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船橋鷹大@キノウツン藩国様からの依頼より


                      Preparation for marriage  ~Side.T~


彼女は、強くなった。

そう感じるようになったのは、いつからだろうか?
この前の青狸のゲームで兵士として見事な動きを見せていた時からか……?
いや、あるいはもっと……?

今も彼女は、鼻歌混じりに洗濯物を干している。
上手くなったものだ。
以前の彼女なら、鼻歌を歌うか、洗濯物を干すか。
どちらかしかできなかったことだろう。ここでも、彼女の成長が感じられる。

気を取り直し、俺は彼女……空歌に声をかけた。

「さて、今日はドレスを買いに行く予定なんだけど」

笑顔で彼女が振り返る。この笑顔はいつでも、俺を癒してくれる。

手早くドレスを売っている店を調べ、変装を含めた支度を済ませる。
空歌はといえば、頭にターバンを巻いて少年風の格好をしている。
前回の買い物では、メイドだったか。これはこれで似合っているかもしれない。

どの店に行くか考えていると、彼女が

「前のでも…」

と控えめな主張をする。彼女にしては割と珍しいことだ。
爆発から再建されたらしいその店内を、俺は結局訪れていない。
少々の不安は感じたが、彼女の意見を尊重し、その店に行くことにした。


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周りから、クスクスと俺たちを笑う声がする。これは恥ずかしい。

笑い声が向けられている対象。
それは、先ほどから周囲を警戒し、往来をジグザグに、
物陰を飛び移るように移動している空歌と、それに付き添う俺の行動の奇妙さに対してだ。

周りをいく人々は無論そんなことはしておらず、
俺たちの滑稽さが余計に際立って見える。
成長したとはいえ、やはりどこかずれているのは変わらない。
が、

「鷹大くん、あぶないよ?しんじゃうよ?」

と真剣な目で訴えかけられては、
もう狙撃事件も終わって比較的安全だからそんなことはしなくても大丈夫だ、
などと言う気も削がれるというものだ。

前に買い物に出かけた時は、あまりに無警戒だった彼女。
多少笑われようとも、それが彼女を危険から遠ざけるなら。
俺はそんなことを考えつつ、空歌との共同作戦を続行した。
作戦目標、空歌に似合うウェディングドレス。


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作戦は、早くも頓挫しかけていた。

店について早々、店主に人身売買との誤解を受けた俺は、
ISSを呼ばれる羽目に陥っていた。

登場するダガーマンに事情を話し店主には納得してもらったものの、
いまだキノウツンから犯罪は無くなっていないことを聞かされ、
俺は急に不安を感じ慌てて空歌に駆け寄った。

ドレス。ドレス。ドレス。
流石に専門店というだけのことはあり、
ドレスの壁が俺と空歌を包み込んでいるかのような錯覚を覚えた。

この中から選ぶのか……。と気圧される俺を尻目に、
空歌は背伸びをしつつドレスを見ている。

「色々あるね」と彼女が目をしぱしぱさせている。

「そうだなあ」

「鷹大くんは……ど、どんなのがいい?」

「んー? 空歌が着たいドレスを選ぶのが一番いいと思うよ」

俺は素直にそう答えた。
彼女なら、ドレスに負けることはない。
よって、彼女が着たいドレス。それが一番彼女に似合うものとなるだろう。

「気に入ったのはある?」

そう言って彼女を促すと、彼女はまたドレスを見始めた。

「えっと……」

「えーと」

……決まらないらしい。彼女らしいといえばらしい反応だった。
しかし、いつまでも迷っていては決まらない。
迷うということは、特に気に入っている物はなさそうだ。
そう思い、

