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*あおひと@避け藩国様からの依頼より あおひとは波止場で待っていた。  ただ、彼の無事を祈って、待っていた。 /*/  善行が戦場に出たのは、つい一月前の事である。  どこで戦うか、何と戦うのかも、軍機と言う事で聞かされなかった。  ただ、あおひとは待つ事しかできなかった。  大丈夫、あの人は大丈夫。いつも死ぬかもしれないと言っておきながら、ちゃんと帰ってきたじゃない。だから大丈夫。  何度も何度もそう繰り返し自分に言い聞かせてきた。  船が入港した。  あおひとはタラップから少し離れた所で、彼が出てくるのを待った。  人波が来た。  あおひとはもみくちゃにされながらも、彼の姿を探した。 「た、忠孝さんどこですかー?」  返事はなかった。  人波が静まった後、次は棺桶が流れてきた。  あおひとはぞっとした顔をし、棺桶を片っ端から調べ始めた。  幸か不幸か、善行の名前は見つからない。  あおひとは手を合わせた後、船の事務局に走っていった。 /*/  乗員名簿には彼の名前は載っていなかった。  不安になり、入港した船に乗ろうとして……。  ようやく会いたかった顔をみつけた。 「っ?! あ、あの……だいじょうぶですか?」  あおひとは善行を見た。  久々に会えた彼の右眼は包帯で覆われている。  その包帯の上に帽子を被っており、彼のトレードマークのあごひげは剃られていた。  あおひとはどう言おうか悩み、思わず零れた涙を拭いて顔を上げた。 「え、えっと、あの、その……違う、そうじゃなくて……おかえりなさい、忠孝さん」  泣き笑いをするあおひとに、善行は微笑みを返した。 「再会の言葉が大丈夫ですかには、少し驚きました」  善行が腕を広げた。  あおひとは迷わず、その腕の中に飛び込んだ。  あおひとはそのまま、善行の腕の中にぴったりと収まった。 /*/  久々の恋人の匂いに、善行は軽くめまいを覚えた。  あおひとが嫌と言う訳ではない。ただ色々と、主に理性の面で問題があるだけだった。 「手、繋いでいいですか?出来たら…恋人つなぎだと嬉しいのですけれど」  あおひとは照れながら、おずおずと手を差し出した。  善行は微笑を浮かべると、あおひとの手を取り、指を絡めた。 「どこに行きましょうか?えっと、私は忠孝さんと一緒にいれたらそれで幸せなのですけれど」  あおひとが笑う。 「私もどこでもいいんですけどね。まあ、歩きながら考えましょうか?」 「そうですね…あ、二人っきりになれるところだと嬉しいです…甘えられるので」  その言葉に、善行は顔を赤くした。 「まあ、甘えるくらいなら」 「えへへ、いっぱい甘えますから、覚悟してくださいね」  あおひとは無邪気に言う。  いかんいかん。善行は軽く首を振った。  こうして、二人並んで歩き出した。  しかし、善行にこの地の土地勘はない。辺りはどんどん人気がなくなっていっている。 「って、すみません。道をあまり知らないせいか。これでは寂しすぎるところですね。もう少し、人の大きなところに行きましょうか」 「いえ、構いませんよ。一緒に歩ける時間が増えたんですし……すいません、ここでいいです」  あおひとはそのままポンと善行に抱きついてきた。  善行は笑いながら、彼女を抱き締め返した。 「たしかにこれだと、人が少ないほうがいいですね」  善行は笑いながら、あおひとの耳元でささやいた。 「ただいま。今帰りました」 「はい、おかえりなさい」  善行の胸に、あおひとは顔をうずめた。 /*/  幸せだなあ。  あおひとは、善行の大きな手で頭を撫でられながらそう思った。  彼の大きな手も、匂いも、触れられる事も。  できれば、それが少しでも長く続きますように。  善行に身を任せながら、そう思った。 ---- 発注者:あおひと@避け藩国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=222;id=gaibu_ita 受注者:金村佑華@FEG http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=473;id=UP_ita ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|

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