のなくなった腕を続く杖打が粉砕する。
 それだけの温度を生み出し、その温度に耐えることのできる紋章板を作るのに随分と掛かってしまったが、
 ……今日こそ勝てる!
 はずだ。
 建御名方無手派は拳撃主体の舞闘。義腕を失えばその戦闘力は激減する。
 勝てるはずだ、と思う。勝てるはずだ、と。
 ……これで、本当のことが聞ける。
 三十年前の真実。自分の父が死に、文月の母が死に、紗月の両親が死んだあの騒乱の真実が。
 幼馴染であるあの二人はどう思っていたのだろう。文月は興味ない様子だったし、紗月は過去に囚われることを嫌っていたが、
 やはり本当は真実を知りたかったのではないかと思う。
 総長時代に儀天に挑もうとした時、文月はこの杖を作ってくれて、紗月は紋章作成を手伝ってくれたのだから。
 あの時はやはり負けて、以後も負け続けた。年季の差は滅多なことでは覆せない。
 だが今日こそは勝てる。勝てるはずだ。
 そう自分に言い聞かせ、言葉にできずに叫ぶ。
 ……何故、判ってくれない!?
 胸中で叫びながら“十月・改”から発される炎を撃ち放つ。
 狙いは万全。
 炎が飛ぶ。
 勝てる、そう思った瞬間だ。
 真正面から風が来た。強い風だ。
 音の無い風である。
 風は炎にぶち当たり、散り砕いた。
 ……何!?
 驚き、火の粉から避けるように後退した瞬間だ。
 豪。
 と、風音が響いた。その音で、カンナはその風の正体を見極める。
「……衝撃波か!」
「いい炎熱だったが無駄だな。接近を避けて投射したのが敗因だ――」
 儀天の拳の軌道は直線ではなく、弧を描くようなものだった。
 音速超過の拳が放つ衝撃波で炎は散らされたのだ。
 ――儀天・脚術技能・発動・疾走・成功!
 驚いている間に儀天が距離を詰めてくる。
「しかし記憶力の足りん奴だな。何度も食らった覚えがあるだろうに」
「お……覚えていなかっただけだ!」
「……何の否定にもなっていないな」
 攻撃が来る。
 ――儀天・義体/腕術技能・重複発動・打撃・成功!
 まず来たのは右の拳だ。
 高速で打ち抜いてくる拳の一撃を、
 ――カンナ・杖術/回避技能・対抗重複発動・杖防御・成功!
 杖で受ける。
 撃音。
 “十月・改”がしなり、打撃力に押され、身体が浮き、杖が金属音の悲鳴をあげ、しかし、
「……折れない!」
 杖も自分も耐えた。
 しかしそこで二撃目が来る。
 ――儀天・義体/腕術/体術技能・重複発動・手刀斬撃・成功!
 こちらに肘を向けて構えられていた左の手刀が高速で振るわれた。
 カンナにできたのは、首と胴と両腕のどれを犠牲にするかの判断だけだ。
 割。
 杖を握ったままの両腕が地に落ちた。
 ――カンナ・心理技能・発動・痛覚無視・成功!
 痛みは無視。いつものことだ、慣れている。
 流れる血に心の奥底から衝動が湧き上がってくるのをこらえ、
 ……こうなれば最後の手段しかないか。
 と覚悟を決める。
 できればやりたくなかったが、仕方もない。
 血に濡れた白衣を翻し、叫ぶ。
「儀天!!」
「まだやるのか?」
 うんざり顔の儀天を見据え、
 ――カンナ・体術技能・発動・脱衣・成功!
 白衣を脱ぎ捨てる。下は肌の露出の多い黒革のボンテージだ。
 儀天が思わず目を逸らす。その瞬間。
 ――カンナ・脚術技能・発動・踏み付け・成功!
