「10駒地真子SS1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

10駒地真子SS1」(2007/09/25 (火) 12:37:31) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

竹内くんと赤鮭さまと男と女(小笠原テストゲームその5 竹内・赤鮭卓より) ―駒地真子さまに捧ぐ―   じりじりと照りつける太陽が、屋上のアスファルトを灼いていた。 時はそう、昼休み。 いわゆるお昼の時間。ランチタイムともいう。 チャイムがなると同時に、教室のドアが開いて、ひょこりと顔を出した少年。 「こんにちはー」 誰かがいるかを確認する前に、挨拶をしている。 とはいえ、そこにはすでに彼を待ち構えている人物が揃っていたため、問題なしともいえるが。 「やあ、竹内君。元気だねー」 「あ。先輩達ちゃんといましたね。弁当とか、もってるんですか?」 少年――竹内優斗が、目的の人物を見つけてたた、と駆け寄った。 その先にはユーラと駒地真子がいる。 二人は、笑顔で竹内を迎えた。 「もちろん。ちゃんと手作り弁当をここに」 「お弁当あるよー、一緒に食べようか?」 もともと、屋上でランチをするのが目的である。 お弁当を手ににこにことユーラが笑っていると、突然背後から人影が覆いかぶさった。 「悪いね。いつも俺のために」 いったいどこから湧いて来たのか、赤鮭がユーラの耳に息を吹きかけ、その手にあった弁当をとっていった。 「いや、赤鮭さんより竹内君のほうが好みですが。というか何勝手にお弁当取ってるんですか」 案外冷静なユーラ。 ちなみに駒地は『ああいう赤鮭先輩はいつものこと』と言わんばかりにあまり気にしていない。 ついでに、竹内にいたっては気がついてすらいない。 「あ。じゃあ僕もいっしょにお願いします。真子先輩」 まぶしい笑顔。 きっと効果音がつくとすれば『キラーン』である。 「嬉しいなあ。僕、先輩みたいな綺麗な人と食べれるのは大好きです」 竹内、とどめの爆弾を投下。 駒地は思わず、むせた。 「ん? なんか日本語違いますよね。すみません。舞い上がってるみたいで。へへへ」 「またまた、竹内君は口が上手いなあ」 竹内は竹内で、自分の言った言葉に照れている。 真っ赤になっている若人二人の横で、赤鮭はユーラに全力でセクハラをかましている。 ユーラもなんとか赤鮭の手を押さえつつ、竹内たちのほうに行こうとするが、さすがは赤鮭、手強い。 「赤鮭さん、とりあえずお弁当食べないと昼休みが、ってなにしてるんですかっ」 ユーラの正論もどこ吹く風で、赤鮭は楽しそうにユーラを剥いた。 さしもの竹内も、気づく。 「どうでもいいですけど、なんでユーラ先輩脱いでいるんですか?」 いや、どうでもよくはないだろう。 ここは、学校で、屋上で、しかも今昼休み。 ついでにユーラは男。赤鮭も男。 もし、ここに青カモメがいようものなら、『BL禁止! ちょー禁止!』とでも叫びそうなものである。 今はいないのであまり関係はない。 いるのは、まあ、少し天然な竹内だけである。 「不可抗力だから気にしないように」 赤鮭の手をひねりつつ竹内に言い聞かせるユーラ。 竹内は?マークを大量に浮かべている。 今度はその竹内に赤鮭が抱きついた。 そっこーで引き剥がしにかかるユーラ。 竹内の貞操は守らねばならないと思えば、力も出るというものだ。 「ユーラ先輩と赤鮭先輩って、ほんと仲いいですよね」 が、竹内はこんなことを言ってにこにこ笑っている。 ユーラ、ある意味報われず。 「…竹内君、抵抗しないの?」 「抵抗って、なんですか? 先輩。あ、そのうずらの卵おいしそうですね」 駒地も額におっきな汗をかきながら、竹内に聞いてみるが、当の本人はそんなことよりうずらの卵が気になっているようだ。 「やっぱりお前も竹内狙ってるのか?」 「お前もって、ダメですよ。