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  • Men of Destiny
    0083そのまんまです。通勤途中に聞いていて、うん、なんか思わせぶりな歌詞だなあって思ったのでちょっくらネタ小噺としてぽつぽつとはじめることにしました。 1クール 01 滅び行く世界 11 見つめる炎 02 やさしさはいらない 12 君の横顔 03 寂しい笑顔 13 星空を覆い尽くす時 04 フラッシュバック 14 凍えた心 05 チャンスが欲しい 15 胸を貫くスリル 06 明日を夢見るもの 16 全てが崩れ去るとしても 07 それが定めでも 17 気休めはいらない 08 誰のための未来 18 傷ついた痛み 09 勝利者などいない 19 それが定めなら 10 吹き荒れる嵐 2クール 20 朽ち果てた夢 27 ドリーミンデイ 21 眠りのない夜 ...
  • Men of Destiny 37
    戦士よ  いやに細かく動く機体。思った以上にいい旋回性能にシンは新しい機体をもてあます。  今までならなんでもない空中戦も、紙一重で交わすのがやっと、慣れた感覚を書き換えるのに敵戦闘機の5機を費やしていた。  そこまでしてようやくスティックが手に馴染み出す。  ぐっと広くなった視界の端で見つけた4機編隊が向かって来る。微妙な姿勢制御を無意識の内にこなし、撃ってきたミサイルを交わす。  この加速ならいけるっ。  スロットルを全開にして、パワーに任せてミサイルを振り切る。あっという間に4機を落として、ジブラルタル宇宙港の上を大きく旋回した。 「あんな所に、地上部隊」 キャノピーから覗き込む地上を動き回る戦車を見て、シンは時期を逸したのを知った。敵と味方が入り乱れてしまっては援護射撃はできないし、地球軍の戦闘機も引いていくだろう。  あの赤い奴はどこだ。  HUD上には影...
  • Men of Destiny 08
    誰のための未来  シンは今日のジープの運転手をまじまじと見た。自分より若い少女。どことなく誰かに似ていると思ったら、それはルナマリアの妹だった。 「何、人の妹じろじろ見てんのよ」  ルナマリアに説明を求めれば、ヨウランたちの変わりにメイリンが作戦に参加することになったらしい。どうやら本当に人手不足のようである。  ルナマリアとメイリンは一つ違いの姉妹で実際そう言われればよく似ていた。勿論、瓜二つと言うわけにはいかない。顔立ちも若干お姉さん気質が混じったルナマリアのほうが大人っぽかったし、茜色の髪も髪質も長さも違う。 「ルナは髪伸ばさないのか?」  こうして、作戦に参加するようになって1ヶ月以上。シンはルナマリアをルナと呼び捨てするようになっていた。 「こんなに物資が不足しているのに、髪なんて伸ばせないわよ」 「水だってそんなにないし」 「そりゃ、お湯はヴィーノやヨウラ...
  • Men of Destiny 32
    駆け抜ける嵐 「峠の1本道をずっと行って、すぐそこは崖で谷底かあ、すごいところにある研究所だな」 地図で行き先を確認し、シンはまたジープを走らせる。途中、すれ違う人に聞きながら辿り着いた先で思わず息を呑んだ。口をそろえて皆が指差した場所、崖の上に聳え立つ城。城というより古城。  夜になれば、蝙蝠とか飛んで何か出そうだ。 「本当にここなのか?」  朽ちた扉がバリケードになっていたが、無理やりジープで突破する。ガラガラと散乱する破片に混じって女の声が聞こえたようでシンはびくりと肩を揺らす。そろりと辺りを見回せば、広場のようなところに出ていた。  石でできた噴水に水は勿論なく、ひび割れて崩れてしまっている。傾いた陽射しに黒く落とされる影で不気味さ倍増といったところだ。  ガガガとドリフトまがいの急停止でジープを止める。 「・・・あう・・・」  今後は確かに耳に届く声。ハンド...
  • Men of Destiny 12
    君の横顔 「赤い眼のコーディネーターです、まだ少年の」 「いえ、そのような者を押さえたという記録はありません」  アークエンジェルの艦橋で監視官はこの一週間の活動の報告を受けていた。レジスタンスのアジト突入から、反乱分子コーディネーターの一斉逮捕まで。 「ライトセイバーは見つかりましたか?」 「指示されたポイント周辺ではまだ」 「そうですか」  獄中の彼らの扱いについては、この後到着する専門の部隊が業務を引きつく予定になっている。不必要に長居することもできず、彼らの滞在期限も長くて2週間である。 「こんな辺境の街で何をやっている・・・・・・僕は」  各地できな臭い動きが起こり始めており、監視官の出番もそれに連れて増え、終に手が回らなくなった平和秩序維持機構は虎の子のアークエンジェルの派遣を決定したのだった。  一方、シンは渡されたお金を手に一大決心を迫られて...
  • Men of Destiny 14
    凍えた心  ルナとメイリンの視線が痛い。まるで突き刺さるようだった。 「で、誰なのよ。あのハンサムな人は?」 「いや、俺もよく分からないっていうか」 「はあ? 何よソレ」  曖昧な答えで言い逃れできない執拗さ。人数が増えたせいかアレックスはまっすぐ帰らずにバラックの商店街で買い物をすると言い出した。店先を覗いて、ちょこちょこと食料品を買い込んでいる。店主と2・3話をしておまけまでしてもらっているようだ。 「成り行きで一緒に住むことになったというか、拉致されたような違うような」  改めて思い返してみると、なぜこうなっているのか不思議である。 「何であんたみたいなちんちくりんが拉致されんのよ、あたしやメイリンならまだしも」  しゃべり続けるルナと物珍しげにキョロキョロするメイリンと、言葉に詰まるシンはまるで親ガモの後をついて歩く子ガモのようで、おまけが主に彼らに向けたもの...