「色はやっぱり白だよな」

と彼女にそれとなくこちらの意思を伝える。
純白のドレスなら、彼女の桜色の髪がよく映えることだろう。

「うん……」

彼女はまだ迷っているらしい。

「おとなしいのがいい?」

「そうだな。あんまり露出多いのはちょっとね」

……前回の悪夢がよみがえる。
あれはこっそりスカーフにでもあげて処分してしまった方がいいかもしれない。

と眩暈から立ち直ると、空歌は鎧型のドレスに手を伸ばしていた。

「ヘルメットかぶれば……」

「いや、それは駄目だろ……」

思わず突っ込みが声に出てしまう。果たしてこれは誰が着るためにあるのだろうか?
空歌が着たら、そのまま潰れてしまいそうな重量感溢れる代物だ。

「やっぱスタンダードなのがいいんじゃないか?」

と、俺は空歌に意見を求めた。やはり、スタンダード。普通が一番に思えた。
というか、スタンダード以外のドレスがあまりにキワモノ過ぎる。
この前のアレとどっこいどっこいだ。

そして空歌が選んだのは、純白、かつスタンダードな、どこから見ても普通のドレス。
笑顔でドレスを自分の体に重ねてこちらを見る彼女に、こちらも自然と笑顔になる。

人気がない?金持ちの流行から外れている?
そんなことはどうでもよかった。
そして、気付いたことが1つある。
華美な装飾がされていない分、着ている本人の魅力がそのまま出る。
それが「普通」のドレスの最大の特徴らしい。
空歌ならこの普通のドレスを、十分に着こなせるというのは決して欲目じゃないだろう。
普通、大いに結構。シンプルイズベスト、実に至言。

「これ、ください」 「ください」

2人声を揃え、店主の前に立つ。まるで結婚式の予行練習のようだ。

代金を負けてもらったばかりか、レースの手袋その他のおまけまで付けてもらい、
俺と空歌は店主に礼を言うと、笑顔で店を後にした。

ミッション コンプリート
作戦、 完了。

                      Preparation for marriage  ~Side.K~


もっと、しっかりしなくちゃ。

そう思って、がんばってきた。
彼に迷惑かけないように、嫌われないように……。

最近は、お洗濯もちょっと上手になった。気付いてくれてるかな……?
洗いたての洗濯物の香りとおひさまの光を浴びながら、歌を口ずさむ。

「さて、今日はドレスを買いに行く予定なんだけど」

と、彼……鷹大くんに呼ばれたので急いでお洗濯を終わらせるっ。
覚えていないわけないよ。
だって、お買い物が楽しみで今日は2時間も早く目が覚めたんだから……。

行くお店は彼が調べてくれているので、その間に着替え着替え。
今日の変装は何がいいかな。
外に出る時は危ないから変装しようって鷹大くんに言われてから、
お洋服の量がとてもとても増えました。大変だけどちょっと嬉しいかも。
……よし、今日は、ぼ、ぼーいっしゅ?な感じにしてみようかな?

外に出て、どのお店に行くかを決めようとしている鷹大くん。
迷ってるのかな?だったら、この前行こうとしたお店。
あのお店、最近建て直されたって聞いたから、行ってみたいな……。
どうしよう。
もう行くところを決めてたら、わがままだって思われないかな?
それとも、まだ迷ってるかな……。どうしようどうしよう。

……ううん。わたし、しっかりするって決めたんだった!
よ、よーし。「前のお店が建て直されたんだって!そこに行ってみない?」
がんばれ、がんばれわたし。

「前のでも…」

……出てきた言葉は、それだけでした。
でも、鷹大くんは、そんなわたしの言葉も、ちゃんと聞いててくれました!
一歩前進、だよね?


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お店へ向かう道筋は、危険が一杯。
前に鷹大くんと買い物に行った時は、車は飛び出す、狙撃はされる……。
そんな中を、お散歩するみたいに歩いていたなんて。
思い出すだけで怖くなります。
鷹大くん、呆れてなかったかな……。

だから、今日はしっかりしなくっちゃ。
遥ちゃんから狙撃されないための方法は教えてもらって、
なんとか覚えることができました。
だから今日は、その実践の時。
見ててね、鷹大くん……!

