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守上藤丸@ナニワアームズ商藩国さんからのご依頼


『甘さは控えめに』


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 カランコロンカラン。
silver vineの扉を開けると気持ちいい音が店内に響き渡る。
商品棚を兼ねているレジカウンターには店主と言わんばかりに一匹の猫がどっしりと構えている。
『にゃー。』と鳴いて出迎えるのは、「いらっしゃい。」とでも言っているんだろうか。
鐘の音と猫の鳴き声を聞いて、ホールの接客に出ていた店主がパタパタとレジまでやってきた。
店主が『いらっしゃいませー。』とニコっと笑って藤丸を迎える。

 カウンターの中は冷蔵室になっていて、奥で作られたケーキなどのお菓子が彩りを添えている。
飲み物は瓶詰めジュースが小型の冷蔵室の中に収められている。ワインや日本酒などは別の保管所があるらしく、見本と説明書きがカウンターに並んでいる。
一通り見た藤丸は、白のスパークリングワインは決めるとケーキの方を見て、むぅと唸った。

 種類が多い・・・。

 甘さがあんまり得意でない藤丸はケーキの種類が多いとなんとも言えず悩んでしまう。
しかも、運が悪いことに「甘さが控えめなものはどれですか?」と聞こうと思い商品棚から顔を上げると同時にホールの方から声がかかり店主の結城が『はーい。』と行ってしまった。
目の前には猫のスピキオが、「注文は決まったか?」と聞いているようにこちらを見ている。
どのケーキも美味しそうではあるのだが、美味しそうに見える分、悩みが増したように思う。
とりあえず、無難なショートケーキと「上品な甘さ」という売り文句のブランマンジェに決めた。

 ・・・甘くないといいけど。

 客のそんな様子を知ってか知らないでか、スピキオは『にゃー。』とひと鳴きした。


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 silver vineに寄ってからキノウツン旅行者に連絡を取ると宰相府の春の園に案内された。
春の園へと通じるエレベーターを降りると蓮華の園の甘い香りが風に乗って運ばれてくる。
待ち合わせは桜の園。春の園は五つのエリアに分かれており、桜の園は蓮華の園の北方にある。
常に咲き誇っている蓮華の花と漂う香りの中を歩いて、区画を仕切る川に架かる橋に向かう。
桜の園に入ると、いつも風に舞い上がる花びらを見て、その雄大さにすごいなぁと思う。
スパークリングワインとケーキを揺らさないようにしつつ、暮里の姿を探す。
案外簡単に見つかった。崩れない程度に走りながら、ちょっと笑顔になる。

「よお。」
「やほー。」

 相変わらずの表情でこちらに気づくと、軽い挨拶を交わす。
そうっと風が舞い上がり、落ちていた桜の花弁が暮里と藤丸の周りで一瞬舞い上がり、落ちる。

「どうした?」
「うん。突然ですが、僕、誕生日なんだよ。明後日。」
「おお。おめでとう。」

 おめでとうと言われて、ちょっとだけ体温が上がったような気がした。
顔には出てないだろうがなんだか嬉しくて、顔に思いっきり笑顔を咲かせる。
その顔に暮里は何かあるのかと、少し首をかしげて疑問符を打った。
暮里のその表情に待ってましたと、後ろに隠していたケーキとワインの箱を差し出す。

「で、こういうものを買ってみました。」

 首をかしげながら「付き合って?」と、暮里にお願いしてみる。
藤丸はこの頃は少年だったので、傍から見るとおかしな光景だが、暮里は藤丸の魂を知っている。
あまり人目につくと問題ではあるが、今の桜の園にはそんなに人は居らず、問題はなかった。

「芸が細かいな。いや、いい話だ。」
「いい話?」

 藤丸がどこか座ってケーキを食べられる場所を探しながら、疑問を口にした。
春の園は花が多いという特性からか、基本的にピクニックなどの観光客で賑わっている。
基本的には花に近い所で飲食をするのも禁じられていないので、客もシートなどを持って座る。
なので、直座りでもいいのだが、ケーキ単体なので直座りだとなんとなく食べづらい。