  • Men of Destiny 17
    気休めはいらない  市政庁からゆっくりと離れていくアークエンジェル。  少し雲が多いが天気は晴れ。風は微風、降水確率10%、午後から天気は下り坂とラジオの天気予報が告げる。  電子スコープ内で護送車がゲートを出てくる。前後を官警のジープに護衛されてそろそろと進む。白昼堂々と進むのは自信の表れか。シンはスコープを仕舞って、廃ビルの屋上で膝を立てる。腕時計の時間を見ればジャスト。 「ターゲット確認」 『時間通りね。作戦開始よ!』  即席のインカムでルナ達を情報を交換して作戦開始がスタートした。シン、アレックスチームが護送車を襲撃して救出した後、所定の場所で待つルナ達にレジスタンスの仲間を引き渡して囮役となる。  ヨウランやヴィーノ以外の仲間がどうなったかは分からず、もしかしたら突入作戦直後の護送一陣でプラントに送られたのかもしれない。だから、この作戦の目標はヨウラン、ヴィーノ...
  • Men of Destiny 48
    駆け抜けていく奇跡 「こんな波動感情をぶつけてくるなんてっ!」  白い機体の中で叫ばれた声がシンに聞こえるわけもない。攻撃をかわしまくる深紅の機体とすれ違えば引き込まれそうになる。  レクイエムに横付けされたモニタールームでアラート音が鳴り響く。 「カオス、シグナルロスト!?」 「何!? いや、何だこれは」  一番右端のモニタとその隣のモニタが真っ赤に染まっている。白衣を来た技術スタッフが一斉に駆け寄って覗き込む。 「γ波フラット? 心拍、脈拍共に規定値をオーバー、血中酸素濃度、脳内圧力、危険域だっ!」 「ステラもかっ、一体どうしたんだと言うんだ2人とも!?」 「リセットしろ、早く! 潰されるぞっ」  この2人に共通する点に気が付いた彼らが背後の埋め込まれたモニタを見た。 「馬鹿なっ・・・ブラックアウト」  真っ暗なモニタには本来、受信した数々の身体デー...
  • Men of Destiny 40
    両手のシナリオ  円筒形のコロニーはゆっくりと回転していて、底部から伸びる3枚のミラーが光っている。太陽光が差し込む人工の大地には緑が広がり、湖には水鳥が浮かんでいる。ほとりにログハウスがある典型的なカントリー風景。むしろ、地上では消えた記憶の産物。  水鳥が一斉に飛び立った。  丘から1台のセダンが現れ、ログハウスに横付けする。防弾のセダンから降りるのは、今や最も有名なコーディネーターの一人、ギルバート・デュランダル評議会議長。先に降りて周囲を警戒するのが、レイ。その他、SPが周りを固める彼らを出迎える背広の男達、田舎風景に似つかわしくない光景はすぐにログハウスの中に消えた。 「これは・・・議長自ら足をお運びとは恐れ入りますな」 「それだけの覚悟を持って臨んでいるとお考え頂きたい」  あの小さなログハウスでは想像できない設備の部屋の中央に置かれたテーブルに男達が向...
  • Men of Destiny 45
    声を殺し泣いた遠い記憶  例えば回避運動に入るタイミングとか、左右どちらに機体を振るだとか、相手のやることが分かってしまって、ステラがHUD内の敵機を睨む。機体の特性は全くといっていいほど違うのだ、同じ動きをするわけがないのに。  無論、相手のほうが上手であることは分かる。 「どいて! 邪魔、しないでっ!」  それを落とすのはステラの目的ではないから、ただ退いてくれればいいのだ。  機動だけでなく、パイロットもそうなら事は簡単だったに違いない。しかし、相手はこの防衛戦が初陣となる新米パイロットだった。 「どうして・・・当たらないっ!」  確実に当たるコースなのに、なぜか避けられる。ザフト機の動きに予感めいたものさえ感じるのに一歩及ばない。 「これが、実戦!?」  灰色の機体のコックピッドの中でステラは吐き捨てた。  シンはそんなステラの窮地を知っていた。 ...
  • Men of Destiny 50
    滅びのメロディー  パイロットスーツ越しに伝わる冷気。  一段と暗くなった通路に浮かび上がるライトセーバーの光は青と赤。 「俺、フリーダムに乗っている奴に、アンタを止めろを言われました」  声がギリギリ届く間合いで向かい合う。  髪の色を除けばシンの記憶中にあるそのままだった。困ったように苦笑して、小さくため息をつく。 「相変わらずだな、あいつ。俺のやろうとすることは、何でかんでも止めろと言う」  シンを見る眼差しも変わらない。  いや、今までどこか、見守る色が強かったその緑色は今は違う。 「お前も・・・だから追って来たのか?」  正面向き合う視線はシンを見ていて、シンの答えを待っている。 「はい」  シンが言ったそばから、アスランの瞳が瞬きで一度隠れる。 「俺もアンタを止めたい」  空気がピシッと張り付いて、僅かな揺れを伝え来たのが合図。右手のライトセー...
  • Men of Destiny 21
    眠りのない夜  建物に例えれば30階建て位だろうか、もう少しあるだろうか。最初は数えていた階段も二百段を越えだした頃から数えるのをやめてしまった。通路の段差は擦り切れてほとんどスロープで、螺旋を描いて地底に消える。  まず、最下層の採掘セクションで掘り出されたメタンハイドレートを特殊な袋に入れて固形化する。次に袋詰されたガス燃料を人手を使ってエレベータの搬入口まで運ぶ。後はエレベータを使ってプラント上部まで運ぶ。  搬出セクションは最下層からエレベータ搬入口までを指し、単純だがかなりの重労働でもあった。周りの大人が嘘のように黙々と労働に勤しむからシンも何も言えずにただ、スロープを登ったり降りたりする。大人の足に遅れまいと。  何も考えない方が楽なのだ。  考え始めると悪い方へと悪い方へと思考が進む。曰く、貴重な青春の日々をこんなところで無駄にしていいのか、これからどうなるのか...
  • Men of Destiny 23
    信じているモノ  正直、シンはレイと再会するまで、レジスタンスの彼らのことをすっかり忘れていた。  コーディネーターの地位向上のために戦っている。  監獄にいるシンにとっては身に染み込む話だ。それでいて、遠い世界の話でもあるように感じられた。 「どうかしたのか?」  またローテーションが別れてしまったアレックスに問い掛けられる。これから就寝に入る彼に面倒をかけたくなくて、片言でなんでもないと告げると、シンは足早に作業現場に出て行く。自分でもうまく誤魔化せたか緊張してしまって、入ってくる仲間とぶつかってしまっていた。  囚人服の袖口に何かが挟まっているのに気づいたのは、その少し後。布を破ったような歯切れにチャコールで何やら走り書きされている。 「一体、いつの間にこんなもの」  あっ、ぶつかった時。  シンは納得して、文章に目を通した。  お前の力がいる。今日の夜...
