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慈詠@たけきの藩国様からのご依頼品


気がつけば、この場所にいた。
「おしろ……?」
思わず声に出してしまう。
観光地化されたお城と公園なんて、世界によってはよく見る風景だけど。
先ほどまでの場所とは全く違う、おそらくは別の世界。
でも、なぜこういうことに?

ここに来る直前のことを思い返してみる。
WTGの記憶は特になし。
あり得るとしたら、誰かさんみたく落とし穴のようなゲートにつかまった可能性。
でなかったら、誰かにこの世界に落とされた、もしくは呼び込まれた。
それなら、ここで行わなきゃいけないのは、情報収集と帰還方法の確定。

まずは、そこらにいる人を誰かつかまえて……こちらに近づいてくる人がいる。
「こんにちは」
「こんにちは」
とりあえず挨拶を返してはみたけど、この人は誰なんだろう。
「ええと・・・」
「はい、急に申し訳ありません」
いきなり、謝られてしまう。
つまりはこの人が、原因ということ?

「ここは、わんわん帝國、たけきの藩国です」
わんわん帝國、その名前なら知っている。
でも、そのときは藩国? なんてものは話には出てこなかったと思う。
記憶を振り返っても、こんな名前は出てこない。

話を続けようか迷ってる様子に、続きを促してみる。
「貴方の名前は?」
「私は、慈詠。葛城慈詠守人、と言います」
名前は日本風。
「なるほど。私は・・・七城メイっていいます」
少しの沈黙。
この人…慈詠さんは、少し困ったように口を開いた。
「ここで、立っているのもなんですから、少し歩きませんか?」
そして、公園の方へ向かっていく。
うん、ここで一人立ち尽くしても仕方ない。
今のところ、戻る術を知っている可能性があるのはこの人なんだし。
今は、ついて行ってみよう。
「はい」

/*/

「えーとですね…」
「はい」
見るからに、どこから説明しようかって表情。
知りたいことは山ほどあるけれど、さてこの人はどれだけ知っているんだろうか。
「不審に思われるか、おかしいと思うかもしれませんが」
「はい」
少し、空気が緊張するのがわかる。
この話の流れ次第で、私の取る行動も変わるかもだし、しっかりしなきゃ。
「なぜか、あなたに逢わなければならない気がして、話してみたいと思いました」
……?
少し、言葉の理解に時間がかかってしまった。
「それは・・・」
なんて返事したらいいんだか、もう。

「予想外でした」
「ははは、変ですよね」
困り果てたように空を見上げている様子に、また笑ってしまう。
頭をかく仕草といい、表情といい。
この人は本音を口にだしてしまい、それで照れているのがよくわかる。
「いえ。いいんじゃないですか」
「そ、そうですか。ありがとう」
笑顔で言葉が返ってくる。
状況はまったくわからないままだけれど。
ただこんな風に、笑顔で話せるのは悪くない。

でも、情報はちゃんと集めないと。
「ここは、どういうところなんですか?」
「そうですね、ここは私が仕官している国です。簡単に言うと、田舎です」
軽い説明の後で、わーごめんなさい、国の皆さんごめんなさい、とのつぶやきまで聞こえてる。
でも、うん。
この風景は悪くない。
「なるほど。いいですね」
答えると、わかりやすく表情が明るくなった。
「はい、私もそう思います。四季があって農業が盛んで」
心からの想いを語っている表情。
「王がジャガイモ好きなので、いい芋が取れます」
この国が大好き、言葉の外で語ってる。
いい人、なんだな。
「ええ。日本に、どこかにています」
私の知っている日本とは少し違うけれど。
少し、懐かしさを感じる。
「好きだな、こういうところ」
微笑むと
「ありがとう」
本当にうれしそうな表情。