赤鮭さんみたいに手当たり次第とは訳が違うんですから」 赤鮭とユーラの間でこっそりそんな会話が交わされているとも露知らず、竹内は駒地のうずらの卵をじぃっと見つめている。 駒地、苦笑しながら卵焼きとの交換を提案した。 竹内は嬉しそうにうずらの卵をもらい、幸せそうである。 「やっぱり、あの硬そうな尻が狙いなんだな。たしかにあれはいい」 「……真面目に答えたのがバカらしくなりました」 しかし、やっぱりこっそりとこんな会話は交わされているわけで。 さらに事件は竹内がうずらの卵の代わりの卵焼きを駒地に渡そうとしているときに起きた。 「竹内、お前の尻がユーラは大好きだそうだ!!」 「なにをぬかすかこの口は!」 赤鮭の爆弾発言。 竹内は10のダメージを受けた。 駒地は10の衝撃を受けた。(具体的にはお茶を吹いた) 卵焼きは箸から転げ落ち、竹内は盛大に倒れかけた。 ユーラ、すぐさま赤鮭をぶんなぐろうとするものの、一度言葉として発されてしまったものは取り消しが容易ではない。 「せ、先輩。僕男ですよ。どうみても、ほら、ほら」 竹内が、やや慌てた様子でシャツをまくり、テニスで鍛えた腕を見せている。 が、ガチの方には逆効果ではないのかとユーラ、こちらも慌てて竹内に言う。 「いや、うん。そうだね。というか赤鮭さんの前で見せないように」 「竹内君、赤鮭先輩のいつもの冗談だから、ね」 駒地も必死のフォローに走る。 赤鮭、超絶に楽しそうである。 「そ、そうですよね。あ、あははは。いや、僕単純だから、半分くらい信じかけました」 だが、そこは竹内優斗。もうあっさり流す。 笑いが多少乾いていたのは、まあ仕方ない。 というか、そんなこと言われて動揺しないのも何か嫌だ。 「とりあえず、竹内君のことはとても大事に思っているから、それだけは覚えておいてくれればいいな」 ユーラ、かなり真面目に言ったのだが、そこで邪魔をして楽しむのがこの赤鮭という人物である。 「純愛なんて今頃流行らないと思うがね」 そういいながら、静かにユーラの耳元へと顔を近づけた。 「さあ、いこうか。魂の解放区に」 「えっとー、まあ、赤鮭さんのは表現上だいぶ行きすぎが、というか間違ってるけどまあ、大好きだという部分だけは……って、人が真剣に告白をしようというのにその腰に回した手は何ですか」 「レッスン……」 あはははと笑い飛ばしたいのに笑い飛ばせない雰囲気があたりに漂う。 赤鮭の顔はわりと真顔だった。 ああ、もう、なんかこの人みたいになれたら楽かもと、ちょっと人としてダメなところに落ちかけるユーラ。 現実逃避ともいえる。 しかし、そこで再び爆弾発言投下。 今度の犯人は赤鮭ではなかった。 「ほんとにユーラ先輩は赤鮭先輩が好きなんだなあ」 少し寂しげに、笑いながらそう言ったのは、二人のやり取りを見ていた竹内優斗である。 「僕もそれぐらい人を好きになってみたいな。真子先輩。邪魔したら悪いですよ」 微妙な気まで使い出す始末である。 ユーラ、慌てて弁明を始める。 「いや、竹内君、君は何か重大な思い違いをしているぞ」 「あ、そうだ、僕とおかずの交換しませんか。あ、さっきやったっけ。あははは」 竹内はほとんどそれを聞いていない。 なぜか動揺したまま、また駒地におかず交換を持ちかけて、自分にツッコミを入れている。 「この人のことは何というかまあ、嫌いではないが好きというのとはまた違うわけで、それを言うなら竹内君の方が好きだから、うん」 赤鮭を指差しながら言うユーラは完全に本気なのだが、やっぱり竹内には届かない。 「別にユーラ先輩は気を使わないでいいですから!」 「えーと…竹内君、あの流れでどうすればそのような結論に…?」 「いきましょう。真子先輩。いきましょう。屋上とか」 竹内、やや泣きが入っている。 飛翔していく竹内の思考についていけず、ちょっと呆然としていた駒地。 とっさにフォローの言葉が思いつけない。 ユーラはといえば、なぜか赤鮭にがっちりホールドされてしまって全く動けなかった。 「駒地、がんばれ。俺はそろそろ駒地が幸せになっていい頃だと思っていた。