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サカキ@星鋼京様からのご依頼品


この秘宝館SSはフィクションです。実在の、またアイドレス世界の同名の人物・事件・団体・その他もろもろとは一切関係がありません。

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星鋼京には運河がある。
重要な運輸手段でもあるが、それと同時に観光地であり、デートスポットでもあった。

色とりどりのゴンドラが行き交い、花やお菓子を得る水上店舗が軒を連ねる。
恋人たちが運河沿いの道を歩きながら、ゴンドラに揺られながら、愛を語る。
そんなスポットである。

そんなところを、場違いにも一人で歩いている女性がいる。
名をサカキといい、この星鋼京の事務官である。

観光地・デートスポットにはおいしいお店が多い。
行きはおいしいケーキのことで頭がいっぱいで気にならなかったが、お店から出ると現実に打ちのめされる。
別に彼氏がほしいわけではないし、今は仕事が楽しいし、充実しているが。それとこれとは別問題だ。

「揺れるから、俺につかまって」
「ありがとう、ふっくん」

とか

「もう、きょうちゃんたら、ほっぺにアイスクリームついてるぞ☆」
「うわ、やめろよーこんなところで」

とか

そういう会話を聞いていると、るーるーるーという気分にもなろうというものだ。
なんとなく、うらびれた感じで運河沿いを歩く。

(なんか面白いことないかしらねえ)

外はサカキのうらびれた気分を象徴するかのように薄曇りだ。時折思い出したように日が射している。
もっとも、他の人の表情は快晴なので、これはこじつけというものだろう。
なんだか負けてられるかとおもって、あえてニコニコと歩く。

しばらく進むと、なんだか人だかりができているスポットにでた。
なぜか、人々が仮面をつけている。なぜか頭一つ分出ているでっかい男の人がいて、その人の仮面は実に小さく見えた。

「仮面…んー、仮装大会でしょうか…ここは、何をしているんですか?」
面白そうに思えて、なんとなく輪に入って尋ねる。

「バカロだよ。ねえさん」
仮面をかぶった小柄なおじさんが答えてくれた。

「ありがとうございますー。…えーと、バカロ、ですか?」
聞いたことのない単語だが、まあきっと仮装大会でもあながち間違ってないだろうと思って、あたりをきょろきょろとしだした。
さて、今日のカモはどこだ?

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ヤガミは腕を組んで、バカロ会場の隅にいた。
仮面というのはとても都合がいい。

木の葉を隠すなら森の中。一人で仮面をつけて動いていたら、ただのバカか往年の名作ロボットアニメに出てくる赤い人のパクリだと言われそうだが、これだけ仮面を着けていれば逆に目立たない。
相棒のドランジは、でかさで目立っているが、それは仕方がない。むしろあいつが目立ってくれるおかげでこちらは仕事がやりやすいというものだ。

ちらりと、腕時計を見る。

先ほど、見かけたターゲットの移動速度から考えて、そろそろここに到着するはずだ。

来た。

緩んだ顔をしている。頭はいいみたいだが、抜けてそうだ。
別にそれは悪いことじゃない。少しくらい抜けているのは、女としてみたら可愛いといえるし、ターゲットとしてみたら…だましやすいと言える。

一応間違えないように、分析開始。
身長158センチ体重(検閲につき削除)スリーサイズ87・60・87…Fカップ。
間違いない。星鋼京の政庁職員、サカキだ。

じっと相手を見つめる。
自分から声をかけるなど三流のナンパ師のやることだ。

視線を投げる。

見つめる。

気がつかない。

睨む。

おっといけない。微笑みを絶やさずに。

まだ気がつかない。

(鈍感め…)

ちょっと日が射したすきに腕時計の角度を操作、反射光をつかってサカキに光を送る。

やっと気がついた。

さあ、シンデレラ、パーティの始まりだ。

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(しつこいなあ)
さっきからこちらをじっと見ている人物に、サカキは気が付いている。
一目ぼれだろうか。まったく、困ったものだ。

相手の分析開始。

外見△ そこそこ。決戦号ほどではない
性格× 性格の悪さが目に出てる。おそらくドS
お金○ 身なりはそこそこいい。金もってそう。

しかたないからちょっとだけ相手してやるか。

「こんにちはー」
スーパー営業スマイル。好感度百パーセント。

(決まった…)
内心自画自賛のサカキ。

「いつか、中庭で見たな」
件の人物は親しげに声をかけてくる。

「違ったか?」
(あー古典的だなあ。20点)