  • Men of Destiny 41
    夢を欲しがるもの  どう説明したらいいんだよ。  シンは食堂の向かいに陣取ったルナマリアの追求に、正直、窮していた。 「アンタのその手、やったのアイツなの?」  ヨウランとヴィーノまでじっとり、様子を伺っている。宇宙に上がってすぐ、落とされた右手首から先のことをよく覚えていない。地球軍の奴にやられた。一瞬の事で何がなんだかわからなかったと答えていた。  確かにその通りなのだ。一瞬の出来事だった。  しかし、相手のことを覚えていないわけではないのだ。 「レイは、彼の事『インフィニティ』って呼んでいたわね」  ルナマリアもなかなかしぶとかった。シンが忘れかけていた名をレイに投げかける。 「地球軍の新型だ。撃墜した敵機の復号情報を解析したデータから、コード名がインフィニティだと判明した。今、俺達が躍起になって落とそうとしている」  シンの焦燥を他所に淡々と説明するレイ。 ...
  • Men of Destiny 44
    全てを捨てる時  ミネルバに戻ったシンをヨウランとヴィーノが出迎える。ヴィーノが抱きついてきて、シンは困ったようにヨウランを見た。その後にルナがいてレイもいた。 「よかったよお前、ミネルバは移動始めるって言うし。メイリンからロストしたって聞いてさ!」 「心配かけてごめん」  ヴィーノ達格納庫のメカニック達が早速、シンの機体の検分に入る。入れ替わるように格納庫に現れたステラが走ってくる。 「シン!」  まずは着替えようと歩きだそうとしたのだが、そうは問屋が卸さない。腕組みしてシン達の前に立ちはだかる男がいた。  パイロットスーツを来た銀髪の男、イザークである。 「貴様に聞きたい事がある」  シンは来たなと思う。 「一緒にいた奴のことだ」  ああ、やっぱり。  黙っていても相手はどいてくれるわけでも諦めてくれるわけでもなく、シンはじっとイザークの顔を見たまま立ち止ま...
  • Men of Destiny 04
    フラッシュバック  運んできたコンテナと共にエレベータで下る。眼鏡の男に連れられるままに辿り着いた場所は廃ビルの地下。赤色ライトと青色のLEDゲートをくぐって、重い扉を開けると、少女と少年が待っていた。 「お疲れ様。って、あら?」  駆け寄ってきた少女はシンより少し大人びて、コンテナに続いて部屋に足を踏み入れたシンに早速気が付いたようだった。茜色の髪と空色の瞳はありそうでない、組み合わせ。何より隙のない動きに相手の存在を知る。 「アンタもコーディネータね?」  予想通りの答えに、気を引き締める。彼女だけではない、一緒にいた金髪の少年も同類なのだろう。よそ者がいるにしては静か過ぎて、自然と力が入る。 「よせ、ルナマリア。仲間かも知れない」 「仲間?」 オウム返しに呟いたところで緊張した空気が緩むわけでもなく、ルナマリアと呼ばれた少女が身を翻して去っていく。 「まあ、いい...
  • Men of Destiny 33
    言葉にできない想い  ステラの首に掛かっているエマージェンシーのランプがチカチカと赤く光っていた。 「シンとステラを発見」  ミネルバのクルーがシンとステラを発見したのは、跡形もなく消えうせたロドニアの古城からそう離れていない、城の裏手だった。爆破による残骸が森の至る所に散乱し、霧雨と煙で視界が悪い。地球軍の目を盗んで、二人はミネルバに収容された。  医務室のベッドの上でぼんやりとシンは目を開ける。隣にはいつものようにステラ。  ここはミネルバだ。どうして医務室に俺が、だって俺は。  爆発の中、誰かに抱えられていた。そいつの呟きが、大切なものを守れないと吐き捨てるのが聞こえる。そいつが逃げる俺達の前に現れて戦闘になり―――。  今にもあの瞬間が蘇る。背中を貫き、崩れ落ちる身体。絶叫。  夢!?  シンは飛び起きた。 「シン、気が付いた?」  戸口から聞こえ...
  • Men of Destiny 30
    思い出す事 「ステラ。アスランさんったらひどいんだぜ・・・」  墜落したルソーから使える備品がないかメカニック達が総出で出払っている頃、シンはルナ達との会話も程ほどに廊下を歩いていた。あれからアスランとは会話をしていない。彼もルソーに行ってしまったからで、シンはアスランにああ言われたが、ミネルバやルソーの乗員に活躍を労われて休みを与えられた。  艦の説明を買って出ても良かったがそんな気分にはなれず、ベッドでゴロゴロするのにも飽きてミネルバ内をうろうろする。シンの周りを飛び跳ねるハロ達が、毎度のようにドアロックを解除する。  薄暗い通路と鉄格子。 「知り合いの部隊、撤退しましたよ。俺も追撃しませんでしたから無事に基地に辿り着けたんじゃないですか」  俺は頑張ったのに。  シンはまず最初にステラに話したのだ。しかし、眠りつづける相手に話しても、すぐに虚しさが込みだして...
  • Men of Destiny 35
    涙を忘れたメモリー  今度こそ、倒す。  俺達コーディネーターを平和という檻で苦しめる、裏切り者。  何より、4年前に故郷で家族を焼いた仇。  シンはスロットルを全開にして急上昇し、HUDに映る機影を追った。 「フリーダムという二つ名、アーサーは何処から来たか知っている?」 「えっ、確か前大戦時に彼が乗っていたインターセプターがその名前だったからだと」  ミネルバの前面モニタに映る機影。  戦闘機と同じ大きさかやや小ぶりだが、特徴のある翼と全く違う挙動。コーディネーターの中でも特に能力の優れた者しか扱えない特別な戦闘機。 「フリーダムは、白い機体に青い複数翼を持ち、一度に7つのレーザービームを発射する事ができたそうよ」  味方のはずの地球軍がいる空域で、所かまわず七色のレーザーを放つ白い機体。早すぎて一瞬でカメラから消え、気が付けば別のモニタで爆発が起こるそ...
