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ポケット・モビルスーツ
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~伝説のポケモビ~
この世界の自然を形作るの植物と動物。緑を意味、動物たちを守り育てる植物もまた、動物によって守り育てられている。それらを包み込む自然の大地に息づくもう一つの生命体モビルスーツ。絶対数の少ないモビルスーツは植物や動物にとって変わることはなかったが、人々の生活を支え、またそれを所有して戦わせることも娯楽の一つになった。
はじめは地方地方で始められた娯楽も、モビルスーツを鍛える訓練所、すなわちジムができ、ジム同士の交流が盛んになるとモビルスーツを育て、各地を旅して自らのモビルスーツの強さを競う者達が現れた。彼らは、モビルスーツを連れ、野を超え山を超えた。
パイロットの誕生である。
はじめは地方地方で始められた娯楽も、モビルスーツを鍛える訓練所、すなわちジムができ、ジム同士の交流が盛んになるとモビルスーツを育て、各地を旅して自らのモビルスーツの強さを競う者達が現れた。彼らは、モビルスーツを連れ、野を超え山を超えた。
パイロットの誕生である。
手のひらサイズから人を乗せるまでに様々なタイプのあるモビルスーツを連れ歩くのは容易じゃない。必要に応じて携帯するに便利なセンカンが開発され、気軽にポケットに入れて持ち運べるようになる。モビルスーツバトルの広がりとともに、ポケットに入れたモビルスーツはこう呼ばれるようになる。
ポケット・モビルスーツ。略してポケモビ。
2
飛び込んでくるというよりは微かに聞こえるというレベルだったが、イザークは身を起こす。人が動き回る音に混じって、モビルスーツの駆動音。
「ノラモビに誰か襲われているのか?」
イザークは熱血漢である。
この状況を無視して眠ってしまえるような人間ではない。立ち上がって、声のするほうへと走る。夜の森は薪の明かりから離れてしまうとあっと言う間に暗闇が支配する。手にしたライトでは到底照らせないような中、イザークはモビルスーツの光を見つけた。
「あれかっ!?」
闇に浮かび上がる、赤や青のライトはモビルスーツの生命の色。その中でも一際輝く緑の瞳が二つ。
「二つ目がいるのか?」
バトルに利用するような強力なモビルスーツまで混じっているとは厄介である。イザークは状況を確認し、走りながら戦略を考える。なぜ、モビルスーツが人を襲う? 確かに凶暴なモビルスーツもいるが、こちらから危害を与えない限りは人を襲うことは無いはずだ。ライトに照らし出された時、その中にはモビルスーツに追いかけられている子供がいた。その異様な光景に驚きながらも、イザークは迷わずザクを呼び出していた。
最初のノラモビこそ梃子摺ったが、その後は順調に片付けて森に静寂が戻った。もっとも、その静寂もすぐにやぶられることになったが。
「ノラモビに誰か襲われているのか?」
イザークは熱血漢である。
この状況を無視して眠ってしまえるような人間ではない。立ち上がって、声のするほうへと走る。夜の森は薪の明かりから離れてしまうとあっと言う間に暗闇が支配する。手にしたライトでは到底照らせないような中、イザークはモビルスーツの光を見つけた。
「あれかっ!?」
闇に浮かび上がる、赤や青のライトはモビルスーツの生命の色。その中でも一際輝く緑の瞳が二つ。
「二つ目がいるのか?」
バトルに利用するような強力なモビルスーツまで混じっているとは厄介である。イザークは状況を確認し、走りながら戦略を考える。なぜ、モビルスーツが人を襲う? 確かに凶暴なモビルスーツもいるが、こちらから危害を与えない限りは人を襲うことは無いはずだ。ライトに照らし出された時、その中にはモビルスーツに追いかけられている子供がいた。その異様な光景に驚きながらも、イザークは迷わずザクを呼び出していた。
最初のノラモビこそ梃子摺ったが、その後は順調に片付けて森に静寂が戻った。もっとも、その静寂もすぐにやぶられることになったが。
「こんな夜中に森をうろつく馬鹿がいるかっ!」
モビルスーツよりも恐ろしいイザークの雷が森に木霊する。薪の向こうでびくっと震える子供は、ノラモビルスーツに追いかけられていた小さな少年であった。成り行きで彼を助けてしまったイザークは、そのいきさつを聞いて間髪おかずに怒鳴り返していた。
「しかも、ノラモビルスーツの巣に迷い込んだだとっ。情けないにも程があるっ!」
