行列

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''次も参照'' [http://www.ee.ic.ac.uk/hp/staff/dmb/matrix/calculus.html Matrix Reference Manual] [http://www2.imm.dtu.dk/pubdb/views/edoc_download.php/3274/pdf/imm3274.pdf The Matrix Cookbook] ---- == 行列の見方 == 0. 環Rの元を矩形状に並べたものを行列という。 同じサイズの行列Mat(m,n)は,和に関してアーベル群である。 また同じサイズの正方行列の全体M(n)は,さらに「行列の積」を入れて非可換環(結合的多元環,代数)になる。 この積はCayleyが初めて使ったとされる。 M(n)は零因子を持ちうる。従って整域でない。 特に,M(n)の部分集合で,逆元を持つ元だけを集めた体GL(n)を正則行列という。 正則行列の重要な部分体として,直交行列(ユニタリ行列)や対称行列(エルミート行列)がある。 前者は内積を変えない線形写像であり,行列式の絶対値が1という特徴付けをもつ。正規直交基底を並べた行列と見ることもできる。 後者は二次形式の議論において重要であり,必ず実固有値を持つという強い性質を持つ。 ここから正定値性やシルベスターの慣性法則,ミニマックス定理およびその系としての単調定理などの性質が導かれる。 直交行列や対称行列はまた,正規行列の重要な例でもある。 正規行列はユニタリ相似変換によって対角化可能である。 1. '''線形写像の表現行列''' <math>V, W</math> : 線形空間 <math>f:V \to W</math> : 線形写像 このとき,<math>V,W</math>の基底を固定すると, <math>f</math>に対応する表現行列<math>A</math>が得られる。 「表現」というのは,抽象的な線形写像から行列への同型φを考えていることを意味する。 このときまた,共役写像 <math>f^* ; W^* \to V^* </math> の表現行列は転置行列<math>A ^\mathrm{T}</math>である。 固有値,特異値はこの視点からの議論。 A が対角化可能の場合,この手の話では固有ベクトルを基底にとる(固有ベクトル展開)と見通しが良くなる。 実際, <math>V \ni v = \sum v_k \mathbf{e}_k</math> に対して, <math>Av = A \sum v_k \mathbf{e}_k = \sum v_k A \mathbf{e}_k = \sum \lambda_k v_k \mathbf{e}_k</math> であるから,事態を固有座標系で見れば,<math>A</math>は単に各成分を固有値倍するスケーリング作用素(=対角行列)に他ならないことが分かる。 <math>( v_1, \cdots, v_n ) \mapsto (\lambda_1 v_1, \cdots, \lambda_n v_n)</math> つまり対角化<math>A = P \Lambda P^{-1}</math>という作業は, <math>A</math> という一般の線形写像を, 固有座標系への座標変換<math>P^{-1}</math>と, 成分毎のスカラー倍<math>\Lambda</math>と, 元の座標系への座標変換<math>P</math>の合成写像に分解する作業なのである。 一般の対角化できない行列に対しては,特異値分解を用いて同様の幾何学的意味付けができる。 Rank, Ker, Im などもこの視点。 1.5. '''線形準同型の表現行列あるいは座標変換として''' 線形写像はまた,線形空間の準同型である。 特に,正則つまり全単射ならば同型になる。 特に,抽象的な n-dim 線形空間 V と,<math>\mathbb{R}^n</math> とは,次のように結び付けられる。 Vの基底ベクトルを並べた行列<math>B = [ \mathbf{e}_1 \, \cdots \, \mathbf{e}_n ]</math> として, <math>B : \mathbb{R}^n \ni v = ( v_1, \cdots, v_n )^\mathrm{T} \mapsto Bv \in V</math> これはまた,以下のように複数の視点で捉えることができる。 (i) 座標ベクトルを抽象的な線形空間の元に対応付ける写像 (ii) 座標ベクトルの空間をユークリッド空間と同一視したうえで,そこからVへの座標変換 ←本当? 2. '''ベクトルを並べたもの''' 線形写像Aが作用するベクトル空間の元vを並べたもの。 直交行列は,しばしば基底ベクトルを並べたものと見ると幾何学的な理解がしやすい。 また,一次独立の判定法として,行列式やグラム行列を用いる方法はこの観点に立っている。 行列式の幾何学的意味もまた、各ベクトルが張る超立体の体積と考えることができる。 3. 行列自体を'''ベクトル空間の元'''として見る。 さらに内積やノルムを入れることができる。 i) 一本ベクトルとしてのpノルム p=2 のときフロベニウスノルム(ユークリッドノルム) p=∞ のとき最大値ノルム ii) 誘導ノルム(作用素ノルム) p=1 のとき列毎のl1ノルムの最大値 p=2 のとき(正方行列に限る)スペクトルノルム(=最大特異値) p=∞ のとき行毎のl1ノルムの最大値 任意の誘導ノルムは,スペクトル半径(絶対値最大の固有値)によって下から押さえられる。 4. 行列自体を'''環の元'''として見る。 行列の和を加法,行列の積を乗法として,非可換環になる。 ただし整域にはならない。つまり,零因子を持つ。 →''[[零因子の作り方]]参照'' 特に三角行列や対角行列のなす部分環は可換環である。 <math>A, B \in \mathrm{Sym} \ \Rightarrow \ AB = BA \in \mathrm{Sym}</math> さらに,完備なノルムを入れて'''Banach環の元'''と見ることができる。 5. '''二次形式や内積'''の表現として 対称行列はこの観点の性質がよく研究されている。正定値,シルベスターの慣性法則など。 またその拡張として対称作用素の理論もよく研究されている。 6. '''群の表現'''として GL(n)は行列の積を群演算として'''位相群(Lie群)'''(群演算が連続写像になること)になっている。 7. '''変換'''あるいは'''添字付けられた何か'''あるいは'''テンソル'''として 物理では添字に着目して話をしているように見える人も多い気がする。 <math>A'_i = \sum_j T_{ij}A_j</math> 要するに線形変換 8. 離散空間上の'''二変数関数'''として <math>A = ( a_{ij} )</math> という書き方は, 有限集合から係数体Kへの写像 <math>a : \{ 1, \cdots, I\} \time \{ 1, \cdots, J\} \to K</math> を外延的に記述したものだとみなせる。 この考えによれば,行列の行ないし列を無限に飛ばすことは, 関数の定義域を無限集合に拡張することに他ならず,通常の二変数関数になる。 <math>a : X \times Y \to K</math> ---- == 名前のついた行列 == '''Gram行列 ''' 内積を成分に持つ行列 <math>G_{ij} := \langle x_i,x_j\rangle</math> 実は次のように書ける。 <math>\mathbf{G} := \begin{bmatrix} \mathbf{x}^{\rm T}_1 \\ \vdots \\ \mathbf{x}^{\rm T}_n \end{bmatrix}\begin{bmatrix} \mathbf{x}_1 & \cdots & \mathbf{x}_n \end{bmatrix}</math> '''Aのadjoint作用素''' <math>ad(A)X := A^{-1}XA</math> '''Def. cofactors; 余因子''' 行列Aのi行とj列を潰して得られる行列を<math>\widetilde{a}_{ij}</math>とする。 Aの余因子Δ<sub>ij</sub>とは,次で定義される行列式である。 <math>\Delta_{ij} := (-1)^{i+j} \widetilde{a}_{ij}</math> 各成分を余因子にもつ行列を,余因子行列(adjoint)といい,adj A と書く。 <math>\left( \mathrm{adj} A \right)_{ij} := \Delta_{ij}</math>
''次も参照'' [http://www.ee.ic.ac.uk/hp/staff/dmb/matrix/calculus.html Matrix Reference Manual] [http://www2.imm.dtu.dk/pubdb/views/edoc_download.php/3274/pdf/imm3274.pdf The Matrix Cookbook] ---- == 行列の見方 == 0. 環Rの元を矩形状に並べたものを行列という。 同じサイズの行列Mat(m,n)は,和に関してアーベル群である。 また同じサイズの正方行列の全体M(n)は,さらに「行列の積」を入れて非可換環(結合的多元環,代数)になる。 この積はCayleyが初めて使ったとされる。 M(n)は零因子を持ちうる。従って整域でない。 特に,M(n)の部分集合で,逆元を持つ元だけを集めた体GL(n)を正則行列という。 正則行列の重要な部分体として,直交行列(ユニタリ行列)や対称行列(エルミート行列)がある。 前者は内積を変えない線形写像であり,行列式の絶対値が1という特徴付けをもつ。正規直交基底を並べた行列と見ることもできる。 後者は二次形式の議論において重要であり,必ず実固有値を持つという強い性質を持つ。 ここから正定値性やシルベスターの慣性法則,ミニマックス定理およびその系としての単調定理などの性質が導かれる。 直交行列や対称行列はまた,正規行列の重要な例でもある。 正規行列はユニタリ相似変換によって対角化可能である。 1. '''線形写像の表現行列''' <math>V, W</math> : 線形空間 <math>f:V \to W</math> : 線形写像 このとき,<math>V,W</math>の基底を固定すると, <math>f</math>に対応する表現行列<math>A</math>が得られる。 「表現」というのは,抽象的な線形写像から行列への同型φを考えていることを意味する。 このときまた,共役写像 <math>f^* ; W^* \to V^* </math> の表現行列は転置行列<math>A ^\mathrm{T}</math>である。 固有値,特異値はこの視点からの議論。 A が対角化可能の場合,この手の話では固有ベクトルを基底にとる(固有ベクトル展開)と見通しが良くなる。 実際, <math>V \ni v = \sum v_k \mathbf{e}_k</math> に対して, <math>Av = A \sum v_k \mathbf{e}_k = \sum v_k A \mathbf{e}_k = \sum \lambda_k v_k \mathbf{e}_k</math> であるから,事態を固有座標系で見れば,<math>A</math>は単に各成分を固有値倍するスケーリング作用素(=対角行列)に他ならないことが分かる。 <math>( v_1, \cdots, v_n ) \mapsto (\lambda_1 v_1, \cdots, \lambda_n v_n)</math> つまり対角化<math>A = P \Lambda P^{-1}</math>という作業は, <math>A</math> という一般の線形写像を, 固有座標系への座標変換<math>P^{-1}</math>と, 成分毎のスカラー倍<math>\Lambda</math>と, 元の座標系への座標変換<math>P</math>の合成写像に分解する作業なのである。 一般の対角化できない行列に対しては,特異値分解を用いて同様の幾何学的意味付けができる。 Rank, Ker, Im などもこの視点。 1.5. '''線形準同型の表現行列あるいは座標変換として''' 線形写像はまた,線形空間の準同型である。 特に,正則つまり全単射ならば同型になる。 特に,抽象的な n-dim 線形空間 V と,<math>\mathbb{R}^n</math> とは,次のように結び付けられる。 Vの基底ベクトルを並べた行列<math>B = [ \mathbf{e}_1 \, \cdots \, \mathbf{e}_n ]</math> として, <math>B : \mathbb{R}^n \ni v = ( v_1, \cdots, v_n )^\mathrm{T} \mapsto Bv \in V</math> これはまた,以下のように複数の視点で捉えることができる。 (i) 座標ベクトルを抽象的な線形空間の元に対応付ける写像 (ii) 座標ベクトルの空間をユークリッド空間と同一視したうえで,そこからVへの座標変換 ←本当? 2. '''ベクトルを並べたもの''' 線形写像Aが作用するベクトル空間の元vを並べたもの。 直交行列は,しばしば基底ベクトルを並べたものと見ると幾何学的な理解がしやすい。 また,一次独立の判定法として,行列式やグラム行列を用いる方法はこの観点に立っている。 行列式の幾何学的意味もまた、各ベクトルが張る超立体の体積と考えることができる。 3. 行列自体を'''ベクトル空間の元'''として見る。 さらに内積やノルムを入れることができる。 i) 一本ベクトルとしてのpノルム p=2 のときフロベニウスノルム(ユークリッドノルム) p=∞ のとき最大値ノルム ii) 誘導ノルム(作用素ノルム) p=1 のとき列毎のl1ノルムの最大値 p=2 のとき(正方行列に限る)スペクトルノルム(=最大特異値) p=∞ のとき行毎のl1ノルムの最大値 任意の誘導ノルムは,スペクトル半径(絶対値最大の固有値)によって下から押さえられる。 4. 行列自体を'''環の元'''として見る。 行列の和を加法,行列の積を乗法として,非可換環になる。 ただし整域にはならない。つまり,零因子を持つ。 →''[[零因子の作り方]]参照'' 特に三角行列や対角行列のなす部分環は可換環である。 <math>A, B \in \mathrm{Sym} \ \Rightarrow \ AB = BA \in \mathrm{Sym}</math> さらに,完備なノルムを入れて'''Banach環の元'''と見ることができる。 5. '''二次形式や内積'''の表現として 対称行列はこの観点の性質がよく研究されている。正定値,シルベスターの慣性法則など。 またその拡張として対称作用素の理論もよく研究されている。 6. '''群の表現'''として GL(n)は行列の積を群演算として'''位相群(Lie群)'''(群演算が連続写像になること)になっている。 7. '''変換'''あるいは'''添字付けられた何か'''あるいは'''テンソル'''として 物理では添字に着目して話をしているように見える人も多い気がする。 <math>A'_i = \sum_j T_{ij}A_j</math> 要するに線形変換 8. 離散空間上の'''二変数関数'''として <math>A = ( a_{ij} )</math> という書き方は, 有限集合から係数体Kへの写像 <math>a : \{ 1, \cdots, I\} \times \{ 1, \cdots, J\} \to K</math> を外延的(つまり網羅的)に記述したものだとみなせる。 この考えによれば,行列の行ないし列を無限に飛ばすことは, 関数の定義域を無限集合に拡張することに他ならず,通常の二変数関数になる。 <math>a : X \times Y \to K</math> ---- == 名前のついた行列 == '''Gram行列 ''' 内積を成分に持つ行列 <math>G_{ij} := \langle x_i,x_j\rangle</math> 実は次のように書ける。 <math>\mathbf{G} := \begin{bmatrix} \mathbf{x}^{\rm T}_1 \\ \vdots \\ \mathbf{x}^{\rm T}_n \end{bmatrix}\begin{bmatrix} \mathbf{x}_1 & \cdots & \mathbf{x}_n \end{bmatrix}</math> '''Aのadjoint作用素''' <math>ad(A)X := A^{-1}XA</math> '''Def. cofactors; 余因子''' 行列Aのi行とj列を潰して得られる行列を<math>\widetilde{a}_{ij}</math>とする。 Aの余因子Δ<sub>ij</sub>とは,次で定義される行列式である。 <math>\Delta_{ij} := (-1)^{i+j} \widetilde{a}_{ij}</math> 各成分を余因子にもつ行列を,余因子行列(adjoint)といい,adj A と書く。 <math>\left( \mathrm{adj} A \right)_{ij} := \Delta_{ij}</math>

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