「京」
1:みやこ。明るく大きく広い丘と高い楼閣
2:数の単位。兆の一万倍
3:仮名尻。いろは歌の最後に用いる。転じて終わりを意味する
「太郎」
1:長男の名前
2:最も優れたもの。大きなもの
3:物事の始まり。最初
京太郎「お疲れ」
京太郎「それじゃあ、15分休憩で」
言うなり、席を立つ。
ハギヨシには声をかけずに、そのままバックヤードへと向かう。
これは、コンビ打ちではない。
余計な会話など、不要だった。
照「……」
向かうその途中に佇む照。近くには咲。
皆は、遠巻きに京太郎の様子を伺っている。
照は無言。
笑顔の仮面を捨てたいつもの表情で、京太郎を見る。
表情の変化を読み取ろうとして――やめた。
余計なところで、目を使う訳にはいかない。温存しなければならない。
それにこんな――ある主の戦闘モードとなった照から何かを読むのは、京太郎をしても不可能に近い。
照は黙って京太郎を見る。
何かを言いたげでもあるし、逆に、京太郎の話を聞きたそうにもしている。
鏡の花、水の月――それを象徴するような湖面を思わせる硬質の瞳には、
京太郎の姿だけが反射して、その目に照自身の色を映さない。
京太郎「……照さん」
照「……」
京太郎「これが……これが俺の、変えられない生き方なんです」
照「……そう」
それだけ告げて、京太郎は奥に向かう。
京太郎「……ふう」
京太郎「『渡したはいいけど、あんまり吸うな』とか」
京太郎「あの人も、無茶言うよな」
タッグ戦優勝の記念だと、贈られた煙管。
煙草よりは絵になるし、却って仰々しいからおいそれと吸わなくなるだろう。
そう、やえは言っていた。
京太郎自身、普段の思考能力が低下するので、学生時代とは異なり、ニコチンの摂取は控えている。
それでもやはり、吸いたくなるときはあった。
呼吸とともに首筋が疼き、肺の中を重厚な空気が充たす。
遅れて来る、緩慢で温かい幸福感。
胸に溜まった痼を煙に掃き捨てるように、紫煙を吐き捨てる。
京太郎「やっぱ、流石は魔物級だな」
京太郎「点差が10万点近く……普通なら、普段なら二位抜け狙いに切り替えるぜ」
ああ、もう十分やっただろうとか。
半荘で潰されなかっただけ頑張ったとか。
これが、人間と魔物の差なんだとか。
一人になれば、そんな考えが浮かんでくる。
京太郎(そもそも俺のスタイルは、牌符とか映像とかで充分に研究を重ねて……)
京太郎(事前に恐怖し、自覚し、対処し、作戦を考えることだ)
京太郎(人間は弱いから……そうしないと、土俵にすら立てない)
京太郎(そもそも、準備なしに……小学生とはいえ“魔物級”と戦うのが無茶なんだよな)
或いは、
夢乃マホや
宮永照なら、同卓して直ぐにその特性を把握するだろう。
しかし、京太郎は凡人である。
己がもっとも恋い焦がれる麻雀において、天は彼に味方しない。
何かが起こるのはすべて、京太郎の意思とは関係ない。善きにしろ悪きにしろ、華を持たない。
……相手が強く、華を持てば結果も相応になるが故に。
それと対戦したときに、悪い意味での華を得るのは、ある意味順当であるが。
京太郎は不運ではない。常人並か、やや上か下か。
おおよそ平凡。そんな程度だ。
明らかなるマイナスの、負ける運命の人間ならば、
それはそれで“運”に対する理論が組み立てられようが、
純然なる確率の問題である以上、それは考慮に能わない。理論など作らない。
……なお。
井上純のような、“亜空間殺法”も手札にはしてあるが、
やはり京太郎には未知の理論であり、また、そもそもそれで揺るぐほど運が細くないである為、
魔物級や上位プロ勢相手に使うことなどはまずない。
精々、
国広一とのジョジョごっこで、アヴドゥルを粉みじんにするぐらいにしか使わない。
京太郎「あー」
京太郎「糖分が足りない」
京太郎「ブドウ糖溶液でも、また射つか?」
やたら多い注射痕の物々しさと、覚醒剤に間違えられて職質で面倒なこと。
流石に今は、やめていた。
イメージが大切な麻雀プロである。
シャブ中呼ばわりなぞ、洒落にならない。
一「ほら、忘れ物」
顔を上げるとそこにいたのは、国広一。
京太郎の打ち方を知っている、だから、わざわざ持ってきてくれたらしい。
一「結構おいしいよ?」
京太郎「食ったんスか? 俺へのおみやげなのに? 俺より先に?」
一「細かいことを気にしてたら、ボク以外にはモテないよ」
京太郎「一さんにモテれば十分っすよ」
一「そう? ボクは嫌だけどね」
京太郎「嫌なんだ……」
一「そりゃいい人なんだから……いい人だって、ちゃんと周りにも判って貰えた方が嬉しいって」
京太郎「そーなんすか」
一「そーなんだよ」
そういうもんかと、おみやげを口に運ぶ。
甘い。
なんだこれは。ンマイなぁぁぁぁあ~~~~~!
