''[[ファイバーバンドル]]についても参照'' ==線形代数での例== レトラクションは、<math>v = \sum_{i=1}^m x_i v_i\in V</math>から ''いくつかの''(全てでなくて良い)成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_n) \ (n \leq m)</math>を取り出す写像。 射影っぽいけど、射影行列ではないことに注意。 射影行列は成分ベクトルを与えるわけではなく、射影空間の元を与える。 切断は、成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_n)</math>を適当な空間の元<math>\sum_{j=1}^n x_i v_i</math>として実現する写像 特異値分解に表れる 列直交行列<math>U = [ u_1, \cdots, u_r ] \in \mathbb{R}^{p \times r}, \ U^* U = I_r</math>は、 成分ベクトル<math>(x_1, \cdots, x_r)</math>に作用して p次元空間の元<math>\sum_{i=1}^r x_i u_i</math>を作り出すので、切断。 これに対するレトラクションは共役行列<math>U^*</math>で与えられる。 実際、これはp次元空間のベクトル<math>\sum_{i=1}^p x_i u_i</math>に 作用して(単位ベクトルで内積をとるので成分が出てくる)、 はじめのr個の成分を取り出して並べたベクトルを作る行列である。 成分を取り出すだけなので、射影行列ではない。 なお、<math>V V^*</math>はp次元空間の元<math>\sum_{i=1}^p x_i v_i</math>の成分を削って再び<math>\sum_{i=1}^r x_i</math>としてp次元空間の元に戻す写像であるから、これが射影行列である。 ==自然な射影の切断== 商集合X/~の自然な射影pとする。 X/~の各類Aから一つの代表aを選んでくる写像sを,射影pの切断という。 <math>\begin{tabular}{cccc} $s :$ & $X / \sim$ & $\to$ & $X$ \\ & $\ni$ & & $\ni$ \\ & $[x]$ & $\mapsto$ & $x \in [x]$ </math> ==全射と切断== 切断は一般の全射に対して定義される。 '''Lem.''' <math>f:X \to Y, \ g:Y \to X</math> map <math>f \circ g = \mathrm{id}_Y</math> このときfは全射で,gは単射である。 また特に,<math>g \circ f : X \to X</math> は冪等 idempotent である。←つまり,射影である。 '''Rem.''' 上の定理の条件が成り立っているとき,f,gはsplit(分裂)であるといい, fをgのretraction(引き込み),gをfのsection(断面,切断)という。 また,fはgの左逆写像,gはfの右逆写像ともいえる。 この事実(f,g分裂⇒f全射かつg単射)の逆(f全射⇒g単射が存在して,f,g分裂)を示すには選択公理が必要 '''Th. ''' 空でない集合X,Yに対し,<math>f:X \to Y</math> が全射であるとする。 このとき,<math>f \circ s = \mathrm{id}_Y</math> なる<math>s:Y \to X</math> が存在する。 つまり,全射に対して切断(右逆写像)は常に存在する。 '''Cor. ''' (i) sは単射 (ii) さらに <math>s \circ f = \mathrm{id}_X</math> ならば,<math>s=f^{-1}</math> つまり,'''切断とはプレ逆写像'''とでも言うべきもの。逆像ではない。 逆像との関係としては,次が成り立つ。 <math>g(y) \in f^{-1}(y)</math> '''自然な射影の切断との関係''' f全射をとると,fによる同値関係~fが定義できて,商集合X/~fの自然な射影pに対して 切断sを考えることができるが,これはfに対する切断s'と同一視することができる。 ==単射と引き込み== 先の定理の双対として,次が成り立つ。 '''Th.''' 空でない集合X,Yに対し,<math>f:X \to Y</math> が単射であるとする。 このとき,<math>r \circ f = \mathrm{id}_X</math> なる<math>r:Y \to X</math> が存在する。 つまり,単射に対して引き込み(レトラクション,左逆写像)は常に存在する。