+ | 帝国地図 |
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帝国成立まで(帝暦以前)
帝国成立以前、文明世界(と、本人達が勝手に思っている)の東の外れに位置するこの地方は、各種族の小規模なコロニーが点在しているに過ぎなかった。
東方辺境には強大な蛮族が、そして山岳や森には妖魔が潜み、脅威に晒されながらもまとまる事が出来ずにいた各邦を纏めたのは、一人の英雄であったと伝えられている。
現在の帝国南部に生まれたその英雄ログレスは、東方より襲来した妖魔王の軍勢に対し、諸邦をまとめて連合軍を組織して、これを打ち破ったとされる。
以後、諸邦はログレスを初代皇帝の座につけ、“帝国”という一つの連邦国家を構成するようになった。 帝国時代(帝暦1~260)
初代ログレスと、以後数代に渡って皇帝は非常に強い権限を有し、帝国内に法と流通網を広め、諸侯はそれによく協力した。
外敵の襲来が現実の脅威であったその時代、疲弊しきった国力を回復させて次の妖魔王に備えるのは急務だったのである。
しかし四代皇帝の頃になると、繁栄し強大となった帝国にとって直近の脅威となる外敵はほぼおらず、中央集権にすぎる帝宮に対して反発が強まった。
皇帝は諸侯の不満を抑え切れずに退位し、以後は帝国内で特に強大な影響力を持つ諸侯が選帝侯として、皇帝の権力を支えると同時に次代皇帝を選ぶようになる。
ここにログレスの子孫が世襲する時代は終わり、以後はアルトリウス家として選帝侯に名を連ねる事になった。
以後は小さな動乱や外敵の侵入はあるものの、概ね平和な時代が続く。
帝国崩壊(帝暦261)
帝国皇帝十一代の死を最後に、皇帝の即位は行われなくなった。
これは選帝侯が次代皇帝を選ぶ上での調整が出来なかったからでもあり、同時にまた「皇帝」が帝国内で存在感をほぼ失っていたからでもある。
看板上の帝国崩壊ではあるが、帝国の秩序はすぐには失われなかった。
連邦法の多くは慣例として残り、帝国時代のインフラもほぼ健在である。
しかし要石を失った帝国は徐々にほころび始めている。大災厄のきっかけとなるのは、帝国北東部で高地グンマーのサイ族と対峙する騎士団領の崩壊ではないかと危惧されている。
そして現在(帝暦284)
崩壊から20余年、未だ目立った混乱は見られない。
とはいえ帝国の崩壊はそれまでの、良くも悪くも安定していた状況をじわじわと変化させつつある。
元帝国の諸邦は、帝国の庇護・抑圧から放り出された事で、独自の発展・生存を画策している。 帝国の圧力が無くなったことで、帝国文化圏の北東に追いやられていたサイ族が南下しつつあり、サイ族から開拓民を守る名目で認められた騎士団領は厳しい戦いを強いられている。 |
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地形と気候
帝国は東西500km、南北550kmほどにも及ぶ広大な地域である。
概ねにおいて北に行くほど平均気温は低くなるが、海流の関係で海近くは比較的気温が安定して過ごしやすく、反対に内陸は寒暖の差が激しい。
南を大洋、北西を内海である北氷海に挟まれ、北東にはオステン山地を挟んで常冬の高地グンマーが広がる。
西には文明世界の中心と隔てるグロース山脈があり、中心世界の流行文化と戦乱の侵入を阻んでいる。
国土の多くは森林と丘陵が占め、縦横に河川が流れている。
海流の影響で南部は温暖湿潤であり、一年を通して降雨に恵まれている。 |
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帝国諸邦
帝国は瓦解したのではなく、名目上消滅しただけである。纏まりを欠いて分裂しただけであって、構成諸邦が消滅したわけではない。
