久珂あゆみ@FEG様からのご依頼品


東京に位置する藩国、フィールドエレメンツグローリー。
西国であり、砂漠が広がるはずのこの国には、何故か広大な草原が広がっている。
かつて何も生えなかった不毛の砂漠と謎の迷宮に冒険者達が挑んだ際、大量の緑が芽吹くという不可思議に見舞われたのであった。
それ以来、FEGには砂漠と緑が同時に存在しているのである。

緑の広がる上を、箒に乗った人間2人と大きな龍が飛んでいく。

”そろそろ国境です”
”ありがとう。まだあったのね。そんなもの”
国境なんて不便だからなくせばいいのに、とそんな呟きも聞こえてくる。
”そろそろいくわ”
ウォータードラゴンの思考が二人の頭の中に凛とした声で響く。
「お元気で。高貴な種族のかた。お目にかかれて光栄です」
「お気をつけて。またお会いできれば嬉しいです」
箒の上の二人と、龍は視線を交わす。
龍の目は今までに見たことも無い色に輝き、光を吸い込む。
その色合いはあゆみの心に、酷く印象に残った。
その後、彼女の身に降りかかる運命を暗示するかのように。

龍がどこか遠くへ去った風が、砂を巻き上げる。風速60mの突風があゆみと晋太郎の箒を揺らした。
晋太郎の背中にしっかりとしがみついてはいたが、激しい揺れが二人を襲う。
「大丈夫?」
「はい」
あゆみの背中に晋太郎の手が回される。晋太郎はもう片方の手で箒を操ると突風を利用して上空へと高度を上げて回避した。
「すごい体験でした!」
髪を押さえながら、あゆみは微笑む。
晋太郎の表情から、心配が消えて苦笑になる。瞳が白く輝いているのはリューンを使って防壁を張っているからかも知れない。
だが、あゆみの瞳はそれに気づくことなく晋太郎を見ていた。
「晋太郎さんあったかい」
体に伝わる温もりのほうが、私だけを見てくれる瞳がとても嬉しかった。

箒は空を駆ける。
薄く、長い雲を引きながら青い空を進む。

後藤亜細亜は中学生である。亜細亜は今、重大な悩みに直面していた。
「…たまご?」
彼女の目の前には、拳大の卵が転がっていた。
最近世話になっている家の玄関についさっき、ことりと置かれていたのである。
「卵屋さんがおいてったのかなあ…」
ごろごろと回してみる。家庭科の授業を思い出せば、たぶん生だと思う。
うーん、と首を傾げた後、亜細亜の手には使い込まれたフライパンが握られていた。
「今日は目玉焼きにします」
そして卵を握ると、全力で振り下ろした-


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引渡し日:2008/08/09


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最終更新:2008年08月09日 22:35