生活と文化_AR2


この地域の文明レベル

 どこの地域にも天才はいて、技術者はいる。大筋においてこの世界の技術レベルは進歩し続けて、エリンディルと同程度である。
 が、流通・通信に関する技術は大きく遅れており、情報の伝達は巡礼や商人が広める噂程度の速度しかない(為政者や有志が情報網を構築するケースは勿論あるが)。

 その為、この地域における技術の最大の特徴は「共有化されていない事」である。優れた技術や魔法はそれを身に着けた者だけのものであり、広く一般化させる事に成功した例は未だない。
 銃器や転送魔法・情報伝達魔法、治療技術等、一部我々の住む現代よりよほど発達している分野があるが、いずれもごく一部の天才(有り体に言えば経験点を払ってスキルを覚えたキャラクター)だけが身に着ける事が出来る技術である。

 印刷術は発明されておらず、文書の類は全て人の手で書き記される(もっとも、印章から凸版画のような技術は生まれつつあるので、数世紀の内には活字印刷が生まれるだろう)。
 使用される言語はコミュニティ毎に異なるのが普通で、エルダナーンはバルツュピール、ネヴァーフはベルクシュピールと呼ばれる独自の言語を持っている。
 ヒューリン達は帝国公用語とされるライヒシュピールで会話し、それがこの地域の公用語となっている。

 読み書きについては公用語による記述が定着しつつあるものの、未だ公的な記録などには古風な教会語が用いられている。
 多言語を話せる者は珍しくないが、識字率は決して高くない。
 聖職者ならばほぼ全員がいずれかの言語を読む事が出来、会計や契約上の手続きに関わる事の多い商人や貴族、役人なども読み書きを身に着ける事に積極的である。
 が、それ以外の人々は文字を読み書きする事をさほど重要とは考えておらず、趣味の事、余暇に楽しみで学ぶ事程度に捉えている。




地域の人々

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人々の暮らし

 全体として、この地域の人々は基本的に生まれてから死ぬまで、せいぜい数十キロの範囲から出る事はなく、その多くは村落や都市など自分が所属する囲いの中だけで暮らす。
 その為、多くの人は刺激に飢えており、冒険者などの旅人がやってくれば喜んで宿を貸し与え、交流しようとする(もっとも、よそ者は危険と考えられているのもまた事実であるし、多くの人は貧しい暮らしを強いられている。宿として借りられるのは空き家や、慈善を旨とする教会で、食物なども彼らが食する貧しい晩餐を分けて貰う程度というのがほとんどだ)。

食生活

 人口の多くは村落で農業に従事しており、比較的温暖・湿潤な気候を利用して主に麦や芋等の穀物を栽培している。
 野菜や香草も広く育てられているが、専業でそれらを扱う農民はごく少数で、多くは菜園と呼ぶような小さな畑で扱われている。
 家畜を持つ農家は多く、牛・馬・羊・豚・鶏・ガチョウなどが飼われているが、労働力として、乳を搾るため、毛を刈る為に牛馬羊が食肉になる機会は少ない(少ないと言うだけで、無いわけではない。
 都市部で市に行けば探せるだろうし、村落でも冠婚葬祭の折に振る舞われる事がある)。鶏やガチョウも卵を産むが、増やしやすい為食卓に上る事は珍しくない。

売買

 都市に住む者は職人か商人である事が多い。職人達はその技術分野に応じた品物を作り、商店に卸す事もあれば、自分で店を持って売る事もある。
 サービス業も、強引ではあるが、ある意味で「生み出した商品(サービス)を手ずから売る職人にして商人」と言う事が出来るだろう。
 商人はただ商品を売り買いして儲けるのが仕事で、商人にとっての成功は都市に店舗を持っていてそこで商いをする事である。

奴隷について

 奴隷という職業は、限定的にしか存在しない。婚姻に際しては「夫婦は互いに互いを所有する」というような契約が為されるが、それ以外においては名目上、人が人を所有すると言う事はない。
 とは言え、何らかの罪を償う為に一時的に誰かの奴隷になるというような判例は過去にあるし、外の地域から入ってくる「最初から奴隷として売られてくる」人々に関しては、そのまま奴隷として扱われるのが珍しくない(商品として奴隷が入って来る事自体珍しいのだが)。
 いずれにせよ、この地域においてごく普通の雇用上の主従関係が、全く奴隷同然であるというのは珍しい事ではない。