「気遣いの出来るやつは好きだね。」
「そうー?」

 暮里の話に嬉しくなりながら、ちょうど良さそうなベンチを見つけて、二人でそこに座った。

「あ、君の誕生日っていつ?」
「さあ。忘れたよ。」

 ケーキとワインと、あと予備に持ってきたコーヒーの入った水筒を二人の間に並べる。
並べながら、どこか寂しそうに笑っている暮里になんだか壁を感じて、むむむとなる。

「じゃあ、今決める?君の誕生日。」
「いや。やめとくよ。・・・うまそうなケーキじゃないか。さて食うか。」

 そういうと暮里は広げられたケーキに目をやった。
なんとなく、これ以上突っ込むのはよくないように思って藤丸もケーキに目を移す。

「おー。えーと、ショートケーキとブランマンジェ・・・だって。」

 ケーキにそこまで詳しくないので少しだけ語尾が濁る。
そんな藤丸を横目に暮里はまじまじと二つのケーキを眺めている。
「気に入ってくれたのかな」と思い、暮里に先に決めてもらうことにした。

「どっち食べる?」
「甘くない方はどっちだ?」

 一番来てほしくない質問が来てしまった。
とはいえ、ここで適当に言っても仕方ないので正直に答える。

「分かんない。・・・僕も甘いの苦手だから、あんまり甘くなさそーなのを選んだつもりだけど。」

 その答えに暮里は「むぅ。」と聞こえないように小さくうなると藤丸を見た。

「お前、食べろ。」
「ええー。あ。じゃあ半分だ。半分。」

 とりあえず藤丸の言葉をスルーした暮里はショートケーキを見ている。
確かに、無難ではある。暮里に聞いてから、ケーキを取り出して、ワインと一緒に渡した。
受け取って食べるとすごく渋い顔になって、一気にワインを飲み干した。
どきどきしながらブランマンジェを一口食べたときにだったので、危うく噴出しそうになった。

「ちょ。」
「コーヒーくらいのが良さそうだな。」

 まだ少ししかめっ面な暮里に水筒のコーヒーを渡す。
用意しておいて本当によかったと思いながら、コーヒーを飲んで落ち着いている暮里を見る。
話を聞くと本人は甘いものが大丈夫と思っていたが、五年ぶりのケーキで苦手だと今分かったらしい。でもって、その甘いの基準がえらく低いと少し失敬したショートケーキで判明。
藤丸でも案外普通に食べれたのだが、人の好みというのを中々難しいと感じた。

「・・・うん。分かった。次はこれより甘くないやつにする・・・。」
「五年後な。」

 その返事に盛大に噴出した。
五年毎って、三年寝太郎とかそんなんじゃないんだからと思うとかなり面白かった。
五年ごとになんとかやっとという風にケーキを食べてる暮里を想像してなんか嬉しくなってきた。

「五年ごとにケーキ食べるんだ?」
「まぁ、そうだな。」

 目をさまよわせている暮里を見て、もう一ツボはまって声を出して思いっきり笑った。
こんなに笑える誕生日の記念はなかなかないと思うと、本当に嬉しくなってきた。
冗談を言い合いながら、暮里の笑顔から寂しさがなくなったせいもあるかもしれない、と。

 楽しいな。また、来年もこうやって笑える誕生日が来るといいな。

優しく吹いた風に桜の花と二人の笑い声が仲良く舞い上がった。


作品への一言コメント

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  • おおおおおおっ!ありがとうございますー!!なんか改めて見ると無茶苦茶照れますねー。途中まで見て思わず画面閉じてしまいました・・・恥かしくて(笑)  綺麗に描写して頂いて嬉しいです。本当にありがとうございました! -- 守上藤丸@ナニワアームズ商藩国 (2009-07-20 01:23:12)
  • 出来るだけ、見た目とか描写を排して自然に見えるようにしてみました。喜んでもらえてよかったですー。場面を改めて回想するとすごいラブラブでしたよね!(笑) これからも頑張ってください! -- 鷺坂祐介@天領 (2009-07-20 23:10:08)
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引渡し日:2009/07/19


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最終更新:2009年07月20日 23:10