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乃亜・クラウ・オコーネル@ナニワアームズ商藩国様からのご依頼品


琴の調べ


 たとえ、天が落ち、海が裂けようと、
 あなたの剣はあなたの誇りを守り、
 あなたの琴はあなたを讃える歌を忘れない。


 私をあなたの琴として下さるだろうか?


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 柔らかな陽射しが、吹き抜けから注がれる居住区公園。昼寝するもの、遊ぶもの、デートするもの、多くの人が集う憩いの場。
「ハリーさん!」
 その公園に、一際大きく人を呼ぶ声が響き渡る、それは一人の少女の声だった。
 その主の名を、乃亜という。ヘイリー・オコーネルの伴侶であり、NW有数の服飾店経営者でもあった。
 その彼女が、走りながら声をあげていたのだ。対象はもちろん、ヘイリーである。

 ヘイリーは嬉しそうに笑みを浮かべて、駆けて来る彼女を抱きとめた。乃亜は彼の顔を見つめて、何かを話そうと口を開いたが、上手く言葉が出てこなかった。
 沈黙と共に、静かに風が吹いた。

「大丈夫、か?」
 少し不思議そうに口を開く。乃亜は、一度深く深呼吸をして心を落ち着かせる。そして、相手の顔を見て一度頷く。
「すまない、なんか しゃべれなくて、大丈夫か?」
 ヘイリーはそれを聞いて、優しく目を細めた。
「嬉しくて、会いたかった」
 感情に後押しされて、口を突いて出る言葉を、必死に繋ぎ合わせる。上手くつながらない言葉に、自然と涙が零れた。

「いってることがぐちゃぐちゃでごめん」
 ヘイリーは、優しげに微笑んで乃亜の頭に手を置いた。くしゃりと髪を撫でる。
「いや、自分も、嬉しい」
 目線をあわせて、答えるように抱き寄せる手に、僅かに力を込めた。乃亜は涙を浮かべたまま笑みを返す。

「お誕生日、おめでとう。会いに来れて、その、嬉しい」
 ふふ、と笑い声が漏れる。ヘイリーは、彼女の腰に手を回し、ゆっくりと抱き上げ、そして、互いの額を重ねた。
 それに答えるように、乃亜は抱きつく力を強める。

「なかなか、言葉が無い」
 嬉しそうに呟くヘイリー、頬が自然に緩んでいる。
「うん、ずっとこのままでいてしまいそうだ」
「話を、たくさんあったはずなんだけど」
 赤く頬を染めながら、身体を託す乃亜。僅かに目を伏せて、幸せそうに笑っていた。
 その光景は、周囲の目を集めていたらしく、ちらりちらりと視線を感じる。少し遠巻きに、子供たちがきゃーらぶよーとか言いながら眺めていた。

「何処か、散歩でも」
 少し照れながら、乃亜を降ろすヘイリー。人の視線を気にするように、周囲に目を向けている。
 降ろされてから、改めて周囲を見渡してみると、かぁぁっと頬に赤みが増してきた。そして、照れ隠しのように、ヘイリーの手を握りながら頷いた。
「うん!」


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 暫く二人でのんびりと歩く。吹き抜けの採光穴から差し込む陽射しが、ほんのりと暖かく草木を照らしている。
 人気を避けるように歩いていくと、あまり使われて居ないような東屋にたどりついた。周囲に自生している花が、ふわりふわりと風と踊っている。

 何も言わずに、二人同時に足を止めると、乃亜はさげていたバスケットを取り出し、ヘイリーに差し出した。
「あの、それで、忘れないうちに差し入れだ」
 バスケットのふたを開くと、ほんのり果実の甘い香りが周囲に広がった。ヘイリーは嬉しそうに微笑んで乃亜を抱き寄せる。
「ありがとう。すごく、安心する」
 抱き寄せられ、ヘイリーの体温を感じながら自らも抱きしめる。大きな安堵感に包まれて、自然に微笑みを浮かべていた。

「ハリーさんは、大丈夫か?」
 手を伸ばし、ヘイリーの髪を撫でる乃亜。それに答えるように、ヘイリーは優しくは頷いた。
「実は、格好にならんでたのしみにしていた」
 それを聞いて、乃亜は満面の笑みを浮かべた。視線を合わせるように、相手の顔を見上げる。
「嬉しい。ありがとう。ちゃんとハリーさんの口に合うといい」
「チョコのケーキは、甘くないようにがんばってみた」
 少し自信げに笑う乃亜。ヘイリーは微笑むように目を細めた。
「自分は・・・甘い物でも比較的大丈夫なつもりだ。滝川くんに、鍛えられたから」
「そ、そうなのか……!」
 まさかの事実に目を大きく見開く。それに彼は真顔で頷き答えた。その表情にウソはなく。もしかしたら、毎日毎日甘味ばっかり貰っていたのかもしれない。

