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矢上ミサ@鍋の国さんからのご依頼品


~野菜の味はどんな味~


※今より少し昔の話

 東京に着いて、仕事の話も一段落した頃には、昼を少し過ぎたあたりになっていた。
腹もすいて、これから外に食べに出ようかという話に、それはもうごくごく自然な流れでなった。
ただ、俺の上司は嫌がらせしか興味がないのかというくらいに、嫌がらせが好きだったのが禍いだった。
よもや、あれだけ拒否したのにもかかわらず、30分も歩かされて野菜の店、というかレストランなのに、坊主が作る精進料理の店に入らされた。
この東京出張の少し前、「ブロッコリーの美味しさを伝えなければ。」と何か悟りでも開いたかのような口ぶりで、俺にブロッコリーを食べさせようと意味不明な行動を取っていたことを失念していたのが、俺の失敗だった。

「あぁ・・・じゃあ、、や、野菜丼を。」

だからと言って、ここで食べなければ、この出張を乗り切るのも難しいだろう。
メニューに書いてある中で、一番野菜とそうでない物を分けやすいものと言えば、丼だけだった。
まぁ、丼である以上、野菜以外のものも多少は付いてくるだろう、と予想していたのだが、その予想すらも俺を裏切る結果となった。

こんもりと盛られた丼を埋め尽くすのは、一面の野菜。
一応、野菜は揚がってはいるものの、ほとんど素揚げに近い状態で、噛めば野菜の食感と香りが残っているだろうというのは、容易に予想できた。
目の前にいる上司は、今にものけぞりながら笑いそうな表情をしているのが恨めしい・・・。
露骨に嫌な顔をして上司を喜ばすのも、思いっきり負けた気分がして嫌だったから、とりあえず箸を野菜の下に潜らせて、米をだけを黙々と食べることに専念した。
上に乗っている野菜は、全部食べられないものばかりだったのは、店の坊主も共謀しているんじゃないかと疑うくらいの、いやがらせであった。


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 白いふかふかの絨毯の上に二人で寄り添いながらヤガミは昔のことを振り返っていた。
向かい合って、「おぉー。」とか「へー。」と興味深く相打ちをうっている自分のミサに目を落とす。
野菜丼のくだりまで話したあたりでミサが笑いながら大きく頷いた。

「ああー、分かる、すごく分かる。」
「他の人が見たら、すごく美味しそうなんだろうけどねー。むしろご飯だけでいいみたいな。」
「まぁ、そんな感じだったな。米だけ食べても結局、腹は膨れなかったので苦労したが。」
「何にしても、好き嫌いくらい誰にでもあるだろうに、嫌がらせのためによくやったもんだ。」

手を握り合いながら、ヤガミは当時のことを鮮明に思い出して、少しうんざりしたような顔になった。
上司の嫌がらせに関しては、当時の状況と会話内容を一言一句間違わずに言えそうな勢いである。
しかし、ヤガミの野菜嫌いもここまで一貫しているのは、何が原因なのか。
よっぽど嫌な経験でもあったのかと思わせた。

「何でそんなに野菜嫌いだったの?」
「わたしもそれはそれは嫌いだったけども。」

ヤガミの顔を覗き込むようにミサが尋ねてみる。
その質問にヤガミは、我ながら恥ずかしいことだがと前置きでもつけるような顔をして、「いや、食わず嫌いだ。」と答える。
同じくミサも、我ながら恥ずかしいことだけど可愛いなぁこいつと言いたげな笑顔で、「おいしい野菜もあってよかったね。」と頭を撫でる。

「まぁ、野菜もそれほどダメなものではないと分かるまでに時間がかかったが。」
「大分食えるようになった。ブロッコリー以外。」

たったそれだけのことをものすごく誇らしいことであるかのように振舞うヤガミが妙に微笑ましく感じて、それがちょっと意地悪心を刺激する。
ミサは弁当箱の仕草をしながら、「わたし、前にブロッコリー弁当作ったら、みんなに大ウケしたから、あんたにも作ってあげようか?」と意地悪そうに笑った。
非常に複雑そうに「・・・・・・やめておく。」と言うヤガミの悩める顔がものすごく面白い。

「それまでに慣れておく。」
「あ、冗談よ。」

言葉と表情があってないことに気づいてはいるが、ヤガミを見ると上司の気持ちが分からなくもない。
まぁ、上司に恋愛感情はないんだろうけどと付け足しながら、嬉しそうに笑う。

「たぶんやらない、大丈夫大丈夫。」
「嘘だ。」

ヤガミの即答ぶりにちょっとだけ罪悪感が走る。
やっぱり、好きなんだなぁと思いながら、ヤガミの胸に顔を埋める。
両手に力を入れて、ぎゅっと抱きしめた後、顔だけで見る。

「悪かった、ごーめーん。」
「?」

一瞬ミサが何を思ったのかと考えたが、抱きついているミサを大事に力強く抱きしめる。
軽くキスをして、ログアウトするミサを見送る。
先読みの力は、絶対的にミサのためにある。

【悪いと思ったけど、やっぱり二段重ねのブロッコリー弁当を作って食べさせてみよう。】


 外の光が一杯のロフトでは、預かってきた猫が大きなあくびをしながら、ひなたぼっこをしていた。

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本当は東京のお店を調べてと思っていましたが、
精進料理の店があまりに多かったので断念しました。(笑)
いつか、ブロ弁を食べるヤガミが見れるのでしょうか!

ご依頼、どうもありがとうございました!

作品への一言コメント

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  • 米をほじって食べるヤガミがすごく鮮明に脳裏に浮かびました。これはいいヤガミ…!上司の描写も面白くて読んでて楽しいです(笑)楽しく書いて頂いてありがとうございました~+.ヾ(´∀`*)ノ。+.゚ 最近はブロ弁2段重ねか肉ピーマンかで迷ってます。 -- ミサ@鍋 (2008-09-13 03:19:44)
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最終更新:2008年09月13日 03:19