  • Men of Destiny 39
    走りつづけたい  言うまでもなく宇宙での戦闘は全方位戦闘である。360度、上下も左右もない。機体名はデスティニー。地球の工廠で組み立てられた試作機の一つ。地上で軽く調整したデスティニーは、再度ミネルバ内で宇宙戦闘用に調整し直されたばかりだが、肝心のシン自身が宇宙に関しては初陣だった。  抵抗がないってことはこういうことか!  飛び続ける、速度を相対的に計れる目標物のない世界。  シールドされたコックピットでは外の様子は黒一色。  ただ、戦うために用意された無限の戦場、それが宇宙だった。こんな所をコーディネーターは自分達の生きる場所と定め、生活を築いていたのだ。  感慨に浸る暇もなく、アラームが鳴り響く。HUDに点滅するミサイル接近の文字。 「中立のステーションじゃなかったのかよっ!」  ステーションの管理宙域を出る前の戦闘。こんなのはルール違反だと地球軍の戦艦に抗議した...
  • Men of Destiny 07
    それが定めでも  戦後の混乱期、物資の運搬は鉄道輸送が主役だった。大陸の都市と都市を結ぶ鉄道、対戦中に登場した航空機は今だ数少なく、食糧や燃料のほとんどを鉄道に頼っていた。それはほとんどの都市で同じで、今回のレジスタンスのターゲットも都市間を結ぶ輸送車両だった。  あれからシンはことある事に作戦に協力し、今回で5回目。手にした報酬でシンのねぐらも少しずつ生活必需品が増えた。タイヤベッドも布の下にマットレスを引くことができたのが大きい。そのねぐらから指定の時間に間に合うように、ずるずると眠い体を引きずって這い出る。  夜10時。  待ち合わせは隣町の駅舎裏に午前2時だから、ちょっと急がないと間に合わない時間だ。案の定、到着は最後だった。 「遅いぞ、シン」  今日の襲撃のリーダーであるレイに早速注意される。ルナマリアは口数が多いが、レイは少ないかわりに鋭くてシンが口を出...
  • Men of Destiny 28
    その激しさが  朝は早くて、それでも数分は毛布の中でもぞもぞと葛藤している。起き掛けの少し長めの彼の頭はボサボサで自分といい勝負。歩く速さも早くて一定のリズムが途切れなく廊下に響く。今はすっかり落ち着いた髪が微かに揺れている。 「シン。どこか変か?」 「いっ。あっ別にどこも・・・」  いつもと同じピンと背筋を伸ばした姿。今まで意識したことはなかったけれど、初めて会った時からそうだったのだろう。医務室の前で一旦立ち止まり、スライドするドアから滑り込むその動きも、眠っているステラの顔色を見つめ、ドクターに悲しそうに容態を聞く姿も。  シンには医務室で寝ているステラに、額の冷却シートを変えてやることしかできることがなかった。原因不明の高熱がもう2日も続き、暇を見つけてはアスランと様子を見に行くが辛そうな顔を見るとこっちまで辛くなる。ほんわかしているステラが辛いはずなのにいつ...
  • Men of Destiny 22
    囁きが聞こえる  新たに施工したらしい壁がそっくり吹き飛んで、かび臭い場所で3人は立ち上がった。一番最後に気がついたらしく、シンは負けん気を刺激された。オレンジ頭の彼はともかく、アレックスにも遅れを取ったのだ。  現状を確認するために周囲を見回せば、通路が前方に伸びている。 「アンタがアレックス?」 「ええ、はい。あっ、と、彼はシン」  せっかくやる気になっているのに、二人はぎこちない自己紹介をしていた。ついでのようにシンのことを紹介するアレックス。 「ふ~ん。俺はハイネ。よろしく」  さすがに握手を交わすことはなかったが、どこか蚊帳の外に置かれた気分で、シンは二人を置いて通路に足を踏み出した。アレックスが慌てて『どこに行くんだ』と言っているがこの際お構いなしだ。 「どうせなら少し探検していきましょうよ。階段落ちちゃったんだから、上に戻れないし」 「確かに、そうだな」...
  • Men of Destiny 25
    血の滲む腕  それでも、このプラント全体を覆う揺れは砲撃が原因ではなかった。風穴が開いたことでバランスが崩れたのは確かだろうが、何かが違うとシンは思う。 「急げ!」  ハイネが叫び、警備兵を蹴散らして進む。アレックスはと言うと、ひたすら攻撃を避けていた。それはそれで驚愕モノの動きだが、シンはなぜか腹が立った。  この人は、力があるのに。  俺たちは指示されたポイントまで仲間を守っていかなきゃならないのに。 「アンタは何をやってんです! 仕留めなきゃまた」 「足を止めるな、シン! 的になるぞ」  ハイネに怒鳴られてしまった。そう、おしゃべりする余裕もない程、俺たちはピンチなのだ。いよいよ足元がやばくなり、プラント内部のあちこちに亀裂が走り出す。あの懐かしかった搬出セクションも穴倉も大きく縦に裂けていく。目の前の通路が盛大な音を立てて亀裂に陥没していく。 「飛べっ!」 ...
  • Men of Destiny 13
    星空を覆い尽くす時 「じゃあ、ステラはこの部屋を使って」 と、シンは自分の家でもないのに家主気取りでステラを空き部屋に案内する。アレックスと二人で急遽片付けた部屋で、毛布や布団はアレックスとシンの分を提供した。おかげで二人はリビングで寝る羽目になるのだが。  掃除をしながら、シンはアレックスに色々と入れ知恵されていた。 『彼女、一人か? 身分を証明するものとか何も持っていないみたいだし、俺のことはまだ警戒しているみたいだから、お前、色々聞き出しとけよ』  意味が分からない。 『ずっとここに住むわけにいかないだろ。お前は居候で、彼女は家族が探しているかも知れないんだし』 『そっか』  シンはコーディネータで、今はレジスタンスの仲間を助け出すチャンスを待っている状態。時が来ればシンはここを出て行ってしまう。アレックスが彼女を放り出すとは思えないが、それに縋る事はでき...
