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**アポロ・M・シバムラ@玄霧藩国様からのご依頼品
『英吏の朝帰り疑惑』
作:11-00230-01 玄霧弦耶
/*/
『チッ・・・チッ・・・チッ・・・』
なんともいえない沈黙が流れる。
『チッ・・・チッ・・・チッ・・・』
英吏とアポロが互いに顔を赤くしながらお互いの様子を伺っている。
かれこれ5分は続いただろうか。
恐らく、当人達にとっては無限ともいえる時間だっただろう。
「・・・あー」
「・・・えっと」
同時に口を開く。
そして
「先にどうぞ」
「や、英吏さんのほうで」
『チッ・・・チッ・・・チッ・・・』
また、沈黙が流れる。
双方共に相手を苦手としているわけではない。
むしろその逆のためにこのような状況に陥っている。
この状況を説明するには、一時間ほど時間を撒き戻す必要がある。
/*/
およそ、一時間前。
アポロが倒れたと聞いて文字通り飛んできた英吏がアポロとの逢瀬を終え、相手の体調を気遣って帰ろうとした頃、事件は起こった。
「では、様子を見に着ただけなので。今日はこの辺で失礼します」
と、言った英吏に、アポロが思わず言った一言が原因である。
「あ、あの、もう少し・・・」
直前のキスの照れもあったのか、単純にもう少し居たかったのかは判らないが、つい、口にしてしまった。
だが、しかし。
英吏には大ダメージであった。おもに、良心とかそういうところに。
そして結局。もう少し残ることになった。
これが全ての原因であった。
…さて。残ったはいいが、微妙に気まずい。
ありていに言って、英吏には会話のネタがなくなった。
アポロといえば、つい呼び止めてしまった自分が恥ずかしくて話せなくなっている。
「あー・・・。そういえば。薬は?」
英吏がやっと紡ぎだした言葉は、当たり障りの無い無難なところであった。
「ええと、薬はまだ飲んでないです」
「そうか。常備薬はあるか?取ってこよう」
場を取り持つ為に薬を取ってこようとする。
が、しかし
「あの、今日ご飯食べてないからお薬は・・・」
「そ、そうか。すまん」
撃沈であった。
そして、キッチリ10秒後。二人で少しだけ笑った。
「あはは、なんだか変な感じですね」
「そうだな。すまん」
「なんか今日の英吏さん、謝ってばかり」
「そうか?」
それで場の空気が緩んだのか、二人は最近のことを語りだす。
ISSで起こったこと。国内で起こったこと。
会えなかった間のことを埋めあうように、穏やかな時間を過ごす。
そして、10分、20分とすぎ、一時間ほど立ったころ、英吏は思い出した。
帰りの足がなくなったのである。
更に、英吏が時間を確認するために目線を向けた時計を、アポロも見てしまった。
日付が変わっていた。
/*/
『チッ・・・チッ・・・チッ・・・』
冒頭に、戻る。
英吏もアポロもなんとなく切り出せないのであった。
英吏としては帰るにも交通手段がなくなり、どうしたものかという訳である。
アポロとしては、泊まっていくのはまったく持って問題ないが、違う意味(主に精神面的な意味)で問題があるわけであった。
「あー・・・その、いいでしょうか」
「は、はい!どうぞ!」
沈黙を破り、英吏が切り出す。
不意に声をかけられ少し声が裏返りつつ答えたアポロが真っ赤になって英吏をみる。
「もう日付も変わりましたので。そろそろ帰ろうかと」
「あ、で、でも、もう帰るにもその・・・」
「はい、でもまぁ、なんとかなりますので」
「あ、あのっ!」
そう言って家を出ようとするところを引き止められ、振り返る英吏。
アポロが顔を赤くしながらコッチを見ていた。
「その、英吏さんがよければ、と、とま・・・」
アポロ、このとき目が@@である。
@@であるが故に、いつもではいえないことを言おうとした。
だが。
「まだ、そういうわけには行きません。では」
そう言って英吏は微笑みながら去っていった。
一方、アポロは勢いで言ってしまったセリフの意味を自分で理解して更に@@していた。
この次に会う時にはもっと大変な告白をするのだが、ソレはまた別の話。
この日のアポロは、ひとしきり暴れた(というか悶えた)あと、気絶するように眠ったのであった。
ちなみに英吏のほうは、玄霧藩国のはずれで野営の準備をしていた。
こっちはこっちで色々考えつつ、心を落ち着けるのに必死になりながら一晩を過ごすのであった。