と、振り返ると鷹大くんが道の真ん中に立ってる!危ない……!
慌てて駆け寄ると、わたしは必死に

「鷹大くん、あぶないよ?しんじゃうよ?」

と彼に訴えかけます。
でも、彼はよく分かっていないみたい。最近お仕事続きで疲れてるのかな……。

こうなったら、わたしが鷹大くんを守ってあげないと。
そうすれば、きっとわたしのこと「すごいじゃないか」って見直してくれる。
そう思うと、わたしは彼を連れ、稲妻のようにお店へと向かっていったのです。
作戦開始。
作戦目標、お買い物中しっかりして、鷹大くんにほめてもらう。


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作戦は、失敗に終わりそう……。

わたしが男の子っぽい恰好をしてきたせいで、お店の人に男の子同士と間違えられちゃうなんて。
鷹大くん、ごめんなさい……。怒ってるよね……。
その場に居づらくなったわたしは、逃げるようにドレスコーナーへ。

ドレス、ドレス、ドレス。
すごいなあ……。こんなにいっぱいあるなんて……。
さっきの事件のことはころっと忘れ、ドレスを見て回るわたし。
鷹大くん、どんなドレスがいいって言うかな……。

誤解が解けたみたいで、ダガーマンと話し終わった彼がこちらに駆け寄ってくる。

「鷹大くんは……ど、どんなのがいい?」

勇気を出して聞いてみると、

「んー? 空歌が着たいドレスを選ぶのが一番いいと思うよ」

よかった。怒ってない……!
着たいドレス。わたしが着たいのは……。
全部、着てみたいなんていったらへんな顔されちゃうだろうし、どうしよう。

「えっと……」

「えーと」

たくさんあって決められないよー……。
子供のころから、およめさん、花嫁さんにはあこがれてきたけど、
こんなにいっぱいドレスがあると、どんな花嫁さんになりたいんだろうわたし、て思っちゃう……。
困ったなあ……。鷹大くんは、何でもいいのかな……。
そう思ったとたん。

「色はやっぱり白だよな」

「(!)」

わたしが困ってるのをわかってくれたのかな?
鷹大くんが手を差し出してくれた……!うれしい……。
うん、純白のドレス。いいかも。
鷹大くんがいいって言うんだから、間違いない、よね。

あとは、どんなのがいいかな。

「おとなしいのがいい?」

「そうだな。あんまり露出多いのはちょっとね」

鷹大くんは、おとなしめのが好き。
おとなしいの、おとなしいの……。

鎧型ドレス。
「岩盤ケーキを叩き割って花嫁の力をアピールするのがセレブリティー!」って書いてある。
そ、そうなのかな……?
でもわたしのあこがれの花嫁さん、鎧は着てないかな……。
そんなことを考えながら、鷹大くんに視線を送る。どうしよう……?

「やっぱスタンダードなのがいいんじゃないか?」

そうだよね!普通のドレスが一番だよね!
やっぱり鷹大くんはすごい。わたしのこと、大切におもってくれてる……!
普通の、でも、とっても素敵なドレスを抱きしめ、彼の顔を見る。
あ、笑ってる。わたしも顔が思わずにやけちゃう。

「これ、ください」 「ください」

鷹大くんと一緒に、店長さんにそう告げる。

「いやー、式が楽しみだなあ」

そう言う鷹大くん。わ、わたしも楽しみっ。

顔が赤くなっているのを見られるのが恥ずかしくて、
ターバンを巻いてごまかしてしまう。
ありがとう、鷹大くん。
しっかりも大事だけど、普通にするのも大切なことなんだよね。

ミッション インコンプリート
作戦、  未了。    でも、しあわせだから、いいかな。


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引渡し日:2008/10/22


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最終更新:2008年10月17日 20:22