  • Men of Destiny 03
    寂しい笑顔  シンの朝は早い。  今週分と来週分とで倍稼がなくてはいけない今週は、朝寝坊などしている暇はなかった。ねぐらから這い出て、爆ぜた水道管から漏れる水で顔を洗う。頭にかけたゴーグルをつければ、視界が一気に暗くなってクリアになる。これを忘れたせいで先週は散々な目に会ったのだ。  戦災孤児にできる仕事など限りがある。こそ泥まがいの連中の手伝いや、張り込みの見張り役。それがいつも情報をくれるおっさんから久々に金になりそうな話を聞き出した。一日二日水だけを口にしてもコーディネータのシンは生きていける。それでも、三日も食わずを続けるのには限界があったから、まともなものを買う金が必要だった。  その仕事とは運び屋。  中身は武器か、金塊か。それとも死体か。8人の手誰に混じったシンは少年に見えるからにひどく場違いに見える。チームのメンバーは青年から壮年まで幅広い世代の男達で...
  • Men of Destiny 36
    赤を映す空  ジブラルタルは前大戦時からプラント側が保有する宇宙港で、戦争が終わった4年経ってもそれは変わっていない。前大戦時に壊滅的な打撃を受けた事、コーディネーターの武力保有の禁止、プラントコロニー崩壊で事実上の国体解体に安堵した放置されてきた結果だった。  こうした幸運が重なって指揮命令系統がずたずたでも、ジブラルタルは生き残った。民間宇宙港として細々と運営される傍ら、秘密裏に改修・増強工事を繰り返し、プラント独立宣言時にコーディネーターの宇宙への玄関口として再び姿を現したのである。  何かと話題となっていたミネルバが砲火を潜り抜けて到着し、ジブラルタルは沸き返っていた。加えて、直前の戦闘でアークエンジェル搭載機を一機落としたと報じられ、その映像がすぐさま世界を駆け巡った。 「こんなもの、いつの間に」 「空中管制機でしょ?」  一躍時の人になったシン達は、ミネ...
  • Men of Destiny 20
    朽ち果てた夢  カチン。  シンは自分では見ることの出来ない首の囚人錠に手をやった。冷たい金属の感触。  質素な生成り色の囚人服。  簡単な身体検査や質問の後に入った部屋でプラントに送られたコーディネーターは全員に首輪を付けられた。  四方八方海だっつーのに。  武装した機械化兵に見張られる中、シン達はいよいよプラントの中へ進むことになった。  今回送られた中では一番の最年少だった。すれ違う看守や囚人達が必ず一瞥くれていく。プラントは広く、中は多層構造になっていて、囚人の能力に応じてプラントのどの階層に収監されるか決まる。肉体労働、頭脳労働、それも歳若いシンがいっぱしにこなせるものではなく、残されたものは強靭なコーディネーターの身体を使った被検体として使い道のみ。  アレックスですらここではひよっこ扱いなのか、官吏がシンや後に続くアレックスを見てニヤニヤ笑うのが...
  • Men of Destiny 26
    ただの幻  海面に浮くプラントの破片の一つにシン達はいた。リビングを二つ広げたくらいの大きさのそこも、端から覗き込めば飛沫がかかる。ブロックの内部に相当空気を含んでいるからか沈む様子はなかった。  シンが意識を取り戻した時、上空を飛ぶ救難ヘリや救助艇は去ってしまった後だった。アレックス(いまや本名ではない)が腰を落ち着けて、小さくなる艦艇を見つめていた。その膝を枕にして眠る物体にシンは目を疑う。 「ステラッ!?」  残骸と共に大海を漂流するプラントの外壁の上の住人は3人。シンとアレックスと、ステラ。太陽は天頂に差し掛かったところで、シンはアレックスの前にできた影で眠るステラに詰め寄ることができずに、その異様な光景をただ凝視する。 「なんでコンナコトになってんですか。ステラが何で・・・」 「寝すぎて忘れてしまったのか? 一緒に崩壊するプラントから逃げただろう」  背...
  • Men of Destiny 46
    悲しみを燃やし尽くす刻 「シンとステラはっ!?」  ルナマリアとレイからは補給の為に帰還すると通信があった。しかし、シンとステラから連絡がない、マーカーも拾えずミネルバからは完全にロスト。 「宙域が荒れてとても無理ですっ」 「いいから、やってっ! シン達を探して早く。発射地点、割り出せたのっ?」  ミネルバのブリッジで艦長のタリアが叫んでいた。最前列の爆撃に参加せず、僅かに掠めただけで難を逃れたのが、とにかく突然も突然だった。 「友軍の被害状況分かりませんっ!」  生き残った艦同士で必死の通信が飛び交うが、戦場は殆ど恐慌状態に陥っている。ザフト軍の指揮をとっていた旗艦は後方だから無事だったが、戦列を構成していた宇宙戦艦が半分以上はやられてしまった。 「地球軍も殆ど残っていない・・・」  アーサーが及び腰でコンソールにしがみ付いて、誘爆が続く月面基地を見ている。皆が忙...
  • Men of Destiny 18
    傷ついた痛み  砲弾がまっすぐ伸びてくる。 「げっ、まじかよ!」  辛うじて上空を通り過ぎて直撃は避けたものの、一向にスピードを落とさない飛行船はもろ突撃体制だった。  まさか。 「突っ込んでくるっ!?」  ヨウラン、ヴィーノ救出どころではなかった。既に滑走路を離れている情況では、自分の生命が危ないではないか。炎上していたカーゴのトラックのことも気になるしシンの頭は軽いパニック症状になっていた。  強い揺れと、急激なダウンフォースに床を転がった。すっぽり挟まった柱とボックスの間で、クルー達の叫び声が初めて耳に止まる。 『反コーディネーター組織だってっ!?』 『消火急げ!!』  煙が充満して息苦しい。風が一方方向に流れるからどこか気密が破られたのかもしれなかった。信じられないことに銃声がした。 「むちゃくちゃだな!」  振動は徐々に激しくなり、単発ではあるが小さな...