男女の身分

 男女の間に基本的な尊卑はないが、慣習としては「現場で矢面に立って稼ぎを持ち帰る(言い換えれば外政を担当する)」のは男性であり、「内助の功でそれを支える(言い換えれば内政を担当する)」のは女性であるという役割分担が為されていて、相手の領分に干渉するのは下品な行為と捉える傾向が見られる。
 とは言え、「適材が適所を担当するのが良い」という考え方もまた強く、女性が男の職場と言われる職につくケースも珍しくない(それなりに苦労はするだろうが)。
 反面、男性が女の職場に入るケースは少ないが、それは単純に女性の方が領域を侵される事への反発が強いと同時に、男性の方が不器用という事なのだろう。

徒弟制度

 いずれの種族の民も若い頃から徒弟や見習いとして仕事を手伝うのが普通である。都市では商人や職人が親方となり、技術を習い、印可を受けて周囲に認められる。
 農民ならば親から子に土地を相続していく都合もあり、「親方」は文字通り父親のケースが多い。しかしながら、商人・職人は施設があればどうにかなるという物ではない部分があり、子が親の資産を受け継ぐとは限らない。
 貴族もまた、継承するものである。貴族は土地と人を所有し、彼らから様々な恩恵を税や懲役という形で受ける権利を持つが、同時にまた、領地を経営してこれを良く治め、有事には体を張って戦う義務を有している。
 貴族の子は小さい頃から別の騎士貴族の元で従者・侍女となり、知識と技術を身に着ける。とはいえその子らが奉公先の地位や資産を受け継ぐ事はない(養子縁組や婚姻などによって受け継ぐ事はあるが)。
 以上の例外となるのが、戦士と聖職者、魔術師と盗賊である。


冒険者の四職業

ウォーリア
 この地域における軍事力は騎士とその配下が多くを担うが、職業軍人や、徴兵や募集に応じた兵、金銭契約で雇われる傭兵というのは存在する。
 それらは親から子、親方から徒弟に受け継がれるのではなく、訓練施設(野営地やただの野原である事も多い)でまとめて調練される物である。

 この地域における兵科は大まかにしか分かれておらず、徹底してもいない(船乗りは例外である)が、それでも適性による役割分担や、組織的行動をするための階級が大まかに存在する。
 才覚があれば、何の後ろ盾もない者でも軍で実績を積んで成り上がる事は可能であり、戦士としての優れたキャリアはどこに行っても通用するのだ。


アコライト
 聖職者は基本的に教会に属する。神学校で学んで聖職者になる者もいるが、費用が嵩む為に商人や貴族の子弟が多く、既に実績を積んだ司祭がより高位の職に就く為に神学校で学び直すケースもある。

 神学校を経ずに聖職者になるには、教会や神殿に奉仕者(粗末ながら衣食住は提供されるが)として入り、その施設の責任者に認められるという方法がある。
 こちらの方が門戸が広いものの、聖職者として認められるのは認めた責任者の格次第である(ゲーム的なデータはどこでも通用するが、社会的にどこまで然るべき敬意を得られるかというのは格次第である)。
 とはいえ、神学校で学んだ場合も神学校の格次第であり、程度の問題であって本質的には似たようなものである。


メイジ
 魔術師というものは、その名の通り「魔術」という訳の分からない物を専門にする職種であるが、それ以上にアドバイザーとして多角的な考え方や知識が求められる事が多い。
 魔術自体の価値が小さいわけではないのだが、魔術師の絶対数が少ない為に魔術自体が大きな力になりにくいという事情がある。
 魔術というのは個人の才覚によるところが大きく、学校のような物を作って広く教える方法が確立されていない為だ。

 魔術師が私塾を開いたり弟子を取ったりして技術を教えるケースは珍しい事ではないが、そもそもの魔術師の絶対数が少ない為、その機会に恵まれるのは希有であり、弟子が実際に魔術師として大成するのは更に稀少である。
 その為、魔術師になればそれだけで社会的には大きなチャンスになるのだが、インチキ魔術師に詐欺事件は後を絶たず、また魔術自体に「胡散臭く危険な物」というイメージを抱く者も多い為、我が子を魔術師に弟子入りさせようという親は多くない。


シーフ
 最後は盗賊である。盗賊自体の定義は、言ってしまえば「他人の所有物を不当に奪う事を生業とする者」であり、同じコミュニティ内でそれをやるのはこの世界でも犯罪である。
 が、この地域における所謂「盗賊」は、我々の世界におけるそれと少し意味合いが異なる。
 彼らは技術職であり、その技術を駆使して密偵や斥候を請け負い敵対勢力の情報を自陣営にもたらす、妖魔やモンスターが張り巡らした警戒をかいくぐって仲間を安全に誘導するといった事が出来るのだ。
 そのような技術を教える環境はごく限られていて、しかも基本的には秘匿されている。それでも組織的に盗賊行為を行う事はあり、頭数を必要とする状況もある以上、新入りを迎え入れてその技術を教えるという事はある。
 が、それでも盗賊の多くは自己流で技を磨き、多くが確立する前に捕縛されてその報いを受ける。
 ゲームのクラスとしての「シーフ」の全てがそうである訳ではない。
 冒険者としてのシーフは多くが軍の偵察兵や、為政者が組織した諜報組織のスタッフにその起源を持ち、それらの組織から直接、あるいはそうして生まれた「初代」のシーフから技術を継承して、シーフになる。


シモの話

 ヘイヘではない。主にうんこしっこ、ちんこまんこの話である。
 言ってしまえば、現代日本の感覚からすればありえないレベルであるので、あまり描写しないようにするし、考えないようにしたいと思う。
 以下は「何かの弾みではっきりさせる必要が出てきた場合の為、一応設定しておく」レベルの事であり、史実で同程度の文明レベルでの事情を反映したものより相当にクリーンで清潔にアレンジされている。

上下水設備

 都市ならば、下水があるのも珍しい事ではない。生活用水として外部から水が引き込まれているのは良くある事で、その「使われなかった部分」はそのまま汚物を排出する下水として利用される。
 下水の多くは道ばたの側溝に蓋をしたもので、蓋がある分悪臭は抑えられているが、それでも良く詰まる。
 トイレはあるが、排泄物がそのまま下水に流れ込むのは極めて稀で、大体は汲みおいて早朝等に下水に流す方式を用いている。
 村落ならば話はより簡単で、穴を掘っておいて排泄物をそこに流し込み、埋めてまた次の穴を掘る。

 生活用水、飲料水などは、やはり早朝等に汲んでくるのが普通である。これは井戸である事もあるし、広場などに泉を作ってそこで汲む事もある。
 これらは共有財産であり、汚したり破損したりすれば厳罰以上の罰(私刑やコミュニティからの追放)もあり得る。


調理と調味料・嗜好品

 汲んできた水は手洗いや洗顔に使う他、飲用・料理用にも使う。この地域の料理は大鍋で煮るか、竈でグリルするかが殆どである。

 食品の保存技術は脆弱で、塩漬け・酢漬け・蜜漬け・アルコール漬けや燻製、乾燥保存がせいぜいである。
 魔法的な手段による冷蔵・冷凍、あるいは時流を弄って保存する等という大技もあるが、それは貴族であっても軽々しく利用出来ないような超稀少な技術となる。
 調味料や香辛料の類は豊富で手に入りやすいが、それでも「この手の世界にしては」の話であって、現代日本の感覚からすればあり得ないほど高価で稀少な物だ。
 とは言え都市部では朝に市が立ち、周辺の村落から持ち寄られた野菜や肉が手に入る為、毎食なんたら漬けだの干した肉や魚だのを食べる必要はない。

