那限・ソーマ=キユウ・逢真@FEGさんからのご依頼品
ハッピーマイバースデイ
空は晴天。寒くもなく暑くもない、いい塩梅の気温。
黒髪の青年は、手に箱の入った袋を提げ公園に向かった。
と、入ってすぐそこの空をきらきらと光るもの、いや違う。
青年は笑いながら光る場所に向かって声をかけた。
「Qー! きたよー!」
光はくるくる円を描くように回って軽やかに青年の眼前まで飛んで来た。
「うんっ」
光の正体は1人の小さな羽妖精の少女。きらきらと輝くのは彼女の背の羽と1つに縛った長い髪。
妖精は自身の羽と艶のよい髪にも負けずきらきらとした表情で青年に飛びつき、顔に抱き付いた。青年はそんな愛しい羽妖精を指先で軽く頭を撫で返しながら言葉をかけた。
「今まで待たせてごめんな。逢いたかったよ」
そう、青年と妖精がこうして顔を合わせるのは実に久方ぶりだった。
ちょっとした手違いから2人は離れ離れになり、つい先日ようやく再会したばかりだったのだ。
だからこそ、今互いに触れ合える喜びもひとしおな訳で。
妖精を撫でながら青年は言葉を続けた。
「今日はさ。ようやくQと再会もできたし、オレの誕生日でもあるから、一緒にお祝いしようかと思ってな」
言いながら、青年は軽く箱の入った袋を上げて見せた。
「ケーキも買ってきたんだ。Qはケーキ好き?」
妖精はぱっと笑った。
「うんっ。おめでとう」
「誕生日誕生日らんらんらん・・・」と歌まで歌ってくれている。
「ありがとう。すごく嬉しいよ」
にこーっと笑う妖精に、青年も笑い返した。
そして、ふと青年は妖精に問いかけてみた。
「そういえば、オレ、Qの誕生日知らないんだけど、Qの誕生日っていつなの?」
「Q,ないよ?」
その一言に青年は目を丸くした。
「ないの? 妖精って皆そう言うものなのか?」
妖精はきょとんと首を僅かに傾けながら言葉を続けた。ちなみにその仕草も可愛いなぁと青年が心の奥で思ったのは内緒の話だ。
「Q,花の中から生まれたけど、誕生日しらないよ?」
「あれま。二重でビックリだな。Qって花から生まれたのか」
妖精はまた、あっさりと言った。
「Q,花の妖精だよ?」
その言葉に再び青年は丸くした目を更に丸くした。どこぞのおとぎ話のように可愛い花から飛び出てくる妖精が頭に浮かぶ。
「花の妖精だったのか……。ずっと『羽妖精』っていうジャンルで捉えてたよ……」
この羽妖精と知り合う以前から妖精に関する知識は多少なりともあったのだけれど。花に限定した妖精、までは調べた事がなかった。頭に浮かぶのは真っ赤なチューリップだけど。実際の所はどうなのだろう?
「Qって何の花の妖精なんだ?」
妖精は今度は逆に首を傾けた。動く首と一緒に1つの房になった髪もゆらゆらと動くのが何か可愛らしい。多分、青年の色目dけではない。多分。
「・・・・・・花は花だよ?」
・・・・・・・・・どうやら妖精にとって、自分が生まれてきた花の種類に関しては問題ではないらしい。
「花の種類を聞きたかったんだけど、そう言うのがあるわけでもないのね……」
青年は笑いながら、青年の顔から肩に移動した妖精をまた優しく撫でた。
妖精に関して興味を持つ人間としてはちょっと残念だが、親しい相手がどこから生まれたかは大した問題ではないのかもしれない。そう思う事にした。
「まぁ、いいか。それがどんな花であっても、QはQだしな」
「うんっ」
妖精が嬉しそうに笑うのに、青年も嬉しくなった。
ああ、天気もいいし。再会できた妖精も元気いっぱいでこんなに笑顔が輝いている。
誰かに祝ってもらうのは本当に嬉しい事だ。
ちょっとだけ、それらをしみじみと思ってから青年は妖精とケーキを食べる為、場所を移動する事にした。
一緒に食べたケーキは、とても美味しかった。
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最終更新:2009年04月24日 02:27