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トアールの町
帝国南部に位置する。
新たなる交易の要衝として、トアール修道院を中心に発展しつつある都市。元々が修道院の直轄地であったが、教団の権力の後ろ盾であった帝国が瓦解した事を受けて、教団に忠誠を誓う(より正しくは教団主神アーケンラーヴに忠誠を誓う)マルク・グラーフ伯爵の領土となった。 が、この際、教団は様々な取り決めを伯爵と結んでおり、事実上の支配者はほぼ教団と商人達と言える。
トアールの定住人口は1万を少し超える程度で、都市住民の生活を支える一次産業を請け負う村落が周辺に点在しているので、それらの人口も合わせると数倍のヒューリンがこの地域に住んでいると考えられる。
トアールの税制
トアールの税制は非常に緩い。
農村には大抵領主がいて、彼らに対し作物の一部と労働の税を支払い、同時に教会への税を支払う程度である(それ以外にも、橋や水車小屋などの共同施設を使うと税を取られるが、これは我々の感覚で言う「保守・補修に充てられる利用料」である)。 都市においては、城壁の内側に土地を所有する者には土地税が掛かり、都市内部の水源を利用できるのは水税を支払っている者だけである。それ以外にも大抵において何か特別な事を為すには税が掛かるが、こちらは感覚として「金で特権を買う」ようなものだと捉えて欲しい。ここで列挙する事は考えてないのでしない。 以上に加えて、トアールに限った話ではないがこの地には非常に多くの「罰金刑」が存在する。罰金は文字通りの処罰である事もあるが、これもまたある種の「税金」であり、都市や領主の大事な収入源となっている。 トアールの法制(罪と罰)
前述したが、トアールの法制を象徴づける特徴的なものとして「罰金刑」がある。
基本的にトアールの法制は「寄り合い所帯としてのトアールをどうにか生存させていく」事を至上に作られており、同時に「それに関係ない部分はいい加減」である。 税制は前述したが、刑罰の対象となるのは主に「都市の利益を損なうこと」と「社会秩序を乱すこと」に対してかかる。重罪とされるのは都市の防衛上の機密を余所に売ったり、親や雇い主を殺したりする行為で、これには大体苦痛を伴う死刑が割り当てられる。 殺人や傷害、詐欺など、他にもわれわれの世界と大体同じ(より未整理でいい加減ではある)だが、刑罰として「死刑」は滅多にない。刑罰全般が「報復による感情的バランス取り」という側面を共通してもつが、死刑は「見せしめ」であり、この地域の刑罰に対する基本的な考え方は「過失を償い、損害を補填させる行為」なのである。 死刑の下には、手足といった体の一部を切り落とす身体刑、鞭打ち刑、追放刑、晒し者、罰金刑、労役刑、禁固刑といったものがある。が、前述の理由により、大抵は罰金、支払えないならば労役が課されるだけである。
細かい法制は地域により異なるが、この法の精神自体はトアールに限ったものではなく、旧帝国圏内、あるいはそれ以外の地域であっても一般的に見られるものである。
例外は律令体性を敷いている東方の帝国など、ごく一部に過ぎない。 トアールの軍制
平時におけるこの町の防衛は職業兵士200ほどの正規軍により維持されている。それ以外にも民兵組織があるが、いずれもトアール聖堂の司教が総指揮権を持つ(実際は司教が委任した専門家が指揮を執る)。
司教に委任を受けた一人~数人の将軍がトアール軍のトップであり、その下に隊長が4-5人いる。一人の隊長が指揮をする兵は40-60人ほどだが、平時には民兵組織の訓練や契約戦士(後述)との窓口なども請け負う。
この街は自治意識が高く、正規軍以外にも、市民で構成された民兵組織がある。民兵は普段は市民と変わらない生活を送っているが、有事には独自の指揮系統に従って部隊を編成し、司教(あるいはその委任を受けた将軍)の指揮下に入る。
民兵我々の感覚で言う消防団に似ていて、有事に備えて訓練を受ける他、必要に応じて駆り出される事で生じる「日常生活への支障」を補償されるなどの特権を受けられる。
以上に加えて、傭兵と契約戦士によりこの都市の兵力は賄われる。傭兵は文字通りだが、契約戦士は特殊な契約の傭兵である。彼らはより安価な契約を結んで都市に留まり、用件毎に個別に依頼を受けて武器を振るう。その立ち位置はより身近で、ちょっとした調査や護衛、警邏を請け負う。冒険者が街に留まる間の副業として、契約戦士になる事も多い。
更に契約により、グラーフ伯爵は外部からの侵略に対し軍を派遣してトアールを守る義務がある。ここ数年の間この契約が実際に履行される機会はなかったが、されればグラーフ伯の千を越す精強な軍が派遣されるだろう。
トアール周辺の地勢
トアールの勢力圏は南北に走る大河フルスの周辺に拡がる平野の南に位置する。都市としてのトアールはヴゥフト湾に注ぐフルスの河口付近に位置している。
ヴゥフト湾の左右は岬になっており、その西側の先端はフェルスという岩山である。フェルスからトアールまでの海岸は岩場と岩山続きで、同時に岩礁も多く船舶は近づかない。
都市周辺と、貧弱な街道沿いに徐々に開拓が進みつつあるが、それでもこの一帯は発展が遅れていた事情もあり、大半は森と荒れ地ばかりである。
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マルク・グラーフ伯爵領
トアールの東に広大な領地を持つマルク・グラーフ伯爵は、帝国南部の防衛において重要な役目を負っている(帝国がない今現在においては、「負っていた」と言うべきだろうか)。
現当主であるリカルド二世はこの手の領主の例に漏れず血に飢えた残忍な領主という評価を領民達になされているが、冷静な政治家でもあり、帝国が崩壊した今も帝国南東部の諸侯たちと密接に連携して、この地域の秩序を維持している。
トルナリ
トアールの北にある都市。
トアールにとっては陸路で内陸部に接続する上では避けて通れない場所であり、東西と南北に伸びる街道が交わる要衝でもある。 |