松井@FEG様からのご依頼品


酒は百薬の長、と申します。
しかし飲みすぎれば体を壊すのも道理でございまして、そこらへんの兼ね合いが難しいのが人生というものでしょうか。
ところが酒を飲むのが大好きな人というのもおるものでして…

「よし、東。飲むぞ!」
ここ最近はダガーマンと呼ばれるほうが多くなったフィールドエレメンツグローリー藩王―是空とおるはそう言ってビールを机に置いた。
「ははは、当然じゃないですか是空さん」
そう呟く大法官・東恭一郎の手にはいつの間にか木製のマイジョッキが握られている。
国内外において無類のビール党であり、共和国に出回っている全てのビールの味を知っていると噂される東は、
「うちはアルコール置いてないぞ」
「えー」
「えー」
いや待てお前ら、ここは喫茶店だぞ。という声をぐっと喉に押し込め、松井総一郎は営業スマイルで
「お客様。当店ではアルコールを取り扱いしてませんので」
「ま、しょうがないな」
「しょうがないですね」
「待て、何故椅子を持ち出そうとする」
「いや外で飲もうかと」
大変いい笑顔で返す是空に、総一郎はコーヒーミルを投げつけた。

「いやあキレられましたな」
「全くだ。椅子持ち上げて殴りかかってくるとは思わなかった」
どこからか持ってきた空き樽を机に、これまたどこかから持ってきた大量の酒瓶が置かれていく
「ではやりますか」
「そうだな」
微笑む二人の目は笑っていなかった。
ゆっくりゆっくりと注がれることで杯の中に、調和の取れたビールが出来上がった。
「では」
「うむ」
そして樽の上は、酒飲みという名の男と男の戦場と化す―

「「乾杯!」」
星見喫茶の裏庭にガツーン、という石と石がぶつかり合うような音と共に乾杯が行われ、東と是空は一気に中身を飲み干す。
しばしにらみ合った男達はすぐさま中身を注ぎ、再び乾杯→一気を繰り返す。
こんな行為を始めて既に数時間。二人は既に上着を脱ぎ去り、上半身を曝け出して酒を飲んでいた。
「ふふ…是空さん。ピッチが落ちてきたんじゃないですか?」
「東君…そういう君こそさっきから手が微妙に震えてるじゃないか。ギブアップしたほうがいいんじゃないか?」
にやり、と笑いあう二人。
否、既にこれは酒を飲むという行為ではない。男と男の戦いであった。

更に数時間後。
「くっ…何故だ…○解(伏字)にはまだ程遠い状態のはずが…!?」
「ここに来る前是空さんは既に一仕事終えていた…それが敗因ですよ」
「く…確かに一仕事したことで体が水分を欲していた。そのためアルコールの吸収率が上がるのを見逃していたようだ…」
がくり、と是空が膝を着く。
「だが東、お前も一つ忘れている」
是空が顔を上げる。その瞳は青く輝いてこそいないが、負けを認めた表情ではない。
ハッタリだ。東は即座に思った。さすがの是空といえど足に来る程飲んだ状況からのリカバリーは不可能である、と。
だが、東は気づいた。まさか、まさかやらないだろうと思っていた手段に。
「ここをどこだと思っている―東?」
「そう、FEGだぜ?」
是空の背後に現れる影二つ。そう、是空とおる(初期型)とぜくうとおる(個人ACE)である。
「という訳で俺の胃腸は三倍だ。お前のキャパシティと俺のキャパシティ(×3)…どっちが上を行くかな?」
「く、くくく…まさか真面目にやってくるとは…だが、ここで引けばビール党の名が廃るんですよ!」
東が新たなビール瓶に手を伸ばす。対する是空(×3)もジョッキを構え、戦闘態勢を取った―

ぱたん、と裏口を閉めて松井いつかは店内に戻る。
当に営業時間を終了した店の中では、総一郎が片づけを始めていた。
「どうだった」
「まだかかるみたい」
「そうか」
ぽてぽてと正面に陣取ると、いつかはいつもの通り両の手で頬杖をついて総一郎の仕事をじー、と見始めた。
「大分遅くなっちゃいましたけど、大丈夫でしょうか…お二人とも」
「問題ないだろう」
心配そうな和子の問いに、クリサリスは寡黙に答える。
そんな彼らの心配をよそに、裏庭の飲み会は朝まで続いた…


作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

  • ここのところ暗い話題がつづくこともあり元気のいい話で明るい気持ちになりました。なにげにすごいリアルなところもいいです。 -- 松井 (2009-02-08 19:19:28)
名前:
コメント:




引渡し日:2009/02/06


counter: -
yesterday: -
最終更新:2009年02月08日 19:19