ああ、今思いついた。心のそこから」 赤鮭、心の底から輝くような嫌な笑顔でそんなことをのたまわった。 じたばたとあばれるユーラをみて、子猫をいじめるのは燃える…と、人でなしのようなことを考える赤鮭。 どS、ここに極まれり。 「いやいやえっと…竹内君はかわいいんですけどこのままではユーラ君が色々と危険な気がっ」 屋上へ行こうと誘われた駒地、行きたいのはやまやまだったが、このままではユーラが本当に危険な気がする。 それゆえに出たこの台詞だったが、ネガティブ思考の坂道を転げ落ちている竹内には、全く別のとられ方をしてしまった。 「そっか……、真子先輩も赤鮭先輩が好きなんですね」 爆弾第二陣投下。 しかも、爆撃は止まらない。 「あははは。ごめんなさい。僕、いろんな人からにぶいって言われてて、言われてて……」 そこできらりと流れる一滴の涙。 「あれ、涙が」 「ちょ、なぜにその方向へーーーー!!??」 「だからなんでそうなるんだあぁぁっ!」 これには駒地も、何とか抜け出そうと赤鮭を睨みつけていたユーラも大絶叫である。 そりゃそうだろう。 一方の赤鮭はこれ以上ないくらいの幸せの絶頂にいたが、もうそんなことはどうでもいい。 竹内は、ダッシュでどこかに行ってしまった。 「待ってーー、色々と誤解だからーーー!!」 こういう子だから、かわいいとも思うんだけど!と思いつつ、思いっきりダッシュで追いかける駒地。 「ユーラ、泣かせるなんて本当にお前、悪い奴だな。駒地も駒地だ。あー。やだやだ。世の中はせちがらくてね」 わざとらしく溜息なんかつく赤鮭に、呆然としていたユーラも我に返った。 ここまで人を憎らしく思ったのは初めてかもしれない。 「………………赤鮭さん。ちょっと本気でいくんで、気をつけてください」 「いってらー」 一発食らわせてやろうと思ったところで、あっさり赤鮭はユーラを解放した。 いじめたおせて、もう十分満足したらしい。 手もひらひらさせていて、さっさと行けといわんばかりだ。 「絶対仕返ししてやるー」 そう心に秘めながら、ユーラも走った。 今は赤鮭にかまっている場合じゃない。 竹内を探さなくては。 ユーラは自分が半裸なのも忘れて、校内を走り回った。 駒地は屋上で竹内を見つけた。 その三分後、ユーラも屋上にやってくる。 「竹内君!」 息を整えて、駒地は呼びかける。 「竹内君、なんかいろいろありすぎて混乱してると思うけど、これから言うことを聞いてほしい」 こちらは服を直しながら、ユーラも呼びかけた。 「どうしたんですか、先輩」 まさか追いかけてくるとは思っていなかったのだろう。 竹内はやや無理に笑いながら、言った。 「もう、いいですから。真子先輩、それと、ユーラ先輩」 よくないのはこっちである。 ユーラも駒地も、口々に告げた。 「えと、その、僕が好きなのは赤鮭さんじゃなくて、竹内君だから。本当だから。それだけは覚えておいて。だから、みんなでお弁当食べよう」 「私も、竹内君が大事だから。じゃなきゃ、こうして追いかけてきてないよ。私もユーラ君も」 その言葉を、竹内はちょっとぱちくりとしながら聞いていた。 まるで恋人に向かって言うみたいなこというなあ……と思ったが、でもやっぱり好きと言われるのは普通に嬉しい。 だから、笑って言うことにした。 「え、あ、じゃあ、はい。食べましょう」 そして、最後にこうも言った。 「赤鮭先輩も呼んできますね」 「「よばなくていいーーー!!!」」 その悲鳴が屋上に響いたか否かは、小笠原の太陽だけが知っている。 END ---- ご発注元:駒地真子様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=42;id=gaibu_ita 製作;扇りんく@世界忍者国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=139;id=UP_ita 引渡し日:2007/ ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|