 地に落ちた白衣の下に隠していた流体推進槽を踏み砕いた。
 砕音。
 そこで儀天も気づいた。白衣の裏を黒衣に染めるほど無数に描かれた紋章を。
「っ、オマエ……!?」
「相討ち狙いだ! 死なばもろともーっ!」
「――このバカ娘が!!」
 カンナは釣り目がちな目を弓にして微笑む。儀天の怒気混じりの叫びが心地よい。
 足元で、容器から流れ出た流体が白衣の裏に描かれた紋章に流れ込み、
「――南無三!!」 爆発が起こった。




 爆音。
 テーブルを震わせる振動を伴った音に、芙雪は箸を止めて嘆息を一つ。
「……懲りないなあ、カンナは」
「自爆特攻は昨年に失敗したはずだがな。カンナは丈夫だから、いくら痛い目にあってもまったく懲りない」
「爆発痕直すのはわたしなんだけどな……まったく」
 困ったものだ、と苦笑。
 気にせず食事を進める蔵人の遺伝詞を見れば、彼にも似たような感情の詞色が見える。
 芙雪はそれを嬉しく思う。
「……? 何に喜んでいる?」
 意思が遺伝詞に出ていたらしく、蔵人が不審の視線で見ている。
 芙雪はしばし考え、笑みを浮かべた。
「内緒」
 蔵人はこちらの意思をはっきりとは読めない。感情の遺伝詞がなんとなく見えるだけだ。
 ……でも、わたしは判る。
 協音の領主(サトリ)という力は、相手と自分の遺伝詞を等しくする。相手の思考を自分の思考として、理解することができる。
 だがそれは蔵人にはない力で、そして本人は気づいていないが、彼だけはその力を拒むことが可能だ。
 だから、芙雪には蔵人が判らない時がある。普段すべてが判っているからこそ、その時は酷く不安になる。
 彼が何を考えているのか。
 彼が何をしたいのか。
 彼がなぜこちらを拒むのか。
 ……判らないのは、怖い。
 だから芙雪は、たまに蔵人を試すことにしている。
 こちらの意図が読めないような言動に、彼がどう思うのか、どういう言動を取るのか、それらを知るためだ。
 そういった反応を覚えておけば、彼が意思を外に放つことを拒んだ時も、彼のことを判ることができる。
 笑顔で蔵人の反応を見ていると、彼は視線を逸らし、溜め息一つで食事を再開する。
 思考の方は“なんだか判らないが問題はないだろう”というものだ。
 そういった言動を記憶に留め、芙雪はふと問いかけた。
 ……おまえは、わたしのことが気にならないのか?
 言葉にも、遺伝詞にも出さない問いかけだ。彼には絶対に伝わらない。答えが返ってくることもない。
 判らない。
 しかし、問いかけることもできない。
 どんな答えが返ってくるのか、判らないからだ。
「……どうした?」
「え」
 気づくと、蔵人が気遣うような視線でこちらを見ていた。
「何か心配事でもあるのか? ……カンナなら毎度のことだし、祖父さんの心配をするのは無駄だと思うが」
「え……いや、わたしは、その、ええと、おまえが――いや、だから」
「落ち着け。言いたくなければ構わない」
「ち、違う。そういうのじゃなくて、ええと」
 思考が纏まらない。取り繕うための詞が判らない。
「だから、おまえが、わたしの――」
「いいから落ち着け。深呼吸」
 芙雪は言われた通りにした。
 ――芙雪・体術技能・発動・深呼吸・成功。
 深く息を吸い込み、吐き出す。
「……落ち着いたか?」
 うん、と頷いた。
 そうか、と蔵人が頷きを返してきたときだ。
「ただいま」
 と、女の声がした。
 カンナと儀天が戻ってきたのか、と一瞬思い、
 ……爆発したのに、もう喋れるのか?
 視線を巡らせれば、蔵人もまた疑問の表情を浮かべているが、やや表情が固い。
 なぜだろうとよく見れば、怯えの遺伝詞が僅かに見えた。
 ……蔵人が……怯えてる?
 不審というよりは異様だ。
 もっとよく見れば、疑問と怯えの遺伝詞の下に、喜びの詞色が見えた。
 ……蔵人がそういう反応を見せる相手は……。
 そこまで考えたところで、声の主が居間に姿を見せた。
 乳白色の着物の上に、六本の小太刀と一本の長刀を装った女性だ。
 戦闘でもしたのか、短く切り揃えられた黒髪はやや乱れている。
 彼女はまずこちらに視線を向け、数秒してから頷きを一つ。次に蔵人に視線を向けて、言う。
「プロポーズはした?」
「四年ぶりに会って言う台詞がそれか、母」
 頭を抱えてうめく蔵人から視線を外し、文月がこちらを見たので芙雪は答えた。
「ええと、されてない」
「……不甲斐ない息子で、ごめん」
「謝られても……」
 返答に困り、視線を逸らす。
 と、文月の背後にもう一人、誰かがいることに気づいた。
 彼女の後ろに隠れていたのは、一人の少年だ。紺色のスーツ姿で、遺伝詞がやや固いように見えるが、
 ……違う。機械の遺伝詞……自動人形?