「言え! 貴様。一体何をしに来た、こんな所に」
「えっと、僕、寝床を探して、仲間に入れてくれないかなって」
「なにぃ」
言いにくそうに彼はイザークを見上げた。
「だって僕、モビルスーツだし」
イザークの瞳がこれでもかと見開かれ、眉を寄せて子供を見下ろす。炎に照らされた髪は紺色で、揺らめきを映しこむ瞳はグリーン。膝を抱える手も抱えられた足も、肌も全て二周りも小さいけれど作りはイザークと同じだった。どこから見ても5・6歳の子供。
「おいガキ。寝ぼけているなら、さっさと家へ帰れ」
「帰る所ない」
それっきり俯いてしまって、なぜだか後ろめたい気分になる。これではいじめているようだと、自らの口調には全く気がつかずにイザークは対処に困る。ポケモビバトルを通してならいくらでも厳しい指導員になれるのに、ただの子供相手などしたことがないイザーク。
「だ、だったら、早く寝ろ」
「ここ、寒い」
「贅沢を言うなっ。俺だって、今からここで寝るんだっ!」
と言って、手にした毛布が目に留まる。本当はこれに包まって朝を迎える予定だったが、子供がいるとなっては独りで使うわけには行かない。イザークは炎に当たらないように放り投げた。ばふっと受け取った子供が困ったように毛布を手にしている。
「でも、僕が使ったらお兄ちゃん寒くないの?」
「余計な心配するなっ」
「・・・でも」
「でももへちまもない」
へちまってなんだ?と、内心突っ込んで子供の反応を伺えば、おろおろしてじいっと見つめている。だが、子供は徐に立ち上がって毛布を引きずって歩いてくるではないか。
「だから、それはお前が使えばいいと!?」
言い終わる前に子供は隣に座り込んで毛布を半分自分の体に巻きつけた。それが意味する所を分かってしまって、イザークは子供が口を開いて言う事を予想した。
「半分こ」
震える手で毛布の残りを肩にかけて、既に半分眠りこけている子供を見下ろした。こんな子供を相手に何をうろたえることがある。イザークとて本当は眠くて、寝る直前だったのに、なぜか気持ちが奮い立って炎を見つめた。
「ったく・・・仕様の無い奴だ」
「・・・おやすみ・・・なさい」
「ああ」
眠そうな声に返して、自身も瞳を閉じた。
モビルスーツよりも恐ろしいイザークの雷が森に木霊する。薪の向こうでびくっと震える子供は、ノラモビルスーツに追いかけられていた小さな少年であった。成り行きで彼を助けてしまったイザークは、そのいきさつを聞いて間髪おかずに怒鳴り返していた。
「しかも、ノラモビルスーツの巣に迷い込んだだとっ。情けないにも程があるっ!」
「言え! 貴様。一体何をしに来た、こんな所に」
「えっと、僕、寝床を探して、仲間に入れてくれないかなって」
「なにぃ」
言いにくそうに彼はイザークを見上げた。
「だって僕、モビルスーツだし」
イザークの瞳がこれでもかと見開かれ、眉を寄せて子供を見下ろす。炎に照らされた髪は紺色で、揺らめきを映しこむ瞳はグリーン。膝を抱える手も抱えられた足も、肌も全て二周りも小さいけれど作りはイザークと同じだった。どこから見ても5・6歳の子供。
「おいガキ。寝ぼけているなら、さっさと家へ帰れ」
「帰る所ない」
それっきり俯いてしまって、なぜだか後ろめたい気分になる。これではいじめているようだと、自らの口調には全く気がつかずにイザークは対処に困る。ポケモビバトルを通してならいくらでも厳しい指導員になれるのに、ただの子供相手などしたことがないイザーク。
「だ、だったら、早く寝ろ」
「ここ、寒い」
「贅沢を言うなっ。俺だって、今からここで寝るんだっ!」
と言って、手にした毛布が目に留まる。本当はこれに包まって朝を迎える予定だったが、子供がいるとなっては独りで使うわけには行かない。イザークは炎に当たらないように放り投げた。ばふっと受け取った子供が困ったように毛布を手にしている。
「でも、僕が使ったらお兄ちゃん寒くないの?」
「余計な心配するなっ」
「・・・でも」
「でももへちまもない」
へちまってなんだ?と、内心突っ込んで子供の反応を伺えば、おろおろしてじいっと見つめている。だが、子供は徐に立ち上がって毛布を引きずって歩いてくるではないか。
「だから、それはお前が使えばいいと!?」
言い終わる前に子供は隣に座り込んで毛布を半分自分の体に巻きつけた。それが意味する所を分かってしまって、イザークは子供が口を開いて言う事を予想した。
「半分こ」
