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NO.61 高神喜一郎さんからの依頼 -どれだけの言葉にすれば、俺の想いは伝わるんだろう…どれだけ想えば…-  ***** 自分のことを「俺」と言う、勇ましくも美しい女性-高神喜一郎は両手を広げ愛おしい人に抱き着いた。 広い胸。大きな存在。 なにもかもが、安心する。 そして、巡る不安。 黒オーマであり、彼女の想い人であるバロは「抱きしめさせて、貰います」と言った高神に「ははは。よし」と答えて、されるがまま高神の行動を見ていた。 高神はバロを抱きしめる腕を背中まで回し、バロの肩に自分の顎を乗せる。 そんな高神を見るバロの表情を、彼女は見ることは出来ずにいた。 「どうした?」 と、自分の肩に顎を乗せてきた高神に尋ねるバロ。 高神は、何か安心したような声音で答えた。 「…バロの匂いが、します」 「父でも恋しくなったか?」 「違います!」 (何故、この人はこうもっ) なんと言えば伝わるんだろう? バロに父親の存在など、重ねたことなど無いのに。 伝えたい言葉がたくさんありすぎて、一瞬口をつぐむ高神。 そして口をついて出た言葉は- 「バロは、父上に…その、欲情するんですか?!」 さすがのバロも、高神のこの発言によろけ、そんなバロを高神は沈まないよう浮力使って支た。 「熱射病ですか?」 「いや、欲情というのがなんとも…女になるとそうなのか?」 バロは不思議そうに、自分を支える女性を見た。 (う…) 何か間違えたか?と思いながら、少し高神の声が上ずる。 「…好意というのとは、違うと思いまして。どうなんでしょう。男でも女でも、好きだという気持ちは変わらないと思いますが」 「ふむ」 少し不安がった高神の心が見えたのだろうか。それとも違うことを思ってなのかは窺い知れないが、バロは高神を抱きしめかえしてみた。 そんなバロを抱きしめる腕に力を込め、抱き返す高神。 抱きしめ返してきた高神にふと笑った後、優しくその髪に触れた。 髪に触れるバロの手が気持ちいい。 でも、高神にはバロの行為の意味が読み取れずにいた。 「…?どう、されました」 「昼飯でも食うか」 「はい」 抱きしめ合っていた身体を離し、昼食の為海岸へ戻る二人。 食事の用意をしながら高神は言った。 「…あ、あーんさせてください!今日は、バロの好物を食べましょうね。前何も食べられなかったから」 何かをはぐらかすように笑ってうなずくバロ。 「…あーん、しますよ?絶対しますから、口開かなかったら、何でもしますから!」 少しムキになった高神を子供を見るような優しい笑みで見詰めながら「分かった分かった」と答えるバロ。 「カキ氷とかも、食べましょうね」 と懐くように笑ってくる高神を見てバロは笑っている。 そしてあることに気付いた高神は顔を赤らめ少し視線を逸らした。 「…あ、一応、食べる時は水着使ってください」 バロがまだ全裸だったのだ。 そんな高神の様子に微かに笑みを零し「世話焼きだな」と言いながらバロは濡れた肌に鎧下を着た。 「バロだから色々したいんです。吸うじゃないですかー!!塩もふくし!!」 それに…と口の中で呟いた。 「……いやらしい目で、見ますよ?」 じと目でバロを見る高神。しかしバロはそんな高神の目線など受け流す。 「見たからどうしたんだ」 バロは笑っている。 そんなバロを歯痒そうに見詰め、高神は言った。 「…俺が欲情します」 「見るだけでは何も出来ん」 「では実力行使に」 「間違ったら頭を叩いてやる。ははは」 むむー、と眉をしかめる高神はバロに襲いかかってみた。おおそとがりで押し倒し、脇をくすぐる。 バロは抵抗などせず、二人はそのまま砂浜に倒れた。 高神はバロの腹の上に跨り「…ほら、出来ますよ」と、のしかかったまま、言った。 黒のビキニ姿で自分に跨がってきた高神をバロは見上げていた。どこか優しそうに。 その優しい瞳が逆に高神を焦らせ、不安にさせる。 「……うー」 「なにをそんなに焦っている?」 「…バロが、眠るなんていうからです。今日だって、俺は墓参りだって覚悟して、来て…」 溢れ出す不安。 一度溢れ出てきたものを、もう止めることは出来なかった。 女性の身体になり、豊かになった胸を喘がせ、気付かず涙が混じる声で必死に訴える。 「なのに貴方は、俺なんかのために、賭けをして、青森まで来て」 それは、高神が抱えていた、不安だった。 「貴方の生き方は好きです。でも、焦る」 そう言って自嘲気味に笑う高神。 「俺はまだまだ、若いですね」 そんな高神を見て、バロは目を泳がせた。 「まあ、若いな」 高神にバロの言葉が耳に入っていたかは判らない。ただバロの頬を両手で挟んでこっちを向かせた。 「バロが死んだら、俺は悲しいです。それだけ覚えておいてください」 ポタリ、と落ちた滴。 それがまだ渇き切っていなかった海水なのか、高神の涙かは判らない。 ただ、バロはそんな高神を見たいわけではなかった。だからこう言った。 「胸が張ってるぞ」 きっと高神が恥ずかしがってよけると思っていた。 しかし。 高神は胸を押し付けてきた。 そんな高神の行動にバロは意外な顔をし、彼は驚いた後「まだまだ子供だな」と言って笑った。 そして-バロは高神を抱きしめたのだった。 【終わり】 ---- 御発注主:高神喜一郎@紅葉国様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=120;id=gaibu_ita 製作:涼華@海法よけ藩国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=308;id=UP_ita 引渡し日: ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|