 少年と目が合った。
 とりあえず笑みを返すと、少年も不安そうに、だが小さく笑みを返した。
 蔵人も少年に気づき、文月に問う。
「その子供は?」
 問われ、文月は少年を前に出した。
 しゃがみこみ、縮こまる少年の肩に手を置き、蔵人を見て、
「あなたの弟」
 驚愕に硬直するこちらに構わず、文月は少年に自己紹介をうながした。
 彼はこちらと同じように硬直している蔵人を見つめて、
「あの、ジェイド、っていいます。よろしくお願いします、兄様、義姉様」
 と、お辞儀をする。
 うんうん、と文月は頷き、
「――妹もいるから、よろしくね?」
 蔵人が動かないので、芙雪はとりあえずジェイドの頭を撫でた。




 闇がある。
 浅い闇だ。
 不快な闇ではない。視界を閉ざし、眠気を誘う闇だ。
 蔵人は布団に横になりながら、その闇を見ていた。
 窓を閉め切っており、風が無いために闇の遺伝詞(ライブ)はあまり動かない。
「……どうしたものか」
 ふと、声に出して呟いた。
 音に寄り添って、闇が動く。
 ぐるぐると渦を巻く闇の遺伝詞を見ながら、蔵人は思う。
 母。
 弟。
 妹。
 四年ぶりに帰ってきた母は弟を連れており、さらには妹も作ったという。
 ……どうしたものか。
 どう対応していいのか判らず、ろくに話もしないまま逃げ出してしまった。
 闇を見ながら蔵人は思う。どうしたものだろう、と。
 母は母であり、家族だ。すぐ抜刀するあたりに恐怖を感じるが、まあそういう個性なのだということで納得はしている。
 だが弟というものには、どう対応すべきなのだろう。
 判らない。
 ……芙雪なら判るのだろうな。
 芙雪は相手の思考が判る。
 それは、相手が何をして欲しいのか、何と言えばどう思うかが判るということだ。
 だが蔵人はそういった力を持たない。
 他人を理解することは難しい。
 当然だ、とも蔵人は思う。自分の使う舞闘は殺人の技であり、それは他者を否定するための力だ。他者を受け入れるための力ではない。
「どうしたものだろうな……」
 吐息。
 闇の遺伝詞が揺らめく。
 揺らぐ闇の遺伝詞を眺めながら、ふと気付いた。
 自分に弟ができたということは、
「おれは、……兄になったのか」
 ――蔵人・心理技能・自動発動・納得・成功。
 ふむ、と頷き一つで蔵人は目を閉じた。視界を閉じれば闇の遺伝詞すら見えなくなる。
 ……どうするべきかは判らないが、問題はないだろう。
 遺伝詞の奏でる拍詞に己の心臓の鼓動をノせるようにして、蔵人は眠りに付いた。
 明日の朝食は騒がしいものになるだろうと、そう考えながら。


 音が響いていることに気付いて、ジェイドは目を開けた。
 光がある。朝だ。空気は冷たく、このまま布団に入っていたいという誘惑がある。
 何時だろうと思い、自動人形としての時間感覚で時刻を確認する。7:04。普段自分が起きるよりも一時間も早い。
 隣の布団で眠る母を見ると、まだ寝ていた。寝顔を見れば死人のような無表情で、動きも無い。
 ひょっとしたら眠ったまま死んでいるのか、と一瞬不安になるが、耳を澄ませば浅い呼吸音が小さく聞こえた。
 ジェイドは安堵。
 と、強く音が響いた。
 ……何の音だろう。
 不安ではなく好奇心としてそう思い、ジェイドは布団から抜け出た。
「――ひゃっ」
 寒い。染み入るような寒さだ。
 一瞬布団に戻ろうかと思い、しかし寒さよりも好奇心の方が勝った。
 冷え切った畳の上を裸足で進み、襖を開けて廊下を渡り、居間に出る。
 居間は暖かい。暖房が効いているのだろう。そのことに安堵して、ふと人の動きと音に気付いた。
 先ほどから響いていた強い音ではない。もっと静かでありきたりな動きと音だ。
 それはキッチンから響いていた。そちらを見る。
「……兄様?」
 兄が居た。
 シャツ一枚という涼しい格好の蔵人が、包丁を手に調理をしている。こちらに気付いた様子はない。
「あ、あの、おはようございます」
 緊張しながら朝の挨拶をする。が、答えはない。
 相変わらずこちらに気付いた様子もなく、兄は調理を続けている。
「……兄様?」
 返事はない。
 ……無視されてるのかな……?
 嫌われてるのだろうか、と思い、ジェイドはうつむいた。身体を重く感じる。
 昨晩も、ろくに話もしないままに蔵人は部屋に行ってしまったし、やはり嫌われているのだろう。
 当然といえば当然だ。離れていた四年の間に母に子供ができており、その子に母を独占されていたとしたら、自分だってその子を好きにはなれないだろう。そう思い、ジェイドは自省する。
 ……母様に甘えすぎてたから……。
 気落ちして、部屋に戻ろうと思ったときだ。
 音が響いた。
 緊。
 弾。
 そういう音だ。
 音は外から響いていた。
 庭を見る。そこに居るのは、
「……兄様と、義姉様?」
 見たものを言葉に出し、
 ……え?