「へ。中庭…?」
とりあえずびっくりしてみる。初心者みたいだし少しは合わせてあげよう。
じっと上目づかいで相手を見る。
藩王すらも一撃で撃墜する上目づかいである。
相手は照れたのか、すっと目をそらした。

「違ったか」
やはり照れたようにいう。おっと、ここで失敗したと思われてもつまらない。
現在ある情報からさらに分析、相手の弱そうな相手を推定。検索・・・・ヒットキーワード。健気、一所懸命、ドジ、無邪気、巨乳。
検索結果をもとに装いも新たにキャラチェンジ。
魂を鎧う服を、鮮やかに着替える。

戦闘開始。

「いや待って下さい。基本的に私物覚え悪いので! 全般的に!…その、中庭と言うと? あ、失礼しました。私この国におりますサカキと申しますー」
ちょこっと頭を下げるサカキ。
このセリフと一挙動の中に全ての要素を入れ込む。
プロが見れば、思わずうなるほどの腕前である。
もちろんそんなプロいないが。

「ああ。そうか。すまん。俺は・・・ヤガミだ。知り合いににていてな。悪かった」
効果あり。食いついた。

「ヤガミさん。いいえ、そんなことないですよ」
笑顔で一呼吸。この間が大事。

「でもそうですね。そんなカッコイイ声で言われると、ナンパと勘違いされちゃいますねぇ…」
ちょっと妖艶な大人の上目づかい。
あえて、ここで分析で出た好みのタイプとは逆の大人の女性で責める。
やや期待とずらすことで印象度をあげつつ、相手の動揺を誘う高等テクニックである。
イニシアティブはこちらにある。

「悪い気はしないが、俺はシャイなんだ。そうだ」
ヤガミと名乗った男は、マスクを外す。ふむ、外見△+に微修正。
そのマスクがこちらに差し出される。蝶のようなマスクだ。

「お礼にこれを」
それを見て、にっこりほほ笑みながら、心の中で悪態をつく。
(なんだか金にならなそうなもんを…減点100.まあここは、喜ぶとこよね)

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「わあ。きれいですねぇ」
目の前で無邪気に笑って、自分の差し出した仮面を受け取るサカキを見て、ヤガミは内心ほほえんだ。

(簡単なもんだな)

「ありがとうございます。記念になりますねー。ここに来た記念、ヤガミさんに会えた記念~」
信頼と好意は得た。後は仕事にうつるとしよう。まあ、利用する分くらいは幸せな夢を。
さあ、本番だ。

「ここには美術品がおおいそうだが?」
何気ない様子でたずねる。ここで、急にがっつくと警戒される恐れがある。あくまで世間話のふりだ。

「ええ。美術館に入りきれないぐらい、たくさんあるそうです…くやしいことに、まだ私、行った事がないんですけどね」
サカキは苦笑いをする。
これは行きたいというサインだろう。好都合だ。

「場所は分かるか?」
これもさりげなく尋ねる。

「はい、知っています。ヤガミさんも、興味、ありますか? 今から行ってみようと思うんですけど…」
完璧だ。自分からの提案でなく、相手に言わせる。自然な流れで目標に近づける。
サカキは、不安そうにじーっとこちらを見ている。
ふふ、心配するな。

「わたしごときでよろしければ?」
優雅に手を差し出す。きっと相手には俺が王子様に見えているだろう。

「はい、貴方が良いです。お願いします」
おずおずと、サカキが手を取る。もはや俺の手の上だ。
華麗にエスコートして、美術館へ。
おっと、相棒を忘れるところだった。

「ドランジ。仕事だ。ついてこい」
ドランジはうなずいてついてきた。

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先ほどの運河沿いとちがって、そこは高級な雰囲気にあふれていた。
洗練され、華麗な美術館は、その場の空気にぴったりと合っている。

「同じ国でも、随分印象が変わりますねー」

(にしても、いつまで手つないでるんだか、このぼうや)
手をひかれて美術館に入る。
ヤガミが、懐からIDカードを取り出す。
ようやく、手が離れた。
とりあえず美術館という選択肢も平凡だ。まあ、私はたまたま美術が好きだからいいけども。