 酒はよく飲まれる。穀物を醸造してそのまま飲んだり、蒸留して度数を高めて飲んだりと、種類は様々である。
 この地域でよく飲まれるのは、麦芽から作るビール、葡萄から作るワインである。
 未成年者や聖職者の飲酒は良くないとされているが、飲用に適した水が限られる地域が多く、多くの地域ではビールとワインいずれかまたは両方が飲んでも「飲酒」とは見なされない事になっている。
 酒の製造は基本的に自由だが、酒造設備には税が掛かり、また作られた酒を他者に提供するには審査が必要となる(公的機関ではなく、村会や町内会と言った自治組織、言うなれば「利用者による審査」である)。


娯楽

 さて、出す物を出して、腹も膨れたら、今度はむらむらっと来るのが人情である。
 いきなりセックスの話をする前に、この地域の娯楽について(より正しくは、娯楽への規制や意識について)軽く触れておこう。

 娯楽に様々な種類があるのはこの地域も同じであり、細かく説明するのは別の機会に譲る。
 トランプのようなカードを用いたゲームや、ゲーム盤を用いた将棋や双六のような物はこの世界でもあり、大人から子供まで親しんでいる。
 これらは多くの場合、何かを賭けて楽しむのが一般的で、特に目くじら立てられる事も余りないのだが、厳密には賭博の賭け金に税が掛かる地域もあり、また賭け自体は良いがそれで身を持ち崩すのは当然咎められるべき事と認識されている。
 スポーツもまた盛んである。球技は身分の高い子供達の遊びであるが、別に独占されているわけではなく、石等をボール代わりに真似する子供もいる。
 しかしより広く楽しまれているのは、鬼ごっこや力比べ、レスリング、遠投などで、体を鍛える為の競技が娯楽化したものが多い。

 河川や海の近くの子供は釣りを楽しむだろうし、高地などの寒冷地では冬になればそりやスケート、スキーを楽しむ。しかし何よりも人気のスポーツは、何と言っても狩りである。
 野生動物であっても、鹿や猪などは帰属先が決まっている事があるのだが、兎や鳥はその限りではなく、飛礫や小弓に長けた者ならば楽しみついでに獲物を持ち帰って喜ばれる事もある。

 売春自体は罪ではなく、売春夫/婦に対するキリスト教社会のような激しい嫌悪感もこの地域にはない。
 それでもやはり、この地域の一般的な貞操観念からすれば不特定多数に体を開く事は忌むべき事であり、言うなれば必要悪・条件付で認められている事である。
 既婚者がパートナー以外と性交するのは罪ではない(現代で言う民事訴訟の対象にはなりうる)が恥ずべき事であり、職業売春夫/婦でない人間が金を得る為に体を売るのも軽蔑される行為である。
 とはいえ娼婦が得意先の貴族や商人の妻となるのは珍しい話ではないし、売春宿はどこの都市でもある。




統治

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1.村落・集落

 村落のような小さな行政単位においては、上に領主がいるのが普通である。領主は領民に一定の義務(税や罰金、労役など)を課したら、それ以上は基本的にあまり積極的に口を出さず、住人の自治に任せている場合が多い。
 そのような地域では慣習を法としつつ、行政を自分達で行う。有力な農民などが代表となり、その中で選出された一人が村長となって、外部との折衝に当たったり、災害時等の迅速さが求められる判断を行ったりする。治安の維持やインフラの拡充は全員で当たる。
 とはいえ、このようなシステムが機能するのはコミュニティ自体が小さく貧弱だからこそ可能な部分があり、例えば重大な犯罪行為に対する裁判、飢饉や大きな災害、異国(あるいは妖魔等のモンスター)による侵略に面した時は、上位の領主を頼る。

2.都市

 商人や職人が集まって出来る都市においては、大商人や聖職者等の名士が集まって議会を形成する議会制が一般的である。
 更に一人の執政官を選出するのが普通で、執政官は立法府である議会の定めたガイドライン(=法律)に従って、行政を担当する。
 村落よりずっと大規模で複雑である為、様々な部門の担当機関があり、執政官は議会や各機関の役人達との間で利害を調整しつつ、コミュニティを維持する為の決断を行う。

