※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

NO.37 イクさんからの依頼


僕は待っていた。
「ううーん、眠いですか睦月さんー」
「いやー だいじょぶ こーひー飲んできたから問題ない」
「僕も濃いコーヒーでドーピングしたから平気ですー!」

辺りは暗い。今は夜明け前。
月も見えない。星も。曇りだった。
隣には睦月さんがいる。暗くても、見えるほどそばに。
波の音が聞こえる。風の音も。
そして、砂を踏む音。

「むーーー」僕は目を細める。
「来たのかな?」
「かなー?」
「イクさん、すごい顔になってる!」
僕は、鼻に皺よりまくりだ。
睦月さんはじゃあ、ボクも目を細めますと言って目を細めた。
「うん、僕謝りたい人がいるんで、その人と会えるのを待っているんです」
そう言って思い出す。
ブランコ。
僕はブランコをこいでいた。
悲しい気分だった。何故か。
デスを追いかけた後にブランコをしていて。
そして――。

砂を踏む音が止まった。黄色いジャンパーの男だった。
それが、闇の中にうっすらと見える。
僕は息をのんだ。
イエロージャンパー!と睦月さんが叫ぶ。
派手な人だと思う。彼は遠くで佇んでいる。

「何のようだ」
睦月さんと一緒に歩いて行こうかと声をかけた時に、そう言われる。
「えーと。イクさんよばれてるよ」
「うん」

くるな、とは言われていないけど、離れた状態で話をする。
「僕、こないだよく覚えてないけど、たぶんあなたに会ったんです」
「気のせいだ」
「で、よく覚えていないのに、悔しくて。で、その後ものすごいごめんなさいとおもったんです。多分、貴方に」
「繰り返すが、気のせいだ。忘れたほうがいい」

ここで睦月さんが基本的なことを尋ねた。
「えーと よく分からないんですがー。 あなたのお名前は何と言われるのでしょうか?ボクは玄霧の吏族の睦月と言うんですけど」
「は!そうだった!!僕はイクといいます、同じく玄霧藩国の。」
「スター。シーズ、スターだ」
睦月さんが名前を繰り返して確認する。
僕は彼がどこの船にいるのかを聞いた。彼は教えてくれなかったけど。

僕は思いついたことを口にする。
「星の種って意味なのかなー。なんか、ステキですねー」
「星の種って意味だったのか シーズの意味が分からなかった僕は駄目だ」
「僕は、「行くよ」のイクです。母国語からとったんですよー」
彼は背を向けて歩き出した。
「スターさん、あのですね、ゴメンナサイを言わせてください」
「必要ない。謝る必要はない」
「んーん、僕は言いたいのです。たぶん、すごい、ひどいこといった」

睦月さんが僕も聞きたいことがあるんです!といったところで銃が向けられる。
口から音が漏れて、睦月さんは立ち止った。
「わ!ノーノー!!」僕は止めに入る。
彼はそのまま下がった。
「だめです、この人は傷つけさせません。家族だから!」
「ちょ、イクさん ストップ!」
僕は走って睦月さんの前に立ちふさがる。
彼の顔はここからでは見えない。
「大事にすることだ。そして幸せを探せ」
「僕は今も昔も」言葉が、途切れた。

睦月さんが必死になって伝える。
「幸せがきえかけてるんです!今泣いているひとがいるんですよ!」
「直ぐ忘れる」
幸せは、人によると思ってますと、僕は言った。
「忘れられないこともあります!」
「いいや。忘れるさ」
「いいえ。わすれません!」
その答えに。彼は音もなく笑った。
顔は見えないから気配、というものだろうか。
「何がおかしいんですか?」僕はそう問いかける睦月さんの服の袖を掴んだ。
「いや。それならそれでいい。俺には関係がない」
彼は歩き出した。胸を張って。
「待って!まだ何も聞いてない!」

「こないだも、笑ってませんでしたか? そんなきがする、こないだと同じ、においがします」
僕はそう言って追いかけた。まだ納得がいかないから。
砂で足場が悪かろうが、全力で。
足を取られても、全力で。
心はまたいっぱいだ。いっぱいが、涙なんだと思った。

「とまれ」
構わずに、走る。
「出なければ、悲しいことになる」
ぶつかる勢いで猪突進。
「ぼく、今逃した方が悲しい!!貴方が、なんか悲しい!」
「イクさん・・・」睦月さんもまた追いかけていた。
「残念だ」
銃声の前に、僕は睦月さんに突き飛ばされる。
弾は避けた。
彼はうなずくと姿を消した。

「待てよ!」睦月さんが猛然と追いかけ始める。
僕は倒れた状態から急に走ろうとしたのでこけた。
――まだ。まだだ。
手をついて立ち上がる。
前を見据えて走った。体についていた砂が風に流されていった。
「駄目、それじゃだめ!ゴメンねちゃんといってない!貴方の話を全然聞いてない!」
「必要ない。死んだ男も、それを望んでる」
「貴方の、したいこととか望みとか、僕の心を締め付ける永遠って言葉とか!!!!」
「僕が・・・・いや、僕たちが嫌なんだ!エゴだろうが何だろうが! 僕たちはそれを望んでない!」

答えはかえってこなかった。
声がむなしく響いただけだった。
それから辺りを探したけれど。結局追いつけなかった。



作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

名前:
コメント:



引き渡し日:2007/


counter: -
yesterday: -
最終更新:2007年09月25日 21:26