  • Men of Destiny 43
    青く輝く炎  2本のライトセーバーが交わる中心にシンは赤い閃光を突き立てる。力押しで全体重を傾けた。 「いい加減にっ」  話したおかげで口から力が抜けるようにシンのバランスが崩れたが、お構いなしにライトセーバを振り上げる。青の光がシンに迫る。 「思い出せよっ!?」  シンのライトセーバーより、彼のライトセーバーより早く、シンの左手が炸裂した。  パイロットスーツのヘルメットを思いっきり殴る。 「アスランじゃないってんなら、顔を見せろよっ」  その手で胸倉を掴み、剣を放り投げた右手で強引にヘルメットを外しにかける。 「何をっ!?」  シンの右手を青いライトセーバーが狙うが、掠っただけで、二人が二人とも体勢を崩した。勢いでシンの手から地球軍のヘルメットがすっぽ抜ける。  あんなに見慣れた藍色の髪じゃない、灰色が無重力に舞った。  間髪おかずにレベル1退避勧告。狭いス...
  • Men of Destiny 02
    やさしさはいらない 「どうした。入らないのか?」  ドアの向こうに消えた男は事も無げに言うが、シンは正直戸惑っていた。露店が立ち並ぶ道をいくつも過ぎて、少し明かりが減った寂れた一角。戦前の建物が辛うじて残ってはいたが、窓ガラスはひび割れ明かりも弱い。  明らかに不法滞在。  戦後4年。まだまだこのような光景はどこにでもある。しかし、自分がそこに飛び込むとなると話は別だ。テロや犯罪の温床、レジスタンスの溜まり場などと揶揄されて、いつも事件が起これば真っ先に槍玉に挙げられるのはこういった地区である。自分の事は棚に上げて、シンは中を伺って肝心の人物の気配を探る。  やばい奴じゃ、ないよな。そんな人物には見えないけど、只者じゃない。深く係わり合いにならないほうがいいに決まっている。  彼はコーディネータのシンの動きを止めたのだ。肩にかけていた鞄を奥の部屋に置いてきた彼は身軽に...
  • Men of Destiny 09
    勝利者などいない  監視官は屋上に留まって、今回の一網打尽作戦の報告を聞いていた。 「あと1時間でレジスタンス組織アジトへの突入準備が整います、現場へ行かれますか? ヤマト殿」 「遠慮するよ。それより、あのキーホルダー知らないかな」  殿上人の監視官と会話がかみ合わないのはいつものとおりと、報告をした下士官は、首をかしげた。アークエンジェルに乗る監視官はその中でも特別、話が合わないと聞こえた、スーパーコーディネーター。しかし、次の一声は、また一層脈絡のない、とんでもない命令だった。 「厳戒令敷くよ」  過去の情景に気を取られていた一瞬に、相当落下していた。  あまりの迂闊さに、地表を感じてワイヤーを飛ばす。振り子のように隣のビルの窓ガラスに突っ込んだ。ガラスが突き刺さる衝撃と床を転がる衝撃がない交ぜになって、思わず呻き声が出る。  こんな所でプラント送りなんて冗...
  • Men of Destiny 38
    もう一度宇宙へ  白煙が充満する中、天井を突き破って深紅の機体が姿を現した。  蒼天へと一気に駆け上がるミネルバを追って、矢のように突き進む機体が赤い燐光を引いて迫る。 「4時の方角より急速接近する機影っ」   「バカなっ」  ミネルバのスターボートに移される赤い光点を見て、クルーは驚愕する。大気圏を離脱しようという戦艦に追いつく機体があるわけがない。その機影は見えずとも、シンは気密ハッチの中で右腕を抱えて全身に掛かるGだけではない、迫るプレッシャーに耐える。  来るっ。 「被照準! レーザービーム来ますっ」  メイリンの悲鳴と同時に船体のすぐ脇を通り過ぎるレーザー光線。  ブリッジが言いようのない不安で包まれた時、高度が50キロを超えた。ブリッジから覗く空は随分と濃く、注意深く目を凝らせば星が見えるかもしれない。成層圏を越えたところで、ミネルバの船体を一周旋回して、...
  • Men of Destiny 34
    愛が欲しい  どこまでやればアンタに追いつける?  パトライトが回ってエレベーターが降りてくる。  熱気を孕んだエンジンの回転がまだ止まっていない戦闘機から、パイロットが飛び降りた。 「シンの奴、どうしたんだ? 自分から整備手伝うって」  待機していたメカニックの前を走り去る少年。  たった今、ルナマリアと二人で地球軍を蹴散らしたばかりのシンが整備服に着替えて戦闘機の下に潜り込んでいる。オイルパイプの交換、フラップやエルロンの調整などは全部ここに来て覚えた事だ。  できる時やっておかないと後で泣きを見るぞ?  主任やアスランにスパナで叩かれながら、油塗れになってヨウランやヴィーノと軽口を叩き合った。メカニック達は誰も何も言わないけれど、ベテランメカニックに引けを取らない腕を持っていたアスランがいなくなって大変に違いないのだ。 「お前さ、どうしちゃったわけ?」 ...
  • Men of Destiny 47
    交差する命 「くそっ、思い出せねえ。確かに俺は知っているハズだ」  エクステンデット達には連続稼働時間が定められている。戦闘時に最大限の力を発揮するためのそれは、調整ベットと呼ばれるところでの睡眠だ。ヘブンズベースからこちら連戦だったスティングを含めエクステンデット達に調整と称した睡眠が言い渡される。 「今、奴らがせめてきたらどうする?」  どこにも身体に不調はないというのに、レクイエムがコロニーを襲い、相手の出方を見るのと、戦力を整えるためにできた僅かな時間に、無理にでも行おうとする技術スタッフ達。配属されたばかりの新人ならいざ知らず、そんなやわじゃないという自負もある。  寝やすい格好に着替えて、調整ベットのあるフロアに向かうスティングの脳裏を掠める。戦場で感じたあれは何なのか。  レクイエムに横付けされた艦の調整ベッドは3つ。奥に一回り大きいベッドがあったが電源が入っ...
  • Men of Destiny 24
    選ばれし者  隔離セクションでの警報を受けて、警備兵や機械化兵が上部セクションに集まる。攪乱して闘争する彼らを追うように各セクションから召集される。それらは全てこの反乱をカモフラージュする囮だったのだ。偶然にしては謀ったようなタイミング。  ただし、無事逃げられればの話。  それも、こうして搬出セクションまで辿り着いてしまった。  シンはレイを見る。 「すまなかったな。俺一人ではギルを守りきる自信がなかった」 「大したことしてないよ、俺」  どちらかと言えば自分の身を守るため。それでも、こんな大役を任されるとは思っても見なかったと、少ない出会いの中でここまで信じてくれたのが嬉しかった。自分は仲間ではないと我を張っていたのに。 「さっ、急ごう」  ギルバードが先を促す。銃撃戦の間を縫って3人は、反乱の流れとは逆に最下層へと降りる。 コーディネーター達に囲まれるギルバー...
  • Men of Destiny 31
    孤独な戦い  青く輝く海の上に落ちる戦艦の影。艦橋には太陽の光を反射してキラキラと輝く波を見つめる瞳があった。アークエンジェル艦長のマリューである。彼女が先に陣取っていた姿を見つけて足を止める。 「キラ君?」  手すりに手をかけて、遠い海と空の交わる果てを見ている。先のプラント崩壊、独立宣言からアークエンジェルは休みなく戦場を飛び回っていた。 「マリューさん。どうして僕達は」  アークエンジェルは平和維持機構所属で、地球軍所属ではない。しかし、情勢はそれを許さなかった。集結するレジスタンス、今やプラントによって組織化されたコーディネーターの地上派遣軍と独立を許さない地球軍防衛部隊との衝突。平和を乱すのはどちらかと問われて、平和維持機構が選んだのはコーディネーターだけれど、機構の理事国の思惑に平和の歌姫は屈せず、独立した命令系統を維持することを死守した。 「戦い続けるのだろう...
  • Men of Destiny 51
    打ち響く鼓動  透過パネルに映し出される宇宙を切り裂くレーザービームと爆発。 「あれは君の仕業かね」  正面のパネルには、メサイアを取り囲む地球軍の背後に迫る炎を上げる地球軍の要塞。  メサイアの中央指令所に動く人影の間に沈黙が起こる。それが答えだった。 「プラントにあった遺物を運び込んだのは貴方ですか、議長?」 「なるほど。要塞ごと、メサイアもろともSEEDの記録を消し去るつもりだね」 「俺のしたことは許されることじゃない。ですが、大人しく、殺られてやる程できた人間じゃないんです」  シンはアスランが消えた扉をライトセーバーでこじ開けて、左右も分からない通路を進んだ。動力が生きているおかげで通常重力が効いている。勘を頼りに壁を蹴り、床を蹴る。  気配を探るが捕まえることができない。  くそっ、どっちだ!?  通路は予備電源に切り替わって、赤い非常灯が点...
  • Men of Destiny 06
    明日を夢見るもの  特別な賛辞はなくても、出迎えてくれたレジスタンスのメンバーが自分を待っていた事が嬉しかった。しかし、分け前を受け取って「ハイ終り」ではなく、強奪した物品を売りさばくという二次作業が待っていた。  持ち運び用の箱に詰め替えて、各自がいつもの店へを持っていく手はずになっているのか、シンにも箱が一つ。ルナマリアについて、日用雑貨を売りに行くことになった。  東ブロックには様々な人種が居る。  コーディネータという新種を抜きにしても、様々な人種がいた。  戦争で国という形が崩壊し、移民で街が溢れ返っていた、と言うのはもう昔の話。3年も4年もすれば大抵は故国へ還る。だから、ここに居る彼らはシンと同じ還る場所を無くした人たち。所謂、難民。  彼らにとってコーディネータは敵の敵なのか、それともやはり憎悪の対象か。感情の読み取れない表情ばかりでシンは緊張する。昼...
  • Men of Destiny 11
    見つめる炎 「厳戒令が解けるまではここにいていいから」  一緒に食卓を囲む青年の好意で、シンはその部屋の住人になった。  最低の地区と言われた東ブロックが片付いた今、アレックスの部屋がある地区もじきにコーディネーター狩りの対象になるだろう。それでも、ねぐらに帰るよりは数倍安全だった。 「前も聞いたけど、どうして俺を助けてくれるんだ?」 「放っておけない。じゃ駄目か?」  明かりが漏れない特殊なガラスにカーテン。おそらく熱も遮断しているに違いない、恐ろしく用意周到なアパート。  彼はコーディネーターで、就労証明書を持っている。コーディネータがそれを得るのは大変難しいことをシンは知っていた。  今こうして夕食を取っているが、何者か分からない分、今更のようにシンは警戒する。相手もそれが分かるのか、変に馴れ馴れしく接したりはしない。おきっぱなしになっている鞄から小さなケ...
  • Men of Destiny 27
    ドリーミンデイ 「艦長のタリア・グラディスよ。こっちは一応、副長のアーサー」 「シンといいます。シン・アスカ」 「アレックスです」  水面ギリギリを飛ぶこの船の名はミネルバ。外面はとんでもなくボロボロだったが、中はなかなかどうして意外ときれいで設備も整っていた。アークエンジェルとはその大きさは比べるべくもないが、これならたった1隻でも海を渡ることも可能だろう。  3人はミネルバに収容されて、今までのいきさつを説明した。海上の監獄プラントが崩壊した事、ハイネがもう帰らぬ人である事もアスランが説明する。 「俺たちはプラントでハイネと知り合って、このエマージェンシーを渡されました」  簡単な自己紹介で、なおもアスランがアレックスを名乗ろうとするから、シンはこそっと『往生際が悪いですよ、アスランさん』と吐き捨てる。 「アスランって・・・」  それを耳ざとく捕らえたのが身を乗り...
  • Men of Destiny 42
    砕ける星空  無音の爆発。  目を焼くスパーク。  機体を掠める光線。  戦艦から迸るレーザービームが交差する。  味方の砲撃を避けるように、相手の攻撃は避けてトリコロールの機体が戦場を駆け抜ける。 「こんなの、切りないぜっ!」  ミサイルを温存したまま、シンは機銃を武器に踊る。  最新鋭機体の新兵装を使う余裕もないまま、敵機に取り囲まれていた。  ついに激突した両軍。HUD上で敵味方識別コードが入り混じり、照準など取らなくても撃てば何かに当たる。ヘブンズベースを守る地球軍の防衛軍は一個軍団は下らない。迫るプラント側も負けてはいない。後方からの増援部隊が合流しようとしていた。  引っ切り無しになるアラームと、味方の通信が妨害の最中うるさく鳴る。 『この宙域はオーサー隊が引き受けた。ミネルバ隊は左翼の応援にっ』  若い男の声がシンの機体に下から迫り、短く...
