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小笠原には森がある。いや、当然と言えばそうなのだが。
普段なら居ない人問がいるという意味では、当然ではないだろう。
「うーん……、見つからないなぁ」
その人間、ソーニャは探険家チックな服を着て、あるものを探していた。
手には2枚の写真がある。緑色に輝くキノコと、同じ形をした白いキノコ。
ヤコウダケ、別名グリーン・ペペという緑色に輝くキノコ。探し物はこれだった。
何故探しているかと言えば、エミリオのためである。
小笠原の夜の風物詩と言えば、緑色に輝く足元と満天の星空。
それをエミリオに見せたい!しかし、場所が分からなくてさまようと言うのはもったいない。
ということで、大体の場所と道順を事前に調べておこうとしているのだ。

しかし――――

「うう、見つからなーい!」
地元のおじさんに大体の場所は聞いたものの相手はキノコ。
自然のものが機械の如く決まった場所に生えることはない。
さらに言えば、相手はキノコである。はっきり言って、地味だ。
加えて森の中だから暗いし、ところどころ射す日差しが絶妙に邪魔をする。
「むっ!」
そんな中、ソーニャの目がきらりと光った。
視線の先にはキノコ。おそらくグリーン・ペペだろう。
急いでその周りを確認するが、残念ながらそこにあるのは1個だけだった。
「………はぁ、これだけか」
ため息をついて、ソーニャはキノコの横に座った。
今必要なのは群生しているグリーン・ペペだ。
ぽつぽつあったくらいでは絵にならないし、なにより自分でも多いほうが良い。
もう一度ため息をつくソーニャ。
「やっぱりおじさんについてきてもらったほうが良かったのかなぁ……」
しかし旅人としてのプライドと、エミリオが好きな人間のプライドがそれを許さなかった。
自分で見つけた美しいものをエミリオに見てもらいたいのだ。
「よし、休憩終わり!」
水も飲んだし、身体も休まった。立ち上がってもう一度探索を始めた。

キャーキャー

そこに、森に響く声が一つ。ソーニャの耳がぴくッと反応した。
これは、出来れば見つけたいと思っていた『あの生き物』では?
「グリーン・ペペは……後回し!」
声のするほうに慎重に移動するソーニャ。
この声の持ち主もエミリオに見せたいと思っていたのだ。
細心の注意さえ払えば近くにはいける。今のうちにテリトリーを知っておきたいのだ。
そしてしばらく進んだところで、
「………いた」
オガサワラオオコウモリだ。
サルにも似たその外見を見間違えるはずもない。
「このへんが巣なのかな?」
あくびをして落ち着いているから、おそらくそうだろう。
と言うことは、夜もこのあたりを通れば会える可能性は高い。
これはかなりの収穫だ。
「よかったぁ……これでエミリオに見せられそう!」
そっと手を合わせて喜ぶソーニャ。
不思議そうな顔をするコウモリに手を振って、またね、とその場を去った。
まだグリーン・ペペが見つかっていないから、探さなくては。
「よし、もう一頑張りしよう!」
GPSで座標を確認して、再びソーニャは歩き始めた。
エミリオにいい思い出を。
ただそのために。


その思いが通じたのか、さほど歩かずに群生地を見つけられたのはこの数分後。

思い出に残るダンスをするのは、数時間後。





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最終更新:2007年10月07日 01:35