竹内くんと赤鮭さまと男と女(小笠原テストゲームその5 竹内・赤鮭卓より) ―駒地真子さまに捧ぐ―   じりじりと照りつける太陽が、屋上のアスファルトを灼いていた。 時はそう、昼休み。 いわゆるお昼の時間。ランチタイムともいう。 チャイムがなると同時に、教室のドアが開いて、ひょこりと顔を出した少年。 「こんにちはー」 誰かがいるかを確認する前に、挨拶をしている。 とはいえ、そこにはすでに彼を待ち構えている人物が揃っていたため、問題なしともいえるが。 「やあ、竹内君。元気だねー」 「あ。先輩達ちゃんといましたね。弁当とか、もってるんですか?」 少年――竹内優斗が、目的の人物を見つけてたた、と駆け寄った。 その先にはユーラと駒地真子がいる。 二人は、笑顔で竹内を迎えた。 「もちろん。ちゃんと手作り弁当をここに」 「お弁当あるよー、一緒に食べようか?」 もともと、屋上でランチをするのが目的である。 お弁当を手ににこにことユーラが笑っていると、突然背後から人影が覆いかぶさった。 「悪いね。いつも俺のために」 いったいどこから湧いて来たのか、赤鮭がユーラの耳に息を吹きかけ、その手にあった弁当をとっていった。 「いや、赤鮭さんより竹内君のほうが好みですが。というか何勝手にお弁当取ってるんですか」 案外冷静なユーラ。 ちなみに駒地は『ああいう赤鮭先輩はいつものこと』と言わんばかりにあまり気にしていない。 ついでに、竹内にいたっては気がついてすらいない。 「あ。じゃあ僕もいっしょにお願いします。真子先輩」 まぶしい笑顔。 きっと効果音がつくとすれば『キラーン』である。 「嬉しいなあ。僕、先輩みたいな綺麗な人と食べれるのは大好きです」 竹内、とどめの爆弾を投下。 駒地は思わず、むせた。 「ん? なんか日本語違いますよね。すみません。舞い上がってるみたいで。へへへ」 「またまた、竹内君は口が上手いなあ」 竹内は竹内で、自分の言った言葉に照れている。 真っ赤になっている若人二人の横で、赤鮭はユーラに全力でセクハラをかましている。 ユーラもなんとか赤鮭の手を押さえつつ、竹内たちのほうに行こうとするが、さすがは赤鮭、手強い。 「赤鮭さん、とりあえずお弁当食べないと昼休みが、ってなにしてるんですかっ」 ユーラの正論もどこ吹く風で、赤鮭は楽しそうにユーラを剥いた。 さしもの竹内も、気づく。 「どうでもいいですけど、なんでユーラ先輩脱いでいるんですか?」 いや、どうでもよくはないだろう。 ここは、学校で、屋上で、しかも今昼休み。 ついでにユーラは男。赤鮭も男。 もし、ここに青カモメがいようものなら、『BL禁止! ちょー禁止!』とでも叫びそうなものである。 今はいないのであまり関係はない。 いるのは、まあ、少し天然な竹内だけである。 「不可抗力だから気にしないように」 赤鮭の手をひねりつつ竹内に言い聞かせるユーラ。 竹内は?マークを大量に浮かべている。 今度はその竹内に赤鮭が抱きついた。 そっこーで引き剥がしにかかるユーラ。 竹内の貞操は守らねばならないと思えば、力も出るというものだ。 「ユーラ先輩と赤鮭先輩って、ほんと仲いいですよね」 が、竹内はこんなことを言ってにこにこ笑っている。 ユーラ、ある意味報われず。 「…竹内君、抵抗しないの?」 「抵抗って、なんですか? 先輩。あ、そのうずらの卵おいしそうですね」 駒地も額におっきな汗をかきながら、竹内に聞いてみるが、当の本人はそんなことよりうずらの卵が気になっているようだ。 「やっぱりお前も竹内狙ってるのか?」 「お前もって、ダメですよ。赤鮭さんみたいに手当たり次第とは訳が違うんですから」 赤鮭とユーラの間でこっそりそんな会話が交わされているとも露知らず、竹内は駒地のうずらの卵をじぃっと見つめている。 駒地、苦笑しながら卵焼きとの交換を提案した。 竹内は嬉しそうにうずらの卵をもらい、幸せそうである。 「やっぱり、あの硬そうな尻が狙いなんだな。