 慌ててキッチンのほうを振り向いた。
 誰もいない。
「どういうこと……?」
 疑問を呟き、ジェイドは庭の二人に視線を戻した。




 蔵人と芙雪は普段、二人一緒に鍛錬を行う。
 芙雪が風水で的を作り、蔵人がそれを壊すというやり方だ。
 蔵人が構えているところに芙雪は、
「オ」
 と、鳴弦の響きに意思を乗せて犬や鳥を生み、
「お」
 と、蔵人は拳の一打でそれを砕く。
 最初は互いの動きを確かめるようにゆっくりと、そして徐々にそのペースを上げていく。
「オ」
 と風から鳥が生まれ、
「お」
 と右の拳が鳥を砕き、
「オ」
 と地面から犬が生まれ、
「お」
 と左の拳が犬を砕く。
 緊、と鳴弦が響き。
 弾、と打撃が響く。
 打撃に砕かれ遺伝詞が散り、二人の速度が上がる。
 オ、お、オ、お、と風水と打撃が連続する。
 芙雪の風水は次第に一度の鳴弦で複数の獣を生み出すようになり、蔵人の打撃は拳だけではなく足や肘、踏み込み動作や攻撃反動からすら放たれるようになる。
 オ、お、と詞が放たれ、緊、弾、と音が響く。
 騒がしく遺伝詞を奏でる二人は、しかしふと動きを止めた。
 視線を感じたからだ。
 二人は揃った動作で視線の主を見た。
「あ……、お、おはようございますっ」
 元気の良い挨拶が返って来て少し戸惑い、しかし、
「おはよう、――弟」
「おはよう、よく眠れた?」
 二人は挨拶を返した。
 ジェイドは緊張のある表情で笑みを作り、はい、と頷きを一つ。
「そう。良かった。ところで今、何時くらい?」
「ええと、七時ぐらいです」
「随分と早起きだな、弟。母はまだ寝ているだろうに」
「え、ええ。……その、音がしたので」
「ああ……」
 芙雪が苦笑を浮かべ、
「起こしてごめん。騒々しかっただろう?」
「い、いえ。そんなには……その、弓の音とか殴った音とかが響いてましたけど」
「素直でいい子だ、ジェイドは。……蔵人よりとても素直」
「性分だ。あの父母から生まれてあの祖父に育てられて素直になるほうが異端だと思うがな」
「それもそうだけど」
 二人の言葉にジェイドは微笑を浮かべてから、
「あ、あの! さっき兄様、キッチンの方にいましたよね?」
「いや、いなかったが」
「え――? でもさっきは確かに」
「ああ」
 蔵人は納得の表情で、
「虚霊(コダマ)だろう」
「あ、母様から聞いた覚えがあります。確か、霊(ゴースト)の一種ですよね?」
「記憶遺伝詞の反響による澱のようなものだ。ここは記憶都市(イメージシティ)だからな。……何か妙なことをしていたか?」
「ええと」
 どういう風に説明しようかとジェイドが言葉を考えていると、それよりも早く芙雪が言った。
「朝食の用意してくれてたの? 助かるけどたまに妙なもの作るからなあ……土鍋いっぱいの茶碗蒸しとか」
 やや苦い顔の芙雪の言葉にジェイドは苦笑を浮かべ、しかし、あれ、と表情で、
「いま、何か妙な感じが」
 ジェイドの言葉に芙雪はしまった、という表情で口を閉ざし、代わりに蔵人が、
「気にするな」
「え、でも」
「……ユキは風水師(チューナー)だからな。思考を読んだだけだろう」
「でも、外燃詞(オープン)したつもりはないんですけど」
「鍛錬直後で調子がいいんだろう。……まあともかく、朝食の準備とするか」
 言外に、聞くな、という意思を込めた語調で蔵人は言った。
 外燃詞されたその意思を感じ取って、ジェイドはそれ以上問うのをやめる。
 気落ちした彼に芙雪が言う。
「ごめんね。……代わりに一つ。蔵人はあなたを嫌ってなんかいないから」
 え、とジェイドが顔を上げると、芙雪は笑み。蔵人はやや渋面で顔を背けている。
 笑顔の芙雪はジェイドの頭を撫でて、
「さ。―― 一緒に朝ごはん作ろうか、ジェイド」
「――はい、義姉様」
 笑顔を浮かべたジェイドに、蔵人はふと問うた。
「ところで弟。一つ問うが何故――、ユキを“義姉様”と呼ぶんだ?」
「兄様と義姉様は婚約者だ、って母様が」
「……いいか弟。それは嘘だ」
「え」
 きょとんとした表情でジェイドは蔵人を見て、次に芙雪を見て、
「えー?」
「なんだその微妙に抗議の入った疑問詞は」
 兄弟の会話を聞いて、芙雪はくすくすと笑った。

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最終更新:2009年05月22日 07:26