接ベクトル

方向微分としての接ベクトル

関数を食わせて,数字を吐き出す線形作用素
M : m-dim mfd.
C(p) : pの近傍で定義された関数の全体
X_p : C(p) \to \mathbb{R} \ linear が接ベクトルであるとは,
(i) ^\exists U \ni p \ ^\forall x \in U \ f(x)=g(x) \Rightarrow X_p f = X_p g well-defined
(ii) X_p(af+bg) = a X_pf + b X_pg 線形性
(iii) X_p(fg) = X_pf g(p) + f(p) X_p g Leibniz Rule
このとき X_p を接ベクトルという。
接ベクトルは,
1. 点pにおける方向微分係数を与える作用素(方向微分)であり,
   X_p f := \frac{\mathbb{d} f( c( t ) )}{\mathbb{d} t} \Big|_{t=0} \ (c(0)=p) (\dot{c}(0)方向微分)
2. 成分毎の偏微分の一般化であり,
3. 適当な偏微分の線形結合で与えられる。
   X_p f = \sum X^i \left( \frac{\partial f}{\partial x^i}\right)_p
4. 関数環C(p)上の線形汎関数であり,
5. C(p)をベクトル空間とみれば,C(p)上の線形形式である。
6. 1次Taylor展開を考えると
   f(p + h) = f(p) + \sum h^i \frac{\partial f(p)}{\partial x^i} + o( |h|^2 )
   従って接ベクトル (X_h)_p := \sum h^i \left( \frac{\partial}{\partial x^i} \right)_p として,
   (X_h)_p f \approx f(p + h) - f(p)
   つまりh-方向微分とは,h方向にずらした時の関数の変化を評価している。

接空間と接束

接ベクトルの全体は線形空間になる。
X, Y \in T_p M \ \Rightarrow \ a X + b Y \in T_p M ←C(p)の「線形」形式であることとはとりあえず無関係!
任意の接ベクトルは偏微分の線形結合であり,
偏微分は接空間の基底ベクトルになっている。
T_p M = \mathrm{Span} \left \{ \left( \frac{\partial }{\partial x^i}\right)_p  \right \}_{i=1}^m 
M上の各点に接空間を対応付けることで,接束(tangent bundle)を得る。
TM := \bigcup_{p \in M} T_p M
\tau : TM \to M; \ x (\in T_p M) \mapsto p canonical projection

接束の切断としてのベクトル場

ファイバーバンドルも参照
M上の各点pにTpMの元を対応付ける写像を,ベクトル場(vector field)という。
X : M \to TM; \ p \mapsto X_p \in T_p M
要するにMで添字付けられた作用素の族
ベクトル場は,見方を変えて次のような作用素としての特徴付けもできる。
X : C^\infty(M) \to C^\infty(M)
(i) X(a f + b g) = a Xf + bXg
(ii) X(fg) = Xf g + f Xg
ベクトル場の全体は関数環C(M)上の加群になる。
X, Y \in \mathfrak{X}(M) \ \Rightarrow \ f X + g Y \in \mathfrak{X}(M)
さらに写像の合成を積として多元環になり,
XY := X \circ Y \in \mathfrak{X}(M)
リー括弧積によってリー環になる。
[X,Y] := XY - YX ← 諸事情によりLie微分とも言う。
各ベクトル場は,接束に対する切断になっている。
\tau \circ X = \mathrm{id}_M

1-formと微分

接ベクトルを食わせて,数字を吐き出す線形作用素
接空間の双対空間として,余接空間が考えられる。
T_p^*M := \{ \omega_p : T_p M \to \mathbb{R} \ linear \}
余接空間の元を指してしばしば1-form(一次形式)と呼ぶ。
1-form は,
1. 関数の微分(接空間から接空間への写像)において,
   得られた接ベクトルをRの元とみなしたものである。
df_p : T_pM \to T_{f(p)}\mathbb{R} \cong \mathbb{R}; \ X_p \mapsto Y_{f(p)}
  as Y_{f(p)} : C(f(p)) \to \mathbb{R}; \ h \mapsto X_p( f^* h ) = X_p( h( f ) )
2. また,全微分の一般化であり,
X_p \in T_p Mに接する曲線c(t)を用いて,
df_p(X_p) = \frac{\mathrm{d} f( c( t ) )}{\mathrm{d} t} \bbig | _{t=0}
3. 座標関数の微分の線形結合で表される。
df_p = \sum \alpha_i (dx^i)_p 
4. 座標関数の微分は,ちょうど双対基底になっている。
(dx^i)_p \left( \frac{\partial}{\partial x^j} \right)_p = \delta_{ij}
5. 従って特に,余接空間は座標関数の微分で生成される。
T_p^*M = \mathrm{Span} \{ \left( dx^i \right)_p\}_{i=1}^m

余接束と一次微分形式

Mの各点に余接空間を対応付けたものを余接束とよぶ。
T^* M := \bigcup_{p \in M} T_p^* M
\pi : T^*M \to M canonical projection
Mの各点に1-formを対応させる規則\omega : M \to T^*M; \ p \mapsto \omega_pを一次微分形式という。
一次微分形式の全体を\mathfrak{A}^1(M)で表す。
A^1(M)は関数環C(p)上の加群である。
一次微分形式は,
1. 関数の微分として与えられる。(常にこのようなfが存在するわけではない。)
df \in T^* M
2. c(t)に沿う線積分を定める。
\int_c \omega := \int_a^b \omega( \dot{c}(t) ) dt
3. 特に\omega = dfの場合には
\int_c \omega = \int_c df = \int_a^b \frac{\mathrm{d} f(c(t))}{t} \mathrm{d}t = f(c(b)) - f(c(a))
となって,終点と始点だけで定まる。
Th. \omega = df なる f が存在するための必要十分条件
^\forall c : [a,b] \to U \subset M \ C^\infty \quad c(a) = c(b) \ \Rightarrow \ \int_c \omega = 0
一次微分形式のテンソル積として,高次微分形式を得る。
p \mapsto \omega_p \otimes \eta_p
最終更新:2011年05月17日 18:13
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