たしかにあれはいい」 「……真面目に答えたのがバカらしくなりました」 しかし、やっぱりこっそりとこんな会話は交わされているわけで。 さらに事件は竹内がうずらの卵の代わりの卵焼きを駒地に渡そうとしているときに起きた。 「竹内、お前の尻がユーラは大好きだそうだ!!」 「なにをぬかすかこの口は!」 赤鮭の爆弾発言。 竹内は10のダメージを受けた。 駒地は10の衝撃を受けた。(具体的にはお茶を吹いた) 卵焼きは箸から転げ落ち、竹内は盛大に倒れかけた。 ユーラ、すぐさま赤鮭をぶんなぐろうとするものの、一度言葉として発されてしまったものは取り消しが容易ではない。 「せ、先輩。僕男ですよ。どうみても、ほら、ほら」 竹内が、やや慌てた様子でシャツをまくり、テニスで鍛えた腕を見せている。 が、ガチの方には逆効果ではないのかとユーラ、こちらも慌てて竹内に言う。 「いや、うん。そうだね。というか赤鮭さんの前で見せないように」 「竹内君、赤鮭先輩のいつもの冗談だから、ね」 駒地も必死のフォローに走る。 赤鮭、超絶に楽しそうである。 「そ、そうですよね。あ、あははは。いや、僕単純だから、半分くらい信じかけました」 だが、そこは竹内優斗。もうあっさり流す。 笑いが多少乾いていたのは、まあ仕方ない。 というか、そんなこと言われて動揺しないのも何か嫌だ。 「とりあえず、竹内君のことはとても大事に思っているから、それだけは覚えておいてくれればいいな」 ユーラ、かなり真面目に言ったのだが、そこで邪魔をして楽しむのがこの赤鮭という人物である。 「純愛なんて今頃流行らないと思うがね」 そういいながら、静かにユーラの耳元へと顔を近づけた。 「さあ、いこうか。魂の解放区に」 「えっとー、まあ、赤鮭さんのは表現上だいぶ行きすぎが、というか間違ってるけどまあ、大好きだという部分だけは……って、人が真剣に告白をしようというのにその腰に回した手は何ですか」 「レッスン……」 あはははと笑い飛ばしたいのに笑い飛ばせない雰囲気があたりに漂う。 赤鮭の顔はわりと真顔だった。 ああ、もう、なんかこの人みたいになれたら楽かもと、ちょっと人としてダメなところに落ちかけるユーラ。 現実逃避ともいえる。 しかし、そこで再び爆弾発言投下。 今度の犯人は赤鮭ではなかった。 「ほんとにユーラ先輩は赤鮭先輩が好きなんだなあ」 少し寂しげに、笑いながらそう言ったのは、二人のやり取りを見ていた竹内優斗である。 「僕もそれぐらい人を好きになってみたいな。真子先輩。邪魔したら悪いですよ」 微妙な気まで使い出す始末である。 ユーラ、慌てて弁明を始める。 「いや、竹内君、君は何か重大な思い違いをしているぞ」 「あ、そうだ、僕とおかずの交換しませんか。あ、さっきやったっけ。あははは」 竹内はほとんどそれを聞いていない。 なぜか動揺したまま、また駒地におかず交換を持ちかけて、自分にツッコミを入れている。 「この人のことは何というかまあ、嫌いではないが好きというのとはまた違うわけで、それを言うなら竹内君の方が好きだから、うん」 赤鮭を指差しながら言うユーラは完全に本気なのだが、やっぱり竹内には届かない。 「別にユーラ先輩は気を使わないでいいですから!」 「えーと…竹内君、あの流れでどうすればそのような結論に…?」 「いきましょう。真子先輩。いきましょう。屋上とか」 竹内、やや泣きが入っている。 飛翔していく竹内の思考についていけず、ちょっと呆然としていた駒地。 とっさにフォローの言葉が思いつけない。 ユーラはといえば、なぜか赤鮭にがっちりホールドされてしまって全く動けなかった。 「駒地、がんばれ。俺はそろそろ駒地が幸せになっていい頃だと思っていた。ああ、今思いついた。心のそこから」 赤鮭、心の底から輝くような嫌な笑顔でそんなことをのたまわった。 じたばたとあばれるユーラをみて、子猫をいじめるのは燃える…と、人でなしのようなことを考える赤鮭。 どS、ここに極まれり。 