どん、と鈍い最期の断末魔を立てて、完全に機関は沈黙を決め込んだ。
「……もう。このオンボロ」
呆れ半分。諦め半分の声が上がる。
「どーすんの。コレ」
責任転嫁。投げやりな声もいいところに、
「――すみません」
一言謝ると、青年は車窓を飛び越えて砂上に躍り出ていた。
見渡す限りの荒野である。
飛び降りた拍子に、乾ききった赤い砂埃が、靴底と擦れて宙に浮いた。
吸い込んでしまえば、四半時は咳き込んでいられそうな、細やかな砂埃である。
改変型ピックアップの横に屈んで、車体を覗き込み、様子を調べかけた青年に、頭上から盛大な溜息が降り注いで、
「面倒臭いわねぇ」
同じく砂上に降り立ったのは小柄な少女だ。
「アンタの修理は、時間がかかって仕様が無いし。手伝ってあげる」
恩着せがましい、どうだ。と言わんばかりのその声に、判るか判らないか、僅かに頬を緩ませて、
「エンジン部分をお願いします」
それでも遠慮無しに、青年は頼んだ。
言葉とは裏腹に、少女が実は世話焼きで、面倒見の良い性格であることを、十二分に知っていたからだ。
そうして、熱して焦げた臭いを放つ車下へ、躊躇なく腕を滑り込ませ、やや探ると、
数本のプラグを引き出した。
焼けた外皮ビニールが、溶けて中身を晒している。
それを数度、ほこりでも払うように指の腹で撫ぜると、
ぐ、と。
無造作に青年は首筋に数本を突き刺した。
「いつ見ても痛そうなのよね。カークのそれ」
少女が顔を顰める。
カーク。瞳も髪も真っ黒な、D-LL機種の旧型タイプの一つである。言い換えれば人外。アンドロイドの進化型。
男とも女とも判別し難い、中性な顔立ちをしているが、敢えて区別するなら男。
プラグを差し込んだ首筋に、黒々と刻印が目立つ。
製造月日やその識別を指し示したバーコードである。
現在、荒野に読み取り機械は見当たらないが、
もしその首筋に青紫の光を当てたら、彼に関する全ての情報がたちどころに表示されるだろう。
得意とするのは情報収集と処理能力だ。
どんな機械も鉄壁のガードすら、彼の接続で呆気なく陥落する。
特に、カーク自身と直結した時の、その演算速度は相当なものだ。
今もこうして首筋にプラグを差し込んでいる。
ぶつぶつと口の端で呟いて、演算を始めるのは彼の癖だった。
無言で行っても、その能力、速度ともに何ら問題はないらしいが、要は気分の問題なのだと、、
よく判らない理由をつけて、以前にカークは、少女にそう説明した。
そんな彼を他人事のように眺めて、勢いよく改変ピックアップの前覆いを、こじ開けた少女である。
「――マルゥ。壊さないでくださいね」
俯き呟いていたカークが、見咎めて顔を上げた。
マルゥ。瞳も髪も濃いブラウンの、カークと同じD-LL機種である。彼と一つ異なるのは、新型と言うこと。
人間で言うなら年の頃は15、6。はっきりと女。と言うよりは、少女。
細い、なで肩まで伸びた、柔らかな癖のある髪。小ぶりの胸。きゅっと締まった腰と、まだ青臭さの感じさせるなだらかなラインの腿。
やはりカークと同様に、細い首にはバーコードが見える。
彼女の得意は、実践分野だ。
頭で小難しいことを考えるよりも、身体が動く。
肉体派である。
触らなば落ちんの見かけに反して、改変ピックアップの一台や二台程度なら、片手に軽々と持ち上げることが可能だった。
D-LL新機種の体内内蔵のブースターの威力は、発売当初から宣伝されていたことだ。嘘はない。
勿論カークのように、演算処理もしようと努力するのならば、出来ないこともないのだが、
本人がそれを望まないのが現状である。面倒臭いのだとよく漏らす。
結局は、不得意と言うことなのだろう。
二人は、D-LL(ドール)と呼ばれる機械だった。
