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切断と引き込み - (2011/12/24 (土) 13:59:38) の1つ前との変更点
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''[[ファイバーバンドル]]についても参照''
線形代数でいうと
レトラクションは、<math>v = \sum_{i=1}^m x_i v_i\in V</math>から
''いくつかの''(全てでなくて良い)成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_n) \ (n \leq m)</math>を取り出す写像。
射影っぽいけど、射影行列ではないことに注意。
射影行列は成分ベクトルを与えるわけではなく、射影空間の元を与える。
切断は、成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_n)</math>を適当な空間の元<math>\sum_{j=1}^n x_i v_i</math>として実現する写像
特異値分解に表れる
列直交行列<math>U = [ u_1, \cdots, u_r ] \in \mathbb{R}^{p \times r}, \ U^* U = I_r</math>は、
成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_r)</math>に作用して
p次元空間の元<math>\sum_{i=1}^r x_i u_i</math>を作り出すので、切断。
これに対するレトラクションは共役行列<math>U^*</math>で与えられる。
実際、これはp次元空間のベクトル<math>\sum_{i=1}^p x_i u_i</math>に
作用して(単位ベクトルで内積をとるので成分が出てくる)、
はじめのr個の成分を取り出して並べたベクトルを作る行列である。
成分を取り出すだけなので、射影行列ではない。
なお、<math>V V^*</math>はp次元空間の元<math>\sum_{i=1}^p x_i v_i</math>の成分を削って再び<math>\sum_{i=1}^r x_i</math>としてp次元空間の元に戻す写像であるから、これが射影行列である。
==自然な射影の切断==
商集合X/~の自然な射影pとする。
X/~の各類Aから一つの代表aを選んでくる写像sを,射影pの切断という。
<math>\begin{tabular}{cccc}
$s :$ & $X / \sim$ & $\to$ & $X$ \\
& $\ni$ & & $\ni$ \\
& $[x]$ & $\mapsto$ & $x \in [x]$
</math>
==全射と切断==
切断は一般の全射に対して定義される。
'''Lem.'''
<math>f:X \to Y, \ g:Y \to X</math> map
<math>f \circ g = \mathrm{id}_Y</math>
このときfは全射で,gは単射である。
また特に,<math>g \circ f : X \to X</math> は冪等 idempotent である。←つまり,射影である。
'''Rem.'''
上の定理の条件が成り立っているとき,f,gはsplit(分裂)であるといい,
fをgのretraction(引き込み),gをfのsection(断面,切断)という。
また,fはgの左逆写像,gはfの右逆写像ともいえる。
この事実(f,g分裂⇒f全射かつg単射)の逆(f全射⇒g単射が存在して,f,g分裂)を示すには選択公理が必要
'''Th. ''' 空でない集合X,Yに対し,<math>f:X \to Y</math> が全射であるとする。
このとき,<math>f \circ s = \mathrm{id}_Y</math> なる<math>s:Y \to X</math> が存在する。
つまり,全射に対して切断(右逆写像)は常に存在する。
'''Cor. '''
(i) sは単射
(ii) さらに <math>s \circ f = \mathrm{id}_X</math> ならば,<math>s=f^{-1}</math>
つまり,'''切断とはプレ逆写像'''とでも言うべきもの。逆像ではない。
逆像との関係としては,次が成り立つ。
<math>g(y) \in f^{-1}(y)</math>
'''自然な射影の切断との関係'''
f全射をとると,fによる同値関係~fが定義できて,商集合X/~fの自然な射影pに対して
切断sを考えることができるが,これはfに対する切断s'と同一視することができる。
==単射と引き込み==
先の定理の双対として,次が成り立つ。
'''Th.''' 空でない集合X,Yに対し,<math>f:X \to Y</math> が単射であるとする。