一「京太郎くん、こっち見て?」
京太郎「はい?」
京太郎「……って、手品っすか? 唐突に?」
一「緑色、目にいいって言うからね」
京太郎「……あ。ありがとうございます」
一「どういたしまして」
京太郎「……ありがとうございます」
京太郎「色々、落ち着きました」
一「そう? ならいいけどさ」
やれやれ、と腰を上げる国広一。
見えてはならないものが見えてしまいそうになり、咄嗟に目を背けた。
壁に寄りかかった一が、ポツリと漏らす。
一「煙草、やめたんじゃなかったっけ?」
京太郎「……煙管っすよ?」
一「そういう、言葉尻を捉えた言い方はしない」
京太郎「了解っす」
煙を吐き出してみる。
また暫し、静寂が訪れる。
蝉の鳴き声、遠雷の音が聞こえた。
どこかで一雨降っているのだろう。
京太郎「……一さん」
一「何かな?」
京太郎「前半、あんなんだったけど……」
京太郎「後半は、信じて下さい」
京太郎「人間の強さを――俺の強さを」
上手く笑えたか、疑問ではあるが。
見上げるように、彼女へと笑いかけた。
自分自身の弱い考えが、外に滲み出てないかを祈りながら。
すると。
国広一は、京太郎の顔を眺めてから少し間をおいて、
一「京太郎くん」
一「人間はね……弱いんだよ」
そんな風に、小さく呟き返した。
一「前に……言ったよね」
一「ボクは昔、取り返しのつかないことをしちゃったって」
京太郎「……はい」
一「そのことが元になって、今の縁があるから……いつまでも引きずってはいないけど」
一「それでもあのときのボクは、客観的に見ても、間違いを犯した」
一「それは事実だ」
吹き上がった煙が、空に混じる。
遠くの入道雲を思わせてから、消えていく。
一「だからボクは、身を以って知ってる」
一「人間は、弱いってね」
彼女の過去は、聞いていた。
ハギヨシに連れられて、屋敷で面通しされて。
手品ができるということなので――京太郎は、教授を願った。
そういうものを持っていたら誰かを楽しませることができて面白いだろうし、
彼女の見せた手品に魅せられて、やってみたいという気持ちになったのだ。
京太郎は純粋な気持ちであったのに、一は難色を示した。
挙げ句、あろうことかこう言った。
京太郎が麻雀をやっているということを、そして伸び悩んでいるということを知っていた彼女は――
『イカサマにでも使う気かい?』
――と、本気で問いかけたのだ。
京太郎とて、そんな言葉を出されたら、黙っていられなかった。
自分を侮辱された。
麻雀への思いを侮辱された。
京太郎と麻雀で関わった人を侮辱された。
そしてそれは、京太郎と友人関係を形成していたハギヨシへの侮辱でもあった。
いくら温厚な京太郎とて、我慢ならない。
そこからは、売り言葉に買い言葉の応酬だった。
思えば、第一印象は最悪であった。
後から聞くに。
気さくそうに見えても、一はやや頑なタイプであり。
京太郎という異物が、自分のテリトリーである屋敷に入ることに、ストレスを感じていたのだろう。
「それに、とーかとやたら仲良さそうに見えたから」というのは、後の彼女の言葉。
ハギヨシに良いところを見せようと勝手に屋敷の業務に手を出した、
他人の領分に土足で踏み込んだ自分には気遣いが足りてなかったのだと、
後から振り替えればそう思う。
「ボクの服装についてのことも含めてね」とは、彼女の談。
ハギヨシにうっかり漏らした言葉が、まさか当人に聞かれているなど……。
これからは色々気をつけようと、そう思った。
一「だから……」
一「ボクは、こう言うよ?」
一「『人間は弱い』」
一「でも……」
一「どこにでもいるような程度だった君を……」
一「今みたいな一流になる前の君を、ボクは知っている」
一「不器用でも器用でもない君が……」
一「本当に真面目に手品を覚えたのを見ればさ」
一「どれぐらい、麻雀の為に力を注いだのか」
一「それ以外の、万能タレントって呼ばれる理由の色んなことにも」
一「沢山努力を積み重ねたんだって、ボクには判る」
一「なんとか麻雀に生かせないかって……」
一「他人から見たらどんなにバカらしくて、荒唐無稽であっても……」
一「僅かな可能性を掴みとろうと……必死に考えてた君を知っている」
一「それでもどうにもならなくって……」
一「麻雀から離れようと色んなことに我武者羅になってたときも……」
一「それでも諦めきれずに、捨てずに麻雀に触れることを続けていた君を知っている」
言葉を区切って、一歩、京太郎に距離を詰める。
いつもは見上げる形だけど。
珍しく見下ろす形になっている青年へと、笑いかける一。
一「君の“習慣(いきかた)”を――変わらない君の努力を」
一「ボクは、知っている」
一「だからボクが保証してあげるよ」
一「人間は弱いけど――」
一「須賀京太郎は、須賀京太郎の生き方は強い……ってね」
一「だから、こう言ってあげる」
一「君はどうにも格好つけしいだからね……」
一「励まされるよりも、慰められるよりも――」
一「ショーはまだ、始まったばかり」
一「クライマックスは、これからなんだろう?」
一「期待してるよ、オカルトスレイヤー」
一「――こういう台詞の方が、似合ってるってさ」
一「違うかい?」
悪戯っぽく笑う一が手を伸ばす。
その手をとって、立ち上が――ろうとして京太郎の体重に一がよろけた――。
どうにもしまらないなと笑いながら、尻を払う。
京太郎「ええ」
京太郎「ショータイムは、これからだ」
京太郎「期待してて下さいよ」
京太郎「逆境なんてのは、ショーのスパイスでしかないんだ」
京太郎「こっからカーテンコールまでは、オカルトスレイヤーの独壇場っすよ」
一「……期待してるよ? し過ぎるくらいに」
京太郎「ええ」
京太郎「格好つけたがりの、軽い男っすからね」
京太郎「思い期待を背負って、ちょうどいい」
一「……いくらなんでも、格好つけすぎじゃないの?」
京太郎「女の子の前なんで……一さんの前なんで、ね」
一「本当に……軽いね、君」
◇ ◆ ◇
およそ10万点差。
尋常ならざる点数の差。
役満を直撃させられたとて、それでもまだ自分の点が残り、振り出しに戻るだけ。
勝負は決したと言っても、なんら差し支えはないだろう。
半荘が終わるなり逃げるように席を立った須賀プロを振り返りつつ、
やはりプロと言っても所詮は人間でしかないのだと、
失望感を孕んだ虚無感と共に、少女たちは卓を離れる。
向かう先は、宮永照。
自分たちの、本当の目的――。
だが、
照「……まだ、早い」
下足「なにが、ですか?」
竜田「……これ以上やっても、あのプロが悲惨を曝すだけだけど」
照「……」
静かに、宮永照は二人を見やった。
揺るがない瞳。静寂を保つ表情。
照「あなたたちは、須賀プロを知らない」
下足「それって、どういう……」
竜田「……買い被りじゃあ」
照「……」
無言で顔を背ける宮永照。
その視線の先にいるのは――須賀京太郎。
あれほどまでに、点差を離されたというのに。
男の眼は、死んでない。
しつこい。
諦めが悪い。
馬鹿らしい。
そんな、彼を軽んじる感情の中に……半ば薄ら寒いものを覚えた。
すぐさま、頭を振って否定する。
須賀プロと宮永プロは、仲がよさそうだ。