「ヤガミさん、ありがとうございます。念願の美術館!」
美術館自体は素直にうれしい。いつかは行きたかった場所だ。

「いえいえ、どういたしまして」
ヤガミが微笑む。なんだか、私と同じ匂いのする笑顔だ。
さて、掌で踊るのはどっちかな。
まわりは壮麗な美術品が並んでいる。壺、コンソール、絵画。
古典的なものが多いようだ。ふむ。ここは。

「古典的なものが多いんですねー。どれも貴重なものなのだろうなあ」
古典的なものというのはわかるが、詳しいことはわからないレベル。つまり偏差値-2の女を演じる。

「ターンマイナス30か」
ほら、食いついた。ふふ、ちょろいわね。

「そんなにも…」
ほお、とため息をつく。

「帝國本土からも来ていると、人から聞きました。国の外からも来るほど、ここは有名なんですね…すごい」
もっと早く来てみればよかったなと考える。
ちらりとヤガミを見る。
ターンマイナス30と比べるのはさすがに酷ね。

「まあ。時価総額だけで桁外れだな…乾燥剤がたくさん買える」
んー冗談なのか何なのかわからない。

「うわあ。そうですね。たくさん買えちゃいますね」
まあどっちにも対応できるように笑っておく。

「…これが全部、この国や企業が買ったもの、か…」
そう考えると、なかなか複雑だ。あまり無茶な財テクに走っていなければいいんだけど。
っと、暇そうね。スマイルスマイルっと。

「うーん。しまった。調べ忘れてたな。博物館とか歴史資料館とかも、ありそうな勢いですね、こんなだと…」
目を輝かせてにっこりと笑う。

「見たい物があるか?」

「できれば。この国の歴史が分かるような、絵とか何か。何か見たいんですけど」
じーっと見上げる。目は、女の最大の武器だ。すべてはこの一撃のために。何より言質が取られないのがいいわよね。

「こっちだ」

「はーい」
先にさっさと歩くヤガミ。
照れてるのかしら?

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(ちょっと調子に乗りすぎたかもしれん)
常設展コーナーを見ながら考える。
相手は完全にこちらに惚れている。やりすぎはよくない。
美しいひと夏の思い出で完成させるべきだ。

「わー、常設展示ですか。何があるかなー」
サカキはしゃいで展示を見ている。
無邪気で一所懸命。ちょっとドジなところもあるが、巨乳だし健気だ。
あまり傷つけたくなかった。

サカキが小さな絵の前でとまる。
今までの展示と比べれば稚拙だが、何か暖かいものを感じる。
冬の絵なのに暖かいということは、こもっている思いが暖かいのだろう。

「わ…この国の、建国…ああ。冬の」
その時、サカキの目元が少しだけ光るのを見て、ヤガミは動揺した。

「ありがとう、ヤガミさん。こんなところも知っているなんて、物知りですね」
サカキが、すこし指で目元をぬぐって振り向く

「まあ、仕事がらね。この絵はおきにいりかい?」
動揺する。女の涙は反則だ。

「はい! もっとたくさんの人に、見てもらいたいぐらい!」
サカキは笑顔で元気よくいった。少し顔が赤いのは、照れているせいかもしれない。

「俺は。この絵こそ、価値があると思うね…こいつはさすがにな」
横に並んで絵を見る。
その言葉は本心だった。

「ああ、本当に。建国の時の、あたたかいこの絵が。うん。価値があります。…あ、やっぱり、貴重なものですか?」
首をかしげて聞く。きっとこの子は意識していないのだろうが、自然に上目づかいになっていて、それがさらに動揺をさそった。

(ちっ腐ったか俺も)

「いや?でも、大事な物はこの世にいくらでもある」
俺は、海賊だ。詐欺師でペテン師。お上と女の敵。それでいいんだ。
深呼吸をひとつ。心の中で三秒数える。

「ええ。値段がつかなくても。大事なものは、たくさんありますね」
「金では買えないものだ。そういうのを、俺は大事にしたい」
よし、落ち着いた。仕掛けはほぼ完成している。仕事遂行しよう。

「私にも、たくさんありますし。きっとヤガミさんにも、あると思いますし…うん。大事にしたいです」
サカキは最高の笑顔で、微笑みかけた。

(うぐっ)
そのときヤガミのなかでズキューンという音がなった。
先ほど取り戻したバランスがいともたやすく崩れる。

「俺にはないな」
戦線離脱。距離をとって態勢を立て直す。
ヤガミはすたすたと歩き出した。

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(しまった、サービスしすぎたかしら)
すたすたと歩き出したヤガミを追いかけながら、思う。
あんまり惚れさせすぎてもかわいそうだ。

