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奥羽りんく@悪童同盟様からのご依頼品


りんくと恭兵と怪しい露店




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「ホラ見ろ、随分ダイエットに成功したぞ」
 待ち合わせ場所に現れた奥羽 恭兵の第一声がそれだった。
 大きく腕を広げてどうだ、という顔をしている恭兵に奥羽 りんくは思わず駆け寄ってその腕の中に収まった。
「何言ってるんですか!本当に、無事でよかった…!」
 精一杯思いを込めて腕を回し、きつく抱き締める。記憶にあるよりもずっと引き締まったその感触。
 以前から飄々とした中にもどこか凄みを感じさせていた彼の風貌は、余計なものがそげ落ちた分鋭さを増していた。例えるなら飢えて獲物をじっと待つ狼。
 それが少し痛ましく感じられて、微かに煙草の残り香がする彼のジャケットに顔を埋めながら、りんくはこの前別れたときのことを早回しで思い起こしていた。

 それは地の母の迷宮と呼ばれる場所でのこと。
 りんくは戦闘で一人取り残された恭兵を迎えに行くために、敢えてその危険な場所へと足を踏み入れた。
 そこではしかし、そこへ至るまでの悲壮な決意や焦燥はなんだったのかと思うような光景が繰り広げられていた。
 そう、敵は幻獣だけではなかった…。