  • Men of Destiny 19
    それが定めなら  手に届くところに何もない恐怖と、何にも捕らわれない解放感はすぐに真綿に包まれたように掻き消えた。風を孕んでバタバタと空中を滑ったのは一瞬で、痛いほど右手を捕まれていた。  翼の付け根を二人して転がって、急に止まる。  捕まれた右手で無意識のうちに掴み返す。 「放すなよ」 「そんなこと言ったって!」  風を切る音がすごくて、お互いに何を言っているのかを聞き取るのがやっと。  人一人を支えられるほど体格のいい人じゃない。どちらかと言えば痩せている部類に入るアレックスが、フラップの段差に片腕を引っ掛け、シンを掴んで腕一本で支えていた。彼の黒い上着がはためいている。  夕日に照らされた輸送機の2番機が下に見え、その下に見えるのは糸のように細い街道に区切られた畑だった。ルナ達の飛行艇を探したが、こう空域が荒れていれば滞空するのは無理だろう。  呼びかけてみたが...
  • Men of Destiny 52
    運命の男達  議長が微笑みながら言う。  この人は、いつもこんな風に笑っていたか?  死んでくれと笑いながら、歩み寄る。  俺がシードって奴を持っているから、それは危険な力だから、必要ないって。 「SEEDを持って生まれた時から、こうなる運命だったのだ、シン」  アスランさんはこの事を知っていて、議長を倒そうとした。  俺やフリーダムの、過去、親友と呼び合ったあいつを助けるために、誰もシードの秘密に触れることのないように、倒すために、また破壊するために力を振るった。  殺すだけが全てじゃないと言ったあの人でさえ、議長の言うとおり、話し合いよりも戦うことを選んだ。  全てはシードのせい。  シードは敵を倒し、壊すための力。  これからもずっと、俺は戦い続けるのか?  馬鹿だな、俺。  さっきみんなに言われたばかりなのに。  アスランやフリーダムに乗っ...
  • Men of Destiny 05
    チャンスが欲しい  二人の間を夜の大気を伝わるサイレンが流れる。 「まさかシン。あそこから」  サーチライトが夜空を照らす。厳重に警備された物資の貯蔵庫がシンの背後の闇夜に浮かび上がる。得体の知れない彼がシンとそれをどう結び付けたのかは分からない。目を細めたのは一瞬。 「シンも仕事の帰りか?」 何事もなかったように声を掛ける。硬い靴音が鳴り響いて、何事もなくと言うわけには行かなくなった。非常事態を受けて街に広がった官警がこの商店街にも入り込んできたようだ。シンは手にしたライトセイバーを後の腰に挟む。 「何をしている!」  制帽の徽章は憲兵のもので。 「灯火管制中は外出禁止令が出ていることを知らんのか」 「すいません。家に帰る途中だったんです。でもあの騒ぎで」  ぱっと答えたのはアレックスだった。ひたすら低姿勢で申し訳ないと言う。 「こいつ駄目なんです...
  • Men of Destiny 49
    刹那の中に  地球軍衛星軌道艦隊。  左前方にはコーディネーター、ザフト軍の要塞メサイアが太陽光を受けて一際大きな輝きを放ち、コロニーが同じように漆黒の宇宙に浮かび上がっている。右手には戦火の炎と火を噴く自軍の要塞、ダイダロス。 「彼らも好きだねえ。所詮は同じ穴のムジナ、か」 「大佐、インフィニティが来ます。被弾しているようです」 「奴には被弾くらいどうって事ないだろ。月軌道艦隊を潰せと伝えろ」  居並ぶ戦艦のブリッジで呟く仮面をつけた男、ネオ。  移動を止めないメサイアと両脇の艦隊はどう見ても臨戦体制。 「こちらも戦闘は避けられない、か。エグザス、出るぞ」  ガタガタと揺れる計器は既に振り切っていて、ひたすら追いかけるシンの前に地球軍の衛星軌道艦隊が立ちはだかる。深紅の機体はその光点の集団を抜けてメサイアに向かっている。 「たった一機で何をしようというん...
  • Men of Destiny 16
    全てが崩れ去るとしても 『隣の倉庫屋、騒がしいな。こそ泥でも忍び込んだか?』 『コーディじゃあるまいし、こっちに影響はないだろうさ』  明かりのないビルと倉庫街を隔てる金網。詰め所はビル側の警備員の建物のようだ。 『でもお忍びのお偉方は気にするんじゃないか? 情況確認来たぜ』  話から察するに明かりのないビルには大人の遊び場があるらしい。 『そりゃおめえ、監視官殿が来ているからな。お膝元じゃ羽根も伸ばせないってこったろ』 『明後日までの辛抱さ』 『ほとんど最初の突入でコーディネーターの奴らとっ捕まえてんだろ? えらく長居してるよなあ』  シンはルナを見た。険しい顔で会話に集中している。 『まあ、終戦の浮沈艦アークエンジェルの考えるこったあ、俺達下っ端が分かるわけねえか』 『あいつらプラントにぶち込んでくれりゃあ、なんでもいいぜ』  まさか飛び出したりしないよなと...
  • Men of Destiny 29
    I don t want. 「シン、君はもう一人で飛べるから、もしかしたら俺が教えられることなんてないのかも知れない」  アスランが視線を落とす。消し炭があちこち黒く影を落とし、シンとアスランの間には残骸の細かい破線が足元に散らばっていた。時間にすれば僅か数秒置いて、またアスランと視線が交差する。 「それでも、君が何かを守りたいと願うなら、俺の力をやろう」  そう言ってシンの目の前で、彼が右腕を差し出した。  世界に発信されたコーディネーター独立宣言。しかも、宇宙空間からかつてのコロニー・プラントの残骸から届けられたその声明は4年間辛うじて保たれていた平和を震撼させた。  すぐに主要国が集って対策が話し合われ、地球軍主体の防衛軍が創設された。宣戦布告されたわけでもないのに、コーディネーター側が発表した独立宣言に対する行動としては過剰な反応だった。また、同時に平和秩序...
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