「いやいやえっと…竹内君はかわいいんですけどこのままではユーラ君が色々と危険な気がっ」 屋上へ行こうと誘われた駒地、行きたいのはやまやまだったが、このままではユーラが本当に危険な気がする。 それゆえに出たこの台詞だったが、ネガティブ思考の坂道を転げ落ちている竹内には、全く別のとられ方をしてしまった。 「そっか……、真子先輩も赤鮭先輩が好きなんですね」 爆弾第二陣投下。 しかも、爆撃は止まらない。 「あははは。ごめんなさい。僕、いろんな人からにぶいって言われてて、言われてて……」 そこできらりと流れる一滴の涙。 「あれ、涙が」 「ちょ、なぜにその方向へーーーー!!??」 「だからなんでそうなるんだあぁぁっ!」 これには駒地も、何とか抜け出そうと赤鮭を睨みつけていたユーラも大絶叫である。 そりゃそうだろう。 一方の赤鮭はこれ以上ないくらいの幸せの絶頂にいたが、もうそんなことはどうでもいい。 竹内は、ダッシュでどこかに行ってしまった。 「待ってーー、色々と誤解だからーーー!!」 こういう子だから、かわいいとも思うんだけど!と思いつつ、思いっきりダッシュで追いかける駒地。 「ユーラ、泣かせるなんて本当にお前、悪い奴だな。駒地も駒地だ。あー。やだやだ。世の中はせちがらくてね」 わざとらしく溜息なんかつく赤鮭に、呆然としていたユーラも我に返った。 ここまで人を憎らしく思ったのは初めてかもしれない。 「………………赤鮭さん。ちょっと本気でいくんで、気をつけてください」 「いってらー」 一発食らわせてやろうと思ったところで、あっさり赤鮭はユーラを解放した。 いじめたおせて、もう十分満足したらしい。 手もひらひらさせていて、さっさと行けといわんばかりだ。 「絶対仕返ししてやるー」 そう心に秘めながら、ユーラも走った。 今は赤鮭にかまっている場合じゃない。 竹内を探さなくては。 ユーラは自分が半裸なのも忘れて、校内を走り回った。 駒地は屋上で竹内を見つけた。 その三分後、ユーラも屋上にやってくる。 「竹内君!」 息を整えて、駒地は呼びかける。 「竹内君、なんかいろいろありすぎて混乱してると思うけど、これから言うことを聞いてほしい」 こちらは服を直しながら、ユーラも呼びかけた。 「どうしたんですか、先輩」 まさか追いかけてくるとは思っていなかったのだろう。 竹内はやや無理に笑いながら、言った。 「もう、いいですから。真子先輩、それと、ユーラ先輩」 よくないのはこっちである。 ユーラも駒地も、口々に告げた。 「えと、その、僕が好きなのは赤鮭さんじゃなくて、竹内君だから。本当だから。それだけは覚えておいて。だから、みんなでお弁当食べよう」 「私も、竹内君が大事だから。じゃなきゃ、こうして追いかけてきてないよ。私もユーラ君も」 その言葉を、竹内はちょっとぱちくりとしながら聞いていた。 まるで恋人に向かって言うみたいなこというなあ……と思ったが、でもやっぱり好きと言われるのは普通に嬉しい。 だから、笑って言うことにした。 「え、あ、じゃあ、はい。食べましょう」 そして、最後にこうも言った。 「赤鮭先輩も呼んできますね」 「「よばなくていいーーー!!!」」 その悲鳴が屋上に響いたか否かは、小笠原の太陽だけが知っている。 END ---- **作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) #comment(,disableurl) ---- ご発注元:駒地真子様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=42;id=gaibu_ita 製作;扇りんく@世界忍者国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=139;id=UP_ita 引渡し日:2007/ ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: