「山陽、お前、博多にCTCを構えるか? 九州と直通するならその方やりやすいだろう」
こいつ何を言っているんだ?
東京のCTCは手狭だし、COSMOSのような変更件数の上限はないとはいえ、コムトラックとて、九州直通で山陽新幹線の修正は大規模なものになるだろう。そろそろ分離してもいい頃かもしれない。
言葉を挟む間もなく東海道の口から淀みなく言葉が出てくる。言葉の一つ一つを繋げて文章として理解できない。分かっているのは背中を駆け上がる悪寒と胸が重くて手が震えていると言う事。
何が話を付けておいただって?
西日本の上官は東海道直通より九州直通を重視しているようだ、なんとかならないかと相談したら、なんて答えたって?
「後任を手配するそうだ。だから、お前、無理に東京に来なくてもいいぞ」
後任?誰の。俺のか?
「お前も、私より九州を、つばめを選んだのだろう?」
「選ぶって、だって俺は直通がっ!」
「もう、いい。私は、選ばれない事に慣れている」
何を言っている。ベストトレインを自負するお前が、選ばれないだって?
「お前なあ、お前が最初の高速鉄道に選ばれたんだろうが」
「選ばれたんじゃない。私は、自分でなったんだっ!」
当時、そんなもの、どこにもなかった。しかし線路が勝手にできるわけはない、200キロに耐える車体があるはずもない。人の頭で描かれ、人の手で生み出されたはずなのに、これは驕りなのか。そう思うと、本当に指先が震えてくる。
「お前、何様のつもりだよ。西日本のことは西日本が決める。東海に口出されたくねーよ」
「決定事項だ」
「くそ」
とにかく事実を確認しなければならない。ポケットから携帯を取り出してボタンを押そうとした瞬間、着信を告げるLEDが点滅した。相手は九州、肩がビクリと上がって、意識してゆっくりと通話に出た。こちらが口を開く前に、九州がおかしげに話し出す。
「貴様、辞職したそうだな。ついに九州に下る気になったのか?しかし、山陽新幹線を背負わん貴様に一片の価値もないぞ」
な。開いたが口が塞がらない。携帯を持つ手がゆっくりと下がっていく。傍らに立つ東海道を見れば、そんな自分の様子をじっと見ていた。まるで他人を見るように、黒く塗りつぶした瞳には何の感情も浮かんでいない。
「ラストランの日程を決めねばならんな。そうだな、特別に500系こだまに東海道を走らせてやろう」