火傷は軽いほうがいい。

追いつくとヤガミは小学生の書いた絵を見ていた。
小学生が書いた絵を見て優しく笑ってる

なんだか、すごく透明な笑顔で、突然胸がドキンと高鳴った。
本当の笑顔に初めて出会ったような気がした。
隣に立って一緒に見つめる。

「ああ、かわいい」
素直に声が出た。

「これが一番の宝だな。ターン2か。すると・・・」

「すると?」
小首をかしげる。

「今だと20くらいか。生きてるといいな」

「……ああ。そうですね。絵を描いた方、笑ってるといいな。ここで」
小学生の純粋な絵を見ていると、心が洗われるようで素がでてしまう。
初対面の男にこんなことを言うのは初めてだ。

「この国は、貧富の差が大きい。まあ、株で儲けまくってるのもいるが…貧しいのも多い」
ヤガミの横顔に少し影が差した。何かを思い出しているのかもしれない。

「お金を稼ぐ人もいれば、逆に失う人もいる…難しいです。発展と言うものは。でも、ゴンドラのあったところに居た人たちは、明るそうだった。それは、嬉しいです」
やっぱり少し変だ。この男といると調子が狂う。そっとヤガミを見た。

「……難しいと、俺は割り切りたくはない。さて、夕食でもどうだい? ごちそうするが」
すこし、重くなった雰囲気を振り払うようにヤガミが誘いをかける。
……チャーンス

「・・・・・・え、いいんですか?」 
ぱあっと目を輝かせる。ほとんど素だが、演技でも問題ない。

「喜んで。えーとその、この国のお菓子の美味しい、食事もおいしい場所だったらいくらでも知ってますよ! ああでもオススメの場所があればそこでも…!」
一気にたたみかける。

(ふふふ、危うく目的を忘れるところだったわ…1000わんわんオーバーは食べてやる…くくく)
ヤガミの袖をとって美術館を出る。
美術館を出る時、ヤガミが何か紙のようなものを落とした気がしたが、まあ気にしない。
何せ今日は高級料理だ。
夢見せた分くらいは、取り返さないとね。

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数時間後
ドランジは、美術館の影で座っている。
手元には、ヤガミからのメモ。

『今日の獲物変更。仕事は延期』
と書かれている。

「まったくヤガミめ…」
いつまでもここにいても仕方がない。
すっと立ち上がろうとした時、ヤガミから連絡がはいった。

「ドランジか?今日やるぞ…」
不信に思うドランジ。

「?今日は延期ではなかったのか?」
しばしの沈黙。

「あの女…1500わんわんも食べてな…その挙句、『明日早いんでお先に失礼します』だぞ!元はとる。決行だ」
ぶちっと切れる。
なんだかなあと思いながら、ドランジは月のない夜空を見上げていた。

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翌日

「おはようございますー!」
元気に入ってきたサカキの後輩事務官、アキナが見たのは新聞を手にプルプルと震えるサカキの背中だった。瘴気が体から立ち上り、上空で固形化して「触るな危険」という文字に見える。

「アカネ先輩…サカキ先輩またですか?」
先輩事務官に助けを求めるアキナ。

「そうみたいね…わかってると思うけど近づかない方がいいわよ」
ゆっくりとお茶を飲みながら先輩事務官アカネは遠巻きにサカキを見る。

サカキは新聞をつかんでいる。持っているというかつかんでいる。

「ぐううううう…あの…あの…」
新聞をつかむ指が力の入れすぎでぶるぶると震え白くなる。
記事は、『海賊?盗賊?美術館で大量の盗難事件発生』
その下には、ドランジとヤガミの顔が掲載されている。

新聞がそのプレッシャーに負けてビリビリにやぶれる。

「あの、海賊ヤローーーーー!!!」
その声は巨大な星鋼京の王宮・白亜宮を駆け抜け、王女クロの居室のティーカップをふるわせたという。

さて、サカキとヤガミ。二人の明日はどっち。




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えーと、すごいことになってすいません。つい。
楽しく書かせていただいてありがとうございます。
この作品はフィクションです。


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引渡し日:2009/08/29


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最終更新:2009年08月27日 00:27