だからこそ人前で、彼を貶すことをしなかったのだろう――と。
一旦粘りのようなものを見せて。
それから碌な見せ場もなく敗北した様を眼前でありありと見せ付けられた分、
少女たちの内なる失望感は、簡単には拭えない。
竜田「倒したら……」
下足「逃げずに、戦って下さいね?」
照「……」
宮永照が僅かに頷いたのを見て、少女たちは、先だって卓に戻る。
京太郎「さて……」
京太郎(分析は、それなりにできた)
京太郎(まだまだ足りないし……)
京太郎(思考はできても、試行はできちゃいない)
京太郎(だから、こっから先はやりながら……試しながらの闘いだ)
静かに、手を握る。
一から、託された。彼女の期待を託された。
だから、任された。
魔物と戦う人間として、須賀京太郎という男として。
彼女に、任されたのだ。戦いを。
照「……京ちゃん」
脇を通るその時に、宮永照が言葉を投げかけた。
静かなポーカーフェイス。
揺るがない、卓上の魔物。麻雀界の最高峰。揺れない震源……げふんげふん。
無言で、無表情ながらも――京太郎に問いかけていた。
或いはそれは、ただの錯覚だったのかもしれないけど……。
照の視線に、京太郎は答える/応える。
満身創痍で、絶体絶命であるけれど。
国広一が保証してくれた生き方を元に、こう言うのだ。
京太郎「――やれます」
照「……そっか」
それ以上、言葉は要らぬと。
照は、一歩後ろに下がる。
ある種の信頼関係がそこにあった。無言の会話が、そこにはあった。
伊達に、共演はしていない。
他人からは分かりにくい照の表情の変化を、京太郎が知るように……。
照も、京太郎が抱える思いを、その在り方を知っている。
……それでも。
興味以上の好意を抱く男が、本来得意とする舞台ではない戦場に向かうとあっては、
苦言の一つでも呈さずにはいられない、歳上としての自負が出るが。
ついでに言うと。
彼らしい小気味良いやり取りを真似しようとしても上手くいかずに、些か不満である。
……と。
照「……須賀プロ」
京太郎「なんですか?」
京太郎「――って、痛てえええええ!」
照「なにか失礼な事、考えたでしょ」
なんとなく彼からの良からぬ思考を感じたので。
とりあえず、一撃入れておいた。
美味しそうなお土産物を一人じめしたことへの不満もある。
糖分が欲しいなら、持ってるお菓子と交換したのに。
けしからん。
美味しさは、分けあうべきだと思う。
京太郎「……これから戦いにいくやつにすることじゃないっすよ」
京太郎「却って、頭が冴えましたけど……」
照「……」
照「京ちゃんが悪い。私には判る」
京太郎「……あ、はい」
……だから。
照「京ちゃん」
京太郎「今度は、なんスか……?」
そういう、格好つけたやり取りは分からないから。
伝えようとすると、どうにも喋り過ぎてよそよそしくなるか。
妙にこそばゆくて、色々考えて口数が少なくなってしまうから。
照「――頑張って」
余計かもしれないけど、自分の本心を。
シンプルな自分の言葉で、彼に伝えようと思った。
言わなくても伝わっているだろうし……。
覚悟を決めた彼との会話には、蛇足かもしれないけど……。
やっぱり言葉にして、伝えたい。
あと、見たいのだ。
京太郎「――はい!」
彼のこの、快活な笑みが。
やっぱり、年相応というか年下っぽくて。
思い詰めた表情とか、妙に乾いた笑いや、無理してる風な格好つけよりも。
こういう方が、自分は好きだ。
◇ ◆ ◇
京太郎「……悪いな、待たせて」
下足「いえ、構いませんよ」
竜田「……別に」
ハギヨシ「ヒーローは、遅れて登場するものですから」
卓に、京太郎が戻る。
点差は十万点近く。相手は本物の魔物級。
ギャラリーだって、多い。
これで破れでもしたら、麻雀プロとしての須賀京太郎には、多少なりとも影響が出るだろう。
失うものがあって。
得られるものは、なにもない。
ただの余興で、小学生と卓を囲んでいるに過ぎない。
或いは。
相手は馬鹿らしい天性のイカサマ使いで。
これで戦うのは、維持とか一分とか、そういう話を通り越している。
ただの、単なる無謀でしかない。
余人なら、そう思うだろう。
だが……。
ハギヨシ(貴方がしたいことは……)
ハギヨシ(貴方がしようとしていることは……)
ハギヨシ(すべて、貴方だけのものだ。貴方が打って、貴方が決めることだ)
ハギヨシ(本当は、大きな事情なんてない)
ハギヨシ(能力がない人間を代表するとか……)
ハギヨシ(能力がなくても食い下がれることを他人に証明するとか……)
ハギヨシ(そんなのは、もののついででしかない)
ハギヨシ(期待するのも勝手。期待させるのも勝手)
ハギヨシ(ただ、そんな世界でしかない)
誰が何をしようとも。
そこにあるのは個人の意思だ。
他人の言葉で表そうとしたって、完全な本質を捉えない。
単純に、皆が皆、自分の為に打っている。
ハギヨシ(だから……私も)
ハギヨシ(私がやりたいようにやる)
ハギヨシ(そう……)
これは、タッグ戦ではない。
須賀京太郎も、金髪の少女も、黒髪の少女も。
自分の理由で、この場に立つ。
それは、ハギヨシとて例外ではない。
ハギヨシ(友人を……友人の思いを)
ハギヨシ(全力で手助けする)
ハギヨシ(それが――私のやりたいこと)
自分を慕ってくれた、年の離れた気の置けない友人。
どこか線引きをしがちで、当事者であることを避ける自分を。
意識的に、或いは無意識的に――様々な機会へと誘ってくれる。
ハギヨシ(勝手に貴方に期待して、勝手に貴方に背負わせる)
ハギヨシ(勝手に代わりにしてもらって、勝手に貴方に証明してもらう)
ハギヨシ(私も大概、自分勝手な男です)
ハギヨシ(ですから……)
そんな快活な彼の苦悩を知っていた。
一部のみならず、ハギヨシはそれに立ち会った。
今でこそ万能と言われるが……。
彼は大概、いい意味でも悪い意味でも人の域を出ない素質の持ち主。
そんな彼が、麻雀以外は天才だと言われる裏には、単純な理由がある。
そう思われる域まで、積み上げたのだ。
真剣に麻雀以外の道を探して、麻雀以外にすべき方向を探って。
まさしく鬼気迫る勢いで、麻雀から離れようともがき続けた。それこそ、命懸けで。
結局それは、麻雀への思いの裏返し。
“やればできる”“やろうとすればできる”まで辿り着いた彼は。
同時に自分が、それ以上には至れないことを知った。
そうして、舞い戻った。
捨てきれない感情と、因縁を持つ麻雀に。
ハギヨシ(貴方も自分のやりたいように、すべきと思ったことをして下さい)
ハギヨシ(私も勝手に、それを助けます)
ハギヨシ(私の持つ……やれるだけの力で)
そんな男を、友人を。
助けたいと願うのは。少しばかりでも力になりたいと思うのは。
それがただのエゴだとしても、止める気などにはまるでなれない。
麻雀に触れ、どこまでも努力を続けるのが彼の“習慣(いきかた)”ならば。
支えたいと思った相手を、それに見合う相手を、この身の限り支えんとするのが……。
きっと、この自分の――変えられない“習慣(いきかた)”だろう。
ハギヨシ(さあ……始めましょうか、京太郎くん)
ハギヨシ(無駄だの無理だの……そんな言葉は、聞き飽きましたよね?)
◇ ◆ ◇
半荘後半戦・開始
京太郎:59300
ハギヨシ:91400
竜田(金髪):151700
下足(黒髪):99600
賽が回る。
席順はそのまま、親を決める。
仮初めの後、決まったのは――。
竜田「……私か」
竜田「幸先いいね、これ」
京太郎の下家。金髪の少女。
乗せてしまったら止められない、陣風を統べる風神少女だ。
親の倍満。
今一度その和了を行われたのならば。
京太郎の負けは、確定する。
対する、北家の京太郎の……その配牌は。
京太郎(……ああ、知ってた)
京太郎(打点が高く、相手より早く和了しなければならない)
京太郎(そんなものが求められているが……)
京太郎(それを俺が引けないなんて、知ってた)
相手の能力を知り。
それを具に観察し。
その対策を考案し。
場の総てを考慮したとしても――。
己の手牌が揃わなければ、描いた結果には到達できない。
そんな都合がいい、絵図通りに物事を運べるほど――。
世界は京太郎に、優しくない。
オカルトスレイヤーだなんだのと言われても。
所詮は詰まるところ、京太郎はただの人間だ。
あらゆる武器より優れた腕を持ち、素手で怪物を封殺できる鋼の王ではない。
どれだけ技術を積み重ねても、麻雀が麻雀であるが故に、埋められない壁が存在する。
確率はやはり、京太郎にとって単なる確率でしかない。
良い配牌もあれば悪い配牌もあり、良いツモもあれば悪いツモもある。
そんなこの世の偶然を支配できる能力など、京太郎には存在しない。
勝つかもしれない。負けるかもしれない。
そんな偶然性の上に成り立つ英雄があるものか。
だから、京太郎は単騎で怪物を討つ英雄などではない。
しかし――。
京太郎(……ハギヨシさんは、よさそうだな)
京太郎(さっきの……あのもう一人の能力を喰らってても)
京太郎(そうじゃなくても、あの人の引きは普通に悪くない)
これが麻雀であるが故に。
一人で戦う理由なんてのは、どこにも存在しない。
この戦いに、英雄なんてものは必要ない。
――タッグ戦ではない。
京太郎は彼に、そう言った。
だから打ち合わせなどは行わない。
行うことは京太郎の主義に反する。目的と異なる。
それでは、望む結末には至れない。
だけれども。
一人独走する人間を止めようとするのは、なんら、自然である。
事実――対策の為に、かつての宮永照の牌譜を確認したときに。
彼女は一切の打ち合わせを行っていない、他の三校の連携を受けた。
京太郎に、ドラを集める能力などない。
一巡や、或いはそれ以上の先を見るような動作などできない。
だが、魔物ではないが故に。
京太郎に、見えるものはある。
京太郎(金髪の――お前の能力)
京太郎(風を集める……)
京太郎(自分にとって益となり、他人にとって厄となり、役になる風を)
京太郎(俺が気付いたことはいくつか)
京太郎(まずお前は――役牌をカンするまで、和了ができない)
京太郎(役牌をカンして、嶺上開花でツモ)
京太郎(カンをして、リーチ)
京太郎(なんつーかな……)
京太郎(リーチのパターンは、もう一人の能力に妨害されてたのかどうか知らないけどよ)
京太郎(どっちも、嶺上牌をツモ切っていた)
京太郎(嶺上牌を取り入れたのは“2つカンをしたとき”)
京太郎(それ以外は、ツモ切り)
京太郎(……お前は嶺上牌がなくても聴牌してる)
京太郎(カンをする、そのときのツモの牌で聴牌)
京太郎(聴牌してから、カンをする)
京太郎(それまでの手牌について考えられるのは2パターン)
京太郎(あらかじめ、4枚の風牌を抱えていてから、他の面子を成り立たせるツモの後にカン)
京太郎(刻子を持ち、面子を作っておいて……そっから最後の1枚を引いてカン)
京太郎(後者は……つまり、聴牌状態)
京太郎(たとえば……)
①②③筒 456索 二二 七七萬 東東東
京太郎(こんな形)
京太郎(こっから、東の最後の1枚を待ってる)
京太郎(そんでこっからカンをして、出和了待ちになる)
京太郎(つまり……だ)
京太郎(後者なら――ご丁寧に、待ってる訳だ。最後のものを……態々)
京太郎(こっちのパターンなら、自分の能力を信じてるんだろうな)
京太郎(ま……そっちの方が、打点が上ってんだから当然だろうな)
京太郎(聴牌してんのにさ)
京太郎(出和了する以上、アイツにフリテンはない)
京太郎(あんまりにも普通なんで……言うまでもないが、アイツの切った牌は安牌だ)
京太郎(ただ、近いものを引いたら……普通は表情は変化する)
京太郎(勿論、隠せる奴はいる)
京太郎(自分の能力に絶対の信頼をおいてれば、まあ……顔が変わらなくても不思議じゃない)
京太郎(だけどな……)
京太郎(自分の能力で……フリテンなんてしないって知ってても、所詮は小学生だ)
京太郎(リーチをかけてから、俺たちが当たりに近い牌を切ったとき……)
京太郎(お前の目線が僅かながらに変わるのを俺は、視てる)
京太郎(お前はやはり、動揺する。するんだよ)
京太郎(……で)
京太郎(お前のツモに、それは見られない)
京太郎(だから、高確率でお前のカン前の手牌は前者)
京太郎(よっぽど、他人に引かれたくないんだろうな……風牌を)
京太郎(だけどそいつは……『重い』ぜ?)
京太郎(実質、1牌足りない状態で麻雀打ってるようなもんなんだからよォ……)
京太郎(可愛らしいな。可愛らしい弱点だ)
京太郎(自分であらかじめ確保するっつーことは……)
京太郎(昔の……長野の県予選のときの優希や)
京太郎(自分がカンをするまで攻められないように配牌に妨害をする淡みたいなもんだ)
京太郎(怖いんだろ? 嫌なんだろ?)
京太郎(お前を愛してる麻雀の神様だか、お前の深層心理だか知らないがよォォォオ~~~~~)
京太郎(『あらかじめとっとかないと奪われる』)
京太郎(そんな風に、怯えてるんだろ?)
京太郎(だからお前は、『不完全』だ)
京太郎(手がつけられない運の持ち主じゃあない)
京太郎(お前がリーチしたときも、結局は流れた。自力でツモれない)
京太郎(嶺上開花じゃないときは、ロンしかできない。絶対に)
京太郎(そんで……)
京太郎(リーチでも掛けて足を止めない限りは)
京太郎(俺は、経験の足らない小学生から直撃なんて受けない。読みきれる)
京太郎(逆に――射ってやるよ。直接な)
京太郎(二つ目)
京太郎(リーチやツモ、嶺上開花を除いて……)
京太郎(他の役が複合することはない)
京太郎(対々和もない。三暗刻もない)
京太郎(チャンタもなければ、混一色もない)
京太郎(三色も一気通貫も存在しない)
京太郎(ついでに、カンドラ以外のドラも乗らない)
京太郎(これは……いい判断材料だ)
京太郎(確実に、順子+刻子の複合形)
京太郎(三暗刻がない時点で……刻子は2つまで。1つは風牌で確定)
京太郎(三色がないから、異なる色で同じ順番になることもない)
京太郎(チャンタがないから、絶対どこかにヤオチュウの順子か刻子か対子が混ざる)
京太郎(赤ドラ……⑤筒二枚を引けないから)
京太郎(筒子の⑤絡みの順子は作りにくいし、刻子にはならない)
京太郎(で、混一色もないから違う色が確実に混じる)
京太郎(ああ――読みやすい)
京太郎(お前の手は、読みやすい)
京太郎(視える……視えるぜ)
京太郎(ハッキリと、お前の動作が。攻めに向かう姿勢が)
或いはそれを、温存しているのかもしれない。
本当は使えるけど、対宮永姉妹の為に隠しているのだと。
その可能性はあった。あったが、無視した。
隠しているのなら――追い詰められるまで、出しはしない。
この局で出されるはずが、ない。
さっさと勝負を決めるために、そんな切り札を切ることだってあり得る。
だけど、だ。
早く勝負を決めたいのならばそもそも、態々この半荘に突入する前に出す。
そこで京太郎を消し飛ばして終わるのだ。
あのときはなくて、今はある。
そんな心境の変化もあるかもしれないが――。
あのときと今、心境が変わる何かがあったとは思えない。
だから、今それは考慮しない。
推論の元に、相手へと踏み出す。
アウトファイターから、インファイターへ。
寸前まで攻め続ける姿勢に。
京太郎(んで……)
京太郎(嶺上開花を起こさない方法?)
京太郎(そこまではまだ、材料が足りない)
京太郎(だから……)
京太郎(単純に、手番をブッ飛ばす。速攻でこの局を流す)
京太郎(視えれば、限界まで攻められるからな)
京太郎(ハギヨシさんに副露して貰う。俺自身、最大限に副露する)
京太郎(相手がまだ攻撃できる姿勢じゃあないって読めれば――)
京太郎(攻めるのは、そう難しいことじゃあないぜ)
京太郎「――ポン」
ハギヨシ(……!)
ハギヨシ(なるほど……)
ハギヨシ「ポン」
京太郎「チー」
ハギヨシ「ポン」
京太郎「チー」
ハギヨシ「ポン」
ハギヨシ「――ツモ」
ハギヨシ「2000・3900です」
東一局目・結果
京太郎:57300 (-2000)
ハギヨシ:97300 (+7900)
竜田(金髪):147800 (-3900)
下足(黒髪):97600 (-2000)
続く、東二局目。
京太郎は静かに手牌を倒す。
この局、金髪の少女は動かない。絶対に動けない。
彼女の能力は、風を集めること。
自風、場風を集める。
そして、どちらにもカンをする。カンドラを乗せる。
それが能力である。少なくとも、現時点で判明している限りの。
さて――。
今、東二局。場風は東。
前局、親であった彼女の風は北。
東がドラとなるのならば、表示牌として北が使われる。
つまり、北は揃わないのだ。4枚揃わない。
だから、攻められない。
今までの局、黒髪の少女が動いたのはこれが理由だ。
金髪の少女がそもそも攻められないことを、知っていたのである
魔物の制約にどんな理由があるかは、知らない。
何か制限をつけることで、強くなるのだろうか。
ケルトの騎士かお前らは、と思う。
それはそーいうものなのだろう。とにかく、制約があるならあるのだ。
東場の南家、東場の北家。
南場の東家、南場の西家。
そんな、風が隣り合う局では――彼女は和了できないのだ。
今まではそれでも良かっただろう。
何せ、打点が圧倒的すぎる。普通なら2回か3回和了した時点で、勝敗が決するのだから。
仮に彼女が東場の東家であるとして、能力で3度和了したとしよう。
その時点で他家の残り点数は100点。終わったも同然だ。
だからこれは今までは――碌な弱点ではなかった。
京太郎(だけど……な)
京太郎(プロはそこまで、甘くない)
京太郎(俺は、そこまで……甘くない)
ただしそれは、配点が25000点であった場合。
現在の対決は、配点が10万点。
点差は離される。圧倒的にリードされる。
勝機は遠退く。直ぐに終わらず、魔物の恐怖を味わい続ける時間が長くなる。
だけど――死なないのだ。
瀕死でも、耐えられるのだ。
京太郎(生きてさえいれば……10カウントが訪れなければ……)
京太郎(俺は、戦える)
京太郎(こっからの逆転がどれほどか細いものだとしても……)
京太郎(死んでないなら……まだ戦えるのなら……)
京太郎(その可能性がたとえ那由多の彼方でも――俺には十分すぎる)
静かに、少女を見る。
和了不可が確定しているのだ。彼女に打てる手はない。
黒髪の少女を見る。
前の半荘。彼女はここで攻めてきていたが――今回は、果たして。
下足「……」
攻めようとはしない。
配牌があまりよろしくないのか、
それともハギヨシが連荘してくれた方が、後の彼女にとってありがたいのかは知らないが。
彼女は攻めない。
或いは前回、京太郎に狙い射たれたのを気にしているのかも知れない。
後半起こる、あの無駄ヅモを考えるのならば。
ハギヨシは攻めず、ここは京太郎が攻めるべきである。
それが定石。道理の筈だ。
だが……
ハギヨシ「――リーチ」
ハギヨシは、攻めた。
これは結局、コンビ打ちではない。
点差が近いハギヨシがトップを狙いに行くのも、なんら、不自然ではないのだ。
金髪、黒髪ともベタオリの末。
ハギヨシ「――御無礼、ツモです」
ハギヨシ「おや……」
ハギヨシ「裏が乗って……4000オールですね」
13順目、ハギヨシが和了した。
東二局目・結果
京太郎:53300 (-4000)
ハギヨシ:109300 (+12000)
竜田(金髪):143800 (-4000)
下足(黒髪):93600 (-4000)
京太郎(そりゃあさ)
京太郎(三人が攻めなきゃ、こうなるって)
京太郎(麻雀ってのは、四人で打つものだからな)
配牌を眺めて、手牌を伏せる。
また、開く。
開いたら何が変わるという訳でもない。
やろうと思えば、すり替え程度は容易いが――。
それだけは、絶対にやらない。
それは麻雀に対する侮辱である。
それは対戦相手に対する侮辱である。
それは国広一に対する侮辱である。
それは、自分自身と――自分自身を信じてくれた人への侮辱である。
京太郎(……で、どうするんだ?)
京太郎(誰も攻めなきゃ……当然だけどさ)
京太郎(その人、普通に和了するぞ?)
ハギヨシ「――御無礼、ロンです」
ハギヨシ「3900は4200」
下足「……はい」
東二局目一本場・結果
京太郎:53300
ハギヨシ:113500 (+4200)
竜田(金髪):143800
下足(黒髪):89400 (-4200)
京太郎(さて……と)
京太郎(『須賀京太郎は勝つことを諦めて』)
京太郎(一人だけしか通さないように、嫌がらせを仕掛け始めた……)
京太郎(なんて思ってくれても、いいだろうが……)
一人は動けないのが確定しているが。
もう一人もまた、動かない。
後半の、能力下による連荘期待なのだろうか。
大した自信だと思う。が、それも仕方ない。
何せ、妨害能力としては一級。
しかも、後半何も出来なくなった相手へと――八連荘――役満を叩き込むことも可能。
無理攻めする必要がなく、後々取り返せばいい。
そう考えても、無理もない。
京太郎(ま、ハギヨシさんが聴牌できずに終わるのは普通にあるだろうが)
京太郎(誰も攻めないで親がノーテンするのと、誰かが攻めて親を流すの)
京太郎(どっちの確率が上かなんて、明白だろ)
天江衣の執事である、ハギヨシ本人の腕も然ることながら。
やはり、場の状況というのが大きかった。
ハギヨシ「――リーチ」
そうしている内に、更にリーチがかかる。
二人は、ベタオリを始めた。
我慢比べだと、考えたらしい。
後の黒髪の能力が強力になるとしても、ハギヨシが点数を稼ぎにいく。
稼いだ点数で逃げ切る路線――と、見せ掛けて。
和了に向かおうとしたところを、脇の京太郎がズドン。
そんな作戦であると。
その作戦にかからないためにも。
また、何をしようと後々自分の有利になるのだから、と。
黒髪の少女は、静観を決め込む。
或いは、どうせ流すにしても大物手で……。
なんて、思っているのかもしれなかった。
京太郎(いや、ま……その通りだけどな……)
京太郎(ハギヨシさんに隠れて、射ろうと思ってるよ)
京太郎(だからそれは、正解だよ。大正解だ)
京太郎(だけどさ――)
ハギヨシのリーチにベタオリを始める少女たち。
その様を眺めつつ、京太郎は牌を倒した。
京太郎「――ロン」
竜田「……ッ」
京太郎「16600点だ」
一二三 九萬 112233索 ①②③筒 ロン:九萬 ドラ:3索
京太郎(別に、オリてる奴を狙うことも訳ないんだぜ?)
京太郎(連荘が続けば、その数だけ配牌も変わる)
京太郎(その中には当然、高目を目指せる配牌だってある)
京太郎(攻めるのがハギヨシさんしかいないって判れば……)
京太郎(高い手だって、安心して作れるんだよ)
ベタオリをする。
それにあたっても――存在する問題。
金髪の少女の能力の欠点、その2。
彼女はどういうわけか、風牌を切らない。
松実玄と同系統の能力なのだろうか。定かではないが。
玄とは異なり特定局以外では平然と高打点で和了できるあたり、厄介であるが……。
やはりそれは、弱点には変わりない。
彼女の手が遅いことは、以前述べた。
東場の東家、南場の南家以外となると……。
その特性は顕著となる。
例えばこの局。
彼女は実に……恐らく7牌もの風牌を抱えている。
二副露しているも同然。残りで、防御に立ち回らなければならない。
そして彼女は、他の役が併合しない特性が故に……。
既に暗刻が2つ存在する場合、それ以降の牌は重ならない。
結果、どうなるか。
対子落としができず、共通安牌を切ることができない。
残りの牌はバラバラの順子。
和了できる場面ならともかく、和了不可能が確定付けられている以上……。
リーチ者の現物落としや、筋だよりの切りを行うしかなくなる。
7牌が確定して、複合役がないことを加味し、さらに和了不可能という状況から考えるなら……。
そんな少女の手牌を予測し、狙い撃つことなど――なんら難しいことではないのだ。
京太郎(なんつーかさ……)
京太郎(素直によォォォオ~~~~)
京太郎(『コンビ打ち』じみた麻雀以外を打っとけば良かったんだよ)
京太郎(そうすりゃあ、大概の相手は親倍で削られた点数を取り返そうと躍起になり……)
京太郎(結果、和了できない局なんてのは直ぐに流されるんだからな)
京太郎(連荘がなければ、俺にも狙える手なんて入らなかっただろうし……)
京太郎(高打点を練ってる暇なんてのも、生まれなかった)
京太郎(……ま)
京太郎(ワンツーフィニッシュにしなければいけない形にしたのは、俺だけどな)
京太郎(余裕を持てる、10万点っとのにもな)
京太郎(中国の兵法書に「孫子」ってのがあって……こう書かれている)
京太郎(『勝利というのは、戦う前に全てすでに決定されている』)
京太郎(……なんて)
京太郎(問題は、次局からだな)
東二局目二本場・結果
京太郎:70900 (+17600)
ハギヨシ:112500(-1000)
竜田(金髪):127200 (-16600)
下足(黒髪):89400
京太郎(さて……と)
京太郎(この局で――一体、どう動くのか)
京太郎(そこだぜ。問題は……)
黒髪の少女が、親番での連荘を狙うのか。
それとも金髪の少女が、和了に向かうのか。
或いは、その両方か。
どうやら、その第三案だったらしい。
二人とも、攻めていた。
それも当然だろう。
京太郎からの直撃により、ハギヨシとの点差が詰められてしまった金髪の少女。
後々の自分の能力の為にも、親で連荘しておきたい少女。
どちらが攻めるのも、道理である。
そして京太郎とハギヨシもそれに続く。
京太郎としては、この親番でも高目を和了したい。
だが、そう上手くはいかないもの。
先程ハギヨシが親だったときに同じく、少女の連荘の間に高目を目指せる配牌を待つ。
それも考えたが、それよりは、自分の親番で連荘の方が美味い。
またしても、金髪の少女の攻め手を封じられる位置であるため、尚更だ。
ならば、余計な局などいらない。速攻で流しにかかるのは必然。
ハギヨシについても同じだ。
自分が和了すれば――直撃なら――京太郎の助けともなり、
また、トップに躍り出る事ができるのだ。
後半のあの、狂気的な無駄ヅモ地獄を考えるに、ここで少しでも点数を得たい。
そんな思いで、誰もが和了を目指したが――
下足「ツモ」
下足「1300オール」
競り勝ったのは、黒髪の少女だった。
他家の無駄ヅモの分、僅かながらに上をいった。
タンピン手をツモり、百点棒を卓に並べる。
東三局目・結果
京太郎:69600 (-1300)
ハギヨシ:111200 (-1300)
竜田(金髪):125900 (-1300)
下足(黒髪):93300 (+3900)
京太郎(……っと)
京太郎(鳴き三色か……それとも鳴き一通か)
京太郎(弱点が多すぎて……ストレートは辛いな)
京太郎(ドラもついてるし……)
京太郎(なんとかまあ、叩いておきたいところだけどさ)
攻められると言えば、攻められる。
攻められないと言えば、攻められない。
攻めるほどの手かと言われると――難しい。
思考の海に潜る。
とは言っても、一秒にも満たないほどの逡巡ではあるが――。
多少の違和感を覚えた京太郎は、副露による速攻を取り止めた。
そのまま暫くは、手を練るか。
無駄ヅモをしてしまう為にそれは上策ではないが……。
ここで無理攻め放銃も、躊躇われた。
そこで果たして、
ハギヨシ「リーチ」
ハギヨシの、テンパイ宣言が入った。
金髪か黒髪か、どちらかが親の場合……。
相手が振り込まずとも、ハギヨシがツモったのならば、京太郎と少女たちの距離が詰まる。
京太郎の点数も削れてしまうという問題もあるが……。
京太郎の“技術”なら、それを取り返すことも可能であり、
また、ハギヨシがトップを埋めるというのも、悪い話ではなかった。
故に、ハギヨシはリーチをかけた。
京太郎(……流石だな、この人)
京太郎(リーチってことは……リーチしなきゃ和了られないか、勝負手ってことだな)
京太郎(まあ、ハギヨシさんのなら……何度も打ったから予想できる)
京太郎(先にリーチしちまってたならともかく……)
京太郎(そうでもなきゃ、振り込みなんてまずしねー)
京太郎(だから、このままハギヨシさんに走って貰いたいところだ……な……?)
京太郎(……)
京太郎(先にリーチって……まさか)
京太郎(まさか、な……)
京太郎(……いや)
京太郎(こういうときの、予想ってのは)
京太郎(当たる――)
竜田「――カン」
竜田「もうひとつ、カン」
竜田「そんで……リーチ」
入った、金髪の少女の動き。
お前もかという思いよりも――。
これが、判別しきれなかった能力か……と。
その能力に従うなら、ハギヨシは……。
竜田「――ロン」
竜田「リーチ一発、東西ドラ4」
竜田「16000点」
ハギヨシ「――ッ」
ハギヨシ「……はい」
京太郎「――」
京太郎(嶺上開花で和了しないとき……)
京太郎(ロンで和了するとき……)
京太郎(それは、こういうパターンかよ……!)
京太郎(しまった……)
京太郎(前局、タンピンにリーチを加えなかった理由を……リーチをかけなかった理由を……)
京太郎(考えて、おくべきだった……!)
京太郎(クソッ)
東三局目一本場・結果
京太郎:69600
ハギヨシ:93900 (-17300)
竜田(金髪):143200 (+17300)
下足(黒髪):93300
京太郎(……親番が、来たな)
京太郎(あの能力――俺も認識が甘かった)
京太郎(先行時点で嶺上開花がないパターンがあった……)
京太郎(だから、リーチに理由もないもんだと思ってた)
京太郎(だけど、違った)
京太郎(先行時の嶺上開花が成功してなかったのは……本人の能力じゃない)
京太郎(上家の、妨害能力があったから……ツモれなかったんだな)
京太郎(おそらく、本来の能力は……)
京太郎(先行時は、自風牌・場風牌とドラ4で嶺上開花ツモ)
京太郎(後発時が、自風牌・場風牌とドラ4でおっかけリーチ一発)
京太郎(そういう能力だってことだ)
京太郎(なんつーか、ますますえげつない能力だな)
京太郎(嫌が応でも、自分が和了するって言いたげな感じだぜ……)
京太郎(……ま)
京太郎(それでこその、魔物級ってところなんだろうけどな)
京太郎(アイツが和了可能なときは……リーチはしちゃいけない)
京太郎(実になかなか、えげつない状況だ)
京太郎(場風が使えない。リーチが使えない)
京太郎(おまけに、他の……アイツの役にならない風も使えない)
京太郎(これまで、アイツ以外に手の内に風を持っているやつは居なかった)
京太郎(相手の手を妨害しつつ、自分はドデカイのを和了がる)
京太郎(風が制限されたら、混一色も非常に使いづらくなる)
京太郎(本当に……なんていうか、えげつないぜ)
京太郎(実にグレートなやつっすよ……こいつは)
京太郎(ただ、まあ……)
京太郎(おかげで、やりやすくもある)
京太郎(客風なんていう余計なモンをこっちも、引く心配がなくなるんだからな)
京太郎(……普通は)
京太郎(安牌に使えるものがなくなって困るところなんだろうが……)
京太郎(生憎と、そこは経験の違いだ)
京太郎(プロが相手でもない限りは、それがなくたって……)
京太郎(リーチさえしなけりゃ、放銃はしない)
京太郎(俺がするのは……実にシンプルなことだ)
京太郎(親の……この、打点が高い時点で)
京太郎(できる限り、稼ぐ。安くても稼ぐ)
京太郎(それで、待つ)
京太郎(配牌が良いものに……俺の目指すべき方向と重なるものになることを、待つ)
京太郎(俺は運を自在に操れるわけじゃあない)
京太郎(だが、引き寄せることは可能だ……少しずつ、月の満ち欠けみたいに)
京太郎(配られる牌は、少なくとも俺にとっては単純な確率だ)
京太郎(ならば――技術で)
京太郎(俺が磨いた技術で、その確率に近づけてやればいい)
京太郎(局が増えれば増えるだけ、よい牌を引く可能性は上がる)
京太郎(なら、俺は続けりゃあいい)
京太郎(逆転手を引くまで――一局でも多く、和了を積み重ねればいい)
京太郎(風牌が自由に使える……?)
京太郎(だからなんだ。たった一種類増えただけだろ)
京太郎(タンヤオ、一気通貫、三色同順……麻雀には、他にも色々役はあるんだ)
京太郎(麻雀を――)
京太郎(麻雀プロを――舐めんなよ……!)
京太郎「――ロン!」
京太郎「一通ドラ1で、2900点だ」
下足「……はい」
東四局目・結果
京太郎:72500 (+2900)
ハギヨシ:93900
竜田(金髪):143200
下足(黒髪):90400 (-2900)
京太郎(……さて)
京太郎(とにかく、今のうちに……ドンドン攻めるぜ)
京太郎(東場の南家である限り、下家は和了できない)
京太郎(上家は……攻める姿勢だけど、攻めたら狙われることをわかっている)
京太郎(だから、消極的な攻め)
京太郎(『これぞ』って手が来るまでは攻めてこない)
京太郎(ついでに言うと、技術はそれほどじゃあ……ない)
京太郎(風牌と混一色が使えない状況だと、結構速度に影響が出てるみたいだな)
京太郎(ま……)
京太郎(ここで俺が安い手を積み重ねて連荘する分には……)
京太郎(向こうにとっても本意なんだろうけどな)
麻雀の親の連荘は平均でおよそ2~3本場ほど。
京太郎がいかなる打ち手だとしても、この確率から大きく逸脱することはできない。
ただしこれは、尋常な場においての話である。
魔物級のオカルトにより支配され、決して引くことのできない牌や役。
さらには、和了を目指すことができない/やらない人間の存在。
これに京太郎自身の技術を換算すれば――
京太郎「――ツモ」
京太郎「2100オールだ」
――平常な場に比べて、連荘する可能性というのは大きく上昇する。
京太郎がそもそも、聴牌できない限り……。
他家が和了を目指さないのであれば、連荘が途切れることはない。
続く東四局二本場においても、京太郎は連荘を決める。
形式聴牌を取っただけ。
聴牌できない約一名を除き、全員が聴牌。
そして、東四局三本場に突入する――。
東四局目一本場~二本場・結果
京太郎:79800 (+7300)
ハギヨシ:92800 (-1100)
竜田(金髪):138100 (-5100)
下足(黒髪):89300 (-1100)
京太郎(来た――勝負手が)
京太郎(好配牌だ)
京太郎(トイトイ、三暗刻、役牌……いや、もっと伸ばせる)
京太郎(ツモり四刻刻まで……伸ばせるのに……)
京太郎(だけど……クソッ)
京太郎(手が、入らねえ……!)
ここまでの局はすでに、9局。
前回苦渋を飲まされた、オーラスと同じ状況。
ツモの半分が、無駄になるのである。
唯一まだマシなのは、黒髪の少女が和了を目指しては居ないこと。
そうであったのならば、京太郎がこうも苦しいツモを行う間に……。
とっくのとうに、流されているであろう。
京太郎の連荘が続き、南入りしたのなら。
ここから「最低でも、黒髪の少女に親が回るまでに経過した局数は12局。
ほとんど彼女以外誰も、聴牌すらままならなくなる。
後に待ち受けるのは、虐殺のみ。
それがわかっているからこそ彼女は、追いつかれた今となっても……まだ、動かない。
結果……。
京太郎「……聴牌」
ハギヨシ「聴牌です」
下足「ノーテン」
竜田「……ノーテン」
せっかくの好配牌も、生かせない。
打点を下げての副露を行っての聴牌をとっても。
それでも、和了が叶わなかった。
最終的にはトイトイ、役牌。
それでも、誰も振込みはしなかった。
東四局目三本場・結果
京太郎:81300 (+1500)
ハギヨシ:94300 (+1500)
竜田(金髪):136600 (-1500)
下足(黒髪):87800 (-1500)
京太郎(……で、次はこれか)
二四六萬 ①⑤⑦⑦⑨筒 11248索 ドラ:1
京太郎(……悪夢だな)
京太郎(リャンカン2つで、ペンチャン対子……)
京太郎(そのくせ、ドラは乗ってる……)
京太郎(苦しいな……苦しいぜ、これ)
京太郎(面前で進めるしかないのに……その面前が難しいなんてな)
京太郎(叩けば……テンパイぐらいはできるか?)
顔が歪む。
思わず、ポーカーフェイスを忘れるほどである。
舌打ちひとつ、したくなるほど。
ままならない状況――それは、多々あった。
これまでの麻雀人生でも、数えきれないほど。
さながら、今まで食べたパンの枚数と同じくらいだ。
悔やむより先に考える。嘆くより先に考える。呻くより先に考える。
それが、京太郎の流儀だ。
スタイルだ。
『運に妙な期待をするな』――『LESSON1』。
運に不平を言うよりも先に、己に出来ることを考察しろ。分析しろ。実行しろ。
どうせ、“それ”は京太郎の及ばないところで起きるのである。
それに一喜一憂するよりも、如何に勝つかを――負けぬかを考える方が遥かに建設的。
そんなことは、理解していた。理解はしていたが――。
京太郎(クソッ、タレ……!)
『納得』できるかはまた、別の問題だ。
頭では解っていながらも、心では割り切れない。
良い配牌を引けば、高い打点で和了すれば、見事に相手を射抜ければ――素直に嬉しいし、
ツモが悪ければ、安手で流されれば、直撃を受ければ――悔しい。
それが、麻雀の楽しさであると思っている。
だけれども――。
京太郎(何も、こんなところで来なくても……いいじゃあねえか)
打点が必要な場面で。ひとつでも多く和了が必要な場面で。
これは、あんまりだった。
無為に局を積み重ねれば、その分、黒髪の少女の支配は強まる。
南に入る前に、高打点での和了が必要なのだ。
そうでなくとも、他家全員がノーテンでもない限り、流局よりは大抵の和了の方が上。
形式聴牌では、足りないのだ。
なのに……。
京太郎(どうすりゃあ、いい?)
京太郎(どうすりゃあ、俺はこいつらに勝てる?)
京太郎(やっぱり……人間じゃあ、勝てないのか……?)
京太郎(こいつらの言う通りだって――証明するしか、ないのか?)
京太郎(俺は……)
そんな、弱い考えが浮かんだ。
心に、絶望が訪れる。
首筋を這い上がる、灼け付くような焦燥感。
指先が痺れて来るのだ。泣きたくさえ、なってくる。
焦りが、思考を鈍らせる。それにまた焦り、悪循環で思考が乱れる。
“眼”と“記憶”と“分析”を酷使し、集中力も限界近く。そこにきて、これだ。
思考を回す事が、唯一の――人間である京太郎の生きる道。
ここに来て、その道すら閉ざされようとしていた。
京太郎は、諦めに心を――
穏乃『京太郎はさ』
穏乃『もっと、笑った方がいいと思うよ?』
――閉ざされ、なかった。
◇ ◆ ◇
穏乃『そう。笑顔だよ、笑顔』
穏乃『いっつも、難しそうな顔してるでしょ?』
穏乃『……あ、うん。判ってる』
穏乃『京太郎が打つのはそーいう麻雀だってのは……そうじゃなきゃ、勝ちにくいってのは』
穏乃『……うん』
穏乃『別に、京太郎にその麻雀をやめろって言ってる訳じゃないんだ』
穏乃『そんなつもりは、ないよ』
穏乃『ただ……』
穏乃『うーん、なんて言うのかな……えっとさ』
穏乃『もっと、麻雀自体を楽しんでもいいんじゃないかなって』
穏乃『ああ』
穏乃『そりゃ、勝った方が嬉しいし楽しいってのは当たり前』
穏乃『だから別に……楽しければ負けてもいい、なんて言わないよ』
穏乃『だってやっぱり、負けたら悔しいんだ。当然だって、そりゃ』
穏乃『でも……』
穏乃『あー、なんて言うんだろうなー』
穏乃『楽しければ負けてもいいってのはやっぱりどっか嘘だけどさ……』
穏乃『勝つために楽しさを捨てるのも間違いじゃないか……って』
穏乃『そんな風に、思ってるんだよね』
穏乃『うぇへへ……何が言いたいか判らないって?』
穏乃『ごめん。うん、ごめん』
穏乃『うーん……そうだね。だから、分かりやすく言うよ』
穏乃『――私は、京太郎が笑ってる方が好きだ!』
穏乃『そうだよ……折角、笑顔が似合うんだからさ!』
穏乃『絶対、京太郎は笑ってた方がいいって!』
穏乃『うん!』
穏乃『無理にそうしろなんて、言わないけど……』
穏乃『勝ちを目指しながら、笑顔で楽しめるようになっちゃえばいいんだよ!』
穏乃『だって勿体ないよ。京太郎が、笑わないなんてさ』
穏乃『「無責任」って……たはは。ごめん、確かにそうだね』
穏乃『でも、私は京太郎の笑顔が好きだよ?』
穏乃『だから、やってて欲しいなー……ってさ』
穏乃『そう?』
穏乃『そっか……うん、よかった』
穏乃『うん、そうだって! 絶対京太郎は笑ってる方がいいよ!』
穏乃『私が保証するよ! 絶対それがいい!』
穏乃『……へ?』
穏乃『うぇ!?』
穏乃『ふぁっ!? ち、違う違う! そーゆー意味で言ったんじゃないからね!?』
穏乃『あう、ち、違うってば……! 違うよ!』
穏乃『や、違う……あううううううううううう』
穏乃『あー、もう……!』
穏乃『笑顔が似合うって言ったけど、その悪い顔は禁止!』
穏乃『禁止!』
◇ ◆ ◇
京太郎(――ああ、そうだよな)
京太郎(俺自身が楽しまなくて、どうするんだよ)
京太郎(そうだ)
京太郎(辛い顔をしている奴が言う言葉で説得力があるのなんて、腹痛の言い訳ぐらいしかない)
京太郎(……ああ)
京太郎(あの試合。穏乃は笑ってた)
京太郎(絶望的な状況だとしても――あいつは、笑ってた)
瞳を閉じて、天を仰ぐ。
――須賀京太郎に豪運はない。
――須賀京太郎には華がない。
――須賀京太郎は魔物じゃあない。
だから、どうした。
そんなことは、判り切っているじゃあないか。
それでも――それだからこそ。
前を向いて、笑うのだ。
京太郎(……ああ)
京太郎(牌に好かれることも、神様からの愛も……)
京太郎(不思議な能力も、判りやすい華もいらない)
京太郎(俺には――この、勇気があればいい)
京太郎(穏乃、お前の勇気を……強さを、貰うぜ)
京太郎(辛くて苦しい。苦くて悲しい)
京太郎(――だから、どうした!)
京太郎(大切なものは、ここにある……!)
京太郎(そうだ! 俺は、ここに持ってる!)
京太郎(一さんに信じられた、俺の生き方は……! 努力は……!)
京太郎(これがなくちゃ、生かせない!)
京太郎「――ふ、く」
京太郎「くくく……あはははは!」
竜田「……何?」
下足「気でも、狂ったんですか?」
京太郎「いや……さあ」
京太郎「麻雀って、楽しいなって思ってな」
竜田「……は?」
下足「……」
京太郎「お前らは――麻雀、楽しんでるか?」
最終更新:2013年09月22日 17:42