震える手で毛布の残りを肩にかけて、既に半分眠りこけている子供を見下ろした。こんな子供を相手に何をうろたえることがある。イザークとて本当は眠くて、寝る直前だったのに、なぜか気持ちが奮い立って炎を見つめた。
「ったく・・・仕様の無い奴だ」
「・・・おやすみ・・・なさい」
「ああ」
眠そうな声に返して、自身も瞳を閉じた。
そして、翌朝。
重たい瞼を上げてすっかりイザークに体を預けて寝ている子供見て、驚き、思い出し、全然疲れが取れていない体を呪うのだった。
「何をしているんだ、俺は」
バトルをするのはポケモビであるが、使い手であるパイロットの体力や精神状態はポケモビと一心同体であると信じているイザークにとってこれはありがたくない状況であった。
残り一つにして、決勝リーグ進出を逃したとあっては目も当てられない。はあ・・・と小さなため息をついたとき、傍らで身じろぎするのが感じられた。
「んん」
「起きたか」
グリーン色に光る目で見上げられた時、イザークは昨日の会話を思い出した。
重たい瞼を上げてすっかりイザークに体を預けて寝ている子供見て、驚き、思い出し、全然疲れが取れていない体を呪うのだった。
「何をしているんだ、俺は」
バトルをするのはポケモビであるが、使い手であるパイロットの体力や精神状態はポケモビと一心同体であると信じているイザークにとってこれはありがたくない状況であった。
残り一つにして、決勝リーグ進出を逃したとあっては目も当てられない。はあ・・・と小さなため息をついたとき、傍らで身じろぎするのが感じられた。
「んん」
「起きたか」
グリーン色に光る目で見上げられた時、イザークは昨日の会話を思い出した。
僕、モビルスーツだし。
こいつ。まさか、本当に?
だが、人間の形をしたモビルスーツなんぞいるわけないし、いやしかし。
いやいや、モビルスーツが寝る? そもそも言葉を話すなんて聞いたことがないぞ。イザークはまた寝に戻りそうな子供の首根っこを掴んで、無理やり目覚めを即した。
「起きろ!」
「うわぁぁ」
だが、人間の形をしたモビルスーツなんぞいるわけないし、いやしかし。
いやいや、モビルスーツが寝る? そもそも言葉を話すなんて聞いたことがないぞ。イザークはまた寝に戻りそうな子供の首根っこを掴んで、無理やり目覚めを即した。
「起きろ!」
「うわぁぁ」
朝食を取るイザークとは別に、その光景を珍しそうに見ている子供。信じられないが、目の前の存在はどうやら本当にモビルスーツらしい。最も、見るからに弱そうで、とてもバトルには使えなさそうな、ザクよりもさらに弱いモビルスーツである。
こいつを鍛えて・・・バトルに出れば。
イザークの熱血師匠根性が頭をもたげるが、軽く頭を振った。いや、よそう。俺にはザクがいる。
「お前、名は?」
モビルスーツに名前を聞くのもおかしな気分だった。
「僕? 僕、アスラン」
「俺はイザークだ」
さあ、これからどうするつもりだ、イザーク。自分に問いかけて、もう一度アスランを見る。
「お前、モビルスーツだと言うなら、この中に入れるのか?」
「うん」
未だに怪しんでいる自分を卑怯だと思いつつ、センカンを取り出した。アスランと言うモビルスーツを手に入れたいのと同義であることを、目の前の子供を手の中の白と赤のセンカンに閉じ込めてから思い当たったのだった。
「何を平然と収まっている! さっさと出て来いアスラン」
「そっちが、入れって言ったんじゃないか」
少しムスッとして、煙の中から出現した子供がイザークを見上げている。確かにその通りではあったが、イザークにとってもパートナーでもないのに大人しくセンカンに入るポケモビも初めてだったのだ。相手の言う事ももっともだが、それをこんな小さな子供に指摘されるのは面白くないし、その上、同じレベルで言い争うのもみっともない。
「お前がポケモビだと言う事は分かった。だと言うのなら、武器はなんだ。どうやって攻撃する?」
気持ちを切り替えて問うた。イザークもジムの指導者の一人である。目の前のポケモビを下から順に観察する。人間の子供が履くような靴に靴下、半ズボンに白いシャツ。その上にはチョッキを来て、まるで幼稚園で母親に手を引かれる園児・・・の様だと思った。
一方問われた子供は紺色の髪を揺らして、頭を傾げて考え込んでいたが、ポンと手を叩く。
「パンチ」
「は?」
「と、キック」
しゅっ!っと、どこにも届きそうに無い小さな拳を突き出した。
ザクよりもずっとずっと下のランクであることは間違いない。たかが布の装甲では防御力など知れているし、子供の手がどれほどの攻撃力を持つと言うのだ。自慢げに言われても、こればっかりはどうしようもない。