周囲との軍事バランスが崩れたことで望まぬ変化に対面している領主達は数多く、帝国の復興を望む声は高まりつつある。とはいえ、現時点で帝国を再び纏め上げるような勢力が存在しないのもまた事実であり、そう言う事を言い出す奴らに限ってろくでなし(どんな奴らかは国会中継を見て欲しい。あんな奴らである)ばかりというのも事実である。 教会
アーケンラーヴを主神とする七大神を祀る、大教団組織。
教会は帝国の権威を裏付ける重要なポジションを担当はしているものの、名目上は世俗の権力を持たない組織であった。
しかしながら教会は各地に直轄領を所有しており、教団に所属する聖堂や神殿、修道院の領地と合わせて、帝国圏内に多くの財産を有していた。
帝国崩壊によって後ろ盾を失った教会はそこで、世俗の資産を守る為、様々な策を講じる。その中でも、教団をあげて取り組んでいるのが、冒険者というフリーランスの暴力を雇い入れての各種活動である。
教会には独自戦力がなく、また、それを持てば世俗への特権を逆説的に手放すことになる。 特定の君主に協力させようにも、対立する君主がいる以上、不用意に勅令を出せばその何れかに肩入れする事になりかねない。それを避ける為に敢えてリスクを冒して、冒険者などという信頼性の低い戦力に頼ったのだ。 騎士団領
帝国北東部には、教会に忠誠を誓った修道騎士達の領地がある。
サイの国からの圧力から開拓民達を守る為に、彼ら騎士団はここに邦を作り城を築いて、異民族の侵略に対し戦った。 帝国の瓦解を受けて高潔に過ぎる彼らは孤立しつつあり、次第にサイ族に押し込まれている。 各種族の状況
この地の文明の主役はヒューリンである。ヒューリン達は主に平地に暮らし、都市と周辺の村落を社会の基本としている。
エルダナーン達は帝国の支配下におかれる事を嫌って森や山に籠もり、独自の発展を遂げた。
ネヴァーフはその技術が重宝されて帝国権力者の工房で職人になった一族もいたが、多くは帝国の版図に含まれる事を嫌って多くが山や地下世界に籠もった。 その為、見た事がないというヒューリンも少なくないのだが、帝国が崩壊した事で交流が再開されつつある。
ヴァーナやフィルボルは絶対数が少なく、せいぜい一族単位での纏まりが僅かに点在するに過ぎない。
氏族を離れる個体もいるのだが、それでも「話は聞くが見た事は無い」というのがこの地域における一般的な反応である。
ドゥアンに関しては、独自のコミュニティを構築するほど数がいない。
商人たち
都市の成立に伴って地位を確立した商人たちは、帝国崩壊後、主に帝都や帝国南部を中心に急速に勢力を伸ばしている。
商人は教会同様、基本的に軍事的な実効力を持たない事で存在を許されている面があり、領主や貴族の庇護が必要な存在である。
が、大商人ともなれば都市の一つを支配するほどであり、その勢力は貴族といえ無視できるものではない。
あるいはいつかそう遠くない内に、商人達が騎士や貴族を傭兵として使役する時代が来るのかもしれない。
冒険者
冒険者は契約に基づいて雇い主に従う傭兵の一種である。冒険者の活動内容がより多岐に及ぶ事から、傭兵が冒険者の一種であると言い換えても良いだろう。
彼らは専門家であり、「冒険者」という言葉は現実の我々の感覚で言う「フリーの●●」に近い。 後ろ盾を持たないフリーランスとして身を立てるには才覚が求められ、それを実行している人達は一定の尊敬を得られる。 しかしながら反面で、後ろ盾無しに生きるリスクを計算出来る人間は自らフリーになろうとは考えない。 また、「売れる内に売りだそう」と一定期間精力的に活動したら、さっさと引退してしまうケースが多い事も、長くフリーに身を置く者が実際には特定のパトロンがいる事実上の「専属」であるケースが多い事も、現実の「フリーランス」によく似ている。 とはいえこの地域における冒険者は、教会が積極的にクライアントになってくれる事に加えて、元々の社会制度の閉塞感もあって、一般に考えられる「得体の知れない武装したならず者」という印象より相当マシに考えられている。 |