アルキオーネ&ウルザ

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アルキオーネ&ウルザ - (2009/08/31 (月) 03:58:36) のソース

***「あぁぁああああーーーーーっっ!!私の可愛いうーーーーーたぁあああああああんっ!!」


――アルキオーネ

長身を白いフード付きの外套ですっぽりと覆った男。 
その髪の色はピンク、加えて左耳のピアスには黄金の鍵がぶらさがっており、異質な雰囲気を放っている。 
各地を歩く旅人でもあった。 

自らが能力を用いて作成した自立行動する人形「ウルザ」と共に行動している。 
ウルザは彼の「家族」らしく、異常なほど溺愛しており、しばしばそのことで暴走してしまう。 
暴走時の彼はウルザを「うーたん」と呼び、一目もはばからず狂喜乱舞し手が付けられない。 
また口調も変化し色々とぶっ飛んだことを口走るが、その度にウルザに蹴られて止められている。 
なおウルザ絡みに留まらず、気が動転した際もしばしば暴走気味になるらしい。 
暴走したら↑の台詞みたいになる。


――ウルザ<機能停止――死亡>

アルキオーネと行動を共にする黒髪の少女型の人形。 
かなり精巧に作られており、良く見てもなかなか人形だとは気付けない。 
流石に人形なので喋ることはできないらしいが、その分感情表現が非常に豊かである。 
[[神谷玲奈]]のスサノオには、「人形のほうが人間らしいくらい」と評された。 
[[アーチャー]]との決戦の最中、アルキオーネを護って死亡する。 
だが……? 


――能力

「術式」を人形に書き込み、操ることができる。
ありとあらゆる「人形」を、「術式」を書き込むことで意のままに操ることができる。 
術式の書き方はペンで書く、刃で彫る、或いは血で描くなど、指定されていない。 
ウルザも彼がこの能力を以て操っているが、 
彼女には特別な術式が施してあるらしく、彼の操作下に無く独立している。 


――終焉

恩が一転、因縁となった哀しき宿命――アーチャーとの激戦の末、ウルザはその機能を停止――死亡。 
その後、アルキオーネはアーチャーに決闘を挑むが、生き長らえる。 
自らの生きる理由を失い思い悩むが、アーチャーに諭され、 
天国の『ウルザ』(後述)に笑ってもらうため生きるようになり、去っていった。 

その数ヵ月後、どこか遠い遠い国に、一人の人形師が催す小さな人形劇があったという。 
無償で開かれるそれは、数々の子供たちに笑顔を振り撒いた。 
そして、その人形師の傍らでは、いつでも小さな少女の人形が笑っていたという――。 

こうして、人形使いアルキオーネと、その人形ウルザの物語は、幕を閉じた。――――


***「私は、やはり……あの子の「笑顔」のために生きよう……。
***……空の果てで……笑ってくれると信じて……そのために、生きよう……」


――過去(注意:かなり長いです)

アルキオーネはとある貴族の出身である。 
両親の仲も良く、「人形を操る」能力を使って見世物屋を開いたりして、幸せに暮らしていた。 
彼には一人の妹がいた。……名を「ウルザ」と言う。 
ウルザは幼い時に病を患い、その影響で外が出ることが叶わなくなった。 
元気で活発だったかつての妹の姿は、日に日にベッドの上で霞んでいった。 
アルキオーネはそんな妹を気にかけ、よく話し相手になったりと「良い兄」であった。 
しかし彼も四六時中妹の傍らに居れるわけではない。そこで彼は思いつく。 
「人間と変わらないほど精巧な人形を作り、妹の友人としようではないか」と。 


彼は自らの全力と長い月日を以て、一体の可愛らしい少女型の人形を作り上げた。 
流石に人形という構造上喋ることは叶わなかったが、その分人間よりも感情を豊かに。 
気が遠くなるほど細かな術式を、決して消えないように深く深く。 
そしてそれが齎す人形の一挙一動が、妹の笑顔になるようにと、延々と刻み込んで。 
遂に完成した人形は、人と見紛うほど『人形』であった。 