NO.61 高神喜一郎さんからの依頼 -どれだけの言葉にすれば、俺の想いは伝わるんだろう…どれだけ想えば…-  ***** 自分のことを「俺」と言う、勇ましくも美しい女性-高神喜一郎は両手を広げ愛おしい人に抱き着いた。 広い胸。大きな存在。 なにもかもが、安心する。 そして、巡る不安。 黒オーマであり、彼女の想い人であるバロは「抱きしめさせて、貰います」と言った高神に「ははは。よし」と答えて、されるがまま高神の行動を見ていた。 高神はバロを抱きしめる腕を背中まで回し、バロの肩に自分の顎を乗せる。 そんな高神を見るバロの表情を、彼女は見ることは出来ずにいた。 「どうした?」 と、自分の肩に顎を乗せてきた高神に尋ねるバロ。 高神は、何か安心したような声音で答えた。 「…バロの匂いが、します」 「父でも恋しくなったか?」 「違います!」 (何故、この人はこうもっ) なんと言えば伝わるんだろう? バロに父親の存在など、重ねたことなど無いのに。 伝えたい言葉がたくさんありすぎて、一瞬口をつぐむ高神。 そして口をついて出た言葉は- 「バロは、父上に…その、欲情するんですか?!」 さすがのバロも、高神のこの発言によろけ、そんなバロを高神は沈まないよう浮力使って支た。 「熱射病ですか?」 「いや、欲情というのがなんとも…女になるとそうなのか?」 バロは不思議そうに、自分を支える女性を見た。 (う…) 何か間違えたか?と思いながら、少し高神の声が上ずる。 「…好意というのとは、違うと思いまして。どうなんでしょう。男でも女でも、好きだという気持ちは変わらないと思いますが」 「ふむ」 少し不安がった高神の心が見えたのだろうか。それとも違うことを思ってなのかは窺い知れないが、バロは高神を抱きしめかえしてみた。 そんなバロを抱きしめる腕に力を込め、抱き返す高神。 抱きしめ返してきた高神にふと笑った後、優しくその髪に触れた。 髪に触れるバロの手が気持ちいい。 でも、高神にはバロの行為の意味が読み取れずにいた。 「…?どう、されました」 「昼飯でも食うか」 「はい」 抱きしめ合っていた身体を離し、昼食の為海岸へ戻る二人。 食事の用意をしながら高神は言った。 「…あ、あーんさせてください!今日は、バロの好物を食べましょうね。前何も食べられなかったから」 何かをはぐらかすように笑ってうなずくバロ。 「…あーん、しますよ?絶対しますから、口開かなかったら、何でもしますから!」 少しムキになった高神を子供を見るような優しい笑みで見詰めながら「分かった分かった」と答えるバロ。 「カキ氷とかも、食べましょうね」 と懐くように笑ってくる高神を見てバロは笑っている。 そしてあることに気付いた高神は顔を赤らめ少し視線を逸らした。 「…あ、一応、食べる時は水着使ってください」 バロがまだ全裸だったのだ。 そんな高神の様子に微かに笑みを零し「世話焼きだな」と言いながらバロは濡れた肌に鎧下を着た。 「バロだから色々したいんです。吸うじゃないですかー!!塩もふくし!!」 それに…と口の中で呟いた。 「……いやらしい目で、見ますよ?」 じと目でバロを見る高神。しかしバロはそんな高神の目線など受け流す。 「見たからどうしたんだ」 バロは笑っている。 そんなバロを歯痒そうに見詰め、高神は言った。 「…俺が欲情します」 「見るだけでは何も出来ん」 「では実力行使に」 「間違ったら頭を叩いてやる。ははは」 むむー、と眉をしかめる高神はバロに襲いかかってみた。おおそとがりで押し倒し、脇をくすぐる。 バロは抵抗などせず、二人はそのまま砂浜に倒れた。 高神はバロの腹の上に跨り「…ほら、出来ますよ」と、のしかかったまま、言った。 黒のビキニ姿で自分に跨がってきた高神をバロは見上げていた。どこか優しそうに。 その優しい瞳が逆に高神を焦らせ、不安にさせる。 「……うー」 「なにをそんなに焦っている?」 「…バロが、眠るなんていうからです。今日だって、俺は墓参りだって覚悟して、来て…」 溢れ出す不安。 一度溢れ出てきたものを、もう止めることは出来なかった。 女性の身体になり、豊かになった胸を喘がせ、気付かず涙が混じる声で必死に訴える。 「なのに貴方は、俺なんかのために、賭けをして、青森まで来て」 それは、高神が抱えていた、不安だった。 「貴方の生き方は好きです。でも、焦る」 そう言って自嘲気味に笑う高神。 「俺はまだまだ、若いですね」 そんな高神を見て、バロは目を泳がせた。 「まあ、若いな」 高神にバロの言葉が耳に入っていたかは判らない。ただバロの頬を両手で挟んでこっちを向かせた。 「バロが死んだら、俺は悲しいです。それだけ覚えておいてください」 ポタリ、と落ちた滴。 それがまだ渇き切っていなかった海水なのか、高神の涙かは判らない。 ただ、バロはそんな高神を見たいわけではなかった。だからこう言った。 「胸が張ってるぞ」 きっと高神が恥ずかしがってよけると思っていた。 しかし。 高神は胸を押し付けてきた。 そんな高神の行動にバロは意外な顔をし、彼は驚いた後「まだまだ子供だな」と言って笑った。 そして-バロは高神を抱きしめたのだった。 【終わり】 ---- **作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) #comment(,disableurl) ---- 御発注主:高神喜一郎@紅葉国様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=120;id=gaibu_ita 製作:涼華@海法よけ藩国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=308;id=UP_ita 引渡し日: ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|

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