このとき,<math>r \circ f = \mathrm{id}_X</math> なる<math>r:Y \to X</math> が存在する。
つまり,単射に対して引き込み(レトラクション,左逆写像)は常に存在する。
''[[ファイバーバンドル]]についても参照''
==線形代数での例==
レトラクションは、<math>v = \sum_{i=1}^m x_i v_i\in V</math>から
''いくつかの''(全てでなくて良い)成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_n) \ (n \leq m)</math>を取り出す写像。
射影っぽいけど、射影行列ではないことに注意。
射影行列は成分ベクトルを与えるわけではなく、射影空間の元を与える。
切断は、成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_n)</math>を適当な空間の元<math>\sum_{j=1}^n x_i v_i</math>として実現する写像
特異値分解に表れる
列直交行列<math>U = [ u_1, \cdots, u_r ] \in \mathbb{R}^{p \times r}, \ U^* U = I_r</math>は、
成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_r)</math>に作用して
p次元空間の元<math>\sum_{i=1}^r x_i u_i</math>を作り出すので、切断。
これに対するレトラクションは共役行列<math>U^*</math>で与えられる。
実際、これはp次元空間のベクトル<math>\sum_{i=1}^p x_i u_i</math>に
作用して(単位ベクトルで内積をとるので成分が出てくる)、
はじめのr個の成分を取り出して並べたベクトルを作る行列である。
成分を取り出すだけなので、射影行列ではない。
なお、<math>V V^*</math>はp次元空間の元<math>\sum_{i=1}^p x_i v_i</math>の成分を削って再び<math>\sum_{i=1}^r x_i</math>としてp次元空間の元に戻す写像であるから、これが射影行列である。
==自然な射影の切断==
商集合X/~の自然な射影pとする。
X/~の各類Aから一つの代表aを選んでくる写像sを,射影pの切断という。
<math>\begin{tabular}{cccc}
$s :$ & $X / \sim$ & $\to$ & $X$ \\
& $\ni$ & & $\ni$ \\
& $[x]$ & $\mapsto$ & $x \in [x]$
</math>
==全射と切断==
切断は一般の全射に対して定義される。
'''Lem.'''
<math>f:X \to Y, \ g:Y \to X</math> map
<math>f \circ g = \mathrm{id}_Y</math>
このときfは全射で,gは単射である。
また特に,<math>g \circ f : X \to X</math> は冪等 idempotent である。←つまり,射影である。
'''Rem.'''
上の定理の条件が成り立っているとき,f,gはsplit(分裂)であるといい,
fをgのretraction(引き込み),gをfのsection(断面,切断)という。
また,fはgの左逆写像,gはfの右逆写像ともいえる。
この事実(f,g分裂⇒f全射かつg単射)の逆(f全射⇒g単射が存在して,f,g分裂)を示すには選択公理が必要
'''Th. ''' 空でない集合X,Yに対し,<math>f:X \to Y</math> が全射であるとする。
このとき,<math>f \circ s = \mathrm{id}_Y</math> なる<math>s:Y \to X</math> が存在する。
つまり,全射に対して切断(右逆写像)は常に存在する。
'''Cor. '''
(i) sは単射
(ii) さらに <math>s \circ f = \mathrm{id}_X</math> ならば,<math>s=f^{-1}</math>
つまり,'''切断とはプレ逆写像'''とでも言うべきもの。逆像ではない。
逆像との関係としては,次が成り立つ。
<math>g(y) \in f^{-1}(y)</math>
'''自然な射影の切断との関係'''
f全射をとると,fによる同値関係~fが定義できて,商集合X/~fの自然な射影pに対して
切断sを考えることができるが,これはfに対する切断s'と同一視することができる。
==単射と引き込み==
先の定理の双対として,次が成り立つ。
'''Th.''' 空でない集合X,Yに対し,<math>f:X \to Y</math> が単射であるとする。
このとき,<math>r \circ f = \mathrm{id}_X</math> なる<math>r:Y \to X</math> が存在する。
つまり,単射に対して引き込み(レトラクション,左逆写像)は常に存在する。