人間ではない、けれども人間にとてもよく似た生き物。
擬似生命体。
限りなく有機物に近しい元素記号の、無機物機械。アダムの骨より作り出したイブ。
そうしてまた、
限りなく人間に近しい感情と、思考頭脳を併せ持つ、人間の開発した機械である。
その開発した機械群と人間が、大したいさかいもなく、平穏に暮らしているのがP-C-C――長々しい正式名称は、”完全高度管理社会都市”と言う。
都市、と名の付くそれは、けれど決して住居のひしめいた市街部のみを指す言葉ではない。
惑星全ての総称として名づけられている。
一千年前に、人間が疲弊と荒廃しきった地球を捨てて、この新しい衛星に住み着いてから。
人間とD-LLは、手に手を取り合って、この新しい一世紀を築き上げてきた。
ことになっている。
建前上は。
「そんな事言われたってさー。これでもじゅうううぶん、細心の注意を払って、アタシ、修理してやってんのよ。……アンタの為に」
咎められたことに気を損ねて、マルゥは口を尖らせた。
尖らせながら指を突っ込んだエンジンから、小さなネジがぴん、と弾けて幾つか宙に舞う。
「……マルゥ……」
ジト目になって呟いたカークに、
「ちがっ、これは、勝手に壊れたのよっ。この車がオンボロなのがいけないんであって、その、アタシが壊したって訳じゃあないのよっ」
慌てて腕を振って、マルゥは砂上のネジを拾った。
手の平の上でころころと転がして、再び不貞腐れる。
「だいたい、ちょっとツツいたくらいでネジが外れるなんて、この車がヤワすぎるのよ……」
ぶつぶつと言い訳をぼやいている。
少女に聞こえないように小さく溜息をつきながら、カークは再び、改変ピックアップのプログラム部分に潜り込んだ。
プログラムを、端から丹念に捜索する。
使い込まれた改変ピックアップのプログラムは、例えて言うならささくれの大量に立った板のようなもので、
「故障箇所、見つかる?」
しげしげと覗き込むマルゥに言われるまでもなく、意外に難作業であった。
「――しばらく、かかるかもしれませんね」
カークの返事に少女は盛大に溜息をつく。
「日が暮れちゃうわよ。もう」
指し示した空は、なるほど既に夕焼けの気配だった。
言われて見上げたカークの瞳に、空の高いところを、渡り鳥が飛んでゆくのが小さく映る。
「荒地で夜明かしなんて、ぞっとしないわぁ……」
原生生物が、荒野において数多く生息していることは、言われるまでもなくカークにも判っていたことなので、黙って作業を再開する。
早く仕上げるに越したことはない。
「とりあえず、マスタ起こして状況説明するしかないかなぁ」
仕方が無い、とでも言うように、もう一度溜息をついて、それからマルゥは後部座席へ向かった。
後部座席に、寝息をたてて眠っている男がいた。
それだけ述べると、白皙の美貌が、眠り姫よろしく眠っているようにも感じられるのだが、
実際は、オンボロピックアップのエンジン悲鳴にも、D-LL二人の掛け合いにも、全く目を覚ます気配のない、実に大胆不敵な性格であることが窺える、男である。
眠る男は、人間である。
日に焼けたのか、見事に人参色の髪に、今は閉じる鳶色の目の持ち主。
途絶えた部族の最後の生き残りとだとか、どこぞの王朝の血継なんだとか、
酔った勢いで語る話はいつも異なる。簡潔に言えば混血の馬の骨。
歳は28。長身。それなりな二枚目。
世間の女が放っておかなそうな外見に反比例して、彼女と名の付く相方の無存在暦は、歳の数だけ美しく比例。
何故か、もてない。
そういう人種も中にはいる。
「マスタ。ねぇマスタ」
流石に己の怪力に、自覚のあるマルゥは、細心の注意を込めてぴたぴたと、男の頬を軽く叩いた。
よく日に焼けた頬であった。
うん、と眉根を軽く顰めて、刺激に男が薄目を開く。
「……なんだぁ。目的地に着いたか?」
「うーん。それが、着いてないんだけどね。ちょっと車が故障中」
肩を竦めるマルゥを見やって、それから男は欠伸とともに大きく伸びをした。
「なんだ。着いてねぇならもうちょっと寝かせろよ」
全く状況を、把握する気のない声である。
「それがね。寝てもいられないような雰囲気でさ。……ねぇってばマスタ!また寝ないでってば」
「……マスターって呼ぶなといってるだろう」
剣呑な声で呟いて、それでも男は腕枕を諦めて再び目を開いた。
「じゃあ、ヒュー」
「おう」
名前を呼ばれて満足そうにニタリと笑った男――ヒュー――は、ゴキゴキと首を鳴らしながら、後部座席より車外を覗き眺めた。
カークとマルゥの事実上の主人である。
俯き加減で、ピックアップのプログラムに接続中のカークを眺めて、あああ。ヒューはもう一度大きく伸びをした。
「調べたって故障箇所なんざ判りっこねぇよ。故障と言うならどこもかしこも故障だらけだろうが」
「――それはそう、なのですが」
困ったように主を仰いで、首を傾げるカークである。
基本的に表情の変化に彼は乏しい。
困ったように見えるのは、ヒューやマルゥが、彼との付き合いが長いせいである。
「とりあえず、中継基地まで駆ってもらわなくては」
「最悪歩きゃいいんじゃね?」
「歩ける距離では……」
「オンボロ機械を直す方法を教えてやろうか」
カークの言葉を聞いているのかいないのか、ぼりぼりと頭を掻きながら、未だ眠たそうにヒューは目を擦る。
「一発で直るぜ」
「ホント?」
「おうよ」
興味津々に身を乗り出したマルゥに、大真面目な顔でヒューは頷いて返して見せ、
「斜め45度から、一発グーで引っ叩けばいいんだ」
自信満々に言い切った。
聞いたカークが、こっそり眉間を指で揉んだ事に、二人は気付いていない。
そもそも、今回は依頼仕事の選択時から、妙に嫌な予感はしていたのだ。
能天気な二人をちらりと見やって、仕事に没頭している振りをしながら、カークは暗鬱な気持ちになった。
ヒューの仕事は、不定形である。
有って無きに等しい。
つまりは、気の向いたときに、ふらりと労働し、その金で生活の出来るところギリギリまで生活する。そうして明日のパンにも困る事態に陥って初めて、再び仕事を再開するのだ。
主に女の寄り付かない理由の一つは、そこにあるのじゃないかと勘繰るカークである。
そんな、目先の事のみを追いかける生活をしているくせに、P-C-Cの中心部に近い高層住宅区に、家を構えているという、常識を覆したくなる主なのである。
どこでいつ、それだけの大金を稼いだのか、尋ねる勇気はカークにはまだ無い。
確実なことは、カークがヒューと出遭ったときには、既に彼はその家にマルゥと住んでいたと言う、それだけである。
主の性格を推し量るに、どうも勤勉に勤勉を重ねて、ようやく溜めたなけなしの貯金をはたいて家を購入した、憧れのマイホーム。
と言うことだけはありえない。
聞かないほうが、己の身が安全なような気もするカークである。
ヒューに連れられ、訪れた先の、P-C-C御用達職業安定所、つまりは仕事紹介所は、いつにも増して閑散としていた。
P-C-Cの中心を、ドーナツ状のように囲む市街地には、幾つもの職業安定所が存在する。
訪れたそこは、外郭街に相応しく、無機質な四面四角なサイコロ型の、窓のない建物だった。
視界に入れた瞬間、まるで何かの牢獄にも見えて、いつもぞっとした。
そこに、何の躊躇いもなくスタスタと近づくヒューとマルゥを、ある種の畏敬の念で思わず眺める。
鈍感なのか、己が敏感に過ぎるのか。
臆病なだけなのかもしれない。
通りに面した正方形の壁の一面に、素っ気無く黒い入り口が口を開いており、人が丁度一人通り抜けられる大きさになっている。
立ち止まって眺めていたカークに、気付いて合図を一つ送ると、二人はさっさとその隙間を潜っていった。
仕方無しに続く。
「やあ。久しぶりだね」
内部に潜り込んだ途端、響く声が、四面の壁に反響した。
驚いた最初に比べて、流石に慣れはしたものの、それでも良い気分にはなれないのが、正直なところだ。
次第に、内部の暗さに順応してくる視線を、中央に据える。
外壁から想像できる内部の形に期待を裏切らず、やはり無機質で色気のないがらんとした部屋に、男が一人生えている。
座っている、とは言い難い。
文字通り生えているのである。
中央部には、床と同化している椅子が一脚。その上に男の上半身が、やはり椅子と同化していた。
人間では勿論無い。
情報処理専門の、D-LL機種だった。
天井に光源は見当たらない。
代わりに光源となるのは、男の周り、宙に揺らめきながら消えていく、幾つものスクリーンだ。
安定しない明かりのそれは、内部を不愉快にちらつかせながら、ウィンドウを開いたり閉じたり目まぐるしく動いている。
色の褪せた顔はまるで案山子か髑髏のようで、正直カークはこのD-LLが好きになれなかった。
同属嫌悪だと、マルゥは以前に、笑って答えていたが。
不必要な感情や思考は切り捨てて、殆どシステムの一部と化している機種である。
椅子に見えるそれは、P-C-Cへの接続端末で、男は椅子を介してP-C-Cの情報システムと繋がっているのである。
太く束ねた、ヒトであるなら髪にも見える幾万本ものチューブは、中味の電線が透き通って見える。
申し訳ないと感じつつも、やはり嫌悪感を覚えて、無表情のまま、カークは視線を逸らした。
男は、そんなカークの様子に、気分を害した様子は無い。
気分を害する機能が欠落しているからだ。
「ぴったりの仕事が一件あるよ」
男の口が動く。ヒューが口を開く前から、男は何故ヒューがここに訪れたのかを理解している。
「いくらだ」
短く、ヒューが尋ねたのはそれだけだ。
その言葉に、ぎぃぎぃと錆びた軋音を立てて男がぱっくりと口を開けた。笑ったのである。
「相変わらずだ。まぁああったく、君だけは商売抜きに相手にしたくは無いね?まあ……、存外そう言う所が気に入っているのだがね」
男が空ろな目を細めた。
「相変わらず失礼なヤツね」
気に喰わないとでも言うように、マルゥが小さく鼻を鳴らした。
「その頭引っこ抜いちゃうわよ」
彼女なら本当にやりかねない。危惧を抱いて、カークはそっと彼女の隣に進み並んだ。
「チビさんもまったく相変わらず、元気で何よりだ」
ぎぃぎぃと、再び室内に軋みが満ちる。
「本当に、君はいつでも張り詰めていて、ブチ切れる寸前の古いゴム紐のようだ。……自分でそうは思わないかね?いつ君が壊れるか、それだけがここに居続ける私の楽しみなのだよ」
「悪趣味」
床を蹴ってマルゥが低く呟く。全くだと心の中で少女に同意しながら、それでもカークは眉一つ動かさずに、中央を見つめていた。
「500でどうだね?」
「1200だ」
不意に、仕事内容も明かされずに提示されるクレジットに、動揺も見せずにヒューが応える。
「……これはまた、また、また、」
大きく出たものだ。
呆れたように肩を竦める男の仕草は、彼が意識して行っているのか、それともこの配線の向こうにいるP-C-C内部の依頼人がそうさせているのか、ふと、カークは気になった。
「600だ」
「1100」
男を見つめるヒューの視線は、この時ばかりは真剣である。
「……700」
「850で手を打とう」
「まあ……いいだろう」