「・・・話にならん」
「むっ、馬鹿にしただろ」
「当たり前だ」
にやりと見下ろせば、悔しそうに睨みつけてくるではないか。イザークはますます面白くなる。
「昨日の夜のあれではな」
逃げ回っていた子供がレベルの高いポケモビであるはずが無い。本人も多少は自覚があるのだろう。『うー』と唸っている。
「お兄ちゃんだって、ちょっと苦戦してたじゃないか」
「あれは、出方を伺っていたんだ!」
よく見ていたなと感心するが、あの程度を苦戦だと認めるわけにはいかない。急なバトルでバトルリングも無い状況では誰しも、ああするだろう。しかし、納得できずに、口を尖らせる子供。
「でも、やられてた」
「なんだと・・・こう見えても、俺はマティウスジムのトレーナーだぞ!」
「・・・そうは見えない」
「お前、いい度胸だ」
売り言葉に買い言葉。
子供相手にみっともないと考えていたことなど、明後日の方向に飛び去っていた。
「俺がどれだけ強いか証明してやる。たった今からお前は俺のポケモビだ」
頭の中でカンカンと警鐘がなるのも気にせずに、イザークは宣言していた。
「パートナーとして今日から修行だっ!」
こいつを鍛えて・・・バトルに出れば。
イザークの熱血師匠根性が頭をもたげるが、軽く頭を振った。いや、よそう。俺にはザクがいる。
「お前、名は?」
モビルスーツに名前を聞くのもおかしな気分だった。
「僕? 僕、アスラン」
「俺はイザークだ」
さあ、これからどうするつもりだ、イザーク。自分に問いかけて、もう一度アスランを見る。
「お前、モビルスーツだと言うなら、この中に入れるのか?」
「うん」
未だに怪しんでいる自分を卑怯だと思いつつ、センカンを取り出した。アスランと言うモビルスーツを手に入れたいのと同義であることを、目の前の子供を手の中の白と赤のセンカンに閉じ込めてから思い当たったのだった。
「何を平然と収まっている! さっさと出て来いアスラン」
「そっちが、入れって言ったんじゃないか」
少しムスッとして、煙の中から出現した子供がイザークを見上げている。確かにその通りではあったが、イザークにとってもパートナーでもないのに大人しくセンカンに入るポケモビも初めてだったのだ。相手の言う事ももっともだが、それをこんな小さな子供に指摘されるのは面白くないし、その上、同じレベルで言い争うのもみっともない。
「お前がポケモビだと言う事は分かった。だと言うのなら、武器はなんだ。どうやって攻撃する?」
気持ちを切り替えて問うた。イザークもジムの指導者の一人である。目の前のポケモビを下から順に観察する。人間の子供が履くような靴に靴下、半ズボンに白いシャツ。その上にはチョッキを来て、まるで幼稚園で母親に手を引かれる園児・・・の様だと思った。
一方問われた子供は紺色の髪を揺らして、頭を傾げて考え込んでいたが、ポンと手を叩く。
「パンチ」
「は?」
「と、キック」
しゅっ!っと、どこにも届きそうに無い小さな拳を突き出した。
ザクよりもずっとずっと下のランクであることは間違いない。たかが布の装甲では防御力など知れているし、子供の手がどれほどの攻撃力を持つと言うのだ。自慢げに言われても、こればっかりはどうしようもない。
「・・・話にならん」
「むっ、馬鹿にしただろ」
「当たり前だ」
にやりと見下ろせば、悔しそうに睨みつけてくるではないか。イザークはますます面白くなる。
「昨日の夜のあれではな」
逃げ回っていた子供がレベルの高いポケモビであるはずが無い。本人も多少は自覚があるのだろう。『うー』と唸っている。
「お兄ちゃんだって、ちょっと苦戦してたじゃないか」
「あれは、出方を伺っていたんだ!」
よく見ていたなと感心するが、あの程度を苦戦だと認めるわけにはいかない。急なバトルでバトルリングも無い状況では誰しも、ああするだろう。しかし、納得できずに、口を尖らせる子供。
「でも、やられてた」
「なんだと・・・こう見えても、俺はマティウスジムのトレーナーだぞ!」
「・・・そうは見えない」
「お前、いい度胸だ」
売り言葉に買い言葉。
子供相手にみっともないと考えていたことなど、明後日の方向に飛び去っていた。
「俺がどれだけ強いか証明してやる。たった今からお前は俺のポケモビだ」
頭の中でカンカンと警鐘がなるのも気にせずに、イザークは宣言していた。
「パートナーとして今日から修行だっ!」
こうしてイザークは、半ば騙したように、何の役にも立たなさそうな人型のポケモビ・アスランを扱きながら決勝リーグを目指すことになった。