このまま続けていたい気もするんだけれど。
話が予定とまるっきり違う方向にいってるので、少し修正。
「東国風って、感じですかね」
「ええ。他にも同じようなところが?」
「そうですね、東国ぽい国も色々あります」
つまりは、この国と似たような国が他にもあるということ。
それに、『色々あります』ということは。
「東はあるから、西もあるんですよね?」
「西国人の国もあります。そう言えば、前に西国風の所で働いていた事もありました」
ということは、国交もあるんだ。
もしこの国で手がかりがつかめない場合は、他国への移動も考えないと。
そのためには、まず。
「・・・そこの名前は、なんですか。
覚えられないくらい長い名前だったら、言わなくてもいいんですけど」
「実は今もそうなんですけれど、出稼ぎ中で休みがとれまして」
「なるほど・・・」
だとすると、行き来はかなり簡単な様子。
問題は、特に身元保証のない私がどうやって移動するかってところ。

「宰相府藩国、で良いのかな…」
つぶやいた言葉は覚えておく。
変わった名前だけど、それを言ったらこの国も同じ。
と思っていたら。
「この辺りはわんわん帝國女王辺境領。その女王の宰相さまの国ですね」
さらに上の名前、おまけにその名前は……
「それは覚えやすそうでいいですね」
「ははは、確かに」
他意のない、少し照れた笑い。
私も微笑み返す。
考えていることは主に帰還のことだけど、この好意は本物。

「宰相府はバザーとか商業とか有名です」
私の興味を読み取ったのか、少し考えながら話してくれる。
商業国家と考えればいいのかな。
この国とはずいぶん違う様子。
歩いていても、のんびりとした、穏やかな空気を感じる。
「活気があって良いんですが、私はこの国の方が好きです」
「なるほど。小アジアみたいなんですね・・・って、わかりますか?」
うっかり言ってしまった、けど。
「はい、多分分かっていると思います」
あっさりと話が通じる。
あまり離れていない世界の可能性が上がったかも。
国の名前はずいぶんと違う様子なのだけれど、これは覚えていた方がいいことかな。
……と、話の続き。
「絨毯とか?」
軽くたずねてみる。
「絨毯とかも売ってましたね、買わされそうになった事があります」
印象が同じってことは、どうやら近い世界の様子。
でも、それよりも。
「ふにゃらほにゃら~。な音楽とか」
口真似を聞いて、思わず笑ってしまった。
帰るための手段を探っているはずなのに、楽しくなってしまって。
二人で笑い合う。

/*/

歩いているうちに、公園から出ていってしまった。
ここらは田園地帯になるのかな。
「こちらがウチの畑です。あ、歩くの早くなかったですか」
なぜかまた、国の皆さんごめんなさい、と小声が聞こえる。
謝ることなんてないのに。
「いいえ。大丈夫です」
国の人達にすごく気を使っている、でなかったら国の人達が大好き。
今までの様子からすると、後者なんだろうな。

畑の上には、トンボがたくさん飛び交っている。
「このターンも良い実りだ、収穫祭が楽しみです」
「そうですね」
そのときまでこの世界にいることになったら、困りはするけれど。
見てみたい気もする。
「綺麗ですねえ」
辺り一面、稲たちが収穫のときを待っている様子が綺麗で。
田畑をめぐる風が、優しくて。
「風が少し、冷たいですね」
「ええ。夏も、終わりですね」

季節の話をしたつもりだったんだけど。
「寒くありませんか」
ううん、それより。
「もう少し、見ていってもいいですか?」
「ええ、もちろん」
この夕日を心に留めておこう。
素敵な想い出として残しておくために。

/*/

夕日を眺めているうちに。
気がつけば、周囲は元の世界の景色に戻っていた。
「あの夕日は、もう少し見ていたかったな」
つぶやいてみる。
戻ってこれて安心したら、あれこれ見ておきたいものが増えてしまった。
あの国には、他にどんな場所があるだろうか。
話だけきけた西国は、どんな様子だろうか。
そして。
……。
たぶん、いやきっと次の機会はくる、そんな気がする。
慈詠さん、と名乗った人を思い返す。
うん、その日は遠くない、はず。


作品への一言コメント

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  • ありがとうございます。えーとですね…、依頼させて頂いて本当に良かった。この風景を、この想い出を守る為に戦います。 -- 慈詠@たけきの藩国 (2009-11-11 19:58:43)
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引渡し日:2009/11/11


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最終更新:2009年11月11日 19:58