ファイバーバンドルについても参照
レトラクションは、から いくつかの(全てでなくて良い)成分ベクトル
を取り出す写像。 射影っぽいけど、射影行列ではないことに注意。 射影行列は成分ベクトルを与えるわけではなく、射影空間の元を与える。
切断は、成分ベクトルを適当な空間の元
として実現する写像
特異値分解に表れる 列直交行列は、 成分ベクトル
に作用して p次元空間の元
を作り出すので、切断。
これに対するレトラクションは共役行列で与えられる。 実際、これはp次元空間のベクトル
に 作用して(単位ベクトルで内積をとるので成分が出てくる)、 はじめのr個の成分を取り出して並べたベクトルを作る行列である。 成分を取り出すだけなので、射影行列ではない。
なお、はp次元空間の元
の成分を削って再び
としてp次元空間の元に戻す写像であるから、これが射影行列である。
商集合X/~の自然な射影pとする。 X/~の各類Aから一つの代表aを選んでくる写像sを,射影pの切断という。![]()
切断は一般の全射に対して定義される。
Lem.map
このときfは全射で,gは単射である。 また特に,
は冪等 idempotent である。←つまり,射影である。
Rem. 上の定理の条件が成り立っているとき,f,gはsplit(分裂)であるといい, fをgのretraction(引き込み),gをfのsection(断面,切断)という。 また,fはgの左逆写像,gはfの右逆写像ともいえる。
この事実(f,g分裂⇒f全射かつg単射)の逆(f全射⇒g単射が存在して,f,g分裂)を示すには選択公理が必要 Th. 空でない集合X,Yに対し,が全射であるとする。 このとき,
なる
が存在する。 つまり,全射に対して切断(右逆写像)は常に存在する。
Cor. (i) sは単射 (ii) さらにならば,
つまり,切断とはプレ逆写像とでも言うべきもの。逆像ではない。 逆像との関係としては,次が成り立つ。
![]()
自然な射影の切断との関係 f全射をとると,fによる同値関係~fが定義できて,商集合X/~fの自然な射影pに対して 切断sを考えることができるが,これはfに対する切断s'と同一視することができる。
先の定理の双対として,次が成り立つ。 Th. 空でない集合X,Yに対し,が単射であるとする。 このとき,
なる
が存在する。 つまり,単射に対して引き込み(レトラクション,左逆写像)は常に存在する。