妹に人形をお披露目する日。 
妹に幸せと笑顔をプレゼントする日が、彼が絶望と慟哭をプレゼントされる日となった。 


その日、彼等が住む屋敷は何者かに襲撃され、火を放たれる。 
今となっては襲撃者が誰だったのか?何故襲撃されたのか?は彼にとって然程重要ではない。 
大事なことは、その不幸な事件によって彼は深淵なる暗黒への道を歩み始めたということだ。 


襲撃により父と母は殺害される。 
業火の中、助けを求める妹の叫びをアルキオーネは聞いた。 
炎を掻い潜って彼女の病室に辿り着いた時、妹の目の前には黒い影があった。 


血走った眼光に、握られた冷たい刃。炎よりも真っ赤な血が滴っていた。 
アルキオーネはそれを襲撃者だと認識するより先に飛び出し、彼を突き飛ばし妹を護らんとした。 
しかし『運命の女神』は非情であった。すぐさまアルキオーネの背中に激痛と衝撃が駆け抜け、 
次の瞬間彼は部屋の片隅に吹っ飛んでいた。 
男は炎を操る能力者だった。後に背中の火傷から、爆発により吹っ飛ばされたのだとアルキオーネは知る。 
アルキオーネはそれでも妹を救おうとした。痛みを堪え、襲撃者の方に向き直った。 
妹は涙と恐怖に蹂躙された顔と、震える手をアルキオーネに向けていた。 


――結論から先に言っておこう。妹はこの後、無残に爆裂死する。 
アルキオーネが取るべき行動は何だったのか?きっと正しい答えは無いのだろう。 
しかし事実として確かに存在しているのは、彼が襲撃者に対して『恐怖』を抱いたこと。 
その『恐怖』が彼の足を竦み上がらせ、立つことを許さなかった。 
結果として彼は妹の手に自らの手を伸ばすことしか出来なかった。 
そして、彼が妹の今にも崩れてしまいそうな手を握るより先に、彼女の身体は崩れて消えた。 


彼が取るべき行動は『恐怖』を押しのけ襲撃者と戦うことだったのだろうか? 
それとも怯える妹を『安心』させることだったのだろうか? 
答えは永遠に解らない。ただ、アルキオーネは後者を選んだことで妹を失った。 
そして彼は、『自らが恐怖に屈したため妹は死んだ』と強く自分を責めることになる。 


――彼は慟哭し怒り狂った。そして、惨劇の舞台となった部屋に持ち込んでいたあの『人形』を――。 
すぐさま抱き寄せると、その首筋に自らの血で以て術式を刻んだ。 
彼の知らない術式だった。彼の「殺してやるという本能」が描かせたそれは、『暴走術式』と呼ぶのが最も相応しい。 


『人形』は『暴走術式』によって最大限に力を引き出された。 
そして爆炎とナイフをその身に受けつつも、その爪で襲撃者を引き裂き亡き者とした。 
しかし、悪夢は連鎖する。 


人形は暴走していた。アルキオーネの『殺戮欲求』を最大限に表現していた。 
人形はアルキオーネに牙をむく。彼は人形の攻撃を受け負傷し、死を覚悟した。 
――だが、ここで『運命』というべきか、『偶然の奇跡』が彼に舞い降りる。 
爆破によって破壊された窓、その外の曇った空。 
そこから一粒の雨の雫が、風と共にやってきた。 
雨粒は――偶然と呼ぶ他無いが――人形の首筋の『暴走術式』に当たり、それを歪ませた。 
その隙にアルキオーネは『暴走術式』を無理やり掻き消すことに成功した。 


その後、人形の首筋に細工を施し、「鍵」式の封印を施したのである。 
ここで暴走術式の細工を完全に破壊しなかったのは、何故なのか?今となっては誰もわからない。 



そうして彼は旅立つ。 
自らの所為で死んだ妹、『ウルザ』を『生き返らせて笑ってもらう』ために。 
ウルザのために作った人形に『ウルザ』と名づけて。 


しかし、そんな方法が存在するわけはなく、やがて彼は狂い始め―― 


――そんな中、アーチャーと出会うことになるのだった。 



これが、アルキオーネと、ウルザの物語の、全てである。