850クレジット。男が小さく頷いて、骨と皮しかない指を、宙に這いずらせるようにした。
その手の中に現れたのは、銀色のカードだ。
薄いカード・キー。
「わが社の誇る改変型車のキーだ。無くしたら実費だよ。気をつけな」
そうしてもう一度指を動かし、次には大きな白い包みを、空から引きずり出した。
「重いんだ。チビさん、受け取っておくれ」
筋の浮く腕が重みで下に垂れ下がり、マルゥが慌てて包みを受け取る。
「イヤな感じ」
包みの感触が気に入らないのか、鼻の頭に皺を寄せ、マルゥが吐き捨てる。
丁度頭の大きさくらいか、ぼんやり思いながらカークが包みを眺めていると、
「ヒトの、首なんだがね」
思考を読んだのか、男がぽつりと呟く。ぎょっとして上げた視線が、男のそれとかち合った。
ニタニタと、笑っている。
「これを、その宛先まで届けて欲しい。とある筋からの依頼さ。電子頭脳に入れ替えたいそうだよ。このまま腐らせるには惜しい、ってね」
「……生前は、さぞ善行を積んだんだろうな」
形ばかりの契約書にサインを書き込みながら、ヒューが茶化すと、
「特注品さ」
男が喉を軋らせる。
「何人か、腕の立つのを当たってみたが、皆怖気づいちまってね。かと言って誰でもと言うわけにもいかない。万一仕事をヘマした時の、後片付けの掃除の手間が面倒だ。……君なら間違いなくこなしてくれるだろう?」
「信用されてるって訳か?イイ金になりそうだ。俺がどこかに売り飛ばすとは思わないか?」
「300クレジットと首輪をプレゼントだ」
「……なるほど」
男の言葉にヒューが片眉を上げた。
「破格だな」
先の850と足して1150。P-C-Cの中心部の高級オステルに、ひと月豪遊できる金額である。
カークは表情を崩さぬままに、ヒューに目をやった。
契約書の画面が表示されているウィンドウを、ヒューは男に押し返すと、そのまま、まるで男の耳元へ囁くように、身を屈めて顔を近づける。
「お利口さんだね」
褒めながら男は、骨ばった指を近づけたヒューの首筋に伸ばし、
ピッ。
小さなビープ音。
主の首には、細い鎖にも似た銀色のリング。
包みを抱えたマルゥが、噛み付きそうな顔で男を睨んでいる。
華奢な細工に見えるそれは、その実半径100メートルは優に吹き飛ばせる威力を持った、小型の爆弾。
契約違反を嫌う、A級からS級の依頼には、金額の多さに比例して、時にはこうして戒めが付く。
このリングを身に着けている限り、ヒューはこの職業安定所の男の意のままである。任務失敗、もしくは任務違反と男が判断した時点で、請け負ったものと荷物、そして周囲のものが消滅するシステムである。
「受取人も、宛先に書いてある」
デスティニーと巷間の名称はそう呼ばれている。Destiny(宿命)とDeath-tinny(屑な死)の、両方をかけているようだ。
起動も開縛スイッチも、男の指にある。仕事をこなすまで一蓮托生。
付けられた当の本人は、大して気にした様子も無い。
大物と言おうか、現状把握が出来てないと言うべきか。
多分、どちらでもないのだろう。
「いつも思うが、綺麗な連れだね」
不意に男が視線を動かして、マルゥの横に立っていたカークに興味を示す。
「D-LL機種にしては、珍しい型だ」
カークが僅かに体を強張らせる。
「拾ったのさ」
肩をひとつそびやかして、ヒューが軽く受け流し、長居は無用と出口に足を向ける。
その後に、マルゥとカークも無言で続いた。
P-C-Cシステムは、基本的に苦手だ。
「期限は一週間だ。忘れるんじゃないよ」
背後から被さるように声が追いかける。
私が君を壊したくて仕様が無いのを忘れるんじゃないよ。
最終更新:2011年07月28日 08:04