「では、お菓子もつくりまくろう」
 それじゃあ、と乃亜は嬉しそうにきゅっと抱きしめた。そして見上げるように視線を向ける。
「・・・あと、 ハリーさんは、和食は、平気だろうか?  海のものとか、酢の物とか?」
 ヘイリーは微笑んで、頷いた。
「大丈夫だと、思う。どこまでが日本食かは、自信がない」
「……火星のコケよりは、大丈夫だろう」
 火星のコケってまずいのか。いや、大事なのはそんなんじゃなくて。

「えーとえーと、 美味しいように、頑張る。 まずいものは、残して良い。学習する」
「それで、あの」
 何も心配していないように、ヘイリーは笑った。乃亜を信頼しきっているように、ただ笑みを浮かべる。
「指輪、を、ありがとう。 びっくりして、でも 嬉しいのだけど」
 僅かに言葉が詰まる。聞いておきたいことなのに、聞いていいのか迷ってしまう。それでも、彼は笑っていた。
「……私が受け取ってしまって、神様にしかられたり、困ったことになったりしない、だろうか?」 
 眼を伏せて頷くヘイリー。

「ハリーさんは人が良すぎると、思う」
 相手の腕をぎゅっと掴み、乃亜はヘイリーの胸に顔を埋めた。
 静かに肩を震わせている彼女を包み込むように、ヘイリーは優しく抱きしめ返した。
 そして、ゆっくり語りかけるように、
「……愛している」
 と囁いた。
「うん、大好き。ハリーさんを愛してる」
 涙を拭って、微笑みを向ける乃亜。ヘイリーの少しだけ抱きしめる手に、力が篭もった。

 乃亜はヘイリーを見上げる。そして、想いを注ぎだすように口を開いた。
 開かれた口からは、凛とした声で、流れるように詩が紡がれていった。その姿は、何処か凛々しく、美しいものだった。
 彼女は、詩の結びにヘイリーに問う。
『私をあなたの琴として、下さるだろうか?』
 と。

 彼は、頷くように眼を細めて、
「誓って」
 と、答えた。 

 乃亜は、相手の身体に自分を重ね、再度顔を寄せる。
 愛しさが溢れ、自然に笑顔がこぼれていく。
 愛しい。そう、ただただ愛おしいのだ。
 二人でいる時間が愛しく、二人で交わす視線が愛しい。 
 ヘイリーは、己の心に沸き立つ感情を感じながら、乃亜の瞳を見つめた。

 キス……かな? 
 そう思って、乃亜は自分から唇を寄せようと、少し身を乗り出して、身長を合わせる。
 しかし、ヘイリーは微笑んだままだった。
 ああ、そうか。と気付いたように、乃亜は目を閉じる。

 瞼を閉じると、何処か懐かしい香りがして。
 抱き寄せられる手から、暖かな温もりを感じて。
 そして、静かに唇が触れ合った。
 それは、何処か遠い空から、青と白の世界から舞い降りた風のように。
 純粋で、暖かな。

 優しいキスだった。


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 たとえ、天が落ち、海が裂けようと、
 貴方の剣は貴方の歩みを守り、
 貴方の騎士は貴方への愛を忘れない。


 私を、貴方の剣として下さるだろうか?


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作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

  • 読み返すたび、顔から火を噴きそうになってまs・・(照)。 ハリーさんが素敵で格好良くて、とっても嬉しいです~~ ありがとうございました! 思う存分倒れてじたばたしてきます!(笑) -- 乃亜・C・O (2010-10-18 01:33:29)
  • コメントありがとうございますー! 締め切りをだいぶ過ぎてからの投稿で申し訳ありません、出来る限りログの雰囲気を壊さずに書いてみました。お納めいただければ幸いです。 -- 御奉梗斗 (2010-11-02 00:11:34)
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ご発注元:乃亜・クラウ・オコーネル@ナニワアームズ商藩国様
http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one&namber=2799&type=2766&space=15&no=


引渡し日:2010/10/15


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最終更新:2010年11月02日 00:11