 余談となるが、議員の選出はほぼ世襲(聖職者の場合は役職に付随)である為、いわゆる“民意”が介在する事はない。
 とはいえ目に余る行為に対しては市民が団結し反抗するのが常であるし、議員達も私腹を肥やすには都市が栄える必要がある為、言うほど傍若無人に振舞うわけではない(例外は多いのだが)。
 執政官は前述のとおり議会が選出するが、役人の人事も議会が大きな発言権を持つ。

3.荘園・州・領邦

 領主が完全に所有権を有する荘園においては、領主が立法・行政・司法の三権を有するなど非常に強力な権限を持つ。
 その権限は飽くまで自分の領内に制限されるとはいえ、君主に臣従している場合でも「臣下の臣下は他人」が原則であるため、(領主の)君主が直接、自領の内政に干渉する事は許されない。
 もっとも、領主に命じる形で内政干渉する事は珍しいものではないし、魔族との内通などあまりに重大な犯罪がなされている場合には直接介入がなされる事もある。同時にまたそうした「内政干渉」の口実として「魔族との内通」等という罪状が用いられるのも無い話ではない。

 多くの領主は前述のように大枠で領内各コミュニティの自治を認めており、「出すもん出したら後は好きにして良い」という大らかさ(悪く言えば無関心さ)が見られる。
 領地経営に熱心な領主も珍しいと言うほどではないが、平時の領民にとって細かく口出ししてくる親身でやかましい領主と、遠くで君臨して口出ししてこない冷淡でゆるい領主のどちらがマシかは複雑な問題だろう。

 極めて独立性が高い荘園と比較して、属する国家(あるいは連合・同盟)により自治権が保護されている州や領邦は(保護の代償として)より上位の行政単位に服する義務を負う。
 例えば別の州邦で罪を犯した罪人が荘園に逃げ込んだとして、荘園領主はこれの引渡しを拒否する事が出来る(建前上は、である。実際は力関係次第)。
 対して同様の罪人が、州邦に逃げ込んだ場合、州邦領主は法の定めるところに従って罪人の捜査や拘束、引渡しに協力しなければならない。

4.封建国家の場合


5.連合・同盟国家群の場合




法と裁き、罪と罰

 この地域の法は大まかに分類して、「契約」と、「道徳」「倫理観」の二種類に分類される。

 「契約」の側面を持つ法は、例えば執政官と議会、例えば国王と諸侯のような関係の中の「権利」と「義務」を明文化したものである。

 「道徳」「倫理観」の側面を持つ法は、同じその法の下にある人々にとっての善悪そのものであり、それらを形作るのは「慣習」と「宗教観(=世界観)」である。
 これは「神への誓いを破ってはならない」「殺してはならない」「姦淫してはならない」「盗んではならない」「嘘の証言をしてはならない」と言った当たり前のもので、破れば相応に罰がある。

 以上の二つに加えて、領主が細々とした法律を課して、税金や罰金といった収入を得たり、外患を排除したり、領内が無秩序になるのを防いだりする。
 以上はあくまで原則であり、実際はそこに「損がないなら興味なし」「得がないなら興味なし」「罰金刑や労役刑で元を取れないような刑罰は勿体無い」と言った打算的な思考が入り込むため、「現代人の感覚では刑事罰に相当するのに、訴え出て費用を支払い、その上で裁判で勝たねばならない」というような事態になる。

 村落のような小さなコミュニティにおいては、「道路や水車などの共有資産の取り扱い」と「慣習」が法となる。
 そうしたコミュニティの中での治安は主にコミュニティの構成員が自ら守り、法に反した者を裁く。
 このレベルの罪はせいぜい罰金刑(支払い能力がないならば労役刑)が妥当とされる程度のもので、禁固や身体刑、死刑といった刑罰が妥当となるような重大な犯罪は領主や代官に任せる事になる。

 都市のような中規模のコミュニティも大きな違いはないが、項目がずっと細かくなり、複雑になる。
 住民による自治だけで賄うのは難しくなるのだが、警察機構のような専門の組織がある事は珍しく、多くの場合は軍事組織がそのまま治安の維持に当たり、容疑者や罪人を捕縛し、裁判所へと送る。




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最終更新:2015年08月11日 02:48