 そこまで回想したところでりんくは小さく頭を振って記憶の再生をストップした。
 今は忘れよう、自分と恭兵のためにも。
 そんなりんくの心を知ってか知らずか、恭兵はりんくの肩に手を回して抱き返しながら微笑んだ。
「まあ、俺の贅肉は犠牲になったな。出方が気になっていたので、よかったよかった。
 すまん」
「私のほうこそ、ごめんなさい…。一人にしちゃって……。
 でも、あのとき助けにきてくれてありがとうございます」
「いや、最近物騒で…。
 愛してる」
 抱き締めてくる腕の力に思いの深さを感じ取り、恭兵は言いかけた言葉を呑み込んで今一番言うべき言葉を口にした。
「私もです、恭兵さん」
 やっと顔を上げたりんくに微笑んで額に小さく口づける。
「帰ってきたからには、たくさん食べていっぱい太ってもらいますからね!
 私、がんばってお料理しますから」
「おいおい。せっかく20歳のころに体重をもどし…」
 恭兵はやはり言いかけた言葉を呑み込んだ。
 その代わりにこちらを見上げてくるりんくの頭をそっと抱き抱え何度もキスの雨を降らせる。さらさらと流れる髪、上気した額、滑らかな頬、わななく唇。
 二度と忘れないよう自分の唇にその感触を刻み付けるように。
「久しぶりに見るとかわいくなったな」
「な、何言ってるんですか・・・」
 ようやく腕の中にりんくの存在を確かめて安心したのか、恭兵はいつもの飄々とした口調に戻った。
 一方のりんくは今更のように恥ずかしさが襲ってきて恭兵の胸に再び顔を埋めてしまう。
「かわいくてなにより」
 変わらない初々しい反応に心からそう言うと、お互いの温もりを分け合うように抱き合ったままその場にたたずんだ。
 そのまま暫し。
「しまった。うっかりこれだけで一日すぎそうだな。
 何か希望は?」
「あ、えっと、最近物騒なので、恭兵さんにお守りをあげたいなと思ってるんですけど…。
 一緒に買いに行きませんか?」
 あふれそうなほどの幸福感に満たされていた恭兵ははっとして再起動した。りんくもようやくここに来た用事を思い出す。
「お前さん以上のお守りが必要だとも思えないが。
 でも、ああ。よろこんで、ついでに蕎麦屋にでもいくか」
「はい、お買い物して、お蕎麦屋さんにも行きましょう!」
 デートの締めが麺類、というのが如何にも彼らしい選択だが。
 にっこり笑った恭兵と手を携えてりんくは定期船の待合室を出る。
 今日も小笠原は快晴。夏に比べれば弱い日差しが、それでもさんさんと高い空から降り注いでいる。
「迷宮よりは明るいというべきだろうな」
「迷宮に比べたら、それはそうかもしれませんけど…。
 恭兵さんが隣にいるなら、私はどんな天気でもかまいませんから」
「ま、それにしても雨よりは天気のほうがいいさ。デートだしな」
 デートという辺りで恭兵は顔を赤らめた。照れを隠すように手を握る力をすこし増して視線を前に固定する。
「デート、ですもんね」
「ああ」
 普段はセクハラまがいの言動を繰り返すクセにこういうところは初心で可愛い。りんくはその横顔を眺めてくすりと笑った。
 港から市街地へ続く道を二人は寄り添うようにゆっくり歩いていく。
 程なくして島の中心地というべき商店街にはいる。
「お守りは、どこで売ってるんでしょうね?
 あ。あそこなら売ってそうかも。行ってみましょう、恭兵さん」
「アフリカを思い出すな」
 きょろきょろと辺りを見回していたりんくが指さしたのは粗末な木製の台に日除けのパラソルを差し掛けただけの露店だった。恭兵は胡散臭そうに眼を細める。
 営業する気があるのか無いのか、台の上には得体の知れない品物が雑多に置いてあるだけで値札すらついていない。
 その台の奥では知恵者が近付いてくる二人を認めて身体を起こすところだった。
「ようこそ、ついに来たな」
「こんにちはー…って、つ、ついにですか?」
 りんくの言葉には答えず、知恵者はポケットから指輪を出した。
 と思ったらしまった。
 代わりに取り出したのは一見してどうしようもなさそうな、としか形容出来ない三つの品物だった。
「えーっと、すみません。今日は、恭兵さんを守ってくれるお守りを買いに来たのですが…」
「選ぶがよい」
 りんくの来意を察していたらしいと言うか、完全に把握して待機していた知恵者は台の上にそのどうしようもなさそうな品物を並べた。
 一つ目は無限に一人分の食料が出てくる魔法の小鍋携帯用。
 二つ目はどんな攻撃も一度だけ防ぐ、山の盾携帯版。
 三つ目はりんくを呼び出せるりんくの冒険外伝ぶっく。
「りんくがいやらしくなるりんくの桃色ぶっくとか売ってないのか?」
「売り切れだ」
「恭兵さんはどれがいい…て、そんなのあるんですか!」
 三つめの品物を胡乱そうに指して問い質す恭兵に知恵者は何事もないように言ってのけた。
 驚愕するりんく。自分でふっておいて台の奥に手を伸ばして知恵者の首を絞めにかかる恭兵。
 何だかどこかで見た光景だ。
「冗談だ」
 恭兵にぎりぎりと首を締め上げられながらも知恵者はぬけぬけと言い放った。
 もしかして娘の連れてくる男をからかって首を絞められるのが趣味なんだろうか。
「恭兵さん、恭兵さんがもつんですから、恭兵さんが選んだ方がいいような気もするんですが…」
 いつもはりんくをからかってばかりの恭兵が今日に限っては形無し。ちょっと面白い、そう思いながら取りなしたりんくに言われて恭兵はようやく知恵者の首から手を放した。
「そりゃきまってるだろう。
 りんくの冒険外伝ぶっくをくれ」
 本当に必要なものを選ぶ恭兵の決断は早かった。
「ほ、本当にそれでいいんですか? お鍋とか山の盾とか、もっと役に立ちそうですけど…」
「食べ物は、お前が作る。一度だけ防いでも、あまり意味はない。
 ただ、お前さんと会えない日々はつらい」
 だからこれでいいんだ」
「…私も、恭兵さんに会えない日々はとてもつらかったです…」
 それこそが守りの守り。
 見つめ合う二人の唇がゆっくりと近付いていく。
「キスは別の場所でしてくれんかね」
「あ」
 面白くもなさそうにその様子をじーっと見ていた知恵者の言葉で二人はぱっと離れた。
 商店街の端とはいえ、人通りだってそれなりにある公共の往来である。一応。
「ご、ごめんなさい!
えっと、恭兵さんがいいなら、それにします。…ずっともっててくださいね?」
 りんくは改めて知恵者に向き直って財布を取り出した。
「知恵者さん、その外伝ブックをいただけますか?」
「これが一番安いな。5マイルだ」
 革張り新書サイズの本をりんくの手から受け取った恭兵は、微笑んで上着のポケットに入れかけてはたと気付いた。
 再び取り出してじっと表紙を見る。
「いやまて」
「恭兵さん、どうかしたんですか?」
 ぱらぱらとページを繰ってみる。
 そこには様々なりんくの写真が収められていた。小笠原に遊びに来た時のものや秘書官として仕事中の姿、果ては藩国でオフの日に撮られたらしいものまで。
 全ページにりんくの魅力満載の一冊である。
 絶句してページを繰っていた恭兵の顔が見る間に赤くなる。
「ちょ、あの、こ、ここで見るの禁止です!」
(あんな写真撮られた覚えあったかな…)
 つられたように真っ赤になったりんくに微笑んで恭兵はその頭を撫でた。
 よく考えてみれば実物が傍にいるのだからそうする方がずっと良い。そしてこれからは、望めばいつでもそうできる。
「ちょっとだけ照れくさいですけど、でもきっと恭兵さんのこと守りますから!!」
「もちろんだとも。さて。
 とりあえずは、蕎麦でも食べて俺を守ってくれ」
「はい。お蕎麦食べましょう!
 あ、知恵者さんありがとうございました~」
 早く行けといわんばかりの表情でうなずいた知恵者に見送られ、二人は並んで蕎麦屋を探して歩き始めた。
「いい買い物だった」
「恭兵さんが喜んでくれて、私も嬉しいです」
(恥ずかしいけど!とてつもなく恥ずかしい気がするけど~!!)
 ひたすら照れているりんくに微笑んだ恭兵は周囲を見渡し、人通りが多いのを確認して手を握るだけでひとまず満足することにした。
 嬉しそうに笑ったりんくがその手をぎゅっと握り返す。
 笑みをかわした二人は同じ方向を見て手を携えゆっくりと通りを歩いていく。
 これからもずっと、そうするように。

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拙文:久遠寺 那由他 ナニワアームズ商藩国


作品への一言コメント

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  • 今回も大変に甘うございました=□○_レムーリア未見なのでログからイメージした恭平さんですが如何でしょうか。ご指名いただきありがとうございました~。 -- 久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国 (2008-07-08 20:22:35)
  • ありがとうございます! ログより読んでて照れてしまいました(笑) とっても素敵な恭兵さんと知恵者(!?)さんをありがとうございましたvv でもログはこんなに甘くなかったと思います!(と言い張ってみるw) -- 奥羽りんく@悪童同盟 (2008-07-09 10:21:29)
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製作:久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国
http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1279;id=UP_ita


引渡し日:2008/07/08


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最終更新:2008年07月09日 10:21