/*/
そして、次の日。
一方英吏は朝日が登る前に起床し、ISS本部へと帰還した。
『「あの」英吏が朝帰りをした』とのことでISS中の噂になり、様々な仮説がたったが、本人が至って普通に振舞っていた為、終ぞ謎は明らかにされなかった。
ただ、いくつかの情報が残されている。
決死の覚悟でインタビューを試みたレポーター(自称)曰く。
「そうねー。なんだか据え膳を食べ損ねたとかー?」
帰還したところを目撃した職員が言うには。
「妙にくたびれた顔で帰ってきてたので、一日がかりで急な仕事をこなしてたのかと思いました」
また、とある職員が言うには。
「なんというか少し上の空というか。食欲もまだ戻ってないみたいなので心配ですね」
とのことである。
謎が謎を呼ぶ英吏の朝帰り疑惑であったが、激務であるISSでは、数日もすれば表立っての話題からは消えると思われた。
英吏本人はそんな噂も気にせず、職務に励んでいた。
一方その頃。アポロは快適に目を覚ましていた。
英吏に会えたことが原因か、体調が急激によくなっていたのである。
少し伸びをし、軽い朝食の準備をする。少しは食欲も戻っていた。
一息ついてから、昨夜の出来事を思い出し、真っ赤になる。
ISSにくらべこちらは、相変わらず平和であった。
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感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)
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ご発注元:アポロ・M・シバムラ@玄霧藩国様
http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one&namber=1203&type=1178&space=15&no=
製作:玄霧弦耶@玄霧藩国
http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1497;id=UP_ita
引渡し日:
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作:11-00230-01 玄霧弦耶
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『チッ・・・チッ・・・チッ・・・』
なんともいえない沈黙が流れる。
『チッ・・・チッ・・・チッ・・・』
英吏とアポロが互いに顔を赤くしながらお互いの様子を伺っている。
かれこれ5分は続いただろうか。
恐らく、当人達にとっては無限ともいえる時間だっただろう。
「・・・あー」
「・・・えっと」
同時に口を開く。
そして
「先にどうぞ」
「や、英吏さんのほうで」
『チッ・・・チッ・・・チッ・・・』
また、沈黙が流れる。
双方共に相手を苦手としているわけではない。
むしろその逆のためにこのような状況に陥っている。
この状況を説明するには、一時間ほど時間を撒き戻す必要がある。
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およそ、一時間前。
アポロが倒れたと聞いて文字通り飛んできた英吏がアポロとの逢瀬を終え、相手の体調を気遣って帰ろうとした頃、事件は起こった。
「では、様子を見に着ただけなので。今日はこの辺で失礼します」
と、言った英吏に、アポロが思わず言った一言が原因である。
「あ、あの、もう少し・・・」
直前のキスの照れもあったのか、単純にもう少し居たかったのかは判らないが、つい、口にしてしまった。
だが、しかし。
英吏には大ダメージであった。おもに、良心とかそういうところに。
そして結局。もう少し残ることになった。
これが全ての原因であった。
…さて。残ったはいいが、微妙に気まずい。
ありていに言って、英吏には会話のネタがなくなった。
アポロといえば、つい呼び止めてしまった自分が恥ずかしくて話せなくなっている。
「あー・・・。そういえば。薬は?」
英吏がやっと紡ぎだした言葉は、当たり障りの無い無難なところであった。
「ええと、薬はまだ飲んでないです」
「そうか。常備薬はあるか?取ってこよう」
場を取り持つ為に薬を取ってこようとする。
が、しかし
「あの、今日ご飯食べてないからお薬は・・・」
「そ、そうか。すまん」
撃沈であった。
そして、キッチリ10秒後。二人で少しだけ笑った。
「あはは、なんだか変な感じですね」
「そうだな。すまん」
「なんか今日の英吏さん、謝ってばかり」
「そうか?」
それで場の空気が緩んだのか、二人は最近のことを語りだす。
ISSで起こったこと。国内で起こったこと。
会えなかった間のことを埋めあうように、穏やかな時間を過ごす。
そして、10分、20分とすぎ、一時間ほど立ったころ、英吏は思い出した。
帰りの足がなくなったのである。
更に、英吏が時間を確認するために目線を向けた時計を、アポロも見てしまった。
日付が変わっていた。
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『チッ・・・チッ・・・チッ・・・』
冒頭に、戻る。
英吏もアポロもなんとなく切り出せないのであった。
英吏としては帰るにも交通手段がなくなり、どうしたものかという訳である。
アポロとしては、泊まっていくのはまったく持って問題ないが、違う意味(主に精神面的な意味)で問題があるわけであった。
「あー・・・その、いいでしょうか」
「は、はい!どうぞ!」
沈黙を破り、英吏が切り出す。
不意に声をかけられ少し声が裏返りつつ答えたアポロが真っ赤になって英吏をみる。
「もう日付も変わりましたので。そろそろ帰ろうかと」
「あ、で、でも、もう帰るにもその・・・」
「はい、でもまぁ、なんとかなりますので」
「あ、あのっ!」
そう言って家を出ようとするところを引き止められ、振り返る英吏。
アポロが顔を赤くしながらコッチを見ていた。
「その、英吏さんがよければ、と、とま・・・」
アポロ、このとき目が@@である。
@@であるが故に、いつもではいえないことを言おうとした。
だが。
「まだ、そういうわけには行きません。では」
そう言って英吏は微笑みながら去っていった。
一方、アポロは勢いで言ってしまったセリフの意味を自分で理解して更に@@していた。
この次に会う時にはもっと大変な告白をするのだが、ソレはまた別の話。
この日のアポロは、ひとしきり暴れた(というか悶えた)あと、気絶するように眠ったのであった。
ちなみに英吏のほうは、玄霧藩国のはずれで野営の準備をしていた。
こっちはこっちで色々考えつつ、心を落ち着けるのに必死になりながら一晩を過ごすのであった。
/*/
そして、次の日。
一方英吏は朝日が登る前に起床し、ISS本部へと帰還した。
『「あの」英吏が朝帰りをした』とのことでISS中の噂になり、様々な仮説がたったが、本人が至って普通に振舞っていた為、終ぞ謎は明らかにされなかった。
ただ、いくつかの情報が残されている。
決死の覚悟でインタビューを試みたレポーター(自称)曰く。
「そうねー。なんだか据え膳を食べ損ねたとかー?」
帰還したところを目撃した職員が言うには。
「妙にくたびれた顔で帰ってきてたので、一日がかりで急な仕事をこなしてたのかと思いました」
また、とある職員が言うには。
「なんというか少し上の空というか。食欲もまだ戻ってないみたいなので心配ですね」
とのことである。
謎が謎を呼ぶ英吏の朝帰り疑惑であったが、激務であるISSでは、数日もすれば表立っての話題からは消えると思われた。
英吏本人はそんな噂も気にせず、職務に励んでいた。
一方その頃。アポロは快適に目を覚ましていた。
英吏に会えたことが原因か、体調が急激によくなっていたのである。
少し伸びをし、軽い朝食の準備をする。少しは食欲も戻っていた。
一息ついてから、昨夜の出来事を思い出し、真っ赤になる。
ISSにくらべこちらは、相変わらず平和であった。
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感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)
- あー。素晴らしいです。ありがとうございます。きっと本当にあったことよりちょっと素敵な感じになってて!良い思いをさせていただきました! -- アポロ (2008-09